一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
63回大会(2011年)
選択された号の論文の301件中101~150を表示しています
5月29日
  • 堀 光代, 平島 円, 磯部 由香, 長野 宏子
    セッションID: 3P-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らはこれまで、大学・短大生の調理に対する意識や基本的な調理技術、様々な料理の調理能力についてアンケート調査を行ってきた。学生の調理知識は、調理実習を行うことにより習得度に効果が認められた。今回は、「切り方」の知識についてより詳細を把握するため、「切り方」の名称の記述(以下テスト形式)調査について検討し、アンケート調査との比較も行った。
    【方法】調査対象者は、2009年~2010年入学の女子短大生129名とした。調査時期は、授業の影響がない入学直後および半期の調理実習履修後に行った。調査方法は、基本的な「切り方」12種類を図示し、テスト形式の調査を行った。得られた正解数、正解率について結果を集計し、比較検討した。
    【結果】入学直後の学生の「切り方」12種類の正解率は65%であった。半期の調理実習履修後の正解率は90%と高くなった。入学時には2問のみ正解という低い正解数の学生も存在したが、実習後ではすべての学生が7問以上正解した。正解率80%以上の切り方は、入学時には「みじん切り」、「いちょう切り」、「乱切り」の3種類のみであったが、実習後には「小口切り」、「かつらむき」、「半月切り」、「せん切り」、「輪切り」、「ささがき」、「さいの目切り」も正解率80%以上となった。「色紙切り」は、正解率の最も低い切り方(入学時10.1%、実習後59.7%の正解率)であり、「角切り」や「四角切り」等の誤答が多くみられた。入学直後と実習後の結果を比較すると、ほとんどすべての切り方で、調理実習の履修後に知識の定着が示された(p < 0.01)。以上の結果から、アンケート調査結果と同様、調理実習履修による知識の向上が認められた。
  • 小出 あつみ, 山本 淳子, 松本 貴志子, 山内 知子
    セッションID: 3P-34
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 現在,日本では年間1,900万tの食品廃棄物が排出されており,そのうち食品ロスが500~900万t含まれると推計される。本研究では女子学生の調理実習における廃棄率と食品ロスに関する現状の把握を目的とした調査を実施した。
    方法パネルは,N女子大学生活環境学科2年生(KA2)39名,3年生(KA3)36名及び家政経済学科2年生(KE2)58名である。廃棄率調査の試料は玉ねぎ,里芋,オレンジ,キウイ,鯵とし,基準値として食品成分表の値を使用した。結果は多重比較検定で解析し,統計的有意水準を5%以下で示した。さらに食品ロスについて自記式アンケートによる調査を実施した。
    結果廃棄率の玉ねぎでKA2が有意(p<0.01)にKA3より値が低かったが,その他の材料では3群の間に有意差は認められなかった。野菜,果物及び芋では3群共に基準値より高く,魚では3群共に基準値より低かった。総体的にKE2が他の2群より低い廃棄率値を示し,その要因として一人暮らしの学生が多く,調理の機会が他の群より多いことが示された。アンケート結果から食品ロスの意味を知っているパネルは約33%で,食品ロスが一番多いと思う食材では魚類と野菜類が多かった。食品ロスの経験があるパネルは約68%で,その理由として賞味期限切れが最も高く,消味期限切れの判断は主に食品の色と臭いで選択していた。以上の結果より,女子学生では食品ロスが多い現状が示され,その主な要因が食材の管理不足であることが示された。また,食品の品質を判断できる知識の習得とその経験及び調理技術の向上が食品ロスを減少させるために重要であると考えられた。
  • 湯川 夏子, 田中 康代, 中村 道彦, 木村 晶朗
    セッションID: 3P-35
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】私たちが食事をしておいしいと感じる要因には、食べ物そのものの味やにおい、見た目だけでなく、食事をするときの周囲の環境(食事環境)が挙げられる。本研究では、食事環境として音環境を取り上げ、BGMが食欲に与える影響について検討した。
    【方法】2010年11月~12月の10時~12時に、大学生20名を対象に、食欲とBGMの関係性を調べる実験を行った。被験者に食堂の食器一式と料理の画像を見て食事をイメージしてもらいながら、5つの音環境(騒がしい洋楽・穏やかな洋楽・クラシック・学生食堂の録音・BGMを使用しない)において、食欲の増減、音環境の印象について質問紙調査を行った。同時に脳波測定(I-rlx, デジタルメディック社)を行った。統計処理にはSPSS15.0を、脳波解析にはData Make とExcel2010を用いた。
    【結果・考察】5つの音環境中、「騒がしい洋楽」で有意に食欲の減退がみられた。音環境の印象調査で、25形容詞対を主成分分析したところ、「優和性」「高尚性」「快活性」「評価性」の4つの因子が抽出された。因子得点より、クラシックで「優和性」「高尚性」が高い、「騒がしい洋楽」で「優和性」が低いという特徴がみられた。各因子と食欲の関係をみると、「優和性」と食欲の間に有意に高い相関がみられた。脳波測定の結果より「脳安静度」を算出したところ、学生食堂の録音やクラシックで安静度が高く、「騒がしい洋楽」では安静度が低かった。「脳安静度」と食欲は -0.63と逆相関がみられ、安静度が高い時、食欲も増すということが明らかになった。以上のことより、食事環境におけるBGMが人の食欲に様々な影響を及ぼしていることが明らかになった。
  • ―食文化教材の開発をめざして―
    村上 陽子
    セッションID: 3P-36
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【目的】 食品の嗜好価値は,味,形,色,香り,テクスチャーなどの化学的・物理的特性によって決定される。一方,現代社会においては,加工品の普及により,簡便性・合理性・利便性が重視され,食の色彩は軽視される傾向にある。食における色の効果を大事にしてきた我が国には,和菓子という伝統的な菓子がある。しかし,食生活の洋風化により,和菓子の喫食頻度は減少傾向にあり,食文化の継承という面において懸念すべき状況である。練りきりやきんとんに代表される茶席の和菓子においては,(1)色や形などが多様である,(2)カロリーが低い,(3)卵や小麦粉に起因する食物アレルギーの心配が少ないなどの利点をもつ。さらに,色の配色など色彩に関して繊細な心遣いがなされており,それが食べる人の食欲に大きな影響を及ぼしていると考えられる。練りきりの色彩と食嗜好性の関係を明らかにし,色の美しさと多様性が特徴的な練りきりを食育教材として活用することで,栄養面・食文化面など多角的視点からの食育の遂行が期待される。そこで本研究では,練りきりの色彩構成が小学生の食嗜好性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】 調査対象は,静岡大学教育学部附属静岡小学校の6年生児童(男子56名,女子52名),実施期間は2009年12月~1月である。異なる着色料で着色した練りきりを実際に見てもらい,食嗜好性を測定した。着色した練りきりの色は色彩色差計CR-400/410(コニカミノルタ センシング株式会社)で測定した。
    【結果および考察】 女子は男子に比べて天然色素の色合いを好む傾向が見られた。また,女子は薄いトーン,男子は濃いトーンを好む傾向が見られた。男女間で,食嗜好性の高い色相・トーン・着色材料が異なることが明らかとなった。
  • 吉田 知未, 岸田 邦博, 鈴木 明子, 松原 主典, 冨永 美穂子
    セッションID: 3P-37
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的:食生活を把握するために,質問紙調査や食事の写真撮影による食事調査が一般的に行われている.これらの調査から栄養素,食品群別に摂取量の把握はできるが,食事内容の特徴の分析は困難である.そこで,アンケートの自由記述分析や文書の分類,検索等に使用されるテキストマイニングを用い,食事調査の際にテキスト入力された食事内容から,大学生を中心とする若年世代の食事内容の特徴の構造を明らかにすることとした.
    方法:2008年10月~12月にかけて,調査内容に同意が得られた3大学及び1高等専門学校学生106名(男性;29名,女性;77名) に日常生活に近い5日間,カロリーのある飲食物全ての写真撮影及びそれらのテキスト入力を依頼した.テキスト入力された食事内容を食品・調味料,料理,嗜好品などのカテゴリーに分類し,それら飲食物の出現割合ならびに回数をPASW Text Analytics for Surveys (SPSS)を使用し,性別,通学別,調査校別に分析した.
    結果:全対象者において,食品・調味料は,にんじん,たまねぎ,卵,キャベツ,豚肉,料理はご飯,みそ汁,サラダ,嗜好品はケーキ・ペストリー類,菓子パン類の出現頻度が高かった.しかしながら,5日間の分析で全対象者が1回以上共通して食したものは存在しなかった.性別においては,男性は唐揚げ,コロッケなどの肉や油を多用した料理,女性は煮物,炒め物などの比較的あっさりした料理の出現頻度が高かった.通学形態,調査校による差はほとんど認められなかったが,摂取回数,摂取内容に若干の違いがみられた.
