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遠藤 千冬, 松野 浩二
セッションID: 351
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
福岡市立心身障がい福祉センターの「障がい者生活支援相談室」が障害者の相談支援を実施してから11年が経過した。この11年間の相談の概要を紹介するとともに理学療法士と作業療法士が中心となって相談支援を行った成果について考察する。
【相談室について】
当相談室は平成11年度に障害者プランにおける「市町村障害者生活支援事業」を受託し,相談業務を開始した。平成18年の障害者自立支援法施行に伴い,相談業務は市町村が行う地域生活支援事業の中の相談支援事業へ位置づけられ,当相談室も県からの指定と市からの委託を受け実施している。現在スタッフはPT1名,OT2名,ST1名,社会福祉職1名である。
【相談の概要】
福岡市内には相談支援事業所が13箇所あり,そのうち身体障害を対象としているのは当相談室1箇所である。新規相談件数は年間500件前後であり,本人や家族だけでなく,病院や福祉施設,介護事業所などの関係機関からも多く相談を受けている。相談対象者の障害種別は身体障害が全体の約6割を占め,それ以外は知的障害,精神障害,重複障害,その他・不明が同程度ずつである。身体障害の内訳は肢体不自由が7割程度と最も多く,次いで視覚障害,言語障害となり,聴覚障害や内部障害の相談は少ない。相談対象者の年齢は10代から60代までで,50代がやや多いもののほぼ同数である。新規相談の内容は,医療や福祉サービスに関する問い合わせが35%と最も多く,次いで福祉用具や重度障害者意思伝達装置,住宅などの環境調整に関することが16%,今後の生活や進路について,ケア計画の作成依頼など複合的な相談が11%と続き,その他にも家族への対応や法律,生活情報など多様である。これらの相談に対して,平均して年に約2000件の電話対応,約200件の来所,約300件の訪問を行っている。対応の内容としては,情報収集と提供,関係機関への対応依頼,申請援助,個別支援会議の開催など主にサービスの利用援助に関することと,座位保持装置の作成援助や電動車椅子での外出の練習,支援者への介助方法の伝達などPTやOTの専門性を生かした直接支援を行っている。対応期間には幅があり,数回の電話など短期間の対応で終了するケースもあれば,数年にわたり継続して対応が必要なケースもある。
【考察】
相談支援事業に従事するPTやOTは全国的にも数が少ないと思われる。しかし,地域には医療のリハビリテーションは終了しても生活のしづらさを抱え,社会参加が十分にできていない障害者が多く存在する。疾患と障害への理解があること,障害に起因した生活のしづらさへの予測と対応ができること,医療との連携がスムーズなことなどPTとOTは地域の相談支援の現場で専門性を生かした対応ができる職種である。本人のできる能力に注目し,生活モデルでの支援を行うことが地域で暮らす障害者の自立と社会参加へつながるものと考える。
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中原 雅美, 矢倉 千昭, 丹羽 敦
セッションID: 352
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
平成18年の介護保険制度の改正に伴い,各自治体では,虚弱高齢者(特定高齢者)を対象に,身体機能の向上を目的とした運動器機能向上プログラム(以下,プログラム)が展開されている.我々は,平成18年からO市におけるプログラムの実施に携わり,プログラムの内容を検討,修正しながら現在に至っている.そこで本研究では,プログラムの内容を紹介し,平成21年度の身体機能および健康関連QOLの効果について報告する.
【方法】
参加者は,検診において特定高齢者,そのリスクのある者と判定され,プログラムの参加を同意した36名であった.そのうち,プログラムを最後まで継続した者は,34名(男性5名,女性29名),平均年齢73.5±4.8歳であった.
なお,倫理面への配慮として,対象者およびその家族は,O市地域包括支援センターの保健師または介護支援専門員から事前に書面にて説明を受け,同意を得てからプログラムに参加した.
プログラムは,3ヵ月間に週1回のペース,計12回で構成され,第1,2回に事前評価,第3~10回にトレーニング,第11,12回に事後評価と参加者に対する結果報告を行った.また,参加者には,簡易トレーニングを指導し,家庭で実施するように指導した.プログラムでは,健康運動指導士がトレーニングの集団指導を行い,理学療法士と作業療法士は個別相談と指導を行った.事前および事後評価では,身体機能として握力,膝伸展筋力,長座体前屈,開眼片脚立ち時間,Functional Reach,手すり支持30秒椅子立ち上がりテスト,Timed Up and Go テスト,5m歩行時間を測定し,さらに健康関連QOL(SF36)を調査した.
統計学的解析には,対応のあるt検定およびWilcoxon符号付順位検定を用い,有意水準は5%未満とした.
【結果】
身体機能では,すべての項目に有意な改善がみられた.またSF36の下位項目である身体機能,身体の痛み,全体的健康感および活力も有意に改善した.
【考察】
プログラムの結果,筋力や柔軟性が向上し,バランス機能や運動パフォーマンスが改善し,SF36においても身体機能に関連する項目が改善した.また,平成21年度のプログラムでは,最後まで継続することができた者の割合が36名中34名(94.4%)と高かった.我々は,プログラムにおける週1回のトレーニングだけでなく,家庭での簡易トレーニングを指導し,また個別指導の中で体調の変化や簡易プログラムの実施状況を把握し,こまめに指導を行なっている.身体機能の改善に伴う自覚症状を強化し,トレーニング継続に結びつくような指導が,プログラムの継続や身体機能および健康関連QOLに良い効果をもたらしたのではないかと考えている.
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藤本 雅子, 上地 安寛, 田場 辰典, 伊礼 みゆき
セッションID: 353
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
当訪問リハビリテーション事業所(以下訪問リハ)では、併設急性期病院の入院作業療法(以下入院OT)と共同し、早期退院から早期在宅支援への連携としてシステムを構築してきた。訪問リハでは退院者の受け入れ体制を整え、在宅へのソフトランディングを提供してきた。以下、<連携取り組みと変容について報告する。
【方法】
1.入院OTによる早期退院支援 2.入院OT・訪問リハとの連携 3.訪問リハの役割見直し
【結果】
平成20年度と平成21年度の比較。併設病院からの紹介者数前年比82.7%増加、短期集中加算対象件数前年比57.6%増加、訪問リハビリ介入期間は、6ヶ月未満29.8%増加、6ヶ月から1年未満8.3%増加、1年以上38.1%減少
【考察】
連携見直しにて、各部門の役割不明瞭による切れ目のない支援が十分に提供出来ていなかった事、介護支援専門員(以下ケアマネ)との連携不足の問題が挙げられた。今回、急性期病院における早期退院支援の役割として、入院OTによる入院早期からの退院支援にて在宅サービスの紹介を行い、退院直後の不安軽減及び円滑な在宅生活への適応をサポートしてきた。入院OT及びケアマネとの情報交換や、訪問リハの受け入れ体制整備等を行うことで、より早期の在宅支援に繋がったものと考える。また今回の取り組みは、平成22年度の診療報酬改訂への前準備として有意であったと思われ、現在、併設急性期病院地域連携室やケアマネなどの法人全体での取り組みへと拡大し、各部署の役割構築へと発展している。
【おわりに】
急性期病院での早期退院促しにより、不安を抱えたまま退院となる患者様は少なくない。生活混乱期に対し訪問リハの機能を充分に発揮した上で適切な転機先への移行を図って行きたい。訪問リハからの転機先としては通所サービスのみではなく、今後は利用者の各ステージにおける訪問リハ事業所間の連携も視野に入れて検討していきたい。
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時吉 直祐, 諫武 稔
セッションID: 354
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
当院では平成19年より福岡県粕屋町における特定高齢者に対し介護予防事業を実施している。その参加者が介護予防事業を終了後、身体機能を維持した生活が出来ているかを検討した。
【方法】
平成19年度から21年度の介護予防事業に参加した特定高齢者77名(男性29名女性48名)を対象に介護予防事業参加前と終了後1年及び2年経過後の身体状況を比較した。比較は特定高齢者基本チェックリストならびに特定高齢者、一般高齢者、被介護認定者区分によって判定を行った。
【結果】
介護予防事業参加により運動機能が向上し、1年間それを維持できた人46.8% 介護予防事業に参加し運動機能は向上しなかったが、身体機能を低下させず維持できている人32.4% 介護予防事業に参加したが、1年後に身体機能が低下した人9.0% 比較ができなかった人(不明)1.1% 介護予防事業参加により運動機能が向上し2年間それを維持できた人52.6% 介護予防事業に参加し運動機能は向上しなかったが、2年間身体機能を低下させずに維持できている人23.6% 介護予防事業に参加したが、1年後に身体機能が低下した人2.6% という結果となった。統計処理はχ2乗検定を用い、危険率5%未満を有意水準とした。
【考察】
当院における介護予防に対する取り組みは、週に1度の運動指導と12週にわたる自宅でのトレーニングの促進とフィードバックを行うこと、また、医師・PT・OT・ST・Ns・栄養士・歯科衛生士が介護予防に関係する講義を行い健康相談を行うといった形式である。
当初、この3ヵ月間という短い期間において特定高齢者の運動機能の維持・向上が効果的になされるか、また、継続できうるものであるかとういう懸念があった。しかし、当事業に参加した特定高齢者は、1年後および2年後も要介護認定を受けずに経過できている者が大半を占めた。このように3ヶ月という短期間であっても、運動指導と自宅でのトレーニングの促進とフィードバック行い、他職種が関わることでで、運動機能を低下させず維持できている事が示唆されるものとなった。
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独居と同居が与える影響に着目して
堀 健作, 米満 弘之, 山永 裕明, 野尻 晋一, 大久保 智明, 江口 宏, 山室 美幸, 鈴木 圭衣子, 竹内 睦雄, 谷口 善昭, ...
