山階鳥類学雑誌
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42 巻, 2 号
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原著論文
  • 北川 珠樹
    2011 年 42 巻 2 号 p. 129-141
    発行日: 2011/03/20
    公開日: 2013/03/20
    ジャーナル フリー
    1997-2007年にセイタカシギの一夫二妻(二雌トリオ)の抱卵活動について,共同巣に産卵した3例,同時的2巣に産卵した2例,そして継時的3巣に産卵した1例について調査を行った。共同巣を持った1例目の両親と娘からなるトリオは,両親のみが抱卵活動を行った。2例目の3羽の成鳥からなるトリオは,全ての成員が抱卵活動に参与したが,優位雌が抱卵中の劣位雌を巣から追い出す妨害をたびたび行った。3例目の両親と娘からなるトリオでは,すべての成員が抱卵活動に協同的に従事した。同時的2巣を持った2例のトリオでは,すべての成員が両巣の抱卵に関与したが,両巣への関わりの程度は個体により異なった。継時的3巣を持った1例のトリオでは雄は3巣すべての抱卵活動に参与し,優位雌は第1と第3の巣の抱卵に,劣位雌は第2と第3の巣の抱卵に参与した。共同巣では,各個体にとって1羽で二腹全ての卵を抱卵することは物理的に難しかった。同時的2巣と継時的3巣では雄が劣位雌の巣よりも優位雌の巣でより多くの抱卵活動を行った。トリオでの孵化成功の割合は一夫一妻のつがいと較べ有意差はなかった。そのためセイタカシギのトリオ形成は雛の孵化に関しては一夫一妻の場合と較べて利益があるとは言えなかった。雛の孵化には共同巣を持った1例のトリオと同時的2巣を持った1例のトリオ,そして継時的3巣を持ったトリオが成功した。育雛活動に関しては,継時的3巣を除いた2つのトリオでは,全ての成員が育雛なわばりの防衛に貢献した。中でも同時的2巣のトリオでは全ての成員が抱雛活動,雛の防衛活動,育雛なわばりの見張り活動にも貢献した。トリオ形成は一夫一妻のつがいに較べ,つがいの育雛行動の負担が軽減される点で利益があると言える。
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