  • 植田 郁美, 村上 陽子
    セッションID: 3P-38
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 食べ物のおいしさは,食材の味,香り,色,形,テクスチャーなど化学的・物理的要因により構成されており,我々は五感すべてでおいしさを感知する。五感の中でも,「触覚」は口中や舌で知覚されるものが主であり,結果として生じる感覚を「食感」と呼ぶ。食感には,食べ物の硬さ・粘性・歯切れなどのテクスチャーや温度が関与している。テクスチャーは食物の美味しさに関わる重要な因子であり,それを言葉で表現したものがオノマトペである。オノマトペは種類も多く,表現も多彩であり,食品に対する感覚特性を客観化する際の有用な情報である。しかし,オノマトペは,幼く子どもっぽい表現というイメージから,教育現場であまり重視されていないのが現状である。そこで,本研究では,小学生と大学生の食に関するオノマトペの認知度を調査し,世代間の相違を検討する。これにより,食におけるオノマトペの重要性を明らかにし,五感で感じたことを「言葉で表現する」スキルの手がかりとする。さらに現在充実が求められている「言語活動の充実」のための教材開発の一助とする。
    方法 静岡大学附属静岡小学校5・6年を対象に,アンケート調査を行なった。55語のオノマトペについて「食感覚を表現しているか」の問いに対して「はい」「いいえ」のどちらかを選択してもらい,「はい」と答えた回答者の割合を「認知度」とした。また,大学生を対象として行なった調査結果と比較し,相違を検討した。
    結果 小学生と大学生と比較した場合,認知度が低い語については共通しているものがあったが,認知度が高い語については大学生の方が多く,食に関するオノマトペに対する認知の度合いが,小学生と大学生とで異なることが明らかとなった。
  • ―飲用スタイルに着目して―
    谷本 亜沙美, 村上 陽子
    セッションID: 3P-39
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 緑茶は日本人の生活に深く根付き,嗜好飲料として親しまれている。一方,食生活の多様化に伴い,飲料をとりまく習慣にも変化がみられている。本来,緑茶は茶葉を急須で入れて飲用するもの(リーフ緑茶)である。しかし,簡便性や利便性が重要視されている昨今においては,こうしたスタイルで飲む習慣が失われつつあり,ペットボトルや紙パック,缶を用いた清涼飲用水としての緑茶(ドリンク緑茶)が,近年飛躍的に生産量や消費量を伸ばしている。静岡県は茶の代表的な生産地であるが,本県においても例外とはいえない。そこで本研究では,緑茶の飲用形態に着目し,若者の緑茶の喫茶状況についてアンケート調査を行なった。若者の緑茶に対する意識や利用状況などを明らかにすることにより,緑茶に関する食育教材を開発し,日本の伝統的な食文化である緑茶の伝承を目指す一助とする。
    方法 静岡大学教育学部学制2~4年生306名(男子124名,女子182名)を対象に,自記式質問紙法で行なった。質問紙は授業中に配布し,その場で記入してもらいただちに回収した。調査時期は2010年4月~6月である。
    結果 本来の緑茶の飲み方である急須で入れる緑茶(リーフ緑茶)よりも,ペットボトルの緑茶(ドリンク緑茶)の方が多く飲用されていることが明らかとなった。居住形態別に見た場合,下宿生だけでなく,自宅生においてもドリンク緑茶の消費が増加していたことから,本来の緑茶の淹れ方に触れる機会が減少してきていることが示唆された。
  • 大学生の年中行事・通過儀礼の認知と経験
    土岐 信子, 山内 睦子
    セッションID: 3P-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    <目的>
     大学生の年中行事・通過儀礼の認知と経験に関する調査。
    <方法>
     平成21・22年度、日本調理科学会特別研究行事食・儀礼食調査に参画し、指定の内容にてアンケート調査を実施し、データベース化した。栄養士養成課程の短期大学部生89名を対象とした。
    <結果・考察>
     対象者の分析結果は以下の様であり、年中行事、通過儀礼共に3つに分けられた。
    1.認知、経験が共に高かった年中行事は正月、節分、上巳、土用の丑、冬至、クリスマス、大晦日であり、通過儀礼は誕生日、七五三、葬儀であった。数値は共に80%を上回った。
    2.認知、経験が共に低い年中行事は重陽、春祭り、秋祭りであり、通過儀礼はお七夜、百日祝いであった。数値は共に認知が30%代、経験は20%代以下であった。その中でも重陽、お七夜の経験は8%と本調査の中で最も低い数値を示した。
    3.認知が高く、経験が低い年中行事は人日、春の彼岸、お月見、秋の彼岸であり、通過儀礼は出産祝い、婚礼、長寿であった。数値は共に認知は80%を上回ったが、経験はそれを大幅に下回った。
    今回の結果、若年者における年中行事と通過儀礼に対する教育の必要性を痛感した。今後、人生や生活などを心身共により豊かにしてくれる行事の火を消さない為に今、教育現場において、行事に欠くことの出来ない行事食を通して、食文化を伝承していく事が責務であると考える。    
  • 佐藤 幸子, 小築 康弘
    セッションID: 3P-41
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的】平成17年に食育基本法が施行され、「食育」に関する様々な取り組みが実施されているが、教育現場で中心となるカリキュラムは、まだ整備されていないのが現状である。そこで、本学の立地を生かし、近隣の東京都卸売市場内外散策や芝地区内のそば打ち職人さんと連携した調理体験実習など食環境および食文化を視点とした体験学習を中心としたカリキュラムを展開し、履修学生の食意識について考察し、「食育カリキュラム」の開発を目指した。
    方法】平成22年度授業科目として「食育演習」を新設し、本学食物栄養科の1年生に選択授業とし開講した。「食育演習」は体験授業を中心として、 (1)食環境調査:東京都築地市場内外散策・合羽橋道具街散策・芝浦食肉市場「お肉の教室」、(2)調理体験講座:手打ち蕎麦・江戸前握り寿司調理実習体験、(3)食文化体験:日本料理様式体験の内容とした。授業運営は、不定期(土・日曜日、夏季休校日)に設定し、指導過程は午前・午後を通して実施した。各プログラム構成は、「事前調査(講義・デモンストレーション)→食環境調査・調理体験実習→まとめ(かわら版の製作)」とし、授業を受けた学生の立場から授業を振り返る場として「かわら版」の製作をさせた。
    結果】「かわら版」は、自己評価および相互評価から学生個人の考えをまとめることができ、「食」の楽しさだけではなく、人とのつながりなどの大切さに気付き、食環境を意識した食生活の意識向上を可能とした。「食育演習」は、自己評価による目的意識を是正した食育カリキュラムとして評価することができた。
  • 石原 領子
    セッションID: 3P-42
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】青年期の食生活は、社会環境の変化や外食産業の発達により乱れ、肥満等の生活習慣病の若年化が問題になってきている。中高年期には、生活習慣病予防やそのための行動変容や継続が困難となる。従って、青年期の栄養教育は、今後のQOLに関心を向ける重要な機会である。今回、新入生の入学前の食生活について意識調査を行い、食生活の把握と栄養教育を行う上での課題を検討した。【方法】2010年4月~5月に協力が得られた3(E、Z、R)学科102名に、入学前の食生活、食生活・味覚・生活に対する意識についての質問調査を行った。【結果】BMIは痩せ16.7%、標準79.4%、肥満3.9%であった。入学後、下宿生が多いのはRの約23%であった。食育基本法の実施を知っている者は約2割と低かった。食生活については、主菜、副菜、主食はきちんと摂る、しっかり噛んで食べる、腹8分目、食事つくりに興味を持つ等の項目で、Eは他学科より「少し、又はとても意識している」割合が有意に高かく、次いでR、Zの順となった。味覚についても同様に、味に興味を示す、料理等季節感を感じる、薄味にする等の項目でEは他より意識が高く、R、Zの順であった。生活については、肥え過ぎ、やせ過ぎがないように、運動を大切に、健康な食生活を送る等の項目でRの意識は他より有意に高く、E、Zの順となった。【まとめ】食生活等に対する意識が高いEには、この現状を維持していくための栄養教育が考えられる。次に、生活に対する意識が高いRは、他の食生活・味覚に対しても意識を高めていくことや、下宿生が多いため欠食や偏食にならない教育が重要である。それらの意識が低いZでは、生活習慣病予防のためにも自身の食生活に興味を示し、意識を高める教育が必要である。
  • 土海 一美
    セッションID: 3P-43
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、食環境の変化や不規則な生活リズムにより大学生の食習慣の乱れが問題視されている。近い将来親となる大学生の食習慣の乱れは、本人のみでなく次世代へ様々な影響を与える可能性がある。そこで本研究では、食事バランスガイドを用い大学生の食生活の実態ならびに食事内容を把握するとともに、食育教材としての「食事バランスガイド」の認知状況やそれらを用いた食育の手法を検討するための基礎資料を得ることを目的に調査を行った。  【方法】食事バランスガイドを使った自記入式の留め置き調査を平成22年6月の任意の3日間、O県内在住の大学生98名を対象とし、中国四国農政局の支援協力によって実施した。その後、8月に同対象者に食事バランスガイドの利用度等食習慣の意識調査を行った。  【結果及び考察】食事バランスガイドにより摂取サービング数を調査し、食事摂取状況やバランスについて考察を行った。バランスよく食事を摂ってコマが回った人は、ごくわずかで、主食以外の区分すべてで不足傾向にあり、特に果物、牛乳・乳製品が不足していた。食習慣については欠食の有無や欠食の理由、野菜の摂取状況や、脂質・塩分・間食の摂取コントロールの意識の有無、食生活改善意欲などの項目について検討した。食生活の改善意欲のある者の割合は約9割と高い結果であった。また、そのうち、最初の食事調査後、食事バランスガイドを利用し食生活の改善をしている者の割合は、約6割であった。食事バランスガイドの実践意欲があり、食生活の改善に向けての動機付けやその実践に有効な手段であることが示唆された。今後は、食事バランスガイドの利用方法を明らかにし、大学生の食習慣の改善について検討したい。
  • 第1報 五味識別能を中心に
    篠原 久枝, 田中 紀子, 奥田 豊子, 康 薔薇, 東根 裕子, 浅野 恭代, 濱口 郁枝, 土田 幸恵
    セッションID: 3P-44
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年の食生活の変化に伴い,若年者においても味覚の変化や味覚障害が増加していることが報告されており,味覚教育の重要性が唱えられている.そこで,本研究では大学生の味覚の実態と問題点を明らかにするために,味覚検査を行い,食習慣,食物摂取頻度,心身の状態との関連性について検討した. 【方法】2010年5月~7月,関西地区の大学及び専門学校の食物栄養系学科に在籍する学生323名(男子54,女子269)を対象として,全口腔法による五基本味の識別検査と天然だしの官能評価を行った.同時に食生活に関する質問紙調査を行い,性差,識別能から検討した.本研究の実施に当たっては宮崎大学教育文化学部研究倫理委員会の承認を受けた.
    【結果】五基本味の識別能は,平均正答数は男子3.11±1.30,女子2.97±1.4であり,性差は見られなかった.各味の正答率は,「酸味」が最も高く(83.0%),「うま味」が最も低く(35.9%),男子では「うま味」を「苦味」と誤答した者が多く見られた.「甘味」の正答率のみ性差がみられ,男子が有意に高値であった(男子72.2%,女子52.2%).食生活との関連では,正答数高群において,「すまし汁の摂取頻度」や「供卓温度・盛り付けの配慮」が有意に高値であった.一方,「塩味誤答群」と「うま味誤答群」では「インスタント食品」や「ファストフード」の利用が多く見られた.さらに「塩味誤答群」と「苦味誤答群」では「運動やスポーツをしても楽しい気持ちにならない」が高値であった.
    【考察】五味識別能を高めるためには,望ましい食生活の指導だけでなく,心身の健康度を高める教育も必要であることが示唆された.
  • 第2報 だしの嗜好性を中心に
    東根 裕子, 篠原 久枝, 奥田  豊子, 田中  紀子, 康   薔薇, 浅野  恭代, 濱口  郁枝, 土田 幸恵
    セッションID: 3P-45
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】五感をはぐくむ食教育には,「だし汁(うま味)の味覚の伝承」や「日本の食文化の伝承」が必要と考えられる.そこで,本研究では大学生を対象にだしの嗜好性に関しての官能評価を行い,食習慣,食物摂取頻度,心身の状態との関連性について検討した.
    【方法】対象者,質問紙調査については第1報と同様である.だしは,昆布,かつお,いりこ,昆布とかつおの混合,グルタミン酸ナトリウムの5種類を用いた.1種類のだしに対し,甘味の強さや味の好みなど10項目について,評点法による官能評価を行い,評価尺度は5段階とした.