セッションID: 355
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
訪問リハビリテーション(以下訪問リハ)利用者の生活空間の変化について、LSAを用い独居者と同居者で比較検討した。
【対象】
訪問リハを6ヶ月継続した37名、年齢74.6±13.4歳、独居:同居=13:24である。一日中又は日中独居の利用者を独居と常時介助者がいる利用者を同居とした。
【方法】
LSAを用い以下の1)~5)の流れで調査検討した。
1)対象者全体のLSA総合得点、空間、頻度、自立度の得点の初回、3ヶ月、6ヶ月における得点変化を調査した。
2)1)を独居、同居に分けて総合得点の経時的変化を分析した。
3)独居と同居の初回、3ヶ月、6ヶ月における総合得点および空間、頻度、自立度の得点を両群で比較した。
4)独居と同居の初回~3ヶ月、3ヶ月~6ヶ月の期間ごとに、LSA総合得点の改善の有無で改善群と非改善群に分類し、併用サービス(訪問介護・訪問看護・通所系サービス)、住宅改修の有無との関係を分析した。
5)独居と同居の初回~3ヶ月、3ヶ月~6ヶ月の改善群と非改善群の訪問リハの利用回数(週)を比較した。
【倫理的配慮】
本研究は当法人倫理委員会の承認を得ている。
【結果】
1)対象者全体のLSAは総合得点、空間、頻度、自立度において有意に改善していた。
2)独居では、LSAの総合得点、頻度、空間、同居では、頻度と自立度において改善がみられた。
3)初回、3ヶ月、6ヶ月の各期間における独居と同居の比較では、総合得点、空間、頻度に有意差を認めなかったが自立度は初回と3ヶ月で独居が有意に高かった。
4)独居ではLSAの改善と併用サービス、住宅改修との間に関係は認められなかった。同居ではLSAの改善と初回~3ヶ月、3~6ヶ月で通所系サービス利用と関係がみられた。
5)独居の初回~3か月の期間における改善群が非改善群より訪問リハの利用回数が多かった。
【考察】
今回の調査で訪問リハ利用者の生活空間は経時的に拡大していることが確認できた。独居と同居の比較では、独居で空間と頻度、同居で頻度と自立度の得点に向上がみられた。結果3)より独居は初回、3ヶ月の自立度が同居より有意に高いが、総合得点では差はない。すなわち移動の自立度は高いが空間、頻度の得点が低く、閉じこもり傾向が考えられた。結果5)と合わせて考えると独居者は閉じこもり傾向にあり、その改善のためには初期の訪問リハの介入頻回を上げることが重要と考えられた。一方同居では結果4)から通所系サービスと訪問リハビリの併用が頻度と自立度の改善に有効であるとが考えられた。しかし空間の得点は増加しておらず、通所系サービスの空間が生活範囲の上限になっている事が考えられた。訪問リハ、通所リハなどのフォーマルなサービスの充実と連携強化はもちろん地域のインフォーマルなサービスとの連携が、在宅生活者の更なる生活空間拡大に必要と考える。
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~導入時期と形状・素材を検討して~
甲原 国雄, 山田 康二, 山本 光太郎
セッションID: 356
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
橈骨遠位端骨折は上肢骨折の中で最も頻度の高いものの一つである。リストラウンダーは、術後、早期の自動運動に用いられ橈骨手根関節の副運動から回転運動と可動域拡大に効果があるとされている。しかし、リストラウンダーの素材や形状については様々なものがある。今回、当院オリジナルのもの作製しクリニカルパスに沿った導入時期について症例を通し検討したので以下に報告する。
【方法】
症例の状態に合わせ初期・後期と二段階でのリストラウンダーを作製した。素材は、形状・重量・角度の自由度が高い粘土を使用した。初期の形状としては、手関節に負荷のかからない半円型に、後期は、三角形型に設定。手根骨の動きを引き出すため、リストラウンダーの傾斜については_X_線上で手関節の固定位、橈骨の関節面の中心と月状骨の中心にランドマークを打ち、基本傾斜角を決定し、手関節の固定位からリストラウンダーによる月状骨の動き・角度を計測し、傾斜及びの導入時期について検討した。
【症例紹介】
10歳代女性。運動中に転倒。整復後k‐wireで経皮的鋼線固定術を行い、シーネにて背屈位で固定。 AO分類:A‐1アライメント:palmar tilt(15°)ulnar variant(0mm)radial inclination(22°)矯正損失なし POD6ROM(手関節):背屈30°掌屈0°背屈固定中 Cooneyの評価基準(Poor):疼痛:15/25 職業:0/25 掌背屈可動域:10/25握力:0/25回内外可動域:0/25 DASH:機能障害/症状:60/150 スポーツ/芸術活動、仕事:29/40
【結果】
PO6W ROM(手関節):背屈75°掌屈45°橈屈40°尺屈40°回内90°回外30°Cooneyの評価基準(Fair):疼痛:20/25 職業:20/25 掌背屈可動域:25/25握力:0/25回内外可動域:20/25 DASH:機能障害/症状:57/150 スポーツ/芸術活動、仕事:15/40
【考察】
作製にあたり、DrとX線を確認しながら手関節・月状骨の動きを確認し、手関節の肢位と月状骨の角度を設定した。背屈固定位の橈骨・月状骨の傾斜角は70°であり月状骨の滑りは背側へ10°と設定。術後2週より自動運動の指示があり、リストラウンダーを導入した。初期型は、月状骨の滑りを抑制するためロック機能をつけ、X線所見より月状骨が10°背側へ滑りが見られた。初期型は、主に軟部組織伸張を目的とし安全性が高く、早期自動運動に効果的であると考える。術後4週より後期型を導入、開始肢位の傾斜角は掌側へ14°滑りが見られ、導入時は背側へ10°滑りが見られた。田崎らは、手関節拘縮予防に対して手根骨の動きが重要と述べており、X線での手根骨の動きを確認しながらのリストラウンダー作製は必要性が高いと考える。
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益田 郁巳, 切江 優子, 城内 若菜, 徳田 一貫, 長部 太勇, 近藤 征治, 杉木 知武, 川嶌 眞人
セッションID: 357
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
日々の臨床の中で、産前産後に腰痛などの症状をきたし、運動療法開始となる患者を経験する事がある。問診していく中で、産前の状態から症状を呈していることもあり、産前からも理学療法を介入することの必要性を感じる。今回、妊娠中に交通事故にあった症例を担当した。妊婦特有の姿勢である腰椎過前弯・骨盤前傾に加え、交通事故で右後方から追突されたことや日常生活の中で子供を抱く動作を行うことで特に右体幹後面の筋緊張亢進が生じ、腰背部の疼痛を引き起こしているのではないかと推察した。そこで妊産婦の特性をふまえ、交通事故や日常繰り返される動作により生じた左右非対称的な筋緊張の状態にも着目して理学療法を行った結果、姿勢アライメントや疼痛に変化が生じたため、以下に報告する。
【症例紹介】
10歳代 女性
診断名:頸椎捻挫 腰椎捻挫 。現病歴:2009年12月後半、普通自動車を運転中、右側より走行してきた自動車と衝突し、車が横転。徐々に頸部痛・右上肢の痛み・痺れ、右腰背部・殿部に疼痛出現し当院受診(妊娠5カ月 胎児には特に影響なし)。疼痛持続したため2010年1月より作業療法、3月より理学療法開始。 既往歴:特になし 2008年 第1子出産
【理学療法評価】
疼痛は安静時右殿部、歩行時右腰背部・殿部に出現。肩関節挙上運動にて両肩甲帯周囲に疼痛あり。右殿部に圧痛あり。右腰背部、右大腿前面外側面に筋緊張亢進が見られる。体幹前面、両殿部に筋緊張低下が見られる。立位姿勢は頭部左回旋、左肩挙上、体幹右側屈(Th7が頂点)、上位胸椎左回旋、下位胸椎~腰椎左回旋、骨盤左回旋、骨盤右挙上、上半身重心右変位の状態であった。歩行においては、歩行周期を通して常に右骨盤挙上が見られ、右LR時以降、骨盤左回旋しており、右遊脚期となっても骨盤の回旋運動見られず、腰椎左回旋・胸椎右回旋を強め、体幹右側屈を増大させている。右上肢のふりは見られない。
【理学療法アプローチ】
・頚部、腰背部、殿部リリース
・呼吸ex ・股関節内転ex ・ブリッジex
妊婦であるため、腹臥位で行えないためできる限り側臥位の状態でアプローチを行った。また、アプローチを行うポジショニングや腹部をサポートできるような環境設定を行った。
【結果】
訓練後、安静時痛消失、歩行時右殿部に違和感はあるが疼痛の軽減を認めた。筋緊張が亢進していた部位においては緩和傾向を認めた。立位姿勢は体幹右側屈軽減、上半身重心正中化を図れた。歩行時右LR時の骨盤の右回旋が出現し、右遊脚期の骨盤回旋の動きが出現するようになる。腰椎左回旋・胸椎右回旋は減少した。
【まとめ】
今回、妊産婦ということに加え、交通事故や日常生活動作など様々な要因により出現した疼痛に対するアプローチに難渋した。症例の身体状態に合わせて環境設定を行い、多方面からの視野を持った理学療法を展開する重要性を改めて実感した。
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屋嘉部 愛子, 宮崎 茂明, 平安 堅吾, 石田 康行, 鳥取部 光司, 帖佐 悦男, 藤浦 まなみ
セッションID: 358
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
手術後のクライオセラピーは疼痛、腫脹軽減などの効果があるとされ、臨床で多く使用されている。今回、鏡視下腱板修復術(Arthroscopic Rotator Cuff Repair:以下ARCR)後のクライオセラピーが、術後疼痛、術後成績に与える効果を検討したので報告する。
【対象】
対象は2009年7月から2010年2月に、当院にてARCRを施行し、術後1ケ月以上経過観察が可能であった12例12肩(平均年齢:65.3歳、54~77歳)とした。内訳は、クライオセラピー群(以下Cry群)6例(断裂サイズ:midium2例、large1例、massive3例)とコントロール群(以下Con群)6例(断裂サイズ:midium3例、large1例、massive2例)であった。対象には本研究の目的と内容を説明し、同意を得た後、測定を行った。
【方法】
ARCR後、Icing system CF-3000を用い、術直後より48時間5℃で持続冷却を行った。検討項目は、VAS(術直後から6時間毎に48時間)、血液データ(術後1日、3日、1週)、他動肩関節可動域(術後1週、3週)、JOAスコア(術後1ヶ月)、UCLA rating scale(術後1ヶ月)とした。統計学的検討にはMann-Whitney U-test用い、危険率5%未満を有意差ありとした。
【結果】
CK(U/I)値が、Cry群/Con群で術後1日302/404、術後1週98/187とCry群で有意に低値を示した。その他の検討項目では、両群間に有意差は認められなかった。しかし、VASの各時間毎の平均値および最大VAS値の平均において、術後24から48時間でCry群がCon群に比べ低い傾向を示した。
【考察】
Con群に比べCry群でCK値が有意に低値を示したのは、組織の二次的低酸素症を抑制し、ダメージを受けた組織の総量が減じ、遊離蛋白質の分解が減少したことでCK値の早期減少につながったと考えられた。また、VASの時間毎の平均値がCon群に比べCry群が低値を示したのは、クライオセラピーによる冷却が、直接的には神経線維と受容器の温度を低下させたこと、間接的には腫脹、筋スパズムが軽減したことにより、痛みの軽減につながったと考えられた。
【まとめ】
鏡視下腱板修復術後のクライオセラピーが疼痛、術後成績に与える効果を検討した。今回の結果より、ARCR後のクライオセラピーは、鎮痛効果、治癒効果に影響を与えている可能性が示唆された。今後は、検討項目の追加や、より効果的なクライオセラピーの実施方法について検討が必要である。
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眼球運動が後頭下筋群に与える影響に着目
宿輪 宏明, 村上 雅哉, 肱岡 昭彦
セッションID: 359
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
頸椎椎弓形成術後(以下術後)の合併症として軸性疼痛(後頸部痛・肩痛)がある。しかし、その原因は未だ明らかではない。手術方法の進歩(低侵襲・C2C7付着部温存など)により以前と比較すれば患者の負担は軽減されているがまだ十分ではない。術後患者の頸椎運動は頸椎カラー固定下・痛み・不安心理のもとで制限され、眼球による代償が多くみられる。そこで、術後の軸性疼痛と眼球運動が関与しているのではないかとの仮説を立てて、術後に眼球運動を抑制することで軸性疼痛の改善が得られるか否かについて検討することとした。今回は眼球運動と頸部運動の関係を検証したのでここに報告する。
【対象】
本研究に対し説明と同意を得た頸部疾患の既往のない男女20名(男性8名、女性12名、平均年齢28.2±5.6歳)。
【方法】
男女20名を眼球運動の有無にて2群に分け、その前後の可動域を計測した。調査項目は、頸部自動可動域(前屈・後屈・左右側屈・左右回旋)と動かしやすさにおける主観的評価(1悪い、2少し悪い、3変化なし、4少し良い、5良い)である。≪A群≫閉眼にて可動域測定後、上下方向への眼球運動を頸椎カラー装着下で30往復行い、再度閉眼にて可動域測定し、動かしやすさに対する主観的評価を行った。≪B群≫A群の過程で眼球運動を行わず、30秒間の休息とした。測定は、座位にて頭頂・耳介・肩峰が直線上に並ぶ位置を頸部正中位とし、ゴニオメーターにて行った。統計にはt-検定を用いた。
【結果】
眼球運動の有無による可動域変化において、頸部後屈・右回旋で有意差がみられた(p<0.01)。主観的評価は、B群は40%が4を示したのに対し、A群は80%が4・5を示した。
【考察】