    【結果】だし5種類の味の好みは,昆布とかつおの混合だしが最も好まれ(3.36±1.21),グルタミン酸ナトリウムが好まれなかった(1.77±0.98).味の好みに性差は認められなかった.かつおは酸味の強さ,混合だしはうま味の強さ,後味の良さ,こくの強さ,いりこは生臭みが他の4種のだしと比較して強かった.だしの味の嗜好性には,後味の良さ,うま味の強さ,匂いの良さはプラス要因であり,苦味や酸味の強さはマイナス要因であった.だしの味の好みを平均値で2群にわけ,質問項目との関連を見たところ,いりこの味の好みが強い人は,うま味調味料を使わない,食事をいつもよく味わって食べる,勉強や仕事ができる体力があると答えた割合が多かった.また,天然だしを使用する頻度との関連では,頻度が高い人は,食事をよく噛んで食べる,野菜の煮物をよく食べる,和食が好き,健康的な食生活を送れる自信があると答えた割合が高値であった.
    【考察】天然だしの好みや使用頻度が和食への嗜好,健康的な食生活への関与,料理への興味などに影響していることが示唆された.
  • 第3報 味覚教育への提言
    濱口 郁枝, 篠原 久枝, 奥田 豊子, 田中 紀子, 康 薔薇, 東根 裕子, 浅野 恭代, 土田 幸恵
    セッションID: 3P-46
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】五感の一つである味覚は,ヒトの食生活に深く関わっており,生活の質の向上を目指すためには,欠かすことのできない感覚である.第1報では,五味識別能を中心に,第2報では,だしの嗜好性を中心とした観点から,味覚と食生活についての検討をすすめてきた.そこで本研究では,食べ物を味わい,薄味を重視するといった味覚の行動に影響を及ぼす諸要因について検討し,大学生に対する味覚教育を実施する上での方向性を提言することを目的とした.
    【方法】対象者,五基本味の識別検査,だしの官能評価,質問紙調査については,第1報,第2報と同様である.
    【結果】質問紙調査の回答に対して因子分析を施し,男女間の下位尺度得点の比較を行った結果,ファストフードへの抑制(p<0.01),咀嚼意識(p<0.05)は,女子の得点が有意に高かった.味覚の行動に影響を及ぼす諸要因について,因果モデルの分析を行った結果(女子),天然だしの好みは,和食への嗜好性(0.29)を高め,薄味重視(0.36)へと関連があった.さらに,天然だしの好みは,心身の健康を促進し(0.25),ファストフードへの抑制が高まり(0.18),薄味(0.18)・味わい(0.16)を重視することを促進した.また,和食への嗜好性は,咀嚼意識を高め(0.14),スポーツ志向を促進し(0.32),五味の識別検査結果に関連が認められた(0.16).
    【考察】大学生に対する味覚教育として,各種材料からうま味成分を効率よく抽出するコツを習得し,おいしく「だし」を味わい,和食嗜好を高めることが,味覚教育として重要であることが示唆された.伝統ある食文化を再認識し,継承していくことが,味覚教育の原点であるといえる.
  • 井上 美紀
    セッションID: 3P-47
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]洗剤使用量の低減など、環境にやさしい家庭洗濯を目的に様々な洗濯用補助具が市販されている。これまで本研究では、洗濯用補助具についての洗浄効果、被洗物への影響について把握することを目的として実験を行ってきた。本報告では、前報までとは異なる洗濯用補助具を取り上げて比較した。
    [方法]洗濯用補助具として2種(洗濯ボールC:花びら型ゴム製ボール、洗濯ボールD:スポンジ製ボール)とし、いずれも洗濯ボール中に炭などを充填していないものを使用した。洗浄用汚染布には湿式人工汚染布(洗濯科学協会製)を用いた。洗浄条件は、洗濯ボールのみ、洗濯ボールと洗剤の併用(弱アルカリ性粉末合成洗剤、標準使用濃度以下で使用)、通常洗濯(ボール未使用、洗剤標準使用濃度)とし、家庭用攪拌式洗濯機での通常サイクルで繰り返し洗浄を行った。また、CもDも複数のボールを同時に入れて使用する(Cは4個、Dは5個)ことから、投入するボール数を変えて比較した。洗浄効率は洗浄前後の表面反射率から求めた。さらに、被洗物への影響を把握するためにMA値や寸法変化率を測定した。
    [結果]通常洗濯と比べると、洗剤と洗濯ボールCまたはDを併用した場合、ボール併用時の使用洗剤量が標準使用濃度の半量でも、洗浄効率は通常洗濯の場合よりも高いか同程度の値を示した。投入ボール数による洗浄効率では、CもDも企業指定のボール数を使用した場合よりも1個減らした場合には洗浄効率が10%以上低下した。またボール使用有無での寸法変化に大きな差は見られなかったが、MA値では、前報で用いた洗濯ボール(容器が硬い球状で洗濯時に1個で使用)より、今回用いた洗濯ボールCやDの方が高い値を示した。
  • 川邊 淳子, 中村 美奈子
    セッションID: 3P-48
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>衣料品は着用・洗濯を繰り返し行っていくことで,次第に柔軟性や肌触りの良さが失われていくが,柔軟仕上げ剤はそれらを回復する上で重要な役割を果たしている。最近では,吸水性能が改良されたものや濃縮型など,様々なタイプのものが発売されているが,柔軟仕上げ剤の本来有する様々な働きや使用条件の変化による効果の違いについての検討は少ない。一方,高等学校家庭科衣生活分野においては,仕上げ剤の一つとして柔軟仕上げ剤を学習するが,最近注目されている抗菌性や効果的な使用方法についてまでは取り上げられていない。そこで本研究では,柔軟仕上げ剤の働きを知る実験教材開発のために,身近な道具などを用いた簡易な方法で基礎的実験を行い,現在市販されている柔軟仕上げ剤の特徴を明らかにし,実験教材化に向けた諸条件設定のための知見を得ることを目的とする。
    <方法>柔軟仕上げ剤としては5社12種類,試験布としては色染社の綿金巾,静電気測定には静電気チェッカー(Z-201,HOZAN製),抗菌実験にはDDチェッカー「生研」(一般細菌用)を用いた。標準濃度およびその1/2倍と2倍の3種類の濃度で,通常通りの柔軟処理をし比較した。吸水実験に関しては簡易型のバイレック法を用いた。
    <結果>吸水実験に関しては,柔軟未処理布,1/2倍濃度,標準濃度,2倍濃度の順で,吸水性が低下する傾向が得られたが,15分吸水後の未処理布と2倍濃度との差は,柔軟仕上げ剤の種類によって,最大で39mm,最小で1mmとなった。また,帯電防止実験においても,未処理布と処理布の差が明瞭に現れた。手指由来の菌による抗菌実験においては,処理布を用いた実験ではばらつきが見られ,原液を滴下する方法が有効であることが示唆された。
  • 仙台浴衣と仙台手拭について
    佐々木 栄一, 川又 勝子
    セッションID: 3P-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    [目的]かつて仙台地方で生産され、東北・北海道に広く販売された型染め製品として浴衣と手拭があった。これらは、当時の大量染色法であった注染により大正期から生産されたものである。調査対象としている染色工場に染め見本などの染色品として現存しているものはわずかであるが、注染型紙は多数保存されており、これまでに573枚の調査とそれらの文様の電子保存を行った。今回はさらに第3型入箱より注染用型紙77枚について調査を行った結果について報告する。
    [方法]方法は従来通り行った。すなわち1)型紙の調査、2)型紙の電子保存である。破損・欠損している型紙でスキャニングが困難なものについては、紙資料用補修テープを用いて裏面から型紙の補強と固定を行った後に電子保存を行った。
    [結果]1)破損・欠損箇所のある型紙は77枚中44枚と約6割を占めた。前報までに調査した150枚の型紙と合わせると、第3型入れ箱の型紙破損・欠損率は44.9%となる。また、型紙が脆化して今後さらに劣化が進むと考えられた8枚の型紙については、紙資料補修用テープを用いて文様の修復と型紙の補強を行った。用途別分類すると名入れ型紙が37枚、名入れ以外の型紙が40枚であった。名入れ以外では、織地紋を表現したような型紙もみられた。これらの型紙は文様部比較的彫幅が大きいことから、男物浴衣用の型紙と推測される。2)スキャニング画像は汎用ソフトで繋ぎ合わせ、破損・欠損箇所の修復とゆがみ除去を行い、その一部についてインクジェットプリンタによる布製染め見本の作成を行った。
    なお、本研究は平成21~22年度文部科学省科学研究費補助金(若手研究(B)課題番号:21700720)の補助を受けて行った。
  • 佐々木 麻紀子, 藤居 眞理子
    セッションID: 3P-50
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 近年、迫りくる自然資源の枯渇に対応する社会的経済的展望として循環を基調とした社会経済のシステムへの転換が求められ、資源の大量生産・消費および廃棄の抑制による環境負荷の低減を目指した取組を進めることが必要とされている。製造の際に発生する副産物の利用法や資源の有効利用と付加価値化への取り組みも重要な課題となっている。そこで本研究は、植物全体を有効利用するという観点から、通常廃棄される果皮を素材に用いて天然染料としての効果的な色素抽出条件ならびに各種繊維に対する染色性、媒染剤による効果などを検討しながら、その染色特性について検討することを目的とした。
    方法 1.試料として染材はグレープフルーツおよびレモン果皮、使用布はJIS染色堅ろう度試験用多繊交織布及び光沢を抑えた絹縮緬風紬とした。2.抽出は果皮の10倍量の水に染材となる果皮を加え80℃で30分間加熱抽出し抽出液とした。染色は浴比1:40に調整し80℃で30分間の加熱染色をした。染色後、酢酸アルミ、硫酸鉄、酢酸銅、塩化錫、酢酸クロムの5種類をそれぞれ10%owf用い、媒染液に常温で30分間浸漬した。媒染の後水洗いを行い低温でアイロン乾燥した。3.染色の状態を目視および日本電色(株)ColorMeterZE2000により測色を行い確認した。
    結果 グレープフルーツおよびレモンの果皮による染色を行った結果、媒染剤によって色彩は変化するが、全体的に黄色系のアースカラーの色調に染色された。グレープフルーツ果皮による多繊交織布での染色の結果、羊毛が最も発色良く染めることができ、絹、レーヨンも淡い色ながら染色された。レモン果皮においては媒染剤別にみるとアルミ媒染では淡いクリーム色、銅媒染ではモスグリーン系の色に、鉄媒染では黒色系に染色された。
  • 片渕 奈美香, 谷田貝 麻美子
    セッションID: 3P-51
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 博物館において学芸員が自ら染織品の材質分析を行い,保存管理のために最低限必要な情報を得るためには,必ずしも高度な機器分析を用いない実験方法が望まれる.本研究では,比較的簡便な方法を組み合わせてフローチャートを作成し,その手順に従って実際に古裂に用いられた染料の分析を行うことにより,有用性の検討を行った.
    方法 フローチャートは,(1)目視による色調の分類,(2)反射スペクトルの測定,(3)蛍光の有無(ブラックライト下での観察),(4)各種溶媒による抽出試験,(5-a)部属の判定試験(合成染料の場合),(5-b)抽出液の紫外可視吸収スペクトルの測定(天然染料の場合),の6つの項目から成る.試料布は,色調や文様の特徴から江戸時代のものと推測される古裂19点(型染,絞り,格子など),明治時代のものと推測される古裂21点(型友禅)で,いずれも無地ではなく模様が施されているものを使用した.(4)および(5)の実験には,色調の異なる部分ごとに採取した試験片を用いた.天然染料の場合は,既知試料の結果と比較し同定を試みた.
    結果 (4)の抽出試験は,本来JIS法による合成染料の部属鑑別のため予備試験であるが,抽出の有無・程度や抽出液の色調から天然染料または合成染料かの選別がある程度可能であった.合成染料と推定されたものは部属ごとの判定試験の結果,赤系の酸性染料や紫系の塩基性染料が見出された.天然染料と推定されたものは,複数の溶媒により得られた極大吸収波長と他の項目の実験結果から,紫根,藍,蘇芳,紅花などが見出された.以上のように,適切な保存管理のために重要な情報が得られ,本法の有用性が示唆されたため,さらに博物館の収蔵品への適用をめざし試料の微量化を試みた.
  • 小林 優子, 鈴木 恒夫
    セッションID: 3P-52
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 植物染色布の退色や劣化の原因に,光による色素や繊維および媒染金属の酸化が考えられる.特に紫外線による化学作用は大きい.そこで,植物染色布に及ぼす紫外線の影響について染色布の透過率,反射率から検討した.
    方法 染料は,タマネギ外皮粉末(ケルセチン含有)と,アントシアニンのアグリコンであるペラルゴニジンを含有する赤ダイコン液体染料(田中直染料店)を使用した.ケルセチンは,紫外線遮蔽性を持つことから食品の酸化防止剤として検討[1]されており,アントシアニンは抗酸化性を示すことが知られている.赤ダイコン液体染料は使用方法(後媒染染色)に従い染色し,タマネギ外皮粉末は煮沸抽出で得た液を用いて先媒染染色をおこなった.試験布は絹布(日本規格協会),媒染金属はCu とAlを用いた.染色布は,紫外可視分光光度計(SHIMADZU UV-2400)に60φ積分球を接続し,透過率及び反射率を測定した.UV防御指数としてUPF[2]を算出した.
    結果 UPFは,原布3.2となり,タマネギ外皮500%o.w.f.の染色布が21.7と高い値となった.高濃度になるにつれ300-400nm,UVA領域の透過率が低下した.先媒染をしたタマネギ外皮染色布は,未媒染と比較し色素の染着量が増え,紫外領域よりも可視領域における透過率,反射率の低下がみられた.赤ダイコン染料は,濃度100%o.w.f.染色布のUPFが13.9であった.2種の染料は,媒染処理をせず色素のみの染色でも紫外領域の透過率および反射率が低下したことから,色素による紫外線吸収がなされ,染色布の紫外線遮蔽性がみられたと考えられた.本実験は,(財)長野県科学振興会の助成を受け実施しました.
    〈文献〉[1]大勝 靖一他:フラボノイドの化学構造と酸化防止機能の関係,Journal of the Japan Petroleum Institute 53(4) 213-221,2010 [2]ISO 17166:1999 Erythema reference action spectrum and standard erythema dose
  • 福井 典代, 岩川 真澄
    セッションID: 3P-53
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 JISにより既製服のサイズが標準化され明確になっている.その一方でファッションの多様化により,一つのブランドでの販売対象が狭くなり,JIS以外のサイズ表示も増えている.特にフリーサイズはJISに記載がなく,具体的な大きさがわからないという問題性をもつ.本研究では,衣類の実態調査を行い,フリーサイズの大きさを明らかにすることを目的とする.
    方法 (1)通信販売会社のホームページからフリーサイズの女性用衣類を抽出した.本研究では,女性用衣類の上半身用と全身用を対象とした.(2)服種ごとに整理し,さらに編物(ニット、カットソー)と織物に分類した.(3)サイズを調節する仕組みの有無を調べた.(4)フリーサイズの衣類のサイズ表記の種類,バストのヌード寸法,仕上げ寸法を明らかにした.(5)フリーサイズのバストの仕上げ寸法を服種ごとにグラフ化し,Mサイズや9号サイズと比較分析した.
    結果 フリーサイズの衣類では,表記の方法として大きさの基準があるものとないものの2つに大別された.本研究で抽出された衣類は,9ARやMサイズを基準としたフリーサイズが大部分を占め、337点中301点であった.バストのヌード寸法は,Mサイズの範囲(79~87cm)が最も多く,181点中164点であった.バストの仕上げ寸法の平均値は,ワンピースでは2.2cm,カーディガンでは15.1cm,プルオーバーでは4.2cm,ブラウスでは0.3cm,9ARやMサイズよりフリーサイズの方が大きく,コートのみフリーサイズの方が4.6cm小さい結果となった.フリーサイズの衣類は,伸縮性のあるニットで作られていたり,ウエストにゴムが入っていたりして,サイズを調節できる仕組みがあるものも見られた.
  • 佐藤 真理子, 齋藤 紘野, 田村 照子
    セッションID: 3P-54
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】日本舞踊の伝統的所作である「振(ふり)」は,日本舞踊特有の身体動作であり,舞踊表現の基本的要素として伝承されてきた.本研究では,「振」のポーズと動きにおいて,男舞と女舞の所作の違いが,和服と人体の関係性にいかなる影響を及ぼすか,明らかにすることを目的とした.
    【方法】被験者は現代日本舞踊T流師範を持つ22歳の女性2名.着装条件は通常の稽古時と同様,浴衣・半幅帯・足袋・下着(キャミソール・スパッツ・和装用ブラジャー・ショーツ).測定動作は,(1)「束(そく)」;両足を揃えてまっすぐに立つ,(2)「座り」;片膝を付いて座る,(3)「入れ込み」;片足の爪先の前に反対の足を入れ込んで置く,(4)「姿見」;袖を胸に当て自分の姿を見る,(5)「振り返り」;片方の肩を引いて振り返る,(6)「かけ回り」;片足を軸足にかけるようにして身体の向きを変える,(7)「すり足」;足をするように前に出し歩く,の7種の「振」とし,男舞と女舞で踊り分けた.測定項目は,(1)~(5)の静止時の衣服圧と重心動揺,及び(1)~(7)の動作時の筋電とした.
    【結果】重心動揺では,「姿見」において女舞の総軌跡長の値が大であった.女舞は,男舞に比べ腰を落とし膝を曲げるため,姿勢の保持が難しいと考えられる.筋放電量では,男舞で前脛骨筋と大腿直筋,女舞で腓腹筋と大腿二頭筋の値が大であり,女舞で脚部の背面の筋をより使う傾向が明らかとなった.衣服圧では,女舞の所作において,身体をねじる,腰を落とす等,女らしさを強調する曲線的な動きをとるため,総じて値の大きい傾向が示された.
  • 永山 恵理, 甲斐 今日子
    セッションID: 3P-55
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     前回、若年女性を対象にファッション性の高い被服の着用状況とそれらによる身体への負担について調査を実施し、若年女性の多くがファッション性の高い被服によって身体に何らかの負担を感じていることが明らかとなった。そして、その着用は高校生から始まっていることが指摘された。そこで、ファッション性の高い被服の生体への負担がどこから始まるのか探るために、高校生を対象として衣生活に関する調査を実施することとした。
    【方法】
     佐賀県に住む女子高校生を対象とし、無記名自記式によるアンケート調査を実施した。調査期間は、平成21年12月~平成22年4月である。
     調査内容はファッション性の高い被服より寒い日の薄着とヒールのある靴に注目し、その着用実態及び被服選択など衣生活に関する項目とした。回収率は93.6%、有効回答は699である。集計及び統計的検定には統計解析ツールPASW Statistics17を用いた。
    【結果】
     高校生の身体的特徴について、回答者の体型はやせ気味の傾向にあるにもかかわらず、そのほとんどに痩身願望がみられた。また、回答者の6割以上の者が冷え性であると感じ、夏季にまで冷えを感じている者もいた。衣生活の様子について、高校生はすでに身体に負担を感じながら見た目を重視した衣生活を送っていることが明らかとなった。さらに、その身体に感じている負担は日々の衣生活に起因していることが明らかとなった。しかし、流行への関心は小学校低学年から持ち始め、ヒールのある靴の着用時期とほぼ同時期であった。したがって、できるだけ早期から学校教育や家庭科の授業で正しい衣服の着方について学習すべきであるが、今の高校生は被服購入時に家庭科の授業で学習したことを参考にしている者はほとんどいないという結果が得られた。
  • ―「プレママのための手仕事カフェ」の実践から―
    村田 愛, 川邊 淳子
    セッションID: 3P-56
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 今日、各自治体や医療・福祉施設等において、子育てを支援する様々な対策が取られている。子宮内で育つ胎児を日々感じる妊娠期は、最も重要な親準備の時期だと考えられ、妊娠期からの何らかの支援が必要だと考えられる。そこで本研究は、手縫いとカフェ的機能を取り入れた妊婦対象子育て支援講座を企画・実施し、子育て支援におけるものづくり体験が及ぼす影響について検討することを目的とした。
    方法 北海道A市在住の妊婦を対象に、2009年10~12月に、公民館にて講座「プレママのための手仕事カフェ」を計6回実施し、事前・事後アンケートの分析及び参加者の発話に着目して検討した。参加者は各回5~10名であった。裁縫技能については、小・中・高等学校で取り扱う基礎的・基本的な裁縫技能と素材を段階的に扱い、講座を通して習得できるよう配慮した。また、ハギレの活用により一人一人の愛情を作品にうつす工夫を取り入れ、製作品は初心者でも簡単にできる母子手帳ケース、おもちゃ等6点を設定した。さらに、講座中盤にカフェの時間として15分程度の相互交流の場を設けた。
    結果 参加者は講座で扱った37.0%の技能について「できるようになった」と自己評価し、数回にわたり扱った技能では、評価の上昇、下降、停滞(「まだ難しい」)という3つの推移がみられた。さらに、自由記述においては、ものづくりへの意識及びイメージの変化や今後への意欲喚起に関する記述がみられた。また、カフェの時間の話題は妊娠にかかわることが最も多く、初産婦・経産婦双方に交流による特徴的な影響がみられた。妊娠期に胎児のための小物製作をものづくり体験として行うことは、学校教育とは異なる意義があることが示唆された。
  • ウエスト位置の把握について
    岸 なつき, 長塚 こずえ
    セッションID: 3P-57