Myersにより眼球運動は後頭下筋群の緊張を変化させると報告されている。今回の結果からも眼球運動が頸椎運動に影響を与えていることが示唆された。特にその影響は後屈・回旋運動において認められた。また、後頭下筋群は筋紡錘の密度が高く(Kulkarni et al.,2001)、頭頸部の協調運動に重要な役割を果たす。眼球運動と後頭下筋群の収縮および頭頸部の協調運動との関連が一群のものであれば、術後の固定による眼球運動の増加が軸性疼痛に影響していると推察される。今後は、術後患者の眼球運動の抑制が軸性疼痛の改善に影響するか否かを検討していきたい。
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深田 真由美, 山下 導人, 園田 昭彦
セッションID: 360
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
骨折の一つに大腿骨近位部骨折があり、その90%以上の起因は転倒とされている。本骨折による歩行・ADL能力低下が再骨折及び生命予後に影響することが報告されている。今回、当院における大腿骨近位部骨折の傾向と予後、高齢者に対する理学療法の介入について検討した。
【対象と方法】
調査期間H19.1~21.12 男性20・女性69例 計89例について以下6項目を調査。
1.骨折の分類(内・外側型)
2.術式
3.両側例の初回から反対側骨折までの期間
4.受傷前・後のADL比較(歩行状況・Barthel Index:以下BI)
5.死亡率
6.基礎疾患・合併症
【結果】
男性20例(23股)平均年齢78.2±4.6歳、女性69例(75股)平均年齢87.1±5.7歳、うち右側41例、左側39例、両側9例
1.内側型57例、外側型41例、両側例の内訳 同型66%
2.術式 人工骨頭置換術24例、CHS法45例、スクリュー固定11例、γ-nail 5例、保存療法13例
3.両側例9例の初回から反対側骨折までの期間 平均10.4ヶ月
4.受傷前と同様の歩行レベル獲得率43.8%(独立歩行可→不可20.2%)、在宅復帰率32.6%(自宅→施設・転院12.4%) BI:減少傾向にあるが有意差なし
5.死亡率 約8%(予後観察・確認不明例は除外)
6.基礎疾患・合併症 脳血管障害22.5% 心疾患8.9% 視力障害6.7% 認知症25.8% 入院時HDS-R平均12.2/30点
【考察】
大腿骨近位部骨折の発生頻度は高齢になるほど増加し65歳以上では女性が男性の2倍近くになるとされている。当院でも平均年齢83.8歳、男女比は1:3.5で女性が有意に多い。今回調査した89例中両側例は全体の10.2%、平均10.4ヶ月で発生しており、松田らの報告と同様の傾向を認めた。ADL比較においてはADL能力低下が施設入所や転院例の増加、歩行レベル獲得率・在宅復帰率に影響したと考えられるがBIの統計学的有意差は認められなかった。当院では施設からの転院例も多く在院日数・退院時レベルも異なるが今回の調査では死亡率約8%であった。骨折受傷によるADLレベル・身体能力低下、基礎疾患などが再骨折発生率の増加・生存率に関与すると考えられる。両側例では約10ヶ月で反対側骨折を受傷していることからこの期間での再発予防の取り組みが重要といえる。再発の起因はいずれも転倒であり予防の第1は転倒予防である。そこで外的因子としての生活指導を含めた居住環境の整備と内的因子として運動機能の向上が必要であると思われる。内的因子の改善として筋力・平衡機能・俊敏性獲得を目的に外転筋力の強化、継足歩行・片脚立位訓練などの転倒予防訓練を継続することが再発予防に繋がると考える。
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松岡 綾, 猪熊 美保, 成冨 耕治, 武藤 知宏, 真鍋 靖博, 松崎 哲治, 山下 慶三
セッションID: 361
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
当院は、整形外科疾患の急性期治療を行っており、大腿骨近位部骨折に対する手術件数は年間90例を超えている。当院では、内部疾患など多くの合併症を有する患者や、近隣の精神科病院からの受け入れも多いため、個別性を重視した治療を行ってきた。しかし、DPC(Diagnosis Procedure Combination)導入に伴う入院期間の短縮など、現代の医療情勢に対応するため当院でも大腿骨近位部骨折のクリニカルパス(以下CP)作成を検討することとなった。今回、当院の大腿骨近位部骨折患者の現状について調査し、自宅復帰に影響する因子について検討したので報告する。
【対象】
当院で2009年1月から12月までに理学療法介入した大腿骨近位部骨折患者95例のうち、透析患者、死亡した者を除いた77例(男性23例、女性54例、平均年齢82.4±8.6歳)を対象とし、術式を、人工骨頭置換術(以下A群)20例、γ-nail(以下B群)25例、Compression Hip Screw(以下C群)13例、Hansson Pin(以下D群)11例、Intramedullary hip screw(以下E群)8例に分類し検討した。
【方法】
77例のうち、自宅復帰した36例に対して、その要因を在院日数、認知症の有無、退院時の移動能力の3要因との関連性について重回帰分析を用いて検討を行った。また、各術式における在院日数との関連性について、一次配置分散分析を行った。
いずれも危険率は5%未満を有意とした。
【結果及び考察】
在院日数が短い(p<0.05)、認知症が無い(p<0.05)、退院時の移動能力が高い(p<0.001)の3要因に、自宅復帰に繋がる要因として関連性が認められた。各術式における在院日数の比較では、他4群と比較して、D群において、有意に短かった(p<0.05)。近年、自宅復帰に関しては認知機能や退院時歩行能力の高さが影響するという報告が多く、今回の調査においても相違ない結果となった。また、入院期間が短いことが自宅復帰との関連が深いという結果であった。その他、受傷前の歩行能力やADL、既往歴の有無、術後の合併症の有無なども関連があるのではないかと考える。今後も調査を継続し、更なる因子との関連性や術式別による術後の経過を比較検討しながら、CPの検討および作成を行っていきたい。
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~チームマネージャーを経験して~
川上 志朗, 鍵本 亜依, 辻田 みはる, 平山 久美子
セッションID: 362
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
スポーツ障害の予防のため、理学療法士の立場から野球、サッカー、ラグビー、バスケット等の中学・高校生へのメディカルサポートが盛んに行われている。小学生もチーム戦略や技術が高度化し、驚くような組織・個人プレイを発揮するチームもある。H21年よりN小学校女子ミニバスケットボール(以下ミニバス)のチームマネージャーとしてメディカルサポートを実施する機会を得たので反省点を踏まえ考察を加えて報告する。
【経緯】
保護者から外傷者が多く試合に参加できない事や、何度も受傷を繰り返す選手が多いため、外傷者に対してのメディカルサポートと障害予防指導の依頼がある。H21年3月頃より練習への参加や大会(練習試合を含む)に同行することとなる。
【実施内容】
準備・整理運動の指導、練習補助、ストレッチ・アイシング・応急処置、医療相談、救急セットの管理等。
【実施状況】
練習参加(1回/週)、試合参加(81試合)、他校合同夏合宿参加、指導者・保護者とのミーティング、町教育委員会主催の少年スポーツ指導者講習会への参加等。
【結果】
保護者が安心して練習や試合に選手を参加させることができた。また、保護者だけでなく指導者や他の学校指導者からの相談や協力依頼もしていただけるようになった。外傷の経過観察とフォローができるようになった。指導者が不在時には練習に取り組む小学生のモチベーションを上手にコントロールする必要性と目的意識をもた
せる事への重要性に気付き実行することができた。
【反省点】
・ミニバスルールと動作に関する知識が薄く、練習方法の相談に対して適切な返答が困難であった。
・小学生にわかりやすく指導することが難しかった。
・練習環境の把握と指導者や保護者と信頼関係を早期に構築し、連携を取りながらスポーツ障害の予防へのモチベーションを高める必要性があった。
【考察】
学童期は成長・発達が著しい時期でもあり、この時期の外傷は後の成長や活動にも影響があると考えられる。
正しい基礎トレーニング指導やコーディネーショントレーニングも含めて関わることがスポーツ障害の予防や再発防止、外傷者の早期回復に繋がると考えられる。今後は詳細なデータの収集と分析を実施していく。ミニバスという競技にある動作や練習内容を理解することを含め、指導者や保護者と連携を取りながら関わっていくこと、また、中学・高校・社会人と長く安全にプレイできることを目標にして実施・検討中である。
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田原 典嗣
セッションID: 363
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
近年、スポーツ選手の障害・パフォーマンスと股関節の関連性はよく討論の対象となっている。今回は、野球選手に障害がよく見られる肩関節と股関節との関連性を観察し、障害予防、パフォーマンス向上に繋げていくため若干の知見を得たのでここに報告する。
【対象及び方法】
プロ独立リーグ・野球クラブチームに所属する選手10名、全右投げ、ポジション(投手4名、捕手2名、内野手3名、外野手3名、複数ポジション2名)24,6±3,6歳、身長176,6±10,5cm、体重74,8±14,2kg、野球歴14,5±3,5年
肩関節内・外旋可動域:肩関節90°外転および肘関節90°屈曲位(2nd plane)で測定
股関節内・外旋可動域:股・膝関節90°屈曲位にて測定
股割り:両下肢を対象者の身長半分に開き、骨盤後傾・腰椎の屈曲が入らない状態で、下降できるところまで降ろし、殿床間距離を測定
等速性筋力検査:BIO DEXにて肩関節内・外旋筋力180・240deg/secにて測定
上記の評価の値をそれぞれ比較、検討を行なった。
【結果】
・股割り数値が高い群は低い群に比べ、肩関節外旋可動域が高い値、内施が低い値、肩関節内・外旋筋力が高い値を示す傾向がみられた。
・非投球側股関節内旋可動域が低い群は高い群に比べ、肩関節外旋筋力が低い値を示す傾向がみられた。
【考察】
今回股関節の評価の一つとして取り上げた股割りは、野球選手の股関節の総合的な柔軟性を評価するため、よく臨床の場で用いられ、理想の殿床間距離は約20cm未満といわれる。この股割りは、投球の非投球側下肢接地時(foot plant)に必要な可動域で、この数値が高いと下半身から上半身への運動連鎖がうまく行なわれず、上肢に負担がかかる結果となる。いわゆる「体の開き」「ためが無い」「肘下がり」などの悪循環にもつながる。今回の研究でも、股割りが高い群において、肩関節外旋可動域の拡大、内旋の低下、投球側肩関節の内・外旋筋力増大などの傾向が見られた。もう一つ注目した股関節評価として、股・膝関節90°屈曲位による非投球側股関節内旋可動域である。宮下らによると投球のフォロースルー期では、股関節内旋可動域角度が最大60°要求されるという報告もある事から、この角度が減少しているとフォロースルー期の急激な減速エネルギーを股関節内旋・体幹の回旋運動によって全身で吸収することが出来ない。ゆえに、肩関節外旋筋群や三角筋後部線維、後方関節包などに過度な負担がかかり、肩関節外旋筋群の筋力低下、肩関節内旋可動域低下につながると考えられる。今回、非投球側股関節内旋可動域が低下している選手は肩関節外旋筋群の筋力低下傾向は認められたが、肩関節内旋可動域低下は認められていない。今後は、等速性運動における肩関節内外旋筋力比と股関節の関連性、プロ野球選手と高校球児の身体的傾向の違いなどについても着目しながら、今回傾向が示唆された事を明確化させ、障害予防、パフォーマンス向上に繋げていきたい。
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吉田 久美香, 坂口 重樹, 古谷 紘子, 片寄 慎也, 渕 雅子
セッションID: 364
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
当院は平成19年6月にメディカルフィットネスを開設し健常者、障害者を受け入れ健康増進、身体機能の維持向上、生活に楽しみをもてるようなサービス提供を目指している。平成20年6月からはPT2名、OT2名が配置され、障害のある方を対象とした「あいあい教室(以下、教室)」を開始した。教室は健康運動指導士1名、セラピスト1名と、障害者10名以下の少集団で構成され、1回60分実施している。今回、教室開始から1年9ヶ月が経過した教室参加者に対しどのような変化がみられているか、健康に関する客観的評価である体組成の変化からその効果を検証したい。
【対象・方法】
教室参加者で、立位による体組成測定が可能な方には毎月測定している。対象は全参加者30名のうち、教室が開始された平成20年6月から測定を実施できた男性6名(平均年齢43.5±14.8歳)、女性3名(平均年齢49.3±21.1歳)で、内訳は脳梗塞4名、脳出血1名、脳外傷2名、硬膜下血腫1名、脳炎1名である。障害名(重複含む)は左片麻痺4名、右片麻痺1名、四肢麻痺2名、失調3名。計測にはデュアル周波数体組成計DC-320(TANITA社製)を使用し体重、体脂肪、脚部筋肉量点数(以下、脚点)、BMIの結果を教室開始時の平成20年6月と平成21年6月で比較した。
【レッスン内容】
週1回60分の中で臥位、床上坐位や四つ這い位、立位でのストレッチ体操と筋力トレーニング、バランスボールを使用したバランストレーニング、ステップ台を使用したステップエクササイズを実施した。
【結果】
女性では、全項目で向上がみられた。男性では体重、体脂肪率、BMIの減少が6名中4名、脚点向上が5名であった。
【考察】