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 個人の体に合わせた衣服を製作する場合,正しく身体各部の計測を行うことが重要である.近年、衣服は既成服を購入して賄うことが一般化しているため,個人が自分(または他者)の身体に合わせた衣服を製作することは家庭内ではほとんどおこなわれなくなってきている.大学において服飾を専攻する学生たちについても,洋裁経験がなく授業で初めて衣服を製作するという者がめずらしくはない.身体計測に関しては,学校教育の健康診断等で被計測者になった経験はあっても,衣服を製作することを目的として他者の身体を計測した又は自らが計測された経験があるという者は稀である.個人の衣服を製作する授業において、計測が正しくできていないことによる大幅なパターン修正が昨今特に目立ってきている。学生に身体計測をさせる際にどのような点に留意を払えばよいか、胴部原型製作の過程から探る。 方法 シーシングによる胴部原型(文化式新原型)の製作及び試着・補正 1)身体各部(バスト、ウエスト、背丈、袖丈)計測について座学指導後、グループをつくり身体各部計測を各自でおこなう 2)1)を元に胴部原型(成人女子用文化式身頃原型)製図をおこなう 3)裁断・印しつけ 4)仮縫い 5)試着・補正 6)補正部分について胴部原型製図の修正をおこなう 調査対象者:東京家政大学服飾美術学科1年生79名 結果 対象者79名中60名に身体計測時の誤りが要因と思われる補正個所がみられた。特にウエスト位置(背丈長)について43名が補正をおこなった。補正の内容としては背丈が長め(ウエスト位置が本来よりも下位置)に設定されていたものが多く、背丈計測時のウエスト位置の把握が曖昧になっている傾向が伺えた。
  • 竹下 友子, 甲斐 今日子
    セッションID: 3P-58
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】従来使用してきた布おむつから,近年急激に紙おむつへと移行し,乳幼児の発達や環境問題などが議論されている。そこで,本研究では乳幼児のおむつ使用の実態を把握し、1988年、1992年のおむつに関する実態調査研究との比較を行う。また、おむつの種類別に基礎実験、モニターによる着用調査を行い、おむつやおむつカバーの着用感や管理について、衛生面、経済面、環境面から検討を加えるものとする。 【方法】調査対象は乳幼児の保護者である。調査方法は自記式質問紙法とし、保育所・保育園等に依頼し後日回収または郵送による回収とした。調査内容は, 基本的属性, おむつの使用状況, おむつに対する意見・不満・要望,環境問題に関する保護者の意識とした。実験対象は,紙おむつ4種,布おむつ3種,布のおむつカバー4種で、測定内容は通気性,摩擦感,尿戻り量,保水量であり,実験結果より性能の良いおむつを乳幼児に着用してもらい,その母親に子どもの着用感,漏れなど11項目について評価を依頼した。 【結果】今回の調査では紙おむつのみの使用が86.0%と最も多く、時間によるおむつの交換が明らかとなった。また、紙おむつが子どもにとって良いものであって欲しいと思いながらも低価格のおむつを求め、ゴミの増大につながると考えながらも外出先で処理したいという様に、考え方の矛盾点も認められた。通気性実験では,測定不能の紙おむつが4種中3種あった。布おむつでは,輪型のドビー織のおむつが最も通気性があることが明らかとなったが,摩擦感,尿戻り量,保水量において紙おむつは布おむつに比較して良好な結果が得られた。モニター調査では保水量が最も低いドビー織の輪型が高評価であった。
  • 嶋根 歌子, 中村 明日香
    セッションID: 3P-59
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的日常生活の中で、私たちは荷物を肩にかけたり、手に持ったりして物を運んでいる。無意識に毎日繰り返し行われる肩部への負荷方式は多様であるが、若い女性がどのような形のバッグを用いているのか、その重量と身体への負担はどの程度であるかを明らかにしたいと考えた。そこで、女子大学生を対象として、通学に用いるバックの形や選択理由、携行品及び身体への意識を調査するとともに、その荷重および肩の傾斜角度を計測し、身体への影響について検討した。
    方法大学1年生~4年生の人文学部生68名、家政学部生198名を対象に、2010年7月に質問紙法及び実測調査を行った。質問項目は、当日使用しているバッグの形、サブバッグの有無、携行品、バッグを選んだ理由、身体への適合性、姿勢である。実測は、バッグの総重量、持ち手の長さ・幅・厚みおよび左右の肩傾斜角度である。
    結果(1)バッグは、肩掛け35%、リュックサック34%、大型の斜め掛け14%、小型の斜め掛け6%、大型バック6%、手提げ3%で、ほとんどが肩部に掛ける形式であった。サブバックは約60%が用い、肩掛けバックよりリュックサックでの使用者がやや多かった。(2)バックの選択理由は、沢山入る46%、使い易い22%、服に合う10%、デザイン・形が良い9%であった。(3)財布・携帯電話・ハンカチ・ティッシュ・ペンケース・飲み物を80%以上の人が携行していた。バックと携行品の総重量は、平均3.9Kg、最大9.8 Kg、最小0.8 Kgであった。2 Kg以上の重さになると、肩掛け、リュックサックの使用が顕著となった。(4)肩傾斜角度の平均は、右22.7度、左22.5度、左右差平均0.2度であった。
  • 柴田 優子, 布施谷 節子
    セッションID: 3P-60
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的
    同じ鞄であっても持ち方はいろいろあり、その持ち方はひとそれぞれである。しかし持ち方によって姿勢や重さの感じ方が異なるのではないかと考えられた。そこで、女子大学生の通学鞄に着目し、その実態を調査することとした。さらに持ち方やバッグの重さ、持ち手の長さがその鞄をもつ人の姿勢に与える影響を明らかにすることとした。
    方法
    1)通学用鞄に関するアンケート調査:調査対象者は、女子大学生149人である。
    2)鞄を持っての歩行実験:鞄は手持ちの長さが変えられるリクルートバックとし、被験者はスーツとシャツを着用した状態の女子大学生10人とした。手ぶらでの歩行と鞄の持ち方(肩にかける・肘にかける・手に提げる)や持ち手の長さ(3段階)を変えた5つのパターンでの鞄を持った歩行を調査した。その時の様相を体・衣服・カバンにマーカーつけて撮影し、歩行時の姿勢を捉えた。歩行後には聞き取り調査も行った。画像は、三次元動作分析を行った。
    結果
    1)持ち方では『一方の肩に掛ける』、『背負う』が多かった。荷物の量は64%が『多め』と回答し、重さを計測したところ、1kgから5kg以上までいることがわかった。比較的荷物の量が軽い人は、斜めがけの一本吊手のタイプが多いが、荷物が多い人では二本吊手の肩に掛けるタイプやリュックを持つ傾向があった。
    2)鞄を持った歩行時は、手ぶら時と比較すると左右のブレに違いがみられた。同じ持ち手の長さであっても鞄の持ち方によって左右へのブレに違いがみられた。さらに同じように肩にかけた持ち方であっても持ち手の長さによって姿勢の違いが明らかとなった。聞き取りの結果、『手に提げる』は「歩きにくい」や「重たい」との回答が多かった。『肩に掛ける』は「歩きやすい」との回答が多かったが、『持ち手の長さ』については個人差が見られた。
  • 右利き若年女性の指尖部形状把握を中心として
    福田 典子
    セッションID: 3P-61
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】衣服は個々の着衣基体に応じて、安全で快適な状態に適合させた設計であることが望ましい。人の様々な着用場面での心身の特性に合わせたものが、着心地がよく、着脱しやすいものに近づく着衣となるものと予想できる。指尖部は固体に接触し、情報を把握する(センサー機能)と同時に、固体に作用し、操作(把持機能・制御機能)を有する。本研究では、着脱等対象固体に対する操作と関連が高いつまみ握り操作快適性に関する身体情報を得るために、手の指尖部位に注目し、その形状特性を把握することを目的とした。 【方法】被験者は、目的を説明し協力を得られた健常で平均的な体型の右利きの平均年齢21.3歳の女性18名であった。計測項目は、左右の拇指および人指し指の指尖部長径・横径形状および握り内径の合計10箇所とした。計測姿勢は座位とし、第一指節中央点および第一指節線を基準点・基準線とした、計測機器はMitutoyoNo.12353498JIS1級ステンレス製を用い、一定の測定方法で実施した。計測者は計測前に一定以上の計測精度を高めた。測定環境は一定の気温23±3℃、湿度50±5%、照度650±50lxの範囲で行った。 【結果】指種別に比較すると、いずれの手種・部位においても測定値の平均は拇指が人指し指より大となった。部位別の平均値はいずれの指種・手種においても、長径が横径より大となった。手種別平均は、いずれの部位・指種においても、右手が左手より大となった。握り内径の手種別平均は、右手が左手より小となった。これらの結果より、若年女子指尖部形状に関して手種別、指種別、部位別の特性を把握することができた。さらに、握り内径についても、手種別の基礎的データを得ることができた。
  • 前田 亜紀子, 山崎 和彦, 栃原 裕
    セッションID: 3P-62
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】演者らは衣服内気候と快適性の関係について研究を行っている。今回、冬季における野外活動時に実験を行い、これまでの実験室実験で得られた知見と比較した。 【方法】被験者は健康な女子学生10名であった。2008年11~12月の計4日、間、全て午前中に実施した。天候は晴天ないし曇天であり、気温9~18℃、相対湿度37~61%であった。衣服条件は各自のものと統一したものに区分した。前者はスニーカー、ショーツ、ブラジャー、後者は靴下、長袖Tシャツ、スパッツ、外衣(透湿性素材による雨衣、上下セパレート型)、リュックであった。また被験者各自の判断による防寒用被服類の追加を許可した。作業は約90分間にわたる歩行(丘陵地、約3.2km/時)とした。胸部衣服内気候は連続的に測定した。また腋窩温、皮膚温(前額および手背)、主観申告値(全身温冷感、局所温冷感、発汗感、不快感、疲労感)は15分毎に測定した。 【結果と考察】被験者が選択した衣服は、実験当日の気温に対応する構成であり、寒さ感の愁訴はわずかであった。腋窩温は全実験を通じほぼ一定であった。衣服内温度と全身温冷感申告値の関係について、実験室実験で得た回帰式と比較すると、今回の野外実験においては個体差およびバラツキはあるものの、第1層ではほぼ一致し、第2層では衣服内温度は低めとなった。これは、腋窩温の測定による動作および風の影響があったためと推察する。なお、第1層における衣服内湿度と発汗感には高い相関が認められた。冬季の野外活動時における快適性評価に際し、胸部衣服内気候の測定は有用であることを確認した。
  • 佐々井 啓, 坂井 妙子, 好田 由佳, 山村 明子, 米今 由希子
    セッションID: 3P-63
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 ヴィクトリア朝女性雑誌を網羅的に研究して記事を分析し、文献情報を確立することを目指すとともに、これまで概説書等では充分に解明されていなかったヴィクトリア朝の女性の自立と身体観に関する実態を、演劇、キャラクター、アウトドアファッション、レジャースポーツ、ジャポニスムの観点から明らかにする。
    方法 19世紀に刊行されたイギリスの女性雑誌を調査し、それらの記事を分析して、服飾表現を通して女性の生き方を明らかにする。主として、「レディズ・コンパニオン」「クィーン」「ヤング・レディズ・ジャーナル」「マイラズ・ジャーナル」「スケッチ」「ガールズ・オウン・ペーパー」を取り上げる。
    結果 これ等の雑誌記事の分析により、次のことが明らかになった。1.当時の風俗である「新しい女性」をテーマとした劇評によって、当時の人々が女性の生き方や新しい意識についてのどのように考えていたのかが明らかとなった。2.ヨーロッパ19世紀に広く流行していた観相学の視座を応用して、衣服と着用者のキャラクター(心理、性格、本質)の関係をショールの意味論として構築できた。3.女性の戸外での活動に焦点をあて、アウトドアファッションから、女性の新しい身体観が明らかになった。4.レジャースポーツでは、女性たちのライフスタイルと身体表現の意識の変容について検討した結果、機能と表現という服飾の二面性と、女性が服飾に託す自意識の表出を分析した。5.当時の趣向であるジャポニスムを背景として、それまでの西洋の服飾とは根本的な構成が異なる日本の服飾が、それを纏う身体についても着用者に問うものであったことが明らかになった。
  • 堀 麻衣子, 太田 茜, 川久保 亮
    セッションID: 3P-64
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 アメリカにおける服飾史研究は既製服中心のものがほとんどであるが、それは婦人服もしくは紳士服に焦点をあてたものが多い。しかし当時発行されていた婦人雑誌の誌面には少なからず子供たちのための服が掲載されており、それらは雑誌の読者である母親たちが用意しており、主に手作りの服を着せていたことがわかる。そこで本研究では婦人雑誌に掲載された子供服について、家庭裁縫の記事を分析することで子供の衣生活を明らかにする。

    方法 資料にはアメリカで発行された婦人雑誌、The Ladies’ home journalを用いる。本研究では、20世紀初頭に掲載された子供用衣服に関する記事の分析を行う。

    結果 The Ladies’ home journalは「セブン・シスターズ」と呼ばれるアメリカで有名な婦人雑誌の一つであり、中産階級を対象に編集されている雑誌である。読者は女性、特に子供を持つ母親およびその予備軍である若い女性であり、内容は多岐にわたる。誌面に紹介されている子供服はほとんどが家庭裁縫を前提としているが、”THE GIRL WHO MAKES HER OWN CLOTHES”といった初めて自分の服を縫う少女のための記事も掲載されており、母親が娘にこの雑誌をかたわらに裁縫の手ほどきをしていたことがうかがえる。以上のことから、当時のアメリカ中産階級において婦人雑誌は子供の服についての情報を提供するだけでなく、教材としての役割をも担っていたと考えることができる。
  • 大枝 近子, 佐藤 悦子, 高岡 朋子
    セッションID: 3P-65
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    〈目的〉昨今,ファスト・ファッションと呼ばれる商品が市場に現れ,若者の関心・支持を得ている。最新の流行を低価格で入手でき,新しいファッションに気軽に挑戦できることが受け入れられている要因であるが,その背景には,若者の生活意識やライフスタイルの変化が考えられる。そこで,本研究では,若者がファスト・ファッションをどのように捉え,そしてそれは若者の生活意識とどのように関係しているかを明らかにする。
    〈方法〉大学生392名(男子125名,女子267名)を対象として2010年11月~12月に集合調査を行った。調査内容は(1)ファスト・ファッションに対するイメージ(18対の用語項目5段階評価),(2)ファスト・ファッションに関する質問項目(20項目5段階評価),(3)生活の価値意識(20項目5段階評価),(4)フェースシート(13項目)である。調査データは集計分析と因子分析等の統計解析を行った。さらに,ファスト・ファッションと生活の価値意識およびフェイスシートの購買行動とファスト・ファッションとの関係について検討した。
    〈結果〉(1)5段階評価の平均評点からファスト・ファッションに対するイメージは,「安価な」「気軽な」「親しみやすい」「流行の」に高く,「繊細な」「上品な」「個性的な」は低かった。さらに平均値をもとにSDプロフィールを作成し考察した。(2)因子分析を行った結果,ファスト・ファッションについては,「使い捨て」「コーディネイト」「流行」「品質」が,生活の価値意識については,「生活の高揚感」「エコ意識」「自分らしさの表現」他2因子が抽出された。以上の結果をふまえ,(3)ファスト・ファッションの4因子と生活意識の5因子との関係を分析したところ,いくつかの関連性が見られた。
  • 村上 かおり, 増田 智恵, 川口 順子
    セッションID: 3P-66
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 衣生活の形態も変化し,量・質・価格など個人の考え方に対応した「服を選ぶ方法」が提供されつつある。従来の百貨店,マ-ケット,専門店に加えて古着やネットによる衣服購入も利用されているなか,個々の衣生活を快適に過ごすためには,環境保護も踏まえた衣服選択情報を教育現場や消費社会に提供する必要がある。また消費社会に影響を大きく及ぼす学生たちの衣生活の現状を,被服教育に携わる立場として把握しておくことは,学生の被服に対する興味・関心を高めさせ,授業の理解を支援することにつながると考えられる。そこで本研究では,女子大生の衣服選択に関する意識と実態を調査し,その特徴を捉えることを目的とする。
    方法 関東,中部,関西,中国,四国地区の大学在籍の女子大生471名(平均19.2歳 SD=1.35)を対象に,質問紙調査を行い,分析を行った。質問はファッション情報源(10項目),衣服の購買行動(16項目),日常の衣生活行動(45項目),衣服購入時の意識(14項目)に関する内容で,5件法による回答とした。調査時期は平成22年4月~6月である。
    結果 ファッションに関心があると回答した学生は96%と非常に多かった。またその情報源について主成分分析した結果,店員,タレント・モデルの服装,ファッション雑誌,売り場の陳列商品などをほぼ均等に取り入れる総合性と,それらの情報に対する距離の大きさすなわち親近感の2成分が抽出された。TPOについては衣服購入時,着装時ともに考える人が多く,77%の人が考えていた。日常の衣生活行動について因子分析をした結果,積極性,流行性,他者評価性,経済性,個性の5つの因子が抽出された。また衣服購入時の意識について因子分析をした結果,品質,適合性,デザイン,流行の4因子が抽出された。
  • 織本 知英子, 熊谷 伸子, 深沢 太香子, 山本 嘉一郎, 栃原 裕
    セッションID: 3P-67
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 カンガとは、タンザニアやケニア等で主に女性に着用されている中央下部にジナ(メッセージ)が書かれた2枚1組の長方形のプリント布である。本研究では、民族服であるにも関わらず、現在もカンガが日常着として着用されていることに着目し、ガンガに対する着装意識を明らかにすることを目指した。
    方法 2009年10月から11月にかけて、ケニア東沿岸部モンバサ近郊およびマリンディ近郊に住む女性298名を対象に、質問紙を用いて集合調査法により調査を実施した。調査項目はカンガに対する着装意識やカンガの着用場面などである。これらの項目に対して4段階尺度で評価を求めた。
    結果 カンガの着用場面がカンガに対する着装イメージへ影響を及ぼしているというモデルの構築を、共分散構造解析を用いて試みた。つまり、潜在変数「カンガ」と着用場面の潜在変数「儀礼礼拝」「日常生活」間に多重指標のパスモデルを構築した。なお、「カンガ」においてはさらに、「文化象徴性」「意志伝達機能」「実利性」という3つの潜在変数を設定した。その適合度はGFI=0.904、AGFI=0.86、RMSEA=0.085であり、このモデルは受容出来る範囲内にあると判断した。カンガは儀礼礼拝よりも日常的にものとして受け入れられていた。実利性の値が0.86と高く、次いで文化象徴性、意思伝達性となっており、民族服でありながらカンガは使い勝手の良いものとして普段の生活に根付いている一側面がうかがえた。また、調査対象者を調査地域における主たる宗教であるキリスト教徒とイスラム教徒に分けて分析を行った結果、キリスト教徒、イスラム教徒共にカンガを儀礼的なものではなく日常的なものとしていた。文化象徴性の数値は、イスラム教徒の方が高くなっており、これはカンガがイスラム教徒発祥であることに起因していると考察された。
  • 独自性欲求との関連
    十一 玲子, 田北 智端子, 孫 珠熙, 近藤 信子
    セッションID: 3P-68
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 女子学生の被服行動特性を明らかにすることを目的に、被服行動と独自性欲求との関連を検討した。 方法 2010年7月に神戸市・大宰府市・熊本市の女子学生221名を対象に自記式質問紙調査を行った。被服行動27項目、独自性欲求については16項目を設定し、7段階で評定、得点化した。被服行動測定項目の評定得点をもとに因子分析を行った。その因子得点をもとにクラスター分析を行い、調査対象者を類型化した。また、独自性欲求については宮下のユニークさ尺度を用い、下位尺度である「他者の存在を気にするか否か」「自己を積極的に表出するか否か」という2つの次元をもとに調査対象者をタイプ別に分類した。類型化された被服行動と独自性欲求とのクロス集計を行った。 結果 被服行動測定項目について因子分析(主因子法)を行い、固有値1以上で解釈可能な6因子を抽出した。その6因子の因子得点をもとにクラスター分析し調査対象者を5クラスターに分類した。第_I_クラスターを独自型(25.0%)、第_II_クラスターを価格重視型(20.2%)、第_III_クラスターを規範重視型(20.2%)、第_IV_クラスターをファッション追求型(13.3%)、第_V_クラスターを堅実志向型(21.3%)と解釈した。独自性欲求については5クラスターと類型化した独自性欲求4タイプとのクロス集計の結果1%水準で有意差がみとめられた。この結果から独自型は「他者の存在を気にしない」、価格重視型は「自己を積極的に表出しない」、規範重視型は「他者の存在を気にする」、ファッション追求型は「自己を積極的に表出する」、堅実志向型は「自己を積極的に表出しない」という側面が明らかになった。
  • 齋藤 美幸, 上野 勝代
    セッションID: 3P-69
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 本研究は、日本での屋根緑化普及への有効的なアイディア、対策を提案し日本で屋根緑化が普及する為の検討を目的とする。環境先進国といわれるドイツのカールスルーエ市、ヴォーバン地区と日本での屋根緑化の比較を行う。

    方法 1.カールスルーエ市、ヴォーバン地区へのヒアリング調査(2009年10月)。2.文献調査。3.草屋根建築を多く手掛けておられるYURI DESIGN代表前田由利氏の協力のもと草屋根住宅の居住者へのヒアリング調査(2009年6~2010年11月)を行った。

    結果 ドイツのカールスルーエ市、ヴォーバン地区では、屋上・壁面緑化に関しては中庭コンテスト、屋上緑化、クラインガルデン、緑のネットワーク等、日本よりも格段に先を進んでおり、環境に関する自治体の活動や支援が確立されている。住民は、行政の住宅緑化推進の取り組みに関して緑化することでのメリットを十分に理解しており、住民参加型の取り組みとなっている。このことから、単に補助を目的とした住宅緑化ではなく、住宅緑化に対して楽しんで取り組んでいることがうかがえる。ドイツの2都市を目の当たりにし、日本との決定的な違いは市役所などの公的な機関が緑化のメリットについて理解し、先頭に立って緑化計画を進めていることである。
     日本での屋上緑化普及の提案として、屋上緑化を「屋根」として捉えるのではなく「庭」として利用できる「楽しみ型」の屋上緑化の普及を進めるべきであると考え、このような芽生えも見える。しかし、行政だけでの普及は困難であり、研究、技術開発、啓発、普及活動に関してあらゆる分野との連携が不可欠である。特に、住民の屋上緑化の対する意識が課題であると考える。
  • 村田 里美, 吉井 和美, 長谷川 貴通, 田中 孝祐
    セッションID: 3P-70