女性3名中2人は高齢の脳血管障害者であり、当院退院後は体重、体脂肪率ともに高い値を認め、教室参加後は体重、体脂肪率の減少と脚点の向上が認められているものの、食事に関する会話から炭水化物を多く摂取していることが伺え変化の幅はわずかであった。また、脳炎を呈した若年女性1名に関しても体重、体脂肪率ともに減少幅はわずかであったが、脚点は+13点と大幅に向上し、日常生活において屋内車椅子レベルから杖使用による介助歩行が可能となり外出の機会が得られている。男性6名中、中年・高齢者は3名で入会時より肥満傾向はなく、2名は体重、体脂肪率ともに高齢女性よりも減少し、運動の効果が示唆された。若年男性3名は脳外傷者でありいずれも入会時より肥満はみられなかったが、1名は脚点が+13点となり屋内歩行見守りから自立、屋外は車椅子レベルから杖・装具を使用して公共交通機関の利用が自立となった。他2名に関しては車椅子レベルで経過し、うち1名は食事量が増え体脂肪率の上昇がみられた。このことから障害のある高齢女性の肥満や、若年男性の経過には運動だけではなく、食事面のフォローを行いながら将来に向けた健康増進を進める必要があると考えられる。
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喜瀬 真雄, 平山 厳悟, 井手 睦
セッションID: 365
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
障害者水泳において理学療法士(以下PT)は競技会でクラス分け、合宿でコンディショニング活動を行なっている。これらの活動におけるPTの役割を明確にするには、スポーツ現場の要望を知る必要がある。そこで今回、九州身体障害者水泳連盟登録者(以下選手)及び障害者水泳指導者(以下指導者)を対象に、PTへの要望を調査したので報告する。
【対象・方法】
対象は選手113名(肢体不自由82名、視覚・聴覚障害31名)、指導者22名。調査は自記式郵送法で実施。調査項目は、PTへの要望について代表的な項目を複数設定し要望の有無を質問した。その他の要望は自由記載とした。またPTという職種についての知識の有無、さらに選手には競技レベルも質問した。結果は項目別に集計し、選手・指導者及び上位選手(日本選手権出場)・下位選手(九州選手権出場)の各2群間でχ二乗検定を用い比較した。対象者には文書にて調査の趣旨を説明し同意書に署名を得た。
【結果】
67名より回答があり内、解析に有効であったのは57名であった。PTという職種については52名が知っていると答えた。要望は総数231件、上位要望は「禁止常用薬・サプリメントの教示」32件、「傷害予防方法の教示」26件、「チーム帯同での泳力指導」26件。その他は、選手から競泳特性の理解、指導者から障害特性についての講習会開催などの要望があった。選手・指導者の比較では「自身のクラスの説明」について選手の方が指導者より有意に多かった。上位・下位選手の比較では全項目において有意差は認めなかった。
【考察】
PTに対する要望は「禁止常用薬・サプリメントの教示」が最も多かった。柴崎は「障害者水泳選手は常用する薬剤が多い」と報告している。またアンチドーピングについての啓蒙が進んでいることや練習場面で主に関わっている医療関係者はPTであるため、このような結果になったと考える。PTは薬物問題の窓口となり専門職の介入を促すことができると思われる。次に多いのは「傷害予防方法の教示」であった。三浦らは「スポーツ分野では、医学的リハビリがPTの役割と理解されている」としている。またPTは障害特性を専門としていることからこのような結果となったと考え、コンディショニング活動を強化していく必要があると考えた。「チーム帯同での泳力指導」も多く選択された。自由記載に競泳特性の理解や障害特性の講習会開催とあることから、PTが競技特性も熟知し選手・指導者と競技・障害特性を共有することで各選手の泳力向上が図れるのではないかと考える。選手と指導者の比較では「自身のクラスの説明」に有意差がみられた。クラス分けの結果次第で競技成績が左右されることから、選手に要望が多かったと考える。今回の調査から、薬物問題の窓口やコンディショニング活動の充実、競技指導への働きかけといったPTに対する要望の傾向がわかった。
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~hyper mobility に対する一考察~
原田 伸哉, 下野 佑樹, 多々良 大輔
セッションID: 366
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
前屈時の仙腸関節痛は、股関節屈曲の可動域制限が要因になっているケースをよく経験するが、今回、股関節屈曲の可動域が過可動性を有しているクラッシックバレエ選手の仙腸関節痛に対し、筋の遠心性収縮を促した結果、疼痛消失に至ったためここに報告する。
【症例紹介】
19歳女性、腰椎椎間板ヘルニア(L5/S1)。立位のまま、腰椎、股関節の過度な伸展動作が強制され受傷。疼痛は右L5椎間関節~右仙腸関節周囲でその後も疼痛が持続したまま約1年が経過し、当院受診。圧痛は右多裂筋、右仙腸関節固有疼痛領域。
【理学療法評価】
神経学的検査陰性、ROM-t(Rt/Lt):SLR145°/125°股関節外旋70°/55°MMT(Rt/LT):股関節伸展(4/5)膝関節屈曲(4/5)体幹回旋(3/4)、立位と前屈時の触診から右寛骨は前方回旋、仙骨は後屈・左回旋・左傾斜を伴う骨盤輪全体のマルアライメントを呈す。
【考察】
仙腸関節の安定性は主として重力と両関節面の適合性に依存し、仙骨の前屈、寛骨の後方回旋にて関節が安定する。屈曲時の仙腸関節痛は股関節屈曲制限を有し、ハムストリングスや仙結節靭帯が早期に伸張されることで仙骨前屈が不足し、仙腸関節の圧迫による安定性が不十分のまま前屈動作を続ける為、後方靭帯系にストレスが加わり疼痛を誘発するケースをよく経験する。しかし、本症例では触診にて前屈動作時の寛骨と仙骨の動きを確認すると、仙骨前屈は十分行われているにも関わらず、前屈最終域で左回旋・左傾斜を伴う右寛骨の過剰な前方回旋により、相対的に右仙腸関節後方靭帯の過剰な伸張ストレスが原因で疼痛が誘発されていると考察した。仙腸関節面の適合性不良に対しては靭帯や筋の調節によって関節面の安定を図る必要がある。本症例においては、前屈最終域の過剰な右寛骨前方回旋に伴って生じる右殿部の上方突き上げ現象を抑えることを主目的とした。アプローチは、1)多裂筋のリラクセーション2)寛骨後方回旋を伴う腹筋トレーニング3)大腿二頭筋の遠心性収縮を促しながらの前屈動作練習を実施した。仙結節靭帯と強い連結がある大腿二頭筋の遠心性収縮にて右寛骨後方回旋を促しながら前屈動作を行った結果、相対的な仙腸関節の安定が得られ、疼痛は消失に至った。
【まとめ】
クラッシックバレエの競技特性として、可動性を獲得することはしばしば求められる。しかし、その可動性を最大限にパフォーマンスの中で発揮させるためには、可動性のみ獲得できればよいという訳ではなく、その基盤として安定性が構築された上で初めて可動性が発揮できるのではないかと考える。
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金子 政彦
セッションID: 367
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
近年、重症児・者に対する誤嚥性肺炎の予防・軽減策として、喉頭気管分離術や喉頭全摘術が行われるようになり効果を挙げている。今回、誤嚥性肺炎の予防目的に喉頭全摘術を受けた後、経口摂取再開となったが、食事中・食後の嘔吐が頻繁に見られ、体重の減少をきたした事例を経験した。対象者のこれまで数年間の生活の記録から対応を検討し、実践する中で、変化が見られたので報告する。この発表に関して、対象者の保護者に同意を得ている。
【対象者】
40歳代男性。新生児仮死後遺症、レノックス症候群、MR、小頭症。大島分類5。自力歩行が可能だが、すり足となり、つまづき易い。喉頭全摘術前より発語、発声はなく、言語的コミュニケーションは困難。口腔機能は持続的な口唇閉鎖困難で、取り込んだ食物のこぼれが多い。意思表出は散歩に行きたい時などに介助者の手を取って示す。おもちゃなどにはまったく興味を示さず、常同的行為が見られる。笑う、泣くなどの感情表出はできる。
2007年頃から、食事中のむせが目立つようになり、肺炎を伴う発熱を繰り返し、経鼻経管栄養となる。2008年に喉頭全摘術を受ける。その後、経口摂取再開となるが、術後3ヶ月頃から食事中・食後の嘔吐が目立つようになる。術後7ヶ月で体重が6kg減少した。
【方法】
過去10年間のカルテ記録を整理し、体重の変化やトピックスを調べた。個別支援計画の中で、体重の減少を問題点としてあげ、対応を職種間で検討した。食後に散歩をすると嘔吐が見られないことに着目し、食事直後の散歩を実践した。実施にあたっては、靴下と靴を提示しながら散歩に行くことを伝え、本人の気持ちの切り替えを促した。
【結果】
食後の散歩を導入して以降、嘔吐の頻度が減少し、8ヶ月で3kgの体重回復が認められた。
【考察】
2000年当時の記録にも食事中や食後の嘔吐がたびたび見られており、当時の対応として、食形態の調整が行われていた。
喉頭全摘術を受け誤嚥の心配がなくなった対象者に、食事中・食後の不適応行動軽減のため、どのような対応を取ることが食事の質を高めることにつながるのかといった問題提起を行った。
対象者の行動の観察から、食事椅子に坐り、自由にならない状態で、精神的に退屈すると嘔吐につながりやすいことが分かった。また、対象者には「靴下と靴を履くと病棟外へ散歩に出かけられる」といった条件と行動の結びつきがあり、これが「気持ちの切り替え」につながることで、食後の嘔吐の抑制に有効に働いていることが推測された。
本人にとっておいしく、満足感のある食事を提供し、生活の質を高めるためには、誤嚥予防や口腔機能評価にとどまらず、対象者の成育歴や経過の中から、行動面や知的面、興味・嗜好の評価も踏まえた全人間的対応を実践する必要があることを改めて考えさせられた。
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2症例を経験して
中村 佳子
セッションID: 368
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
近年、新生児集中治療室(NICU:Neonatal Intensive Care Unit)における作業療法が文献にて報告されており、当院でも介入することが増えている。早産児や種々の疾患を抱えた新生児は、胎外環境下でのストレス適応能力が低くその後の成長発達への悪影響が指摘され、介入の難しさを感じる。今回、ハイリスク児に対しNICUからの関わりを経験した。2症例への取り組みを紹介し、今後の課題について検討・報告する。
【症例紹介】
症例1はCFC(Cardio-facio-cutaneous)症候群男児、32週0日、Apgar score 1点/2点で出生。人工呼吸器管理となり、42週後にN-DPAPによる経鼻的陽圧呼吸管理に変更。48週目にOT開始した。覚醒時は不快刺激に対し過敏で啼泣激しく、それに伴い後弓反張は増強、仰臥位困難で常に側臥位となっていた。
症例2は13トリソミー男児、36週3日、Apgar score 2点/8点で出生。人工呼吸器管理となり、出生翌日に抜管。生下時より全身性間代性痙攣出現した。50週目にOT開始した。四肢不全麻痺、舌根沈下による閉塞性呼吸もあり、上肢の筋緊張亢進により、胸郭の動きも妨げられていた。また、2症例とも筋緊張の亢進による四肢ROM制限や開排制限、異常姿勢を認めた。
【作業療法内容】
ROM訓練、筋緊張緩和、姿勢管理、呼吸介助を実施し、クッションの作製、看護師(Ns.)や母親へROM訓練やポジショニングの指導を行った。退院前は訪問施設への申し送りや在宅メニュー作成を行った。
【経過・結果】
症例1は、OTのみならずNs.の協力も得たことで、筋緊張の緩和や異常姿勢が軽減し情緒面の安定が図れ、両上肢の活動も活発となった。Ns.や母親からも「日常のケアが行いやすくなった。」等の感想が聞かれた。OT開始5週後には経鼻カニューレでの酸素投与となり、より不快刺激が減少し、情緒面の発達が促進され、他者の様子を伺うしぐさや追視・喃語が出現した。生後7ヶ月にて自宅退院となった。
症例2は、痙攣後の過緊張や不良肢位の持続に対応したことで、筋緊張緩和、ROM改善、良肢位保持が図れ、呼吸機能の改善がされた。しかし、SpO2の低下を伴う痙攀が増加し、母親の不安も強く退院が実現しなかった。その後、痙攣が落ち着き母親も医療ケアの実施に自信を得たことで在宅への移行を決断、生後7ヶ月にて自宅退院となった。
【考察】
身体的要因やその他の機械的な刺激に苦しんでいる児に対し、安楽に過ごせる時間を増やすことがOTの大切な要素であると考える。また、家族への心理的サポートも重要であると考える。今後は医師やNs.とのより密な情報交換を行い、児のストレス環境への対応や姿勢管理に努めていく必要性があると考える。
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小松 鮎子, 鶴崎 俊哉, 上原 ひろの, 西村 陽央, 多門 大介
セッションID: 369
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】近年,四つ這いをしない子どもが増加しているとの指摘が多く聞かれる.そこで,「ハイハイをしない」というキーワードでインターネット検索をしてみると,Yahooで約257,000件,Googleでは約10,400,000件が該当した.これらの多くは母親による相談の書き込みと,それに対する医師をはじめとした医療従事者・保育関係者によるアドバイスであった.この背景には「ハイハイをしない」ということが異常・障害ではないかと懸念する気持ちや発達に対する不安感があると考えられる.しかし,実際にはそれらの子どもの多くは正常に発達していく.つまり,正常発達の流れの中でも「ハイハイをしない」ということは十分にあり得ると考えられる.そこで本研究では乳児の自然な四つ這い動作を観察し,四つ這い動作を通して獲得されると思われる体幹の使い方について,月齢,四つ這い実施期間との関連性を検討した.