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年のトイレ空間は、設備の進化により快適性が向上しており、一昔前の用をたすだけの場所から、リラックスできる場所へと変化している。それに伴い掃除方法も、落としにくい強固な汚れを強力な洗剤を使って落とすことから、空間の快適性を維持するための掃除に重点が置かれるようになってきた。今回は、ライフステージ別の掃除に関する調査と、使い方調査を実施し、トイレに関する意識と使用実態を把握することを目的とした。 【方法】トイレ掃除に関し、首都圏の主婦を対象にインターネット調査(n=214)を実施した。また、未就学児がいる世帯を対象に、トイレの使い方に関するアンケート調査および聞き取り調査(n=16)を実施した。 【結果】トイレ掃除を1週間に1回以上実施している世帯は全体の約80%であり、「トイレは排便する場所なので、汚いのは仕方がない」と考えている人はほとんどおらず、「トイレを居間と同じ居住空間ととらえ、同様にキレイにする」、「家族が毎日使う場所なので、できるだけ気持ちの良い空間にしておきたい」という意識が広まっている。しかし未就学児がいる世帯では、育児に追われ高頻度で発生する汚れへの対処が十分にできず、理想とのギャップが生じていることが分かった。また、未就学児のトイレの使い方には、ある特徴的な行動がみられることが分かり、高頻度に発生する汚れに簡単に対処できる掃除方法の必要性の高さも明らかになった。
  • 佐藤 了子, 佐藤 恵
    セッションID: 3P-71
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 インテリアコーディネートの授業では、e-Learning上に教材を提供している。その中で学習した内容を学生がどの程度理解しているかを知る手段として、課題を与え作品を提出させている。前報では、喫茶店の建物を教師側が制作し、学生がインテリアを含む内装全体をコーディネートする課題を設定したところ、教師側で提供した壁をそのまま利用した作品が目立ったことから、多様なサンプルの提供が必要ではないかと推察された。そこで、本報ではサンプルの影響を受けないよう学生自身が平面図から設計することで、課題を表現できるのかを調査した。
    方法 「大人の女性が集う喫茶店」をテーマにコーディネートした作品と、自由記述法によるアンケート調査を前報の質問項目と比較した。調査対象者は女子短大生24名である。調査内容は「自分の好きな色」「大人の女性」「喫茶店」をイメージする色と言葉である。
    結果 「大人の女性」及び「喫茶店」のイメージ・色は共に前報とほぼ同様で、大きな変化は見られなかった。しかし、「好きな色」では前報の可愛いさや明るさをイメージしているピンクや白より、黒や青を好んでいた。作品では、壁は白・グレー・ベージュなど清潔感や落ち着きを表す色が多く、イメージと色が一致していることが分かった。また、前報で使用した黄色の壁紙は一つもなかった。床は前報と同様、明度の異なる茶色が多いが、その割合は本報の方が圧倒的に多い。椅子やテーブルも前報と同様で、木やガラス素材が目立った。本報ではサンプルにコーディネートしないことで、色とイメージがほぼ一致していることに加え、一般的な喫茶店のイメージを忠実に表現できたように推察された。
家政学原論・家庭経営・経済
5月29日
  • 藤田 智子
    セッションID: 3D-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】
    家政学部から生活科学部等への名称変更や、家政学原論を開講しない大学の増加等を含め、家政学のあり方は常に議論されてきた。では、家政学部に在籍し、「家政学」を学んでいる学生たちは、「家政学」をどのように認識しているのであろうか。学ぶ側である学生たちが持つ「家政学」のイメージを明らかにすることによって、教育・研究者が理念としている「家政学」の学びが展開されるための示唆を得たい。
    【方法】
    都内私立女子大家政学部に在籍し、家政学原論(2年生以上を対象に開講)を履修している学生87名を対象とした。家政学原論の第1回目の授業(2010年4月)において、「学生に『家政学』と聞いてイメージすることを自由に書いてください」という指示を与え、白紙1枚に1つずつ書いてもらったイメージを分析した。
    【結果】
    学生の「家政学」に対するイメージを分類すると、以下のようになった。
    「生活」:「生活」「人間の生活」「ライフスタイル」「人生」「生活の知恵」「生活に必要な知識」「生活の中で知っていくもの」「日常生活について考える」「生活をよりよくする学問」
    「家庭」:「家庭」「家庭と生活」「家庭の政治」「家庭に関する学問」
    「家族」:「家族」「家族形態」「家族のあり方についての学問」
    「家事」:「家事」「家庭の仕事」
    「衣食住と保育」:「衣食住」「衣食住と保育」「被服」「料理」「保育」
    「家庭科教育」:「『家庭科』を深めたもの」「家庭科の授業」
    「女性」:「女性」「母さん」「良妻賢母」「女性の生き方」「女性の学問」
    家政学は、生活、家庭、家族にかかわり、家庭科教育の基盤となるものである一方、女性のものというイメージを持っていた。
  • 室 雅子
    セッションID: 3D-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 大学の教育学部の学生は、入学前から教員を目指している者が多い。しかし目標が早期に定まっているために資格や試験合格に主眼がおかれ、本来の職業選択や将来計画を見失っているように見受けられる。本研究では、教育学部における生活設計およびキャリア教育として、大学生の職業に関する認識状態の把握とモデルへの調査を通じた学生の職業観と将来観への変化を明らかにし、大学での指導・活動に必要な事項への示唆を得ることを目的とした。
    【方法】 女子大学の教育学部に所属する2年生27名(幼・小・中・高免のいずれか取得希望者)を対象に、将来計画記入(事前調査)→自分の希望する職業のキャリアモデル(女性)への学生によるインタビュー→報告発表と情報の共有→将来観・職業間の振返りを実施し学生への効果を分析した。実施期間は2010年9月~2011年1月である。
    【結果】 事前調査において、就職、結婚などのライフイベントは記入できるが、中年期・高齢期、職業と家庭生活の関係を想起できる者はほとんどいなかった。キャリアモデルインタビューを実施後は次のような効果がみられた。(1)「漠然としたなりたい希望」や「なるという思いこみ」を持った学生が、職業のメリットのみならずデメリットを知り、明確な希望を持つようになった(2)職業と責任、生きがいの関連について気づき、大学での学習や自己姿勢に改善を求めた(3)教員としてだけでなく女性としての生き方を考える必要性、ジェンダーバイアスへの意識、職業選択の広汎性、周囲との協力への気づきが見られた。以上より、資格志向の強い学部においても具体的な職業実態の情報不足の問題点と情報提供による効果が明らかとなった。
  • -消費者教育の体系化に基づく分析-
    小田 奈緒美
    セッションID: 3D-3
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    近年、消費者問題は複雑化・多様化しており、若者を取り巻くトラブルも増大している。そのような中で、学校教育において、消費者教育を積極的に展開することは、次世代を担う自立した消費者市民を育成するうえでも重要である。
    目的 本研究では、平成21年3月改訂の高等学校新学習指導要領と同解説(高等学校家庭編・公民編)の中に、「消費者教育の体系化」(2006年)及び「消費者教育の総合的推進に関する研究」(2007年)によって提示された「消費者教育の学習内容(領域別・ライフステージ別(少年期)目標に対応する41項目)」がどの程度取り入れられているかを明らかにすることを目的とした。
    方法分析にあたっては、「消費者教育の学習内容(領域別・ライフステージ別(少年期)目標に対応する41項目)」消費者教育に求められる少年期41項目の学習内容が、分析対象である小学校及び中学校の学習指導要領または解説にどの程度取り上げられているかを確認、評価した。
    結果 分析の結果、安全、契約・取引、情報に関係する学習内容にかなり不足があり、とくに欲しいものやトラブルを家族や身近な人に説明したり相談したりする態度や姿勢、個人情報や著作権の慎重な取り扱いに関する理解や意識を育むための学習機会がみられないことが理解された。また、リスクと保険の活用のほか、3Rなど環境に関する用語の理解や環境活動への積極的な参画を促すような学習の充実が必要であることが推察された。
     今後、教科以外の時間も活用し、家庭や学校を取り巻く諸組織と連携しながら、少年期における消費者教育が一層推進することに期待したい。
  • 東京都下三地域の小・中・高等学校教員を対象とした調査から
    草野 篤子, 佐々木 剛
    セッションID: 3D-4
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的 通常の学校に通学する障害のある子どもの統合教育について、実技教科(家庭科・音楽科・保健体育科)を担当する教員の意識と統合教育の取り組みについて調べた。この調査結果を基に、特別支援教育における東京都下の統合教育について探ることにより、福祉教育の在り方を考察する。
    方法 2010年8月3日から8月31日にかけて、東京都下3市(小平市、国分寺市、東村山市)にある市立小学校(13校)・中学校(21校)及び都立高等学校(14校)の実技教科(家庭科・音楽科・保健体育科)担当教員を対象とした郵送法による質問紙法調査を実施した。その結果48校(有効回収率54%)の回答を得た。
    結果 調査結果から通常の学校に在籍する教員の統合教育に対する意識には、賛否両論が混在していることが示唆された。統合教育に関しては、「専門的な知識を持たない」ことや「専門家としての教員の配置」がないことを理由に消極的な対応を示していることが窺えた。その背景には、特別支援学校教員免許状取得問題や教員養成課程の動勢、及び東京都の「特別支援教育第3次推進計画」が進められている最中であることから、現場はその推移を見ているとも受け止められた。他県で実施された調査結果と比較検討することにより今後の統合教育の方向性を探った。
  • 広島県における調査の場合
    遠藤 理恵
    セッションID: 3D-5
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] 大規模調査では顕在化が困難な調査対象者のニーズを把握することは,調査対象者の不利益を改善するだけでなく,社会構造上の様々な問題点を把握していくうえでも有効なデータとなる。しかし,多忙で心身の疲労感の強い調査対象者や,自分の置かれている生活状況に対して何らかの社会的疎外感等のネガティブな感情を抱いている調査対象者の場合には,調査を拒否される可能性が高くなる。また,調査対象者をどのように見つけてコンタクトを取り,調査に協力してもらえる対象者を拡大していくかについては,社会調査に携わる多くの研究者が抱える困難の一つでもある。本報告においては,2004年から2005年に広島県で行った障害のある子どもと主養育者への生活時間調査における手続きをもとに,調査に協力してもらうことが難しい対象者へのアプローチ方法について検討と考察を試みた。 [方法] カード化した記録を,KJ法を用いて分類した。 [結果]「地域特性」「調査時期における出来事の影響」「人間関係の作り方」の3つのカテゴリに大別された。3カテゴリが,それぞれ影響しあうことにより,データの収集だけでなく公表の仕方にも影響を与えることとなった。本研究の調査時期においては,「調査時期における出来事の影響」として「発達障害者支援法」の施行が「障害のとらえ方と対応」に対する県内の専門家及び当事者と家族へのセンシティビティにも強い影響を与えることとなった。また,「平成の市町村大合併」により調査範囲をどう定めるかについても強く影響を受けた時期であった。そのことが更に個々の調査対象者との「人間関係の作り方」にも影響を与えた。
  • 社会生活基本調査ミクロデータの再集計による分析
    中山 節子, 大竹 美登利
    セッションID: 3D-6
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的:OECDによる子どもの貧困の国際比較によれば、日本子どもの貧困率は決して低くなく、子どもの暮らしや育ちが保障されているとはいえない。中でも母子世帯の子どもの貧困率は、母親の就労の有無関わらず高いことが指摘されている。また、長引く経済不況と労働環境の悪化は、子育て期にある世帯の経済基盤に影響を及ぼしている。とりわけ義務教育後にある高校生においては、修学保障や進学あるいは就職といった進路に貧困は深刻な影響を与える。このような背景から、本研究は、子どもの対象を高校生に着目し、母子世帯の子どもの生活行動を生活時間配分とレジャー行動から明らかにすることを目的とする。 方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターに、秘匿処理を施したミクロデータの利用申請し、承認を受けた1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータ(2007年12月官報4969号)を用い、教育別や収入階層別などのクロス集計を行い分析した。 結果:単親世帯の子ども(小中高校生)の時間を夫婦・子ども世帯の子どもと比較すると、学業時間は、母子世帯の子どもが最も短く、学習が保障されていない。一方、高校生のアルバイトなどの仕事時間が最も長いのが母子世帯である。同じ世帯収入階層(200~399万円の場合)であっても、母子世帯の子どもは夫婦・子ども世帯の子どもよりアルバイト時間は長く、学業時間が短い。家事時間は、父子世帯の女子が顕著に長い一方、男子は世帯別に関わりなく短く、性役割分業が顕著である。また、学業以外の習い事やスポーツなどの余暇の時間は、仕事時間が短い夫婦・子ども世帯の高校生が最も長い。高校生のアルバイト時間は学業時間やその他の時間に影響を及ぼしている。
  • 社会生活基本調査ミクロデータの再集計による分析
    大竹 美登利, 中山 節子
    セッションID: 3D-7
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的:世界経済の急速な悪化によって、日本では、派遣、パートなどの低賃金で不安定な労働市場が拡大し、生活費の最低限を確保するために、長時間労働や複数の仕事を掛け持ちするダブルワークが増えているといわれている。そこで、2010年の家政学会では、収入階層が時間配分に与える影響について分析した。その結果、収入階層と時間量には一定の関係があったが、必ずしも収入が高いほど労働時間が長くならず、土日では収入階層が高いほど労働時間が短く家事時間や自由時間が長くなる傾向にあった。そこで今回は同様のデータを使用し、生活の質を規定すると考えられる余暇活動の内容が収入階層によって相違するかどうかを明らかにすることを本研究の目的とした。
    方法:一橋大学経済研究所附属社会科学統計情報研究センターでは、学術研究目的使用する研究者に、秘匿処理を施したミクロデータを試行的に提供している。この募集に応募し承認を受けた(2007年12月官報4969号)、1991、1996、2001年の社会生活基本調査のミクロデータを使用し、収入階層による相違を分析した。
    結果:収入階層による時間量の相違が明らかになった夫妻と子どもの世帯で、収入階層別に、夫妻のインターネットの利用、学習研究活動、スポーツ、趣味、ボランティア、旅行の余暇活動の頻度を分析したところ、どの活動においても、収入階層が高いほど頻度が高くなる傾向にあり、特に妻パート世帯ではその傾向が明らかとなった。そこで、夫婦と子どもの妻パート世帯の高校生を同様に分析した結果、親と同様に、収入階層が高いほど様々な余暇活動が活発に行われていた。逆に言えば、親世代の社会的文化的貧困さが、子ども世代にも再生産されていることが明らかとなった。
  • 2000年から2009年の消費者情報
    大藪 千穂, 杉原 利治
    セッションID: 3D-8
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
    会議録・要旨集 フリー
    目的本研究は、わが国をはじめとする先進国で深刻化している消費者問題を解決するために、アメリカの2000年から2009年の消費者情報誌Consumer Reportsの消費者情報を分析することを目的としている。
    方法2000年から2009年の10年間に提供している情報を「商品・サービス」と「社会・時事問題等」の2つに大別し、「商品・サービス」については、10大費目に非消費支出を加えた11大費目と品目に分類した。また、「社会・時事問題等」は、社会保障、経済、社会、その他の4つに分類し、情報のメッセージ性として、紹介、啓発、解決策提示を設定した。また、それぞれの情報の流れについて、消費者、消費者情報誌、企業、政府の4主体別に分析した。
    結果2000年代の10年間の情報は5676件で、「商品・サービス」が7割を占めていた。中でも交通・通信、教養娯楽、家具家事用品に関する記事が多数を占めている。情報のメッセージ性では、「機能性」と「評価」が大半を占めていた。情報の流れは、消費者情報誌から企業や消費者への情報、消費者から消費者情報誌への情報が主であった。「社会・時事問題等」では、「その他」の記事が多く、メッセージ性では、「紹介」が大半を占めていた。情報の流れでは、消費者情報誌から消費者が最も多くなった。
  • ガンガ 伸子
    セッションID: 3D-9
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    目的 家庭において食事計画(献立)を立てる際には、どの食品を組み合わせたら栄養バランスの良い食事になるか、できれば食費も抑えたいなど、栄養や経済性に配慮する。本研究の目的は、栄養摂取量と食品消費量に関する制約条件を課して、最小の費用で実現できる望ましい食事を計画することであるが、通常の線形計画法を基礎としてファジィ理論を導入したファジィ線形計画法を適用する。
    方法 ファジィ線形計画法は、通常の線形計画問題に対してファジィ目標とファジィ制約が設定される。次のように、行列形式で表す。
              cx<=z0
              Ax<=b
              x>=0
    「目的cxをだいたいz0以下にしたい。」というファジィ目標と、「制約Axをだいたいb以下にしたい」というファジィ制約が与えられている。各食品の栄養成分含量はm×n行列A=[aij]、各食品の消費量はx=(x1,x2,…,xn)、栄養所要量はb=(b1,b2,…,bm)、各食品の価格はC=(C1,C2,…,Cn)とする。食料費をファジィ目標とし、エネルギーとコレステロールに関するファジィ制約をつけたファジィ線形計画モデルを設定し、最小費用メニューを計算した。
    結果 通常の線形計画法で、最小の食料費で実現できるメニューを求めたところ、でんぷん質食品が多く、また、家庭に常備されているような廉価で栄養価の食品が多く含まれていた。なかでも価格の優等生と呼ばれる卵の量が多くなり、コレステロール摂取量の上限値に達してしまった。しかし、750m以上の摂取は許されないが、できれば600mg以下にしたいというファジィ制約をつけると、コレステロール摂取量を大幅に抑えたメニューを求めることができた。
家族
5月29日
  • ロジナ ナターリャ
    セッションID: 3E-1
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    研究背景と目的:近年、結婚したいのであれば、出会いを求めて活動しなければならないと言われている。しかし結婚活動は日本人以外の人には理解しにくいものだと言われてきている(山田、2010)。日本に暮らす定住者でない未婚外国人の生活者に焦点を当てることとする。 これまでの研究では経済格差の観点から語られることが多く、非日本人女性は結婚による生まれ変わり(山田、1996)または不利な生得的地位をリセットし、日本人男性は配偶者となる女性の出身社会に対して持っている経済的政治的な優位性(篠崎、1996)や先進性も影響している(竹下、2000)ため、日本人でない女性は獲得的地位をやりなおすことを期待(Saihanjuna、2007)するため、相手が魅力的に見えることやまた在留資格の変化、生活基盤の変化、安定をもたらす(西口、2009)と言われてきた。しかし、経済的基盤がある程度整った外国人女性の生活者は独身で来日し、結婚についてどのような意識を持ち、今後も日本で生活していく中では家族形成についてどう考えるかについて論じたい。 研究方法:日本社会に暮らす様々な属性の外国籍の未婚女性を対象に半構造化インタビューを用いる。 結果:ここでは取り上げた外国籍の未婚女性の結婚行動の背景には彼女らの出身社会の経済的政治的背景のみならず、文化的背景も強く影響していることが見られた。日本社会の受け入れない部分が多々あり、配偶者に求める像と日本人の結婚市場との食い違いが生じている。社会的ネットワークや環境、境遇により結婚願望がありながらも出身社会では結婚を期待されながらも葛藤を抱えており、結婚相手不足に見舞われている。生まれ育った環境とは異なる社会に生きる彼女らの中で形成された結婚観は日本社会に適合し得ない部分があることが浮かび上がってきた。
  • 吉井 美奈子
    セッションID: 3E-2
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/09/03
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    【研究目的】
     現在、「選択的夫婦別姓」の民法改正案はとん挫状態にあり、その理由の一つに「子どもの氏」が、どちらかの親と異なることへの懸念がある。
    日本では、正式な場や日常生活でも、多くの場合「氏(姓)」で呼ぶことが一般的であり、「氏(姓)」がアイデンティティの中でも重要であることは否めない。選択的夫婦別姓が認められていない現在でも、近年、親の離婚や再婚等の増加で、子どもの氏(姓)が何度か変更されることが増えた。これが子どもたちのアイデンティティ形成にどのように影響するかを研究、検討する必要がある。
    本研究では、子どもがどのように氏(姓)を習得するかについて考察するために、子どもが自分の氏(姓)をどのように習得していくか、またその文字の習得について検討することを目的としている。
    【研究方法】
     2010年12月に1歳~6歳児の子どもを持つ保護者に対して調査票を配布、回収した。調査対象者は、大阪府、京都府、奈良県に住む保育園、幼稚園に子どもを預けている保護者とし、保育園・幼稚園を通じて調査を行った。有効回収数は419票(きょうだい票を含む)で、回答者のほとんどが女性(母親)、平均年齢は35.3歳であった。
    【結果および考察】
    1.子どもたちの多くは、自分の名前をフルネームでいうことができた。 2. 自分の名前が書けるようになったのは、3~4歳頃が多い。 3.約半数の親が「子どもが最初に文字を書けるようになったのは、“自分の名前”であった」と回答していた。 4.婚姻時に改姓した女性の多くは「それが普通」だと認識しており、「本当は改姓したくなかった」という回答は1割ほどであった。
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