【方法】対象は,長崎市内の子育て支援センターを利用している神経学的・整形外科的な問題がない乳児の中から,本研究に関する説明を行い保護者より同意の得られた12組(男児7名,女児5名)の母子を対象とした.そのうちデジタルビデオカメラの撮影中に四つ這い動作がみられた8ヶ月から1歳1ヶ月までの10名(男児7名,女児3名)の画像について,体幹の動きに注目して動作分析を行った.また,動作分析の結果を比較する指標として,事前に母親に対して月齢と四つ這い開始月齢に関するインタビューを行った.
【結果】四つ這い動作時の体幹では,胸腰椎移行部が前彎している乳児と腰部がフラットである乳児の2パターンに分けられたが月齢および四つ這い実施期間との明確な関連性はなかった.また,四つ這いで前進する際に,股関節を固定し骨盤を側方傾斜させることで下肢を振り出す,股関節の屈伸と連動して骨盤の側方傾斜が生じる,一足下肢を足底接地するために骨盤に回旋が生じるなどのパターンが見られたが,月齢・四つ這いの実施期間ととの明確な関連性は見られなかった.
【考察】今回の研究では,脊柱の弯曲や骨盤の運動についてパターン化することは出来たが,これらの出現順序について月齢,四つ這い実施期間ともに関連性を見いだすことが出来なかった.この原因として,四つ這い開始時期に関する定義が曖昧なため母親から正確な情報が得られなかった可能性や四つ這いの開始時期に幅があり四つ這い以外の動作の中で体幹の運動を獲得していた可能性が考えられた.今後,横断的な研究としては対象者数を増やす必要があるが,平行して縦断的な研究を実施することで四つ這い動作の経時的な変化および体幹機能の獲得過程を明確にする必要性がある.また,四つ這い動作を促進する生活環境や四つ這い実施が立位アライメント・歩行等に与える影響についても検討していきたい.
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高田 政夫, 森本 誠司
セッションID: 370
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
自立支援法では重度障害者用意思伝達装置は補装具へ移行した.作業療法士にとって補装具の選定に関する役割が重要視されている.高ステージ・デュシェンヌ型筋ジストロフィー(以下DMD)患者において意思伝達装置は無くては成らないものである.DMD患者は,終末期になるに従い手指変形は高度となり,スイッチの適合は困難を極める.したがって,障がい手管理のため,変形成立見極めが大切である.そこで,終末期高ステージDMD患者に対して,手指,手関節変形状況を調査した.
【対象と方法】
対象はDMD患者(筋ジスステージ_VIII_・手指ステージ_IX_以上)3施設の入院及び通所者(IT機器使用者)15名である.観察分析方法は,入力時の操作画像から手関節角度,入力方法及び動作,手指変形について解析記録した.解析ソフトには,シリコンコーチを用いた.
【結果と考察】
入力手の形態と操操作方法は三群に分類された.手関節背屈位で母子外転による操作群(_I_群)手関節掌屈位で母指内転による操作群(_II_a群)手関節掌屈位で_II_~_V_指屈曲による操作群(_II_b群)である.終末期まで,スイッチ押し動作などの可能性を高める為には,手関節の関節可動域確保,手指屈筋群の短縮防止,伸筋群の過度な伸長予防が考えられる.
尚,本研究は対象者各施設の倫理審査会又は倫理審査手続きにより実施した.
参考文献 ?田政夫:病院でのIT技術の活用,地域リハビリテーション,p107-112,2010
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廣瀬 賢明, 藤井 満由美, 久保田 珠美, 福屋 まゆ美, 武智 あかね, 野田 智美
セッションID: 371
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
近年、身体障がいを有する者のスポーツに対するニードが高まり、健康増進や社会参加に関しての報告もなされてきている。当センター理学療法部門では、平成15年より、スポーツを手段としての運動能力の向上、さらには余暇の充実、地域の大会へ出場にすることによる社会性の向上などを目的にスポーツ活動を導入した。今回、当センターにて実施してきたスポーツ活動の取り組みについて報告する。尚、当院の倫理委員会より承認を受けている。
【対象】
当センター肢体不自由児施設の入所者で、参加人数は各回15名前後である。平成21年度3月時は、年齢6~19歳の男性8名、女性8名であり、疾患の内訳は、脳性まひ7名、二分脊椎2名、小児整形疾患4名、その他3名である。移動手段は、独歩5名・車いす自走6名、電動車いす4名・車いす介助1名である。
【内容】
頻度は週に1回40分間。種目は、重度障がい者も実施可能な卓球バレー、ボッチャ、風船バレーを最も多く実施し、1~2ヶ月毎に変更した。また、車いすおよび歩行器を用いた陸上種目を取り入れ、持久力の強化を図った。活動時、児に合わせたルールや道具の工夫、姿勢の検討を行い、能力の向上に伴い通常のルールに近づけ、年に1回、地域の卓球バレー交流大会に出場した。年度終了時には、活動の感想や反省を発表する機会を設けた。
【経過】
開始当初は、スポーツの場を提供し、その中で体を動かすことや楽しむことを目的にして、興味のある歩行可能な児を中心に活動を始めた。活動経過の中でルールや道具の工夫により、平成16年度からは、障がい程度に関わらず子どものニードに応じて参加することができるようになった。平成17年度からこれまでの活動の成果を発揮する場として地域の卓球バレー大会に出場を開始した。平成21年度より、集団行動が不得手な認知機能に課題のある児や幼少の児も加えた。
【考察】
運動や認知機能に差はあるが、ルールの理解や技術の向上が認められただけでなく、お互いに助け合う様子や準備や片付けに自発的に参加するようになる、他児の意見を静かに聞く、集団で実施することの楽しさを伝えてくる児も多くなり、人間関係においての変化が認められた。個別での関わりと異なる集団でのスポーツ活動を実施したことは、楽しみや運動課題への意欲の向上、自主性や積極性の伸びなど多くのメリットがあったと考える。加えて、地域での大会に出場し、障がいのある大人と交流することで、将来像のイメージを作るきっかけや臨機応変な対応を必要とするよい経験となり、今後の社会参加への一助となればよいと考える。今後は、できるようになったことを客観的に評価できるようにすることや本人が理解できるようにフィードバックすること、より自主的に活動できるように援助することが必要である。
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下田 真太郎, 浜本 壽治, 門口 修二
セッションID: 372
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
今回,頚髄腫瘍摘出術を行い約1年3ヶ月経過したのち左手掌・手指の尺骨神経領域の運動・感覚に末梢神経性の麻痺が残存し把持動作が障害されADLレベルが低下した80歳代,女性の症例を経験した.術後より左手掌・手指の尺骨神経領域の痺れ,触覚・圧覚・識別覚の消失もしくは鈍麻,同部位の筋力低下により安静時に鷲手を呈した.第4指・第5指に触覚・圧覚の障害により把持が不能であった.そのため,茶碗などを把持しても落としてしまう事から,食事動作は左上肢を使用せずに頭部を食器に近づけていた.食事動作の困難さから症例は人前では恥ずかしいので食事をしたくない,外食に行きたくないという訴えがあった.理学療法評価の結果,圧覚がその他の感覚と比較して残存していた.そこで,認知過程に基づき1ヶ月間選択的に圧覚に注意を向けることで症状の改善がみられADLが向上した症例を報告する.また術式や手術による侵害部位においては他院で行ったため詳細は不明であった.なお,本報告は症例に十分な説明を行い同意を得ている.
【方法】
第4指・第5指の残存している圧覚に対して注意を向け,閉眼で手掌と第4指・第5指の間にスポンジやビー玉など硬さが異なるものを介入させ可動範囲内で屈曲運動を行わせた.まずは硬い,柔らかいといった差異の認識から行い,次第に硬さの異なるスポンジの種類を増やし圧覚の細分化を行った.この際,一人称記述を言語化してもらった.圧覚の知覚が困難な場合は,健側手の体性感覚の認識や視覚によるイメージを想起させた.それを患側手にイメージの再現を行い.実際に知覚させイメージとの違いを比較し言語化してもらった.
【結果】
1ヶ月間のアプローチで第4指の指腹の圧覚が5/10・第5指の指腹の圧覚が10/10と改善がみられた.痺れの軽減がみられた.握力はアプローチ開始時の6.8kgから10.0kgと改善がみられた.圧覚の言語化はアプローチ開始時の「たぶん硬いと思います」から「豆腐をつぶしている感じ」などと具体的な比喩表現がみられるようになった.ADL動作は茶碗の把持が可能となり,第4指,第5指で固定が可能となった.また,本人より「今まで左手を使っていなかったのが,自然と左手を使うようになりました」との発言があった.
【考察】
認知過程に基づき圧覚に注意を向けることにより第4指・第5指の圧覚の改善と痺れの改善,ADLの改善がみられた.1年3ヶ月の患側手の不使用により,脳の体性感覚野の対応領域の面積の減少が起こり知覚の障害が著明となったと考える.今回のアプローチにより,脳の感覚野の対応領域の拡大がみられ,圧覚の知覚の改善し,その事により物体の把持の際,硬さの認識が可能となりADLの改善に繋がったと考える.
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伊波 興司, 宮城 康雄, 友利 一平, 宜保 雅也
セッションID: 373
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
回復期病棟では患者の日常生活動作(以下ADL)は日々変化する為,「できるADL」と「しているADL」に差が生じやすい.そのため,病棟スタッフ間の相互理解,共通認識を深め,各々の症例に応じた最大限のADLを実践することが大切である.リハビリテーション(以下リハ)側と病棟での伝達が不十分で相互理解や共通認識が薄く,差が生じていることが少なからずある.当院では,伝達の方法としてADL評価表,リハ・病棟間での申し送りノート・デモンストレーションの3つを実施している.今回,症例をあげてその取り組みについての紹介を報告する.尚,対象者には事前に内容を説明し,同意を得ている.
【対象と方法】
Brunnstrom stage上肢・下肢・手指:_III_.起居動作自立.起立動作,立位保持,移乗動作は短下肢装具,固定した把持物の使用で自立.平行棒内にて歩行動作・健側へのSide stepは可能.排泄時の下衣更衣動作に介助を要していた症例である.排泄動作自立が自宅復帰の条件で,訪問により自宅環境を確認した.その後,病室を出来るだけ自宅環境に近づけ,さらにベストポジションバーを設置し,排泄動作の獲得を目指した.リハから病棟への伝達として,
・デモンストレーションを実施して動作や口頭指示,介助方法の確認
・ADL表の記載(患者,介助者のポジションや方法,手順,注意点など)
・申し送りノートに詳細を記載
を行い,病棟からリハへ,毎日の排泄動作を観察し伝達してもらった.
【結果】
ベストポジションバー使用にて下衣更衣動作,車椅子・ポータブルトイレへの移乗が自立した.病棟スタッフの協力の結果.排泄動作の獲得がなされ自宅復帰となった.
【考察】
自宅環境を入院中から病室にセッティングし,ADL表,申し送りノートの活用により病棟スタッフとの相互理解が得られ,リハ時間外での患者の様子が把握でき,実践的なアプローチが「しているADL」で可能となった.「できるADL」と「しているADL」の差を最小限にすることで最大限の学習効果が得られ,自宅復帰が可能となったと考える.
【まとめ】
今回のケースを振り返り,日々のADL能力の向上は,一日数時間のリハ練習時間のみだけではなく病棟スタッフの理解と協力によってより効率的になる.さらに.「できるADL」を病棟で実践し習慣化することで,自宅復帰率の向上につながると考えた.病棟内での介助方法や認識を統一する取組の中で,患者様の日々の変化について,ディスカッションの場面が増え,チームアプローチの質がより高くなっている.今後の課題として,病棟スタッフからの意見がまだまだ少なく,活発な意見交換が出来る体制を作る必要があると考える.また,実際に自宅復帰率への効果の検証を行う必要があると考える.
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在宅環境での動作に着目して
大城 雅哉, 濱盛 杏菜
セッションID: 374
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
在宅生活でトイレ動作の介護は本人と家族にとって重要な問題であり、住環境などの違いにより実用レベルの判断は難しい。そこで、利用者のトイレ動作能力の自立レベル獲得に必要な因子について検討し、若干の知見を得たので報告する。
【対象】
当院通所リハビリテーション利用者でトイレ動作がFIM4~7点の16名(男性10名・女性6名)、年齢は81.3±13.4歳、疾患は脳血管疾患8名、脊椎・脊髄疾患3名、特定疾患1名、整形疾患4名である。ただし、明らかな認知症、高次脳機能障害を有する者は除外した。
【方法】
10m最大歩行(以下10m最大)、Timed up and go test(以下TUG)、Functional Reach Test(FRT)、BERG BALANCE SCALE(以下BBS)、FIMの運動項目(排泄管理は除く:以下FIM)の相関関係をKendallの順位相関係数にて算出した。さらに、対象をトイレ動作の自立群:A群、修正自立群:B群、監視・介助群:C群に分け、各評価項目における群間比較をMann-WhitneyのU検定にて比較し、その項目から最もトイレ動作への影響が強いものを重回帰分析により算出した。また、統計処理において有意水準5%とする。
【結果】
FIM運動項目とBBS間、さらにFIM・BBSともにそれぞれ10m最大とTUGとの間に相関関係を認め、トイレ動作とすべての項目に強い相関関係(1%)を認めた。続いて、各群間比較においてはA・B群間でFIM・TUGにて有意差を認め、B・C群間ではFIM・BBS・FRTで、BBS各項目では前方リーチと振り返りで有意差を認めた。さらに、トイレ動作と全ての項目に対しステップワイズ法にて重回帰分析を行った結果、BBS・10m最大・TUG・FRTが説明変数として選択され、各標準偏回帰係数は0.365、-1.0932、0.7251、0.6687となった。
【考察】
今回、通所リハ利用者の自宅でのトイレ動作の自立度について検証した結果、BBS・10m最大・TUG・FRTの影響が大きいことがわかった。B群はC群に比して立位で上肢を使う更衣動作を安定して行う必要があり、基底面内で体幹の回旋や重心移動の範囲をコントロールする能力が高いため前方リーチや振り返りの項目に表れたと考える。A群は手すりの支持に頼ることなくバランスを保てる能力を有している。TUGで行う複合動作は連続した支持基底面の変化と重心移動のコントロールが求められるため、重心移動のより広い安定性限界を持っていることが考えられる。
【まとめ】
在宅生活を送る上で介護者の有無は大きな差であり、本研究からトイレ動作修正自立を獲得するには基底面内での重心移動範囲の拡大が重要であることがわかった。今後、新たな指標としてカットオフ値の算出なども行っていきたい。
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寺崎 司, 山口 洋一
セッションID: 375
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
リハビリテーションゴールとして自宅復帰を常に意識しているが、住環境問題に阻害されることも多く、自宅と医療施設であまりにも違いすぎる環境のギャップが障壁となっている。
今回、住環境側に視点を置き、退院前家屋調査の傾向及びアフターフォローの再調査を行ったケースについて検討したため報告する。
【対象・方法】
対象者・家屋状況チェックシートを作成し、2007年7月~2009年10月の期間で担当したケース24例。うち検討ケースは同意が得られた4例。
【結果】
24例中、要改修ケースは15例。改修箇所の内訳(全42件・重複あり)として、最多箇所はトイレで12件(29%)、次いで浴室8件(19%)、上がり框7件(17%)、アプローチからポーチと廊下で各5件(12%)、居間2件(5%)土間・寝室・階段で各1件であった。工事内訳としては、手すり設置が34件と全体の約8割を占め、段差解消が3件、便器取替え・ドア変更が各2件、床改修1件となった。
【検討ケース】
(1)再調査の遅れ、公営住宅のため調査時~改修時の状況が異なり業者単独の改修となったケース
(2)改修案にない不適切な手すりが設置。しかし家人ストレスのため手直し拒否ケース
(3)以前限度額まで改修、今回は福祉用具で対応か・・・いや、手すりが移設できる!
(4)調査後の能力アップにより、再訪問時には不要な手すり(レンタル福祉用具)発見
【考察・まとめ】
調査の結果からはトイレ・手すりの件数が多いことが分かった。介助負担となるトイレ動作に本人・家族のneedsが高く、しかしながら動作能力と環境が不適合な為に出た結果と考えられる。
トイレのみならず、改修による適合後に2~3割で再改修等の問題が生じる、住環境によって解決されたneedsは新たなneedsを生むとされる。検討ケースのようにリスク、家族needs、動作能力や経済的負担も再評価し、住環境のギャップを検証(アフターフォロー)する場にOTは立ち会う役割となる。これらのことから、セラピストによるバックグラウンドも含めた身体機能、動作特性に住環境をマッチングさせるより良い改修のために、退院後の再調査が欠かせないことが言える。
今後の課題として、スムースな再調査を行う為に院外の他職種・他業種との連携や相互理解が挙げられる。
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秦 めぐみ, 鎌田 陽之, 板井 幸太
セッションID: 376
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
今回、左大腿骨頚部骨折を受傷した症例を担当した。術後、急性期に安静が必要となり、回復期より機能向上訓練、日常生活動作(以下ADL)訓練を開始し在宅復帰を果たした。その経過と一考察をまとめ、報告する。
【症例紹介】
70歳代後半、女性。受傷前、持ち家にて家族と同居しておりADLは自立、一部家事も行っていた。H20年7月早朝、自宅ベッドにて転落、当院を受診しそのまま入院となる。4日後、骨接合術施行となる。
【作業療法初期評価(術後12日)】
コミュニケーションに問題はなく、安静度の制限によりADLはベッド上で行っており、FIM80点、BI45点。起きあがり、起立などの基本動作は自立、安静時運動時ともに患肢の疼痛の訴えはほとんどない。上下肢ともにADL上著名な関節可動域制限はなく、筋力は両上肢4、体幹2~3、右下肢4、左下肢2~4。
【プログラム経過】
術後、心不全の症状が改善せず、予定より遅れて術後12日より作業療法開始となった。安静度の制限により、ベッド上にて機能維持訓練、転倒予防の指導を実施した。術後22日より車椅子座位が許可され、36日より歩行訓練が許可された。安静度の拡大に伴い、ADL訓練、歩行訓練、下肢コントロール訓練を進めた。術後48日に家屋調査を実施、手すり設置の提案と在宅復帰にあたり必要な動作を確認し、訓練を進めた。術後57日に自宅退院(FIM121点、BI90点)、退院後に介護サービスは利用しない方針となった。
【考察】
本来、大腿骨頚部骨折の急性期では安全に生活動作ができることを目標に、回復期では疼痛の軽減にともない、退院後の在宅生活にスムーズに移行できるように訓練を実施していく。しかし、今回、急性期にはベッド上訓練のみを行い、同時に予防期として転倒予防の指導を行った。回復期に入り、初めて急性期で行うべき生活動作訓練を開始したが、早期に動作を獲得できた。この結果には、大腿骨頚部骨折患者の問題点とされている「痛み」、「認知機能面の低下」、「生活全体の活性が低下すること」がみられなかったことが大きく影響しているだろう。在宅期では、安全で楽しみのある在宅生活を送ることが目標となるが、大腿骨頚部骨折患者の中には、入院中に予想していた在宅生活と実際の生活との間に差を感じる場合も多く、外出の機会が減少する、活動性が低下するなど不活発病を生じる可能性がある。それに対し、家屋調査を実施することで自宅環境の調整、趣味活動を含めた在宅生活に必要な動作を焦点化し、アプローチを行うことができた。結果として再転倒や不安による不活発病を予防し、安全な在宅復帰が可能になったと考える。
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~リフト導入によって入浴本来の目的を実現した事例~
山岡 愛, 吉村 憲人, 毛井 敦, 池部 恵理, 松崎 哲治
セッションID: 377
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
入浴本来の目的は、身体を清潔にするほかに、身体的・精神的苦痛・緊張の緩和、排泄作用の促進、睡眠の助長である。在宅障害者が入浴本来の目的を実現するためには、安全な入浴が必要不可欠であり、それを根底に安心・安楽な入浴が得られ、心の自律を促す契機になると考える。今回、リフト導入によってNeedを達成し、入浴本来の目的を実現した事例について検討・考察したので報告する。
【症例紹介】
50歳代男性、右被殻出血、左片麻痺、Br.stage上肢・手指・下肢ともに_II_、本人・家族のNeedは毎日の在宅入浴であった。退院時FIM88点(運動項目57点)。
【経過】
自宅退院に向け、スタッフ間で入浴動作検討・介入し、次に主介護者である妻同席の下、自宅を想定し病棟個浴室にて実際に介入した。環境的問題点として自宅での介護者1人、浴槽の形状が半埋込み式、身体的問題点として歩行困難、座位での浴槽跨ぎ2人介助、浴槽内からの立ち上がり困難が挙げられ、これらによる腰痛と全身疲労が本人より訴えられた。その結果、スタッフ・家族間で現状の共通理解ができ、その上で毎日の在宅入浴と、「風呂ぐらいは楽に入りたい」という本人の希望を実現するため、リフト導入という選択に至った。
【結果】
リフト導入成功し、本人のNeedが達成できた。また家族の介助負担も軽減し、入浴時に笑顔が表れた。
【考察】
身体・精神面への効果が期待されるにも関わらず、入浴特有のリスクの高い環境のために他のADLが自立していても介助を要することが多い。今回の事例を通して、リフトやその他福祉用具の導入で、入浴本来の目的が実現できると感じた。今回ポイントとなったことは、デモ機で実際に本人がリフトに乗り家族に操作していただいたことである。これによってリフトへの抵抗感が払拭されたのではないかと感じた。またリフトを本人・家族に理解して頂くためには、それを進めていくスタッフが患者の身体能力を把握し、リフトのメリット・デメリット等を理解した上で、本人・家族に適宜説明・導入が行えたので、今回の結果に至ったと強く感じた。
【まとめ】
今回の事例について、リフトを導入したことで本人のNeedを実現することができ、心の自律・自立を支援することが出来た。入浴本来の目的を実現するためには、入浴がリハビリテーションの一部とならないように、生活の中にリハビリテーションが混在しないように支援していくことが重要である。今回は入浴に着目したが、トイレやその他の生活動作においても、身体機能や動作能力のみで判断するのではなく、1つ1つの動作が持つ本来の目的を理解したうえで支援していかなければならないと考える。
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単関節疾患と多関節疾患での比較
原田 由貴, 山下 導人, 岸本 浩
セッションID: 378
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
人工膝関節全置換(以下TKA)は、変形性膝関節症(以下OA)や関節リウマチ(以下RA)などの膝関節障害に対し有力な手法であり、術後日常生活動作の面で長期的に良好な成績が得られると報告されている。当院では主に、OAやRA疾患に対しTKAを施行している。今回、当院における術後1年以上の経過、またRAとOAで比較・検討したのでここに報告する。
【対象】
H18.3~H21.3までに施行した24例35膝。内訳OA群13例19膝(男性2例、女性11例、両側6例、片側7例)。RA群11例16膝(男性1例、女性10例、両側5例、片側6例)。手術時平均年齢72.8(59~83)歳。手術から退院までの平均期間10週。術後経過期間平均23ヶ月。尚、平均RA歴7年、steinbrockerの機能class分類2~3、LarsenのGrade分類3~4、膝以外荷重関節罹患率(股、足関節)18%である。
【方法】
日本整形外科学会膝治療成績判定基準(以下JOA-S)、関節可動域(以下ROM)は伸展、屈曲、筋力、10m歩行速度と歩数を測定。術前、退院時、術後1年以上を比較検討。尚、本研究すべての対象者に説明と同意を得た後に実施した。
【結果】
(1)術前と退院時の比較:JOA-S OA群、RA群ともに有意に改善。(2)退院時と術後1年以上の比較:10m歩行速度 RA群有意に低下。(3)RA群とOA群の比較:術後1年以上 10m歩行においてRA群有意に低下。
【考察】
JOA-SでRA群、OA群ともに退院時有意に改善しており、特に改善されたのは疼痛・歩行能、階段昇降能、腫脹の項目であり患者の満足を得ている。
諸家によると、ROMにおいてTKA後OAでは伸展が改善され屈曲が減少、RAは関節炎の慢性化で動揺性が生じており伸展屈曲ともに良好な成績を得られる傾向にある。また術後ROMは術前ROMに影響を受け、OAはRAより手術による侵襲が大きいため術後疼痛が持続しやすい。今回の結果もこれに近似していた。
前川によるとRA群は術後順調に筋力の回復がみられたのに対し、OA群は術後6週で筋力が術前レベルに回復した報告にあるように、退院時OA群は筋力の回復が遅延していた。
10m歩行速度に関して、退院時RA群、OA群ともに改善傾向であった。術後1年以上でRA群は歩数の増大と歩行速度が低下傾向にあり、これは膝以外の荷重関節の影響や日常生活での活動性の低下が原因であると考える。
以上のことより今後の理学療法において、OAでは術後疼痛コントロールを図りながら早期のROM改善と筋力強化に努め、RAでは膝以外の他関節へのアプローチや歩行能力・日常生活の活動性の維持が課題となると思われる。
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―理学療法開始時期が術後5日目から2日目となったクリティカルパスの変更前後の比較―
北里 直子, 河野 一郎, 時枝 美貴, 藤吉 大輔, 岡 瑠美, 宮里 幸, 高杉 紳一郎, 岩本 幸英
セッションID: 379
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
クリティカルパス(CP)は導入後もより質の高い医療を提供するために見直し・再検討が行われている。当院における人工膝関節全置換術(TKA)では、2004年11月より、術後4週での退院に向けたCPを使用し、術後2日目より持続的他動運動(CPM)を開始し、5日目から理学療法・歩行練習を開始していた。しかし、2008年11月よりCPが変更となり術後2日目からCPM・理学療法開始し、3日目より歩行練習を開始することとなった。今回、CP変更後の症例と変更前の症例について、身体機能、疼痛、T-cane歩行獲得時期、階段昇降獲得時期、歩行能力について比較し、CP変更の効果について検討したので報告する。
【方法】
対象は2007年10月から2008年10月までにTKAを施行した患者のうち、術前から退院時にかけて定期評価が可能であった症例61名(男性5名、女性56名、平均年齢72.9歳)(以下5D群)と、2008年11月から2009年11月までにTKAを施行した患者のうち、術前から退院時にかけて定期評価が可能であった症例41名(男性3名、女性38名、平均年齢74.5歳)(以下2D群)であった。また、本研究の対象者には十分な説明を行い、同意を得た。
評価項目は、術前と術後1週ごとの膝関節屈曲・伸展の筋力とROM、安静時痛の評価としてVisual analog scale(VAS)、術後のT-cane歩行獲得日数と階段昇降獲得日数、術前と退院時の10m最大努力歩行時間とTimed Up & Go Test(TUG)、および入院期間であった。筋力はCOMBIT(ミナト医科社製)で、座位での膝関節屈曲60度で等尺性運動を測定した。また、統計には対応のないt 検定を用い、有意水準は5%未満とした。なお、本研究は、当院の倫理委員会の承認を受けて実施した。
【結果】
2D群と5D群において、T-cane歩行獲得日数は9.6日と11.3日(p<0.05)、階段昇降獲得日数は13.4日と15.7日(p<0.05)とどちらも2D群の方が有意に短縮していた。入院期間においても24.4日と27.9日(p<0.05)と2D群の方が短縮していた。また、TUGは2D群は術前15.8秒から退院時15.1秒、5D群は15.6秒から15.2秒と改善はしたが両群間で有意差はなかった。膝関節屈曲・伸展の筋力、ROM、VAS、10m最大努力歩行時間は両群間に有意差は認められなかった。
【考察】
今回の結果により、2D群が5D群に比べ、T-cane歩行獲得日数、階段昇降獲得日数において有意に改善が認められ、また、2D群の方が入院期間が短くなったが退院時における膝関節屈曲・伸展の筋力とROM、VAS、10m最大努力歩行時間、TUGには有意な差は認められなかった。術後早期からの理学療法開始によって、術後早期や退院時の疼痛の増強はなく、術後安静による廃用症候群を予防し、早期歩行獲得、入院期間の短縮に有効であることが示唆された。
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東恩納 のぞみ
セッションID: 380
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
大腿骨頸部骨折症例に対して当院では3週間プロトコールを採用しているが、治療成績を客観的視点から検討する機会がなく、治療の進め方や教育においてもマニュアルが整備されていないのが現状である。そこで今回、当院の大腿骨頚部骨折における理学療法(以下PTとする)の治療成績を分析することで、現在のPTアプローチの有効性を把握し、今後の治療・教育のあり方を検討する。
【方法】
対象:平成21年1月1日から平成21年12月31日までに入院し、大腿骨頚部骨折を呈し観血的整復固定術を施行された43症例(合併症の精査・治療が必要となった症例、荷重制限がある症例、精神疾患を有している症例を対象より除外した)。
〈研究内容:カルテより後方視的調査を実施し、年齢・性別・術式・在院日数・リハビリ開始日・リハビリ実施期間・担当PT・各PT経験年数・元のADLレベル・転帰の調査項目をX2検定・ボンフェローニ検定にて統計学的に分析した。
【結果】
担当PT毎で自宅退院率、担当PT毎で歩行獲得成績のいずれにおいても有意差はみられなかった。しかし、術式によるバリアンス発生率に差は無かったものの、入院期間においては差がみられた(CCS術は比較的短く、PFNA術・人工骨頭置換術は長い傾向にあった)。
【考察】
諸研究において骨接合術より人工骨頭置換術では疼痛が少ないなどの条件によって在院日数が短いと報告されているが、今回の調査での在院日数はCCS術が15日、CHS術が21日、PFNA術が32日、人工骨頭置換術が29日と骨接合術であるCCSが最も在院日数が短かった。CCSは侵襲の少ない術式であり手術時間も短いことから、早期離床を促し易く、痛みや筋収縮のコントロールが行い易くなったことで在院日数が短かったと考える。
【まとめ】
対象症例が少数であり、カルテ記載においても客観的評価内容や評価時期が統一されていない事から、統計的信頼性に乏しい。今後は評価内容や評価時期においても統一を図っていき、バリアンス発生の分析や治療成績の分析を進めていく必要があると考える。
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兵頭 正浩, 吉村 直人, 井上 智之, 本岡 和也, 初村 和樹, 伊藤 圭祐, 中村 一平
セッションID: 381
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
フリー
【テーマ】
大腿骨頸部骨折患者の自宅復帰の要因について
【目的】
大腿骨頸部骨折患者の自宅復帰の要因について調査する。
【対象】
2009年1月~2009年12月の12ヶ月間に当院に入院してリハビリテーションを受けた大腿骨頸部骨折患者94名を対象とした。適格基準として、65歳以上の居宅高齢者で、入院前は自立歩行をしていたこと、認知症がないこと、重篤な合併症がないこととした。
【方法】
94名を自宅退院群47名、施設入所群47名の2群に分類し、性別、年齢(80.3歳:87.9歳)、入院時B.I.、退院時B.I.、B.I.改善度(退院時B.I.-入院時B.I.)、在院日数(83.5:55.6)、1日あたりB.I.改善度(B.I.改善度÷在院日数)、家族との同居の有無、介護重症度(自立、要支援、要介護1・2、要介護3・4・5の4段階に分類)、退院時における歩行自立の有無について比較した。転帰(自宅退院または施設入所)を従属変数、その他の要因を独立変数として強制投入法による重回帰分析を行ったところ、転帰に大きな影響を与える要因として在院日数、家族との同居の有無、退院時における歩行自立の有無が特定された。この3変数にADL(退院時BI)を加えた4変数を用いて、転帰を予測する判別式を導いた。
【結果】
判別分析により次のような判別式が求められた(ただし、同居の有無は同居の場合は1、独居の場合は0、歩行自立は自立の場合は1、非自立の場合は0を代入する)。Y=0.009×退院時B.I.+0.009×在院日数+1.901×歩行自立+1.145×同居の有無-2.876。本判別式の正答率は86.2%で、本判別式が誤判別した患者13名についてみると、自宅に退院できると判定されて施設入所の方が7名。同居家族がいるにも関わらずB.I.の点数が0-85の範囲で歩行が非自立の状態でありそのことで自宅退院へと繋がらなかったと考えられる。同様に、施設入所と判定されて自宅に退院できた6名は、3名が歩行自立であり3名は歩行が非自立であるが同居家族がいた。
【まとめ】
今回、94名の大腿骨頸部骨折患者の転帰を追跡した。もともと居宅で自立生活を送っていた高齢者が大腿骨頸部骨折を罹患すると、半数が自宅退院できない状況が明らかになった。その主たる理由は、歩行が自立レベルに回復できなかったこと、独居であることであった。また、在院日数が自宅退院群の方が約4週間長いことが歩行の自立に影響している可能性や入所群の年齢が7歳以上高いことも自宅退院を阻害した因子であると考えられる。介護保険制度が導入されて10年になるが、高齢者が一旦大腿骨頸部骨折を罹患すると、住み慣れた自宅へ復帰できない現状を直視し、特に、独居高齢者の転倒予防、骨折予防に取り組むことが理学療法士の大きな課題だと考える。
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~社会人クラブへの意識付けと導入方法~
嶋村 剛史
セッションID: 382
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
フリー
【はじめに】
社会人のスポーツでは未然に傷害を防止するために準備運動・ストレッチ等を行うことは非常に重要なことである。しかし、現実的にはこれらが省かれていたり、有効的でない方法で行われている場面をよくみかける。社会人では仕事の後に練習を行っていることが多く、準備運動の時間がなかったり、時間ぎりぎりまで競技練習を行うので整理運動は後回しになったり、行われないことが多い。
今回、関係しているバドミントンクラブにどの程度予防の意識があるのかアンケート調査を行い、予防の意識付け・指導を試みた。
【目的】
1.傷害予防のための個人データを把握する、2.予防への知識・意識の有無の確認、3.個人と密なコミュニケーションをとることで知識の提供を行い易くする、4.予防に有用な情報を提供する。
【対象】
社会人バドミントンクラブに参加している男性14名、女性11名、平均年齢30.2±10.3歳を対象とした
【方法】
アンケートにより準備運動・ストレッチ・整理運動の施行状況、ストレッチ法等の指導の有無、受傷歴、筋肉痛等痛めやすい部位、痛めた後の対応の仕方を質問する。(事前に一人ずつ競技レベル、フォーム等をチェックもしておく)
【結果】
準備運動を行っている72%、整理運動を行っている32%、ストレッチ等指導を受けたことがある16%、傷害予防に意識あり92%であった。痛めやすい部位としては利き腕肩周囲が68%と一番多かった。痛めた後の対応として何もしないが56%であった。
【考察】
準備運動を行っている人が72%に対して、整理運動を行っている人が32%と非常に低かった。理由としては時間まで練習し、練習後は掃除・片付けがあり、終わり次第帰路につくので整理運動が省かれると考えられる。整理運動の重要性を理解してもらい、そのための時間を作るかもしくは家に帰った後に行うよう指導する必要性があると考える。家で普段からストレッチをテレビをみながら、入浴しながら施行する習慣をつけていただくのもひとつの方法かと考える。今回アンケート調査を行ったことにより、数名からストレッチ法や対処法の質問があり、質問を受けることで今後こちらからもアプローチを行い易くなり、円滑に指導を行うことができた。全員がこういった流れになったわけではないが、今回の試みは有意義であったのではないかと考える。個人データも考慮に入れてストレッチ指導・フォームチェックも行い、症状の軽減がみられた例もある。スポーツにおいてフォーム改造は容易なことではないが、不足している柔軟性を獲得し、誘導を行うことで症状の出ている部位の負担を軽減することは可能であると考える。
今後も傷害予防に対して考える状況を作りながら指導に努めていきたい。
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島袋 里菜, 高安 信吾
セッションID: 383
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
フリー
【目的】
当院におけるTotal Knee Replacement(TKR)患者は、2週間プロトコルを採用しているが、退院時の機能評価に明確な基準が無い。当院では、Body function and structuresレベルの評価やActivityレベルの評価をする事が多く、Participationレベルの評価はセラピストの主観的評価となり客観性に乏しい。また、我々セラピストの歩行自立判断基準は客観的判断指標に依拠するよりもむしろ主観的評価に重きが置かれているのが現状である。そこで今回の研究の目的は、TKR患者の退院時Participationレベルの評価として、機能的な移動能力指標にTimed Up and Go Test(以下TUG)を、機能的バランス評価の指標にFunctional Balance Scale(以下FBS)を用い調査を行いTKR患者の退院時運動機能の傾向を調査する事とする。
【対象および方法】
対象は、本研究の主旨に同意が得られた、当院にてTKRを施行された患者10名(男1例、女9例)とした。平均年齢:75.4±7.2歳。FBSおよびTUGの測定は、術後1週目および退院日前日に行った。分析方法として、それぞれの平均値の算出を行った。また、退院時のFBSとTUGの両者の相関分析を行った。
【結果】
術後1週目のFBS、TUGの平均値は、FBS:49.4±5.1点、TUG:21.0±6.9秒、退院時はFBS:53.7±2.8点、TUG:13.4±3.7秒となった。また、退院時のFBSとTUGの両者の間にはr=-0.93と強い負の相関が認められた。
【考察】
FBSのカットオフ値は諸家の報告により微妙に異なった報告がされているが、概ねBergらの報告した45点付近に収束している。本研究におけるFBSの平均値は、術後1週目でそれと近似する結果となった。さらに、退院時の平均値はSteffenらの報告した地域在住高齢者の平均値50~55点と近似する結果となった。TUGのカットオフ値は20秒以内であれば屋内自立歩行、17秒以内であれば屋外自立歩行可能という報告がされている。本研究では術後1週目で先行研究を下回る結果となったが、退院時には先行研究を上回る結果となった。また術後1週目の結果で偏差が大きく認められた事は、他要因による影響があったと推測される。これらの事から、術後1週目までにFBS:45点以上、TUG:20秒前後を獲得できれば、2週間プロトコル通り退院可能と示唆される。またFBSとTUGの両者に負の相関が認められた事から、退院時評価として有益である事が示唆される。
【まとめ】
今回、TKR患者の退院時の運動能力を把握するためにFBSとTUGを用いて検討を行った。その結果、退院時のそれぞれの平均点は、先行研究と近似する結果となった。しかしながら、本研究では症例数が10例と少数である事から、統計的信頼性に乏しい。また今回はプロトコル群のみであり、非プロトコル群との比較ができなかった。今後は症例数を増やし更なる検討を重ねる必要があると考えた。
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バリアンス関連因子の分析
田中 仁史, 上川 毅康, 鈴木 大介, 山口 浩士, 厚地 良彦, 大重 匡
セッションID: 384
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
当院では急性心筋梗塞(以下AMI)後の心臓リハビリテーション(以下心リハ)はクリニカルパス(以下CP)を活用しているが、CPバリアンスにおいては多枝病変及び低心機能障害が27%を占めており主な因子となっている。今回、AMI後のCPバリアンス群移行への決定要因について心機能障害より調査を行い検討した。
【方法】
2009年1月から2010年1月までAMICPで心リハを実施した79例を対象とした。これらをCP成功群50例とCPバリアンス群29例の2群に分類し比較検討した。検討項目は対象者年齢、発症から心リハ開始までの日数、駆出率(EF%)、CPK、Forrester分類、狭窄部位について調査した。
【結果】
心リハ開始までの日数ではCP成功群2.9±1.9日、CPバリアンス群6.3±3.9日であり、CPバリアンス群において有意に延長していた。(P<0.05)CPKとForrester分類の複合比較で検討したところCP成功群はCPK2000IU/l以上でForrester分類_I_、_III_が多く、CPバリアンス群ではForrester分類_II_、_IV_の低心機能が多い傾向であった。またCPKと年齢の複合比較にてCP成功群ではCPK2000IU/l以上にて平均年齢56.8±15.6、CPバリアンス群は64.4±14.4歳であり、両群間で有意差は認めなかったが、バリアンス群で高い傾向にあった。またEFにおいても有意差は認めなかった。
【結語】
当院の現行CPにおいて心リハ開始までの日数が延長傾向にある症例ではバリアンス移行率が高くなると考えられる。またCPK2000IU/l且つ、Forrester分類_II_、_IV_の症例及び、年齢64.4±14.4歳以上ではCPバリアンス移行率が高い傾向にある。今回の調査結果はAMICPへ大きく影響する結果となり、心リハ介入においてバリアンス移行を示唆すると考える。
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後谷 直樹, 小原 瞳, 松下 兼一
セッションID: 385
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
交通事故後の外傷性頚部症候群にて、抑うつ、疼痛、自律神経症状等、通院を余儀なくされる患者が増えつつある。今回、外傷性頚部症候群患者の抑うつ度を調査、関連性を検討し、今後の対策について考察を加え報告する。
【対象】当院外来を利用し、目的・内容を説明し同意が得られた17名(男性3名、女性14名、平均年齢46,2±14,4歳)、調査対象期間は、H20,6~H21,11とした。本報告はクオラリハビリテーション病院倫理委員会の承認を得ている。
【方法】
抑うつ症状は自己評価式抑うつ性尺度(SDS)、日常生活についてはアンケートにて調査した。(回収率100%)。
【結果】
1)自己評価式抑うつ性尺度(SDS)
・中等度抑うつ(51点~56点):13名/17名
・軽度抑うつ(48点):4名/17名
2)回答の内訳
(1)精神面で一番つらい事
・疼痛による家事動作、職業、趣味活動の困難、就寝時の恐怖感、不眠傾向、復職への不安、他者の疼痛への理解困難等
(2)(1)による日常生活への影響
・家事動作困難、動作に神経質・易疲労感、詐病と思われる等
(3)事故前後での日常生活変化
・体調不良日の増加、憂うつ、落ち着かない、車運転困難、恐怖感、ADLで注意が必要
【考察】
SDSより全例で抑うつ傾向を認めた。性差、年齢差は認めないが、「疲れやすい、夜眠れない、日常生活に満足していない」等の項目で男女共に点数が高く、生理的苦痛から来るADLへの不自由さが伺える。
アンケートでは、軽度抑うつ患者は、疼痛や生活に対する不安はあるが、仕事やADLに支障がある中で生活遂行可能な頚椎捻挫型(4/4)、中等度抑うつ傾向を示す症例では、疼痛、不安に加え、自律神経症状も出現し、睡眠障害、ADLや仕事遂行困難なバレー・リュー型(10/13)が多かった。小豆沢らは「不安から、体幹、頸部の緊張が亢進し、痛みや自律神経症状を強める」とし、症状の理解が不十分な精神的苦痛は、精神的緊張や不安を助長し、中等度抑うつ患者では、今後の自身の将来や身体症状への不安から症状の悪化に繋がると考える。今回の調査対象者は20歳~50歳代と社会生活上、家事や育児、職業に活躍する年代で、アンケートからも男性では仕事への不安、女性では仕事、家事動作への不安が多く、痛み、自律神経症状による生産的活動全般へ影響していると考える。ケベックらは「通常活動を早期に再開するようアドバイスする事は患者に良い影響を与える心理学的メッセージを送る事になる」とし、外傷性頚部症候群に対しても筋緊張調整、運動療法と併用し、不安症状への介入も重要と考える。シュルツ等が提唱する自律訓練法、早期から動作・活動の獲得へ向けた介入、悲観的な発言にも理解者として愛護的な対応が、安心感を提供し、不安感の軽減、症状の悪化や遅延化防止へ繋がるものと考える。
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中野 一樹, 堤 より子, 堤 聖, 斉藤 あさみ, 高塚 実那子, 井上 明生
セッションID: 386
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
フリー
【目的】
日本整形外科学会腰痛疾患問診表(以下JOABPEQ)は腰痛による機能障害、能力低下、社会的ハンディキャップおよび心理的問題などを多面的に評価できるものである。5つの重症度スコアはそれぞれが独立したものであるとされているが、疼痛関連障害、腰椎機能障害、歩行機能障害は質問が腰痛に限局したものが多くこれらの群間における相関は高いと考えられる。そこで今回JOABPEQにおける5項目の相関について検討した。
【対象と方法】
当院職員に腰痛に関する記述式アンケートを実施。(実施総数221名、回収率96.3%)。書面にて趣旨を説明し、同意の得られた職員のうち非特異的腰痛を訴える者(看護師、リハビリテーションスタッフ、事務、その他職員、計68名、平均年齢29±10歳)を対象とした。評価にはJOABPEQを使用し5項目の重症度スコアを100点満点に換算。5項目の相関に対しスピアマン順位相関係数検定を行った (p<0.01)。
【結果】
JOABPEQにおける5項目の群間全てにおいて、中等度の相関がみられた (r=0.43~0.64)。中でも疼痛関連障害と腰椎機能障害(r=0.59)、疼痛関連障害と歩行機能障害(r=0.59)、腰椎機能障害と歩行機能障害(r=0.64)における相関が高かった。
【考察】
各重症度スコアが独立したものであるとされているJOABPEQにおいて、本研究では全ての群間における相関を裏付ける結果となった。相関の高かった腰椎機能障害と歩行機能障害に関して、この腰椎機能障害とは体幹前後屈・回旋要素を含む項目であり、これらの動作制限が歩行に及ぼす影響は明らかである。Jacquelinは歩行時の頭部・体幹・骨盤の役割には衝撃吸収があり、頚椎から胸椎にかけての関節と比較して、仙骨の運動の吸収には腰椎への影響が大きいとしている。また疼痛関連障害と歩行機能障害の相関においては、腰背部痛の減少により歩行距離の増加を認める症例報告もなされており、腰痛は移動能力の低下を惹起すると考えられる。
【まとめ】
JOABPEQにおいて疾患特異的な質問の多い疼痛関連障害、腰椎機能障害、歩行機能障害における群間での相関が高いことから、非特異的腰痛を訴える患者においては腰椎機能や疼痛といった患者の主訴に沿ったアプローチによりADL能力として歩行機能の改善が見込まれると考えられる。また各群間の相関の高さからJOABPEQを用いた評価により、機能面や疼痛を知ることによって患者の全体像を簡易的に把握できると示唆される。
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底原 広明, 米須 功, 兼島 広樹, 小渡 綾子, 諸見里 智彦
セッションID: 387
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【目的】
2007年末に、わが国で慢性透析療法を実施している患者数は275、119人であり、沖縄県でも3、886人が透析療法を受けている.一般的に透析患者の運動耐用能(体力)は、おおよそ50%程度低下すると言われているが、透析患者において客観的に示した報告は少ない.生体電気インピーダンス法(以下、BIA法:Bio-electrical impedance Analysis)により、非侵襲的かつ簡便に身体の体脂肪や骨格筋量などを高精度に測定できるようになった.そこで、HD患者に対しHD後にBIA法による体成分分析装置を用いて各種体液量を測定し、そこから得た数値と日常生活動作(以下、ADL)評価法との関連性を分析し、体成分分析装置のHD患者に対するリハビリテーション臨床における有用性について検討をした.
【対象】
当院にてHD治療を受けているHD患者230名中リハビリテーションを受けている患者49名(男性:18名、女性31名)、平均年齢66.8±12.1歳.平均透析歴14.4±10.0年.原疾患は慢性糸球体腎炎26名、糖尿病性糸球体腎硬化症14名、腎硬化症3名、その他の疾患6名である.
【方法】
ADL評価法としてFIMを使用し、BIA法による身体組成の測定には体成分分析装置(Bio Space社製InBody S20)を使用した.血液検査データも参考とした. 各データを比較検討し、統計処理としてt-検定を用いた.危険率は5%未満で有意差ありとした.
【結果】
身体組成の測定結果は骨格筋量(外来:18.7±3.6kg、入院:18.1±5.5kg)、血液検査結果より血清クレアチニン(外来11.1±2.4 g/dl、入院:9.2±2.2 g/dl)であった.FIM(外来:123±8.2、入院:69.1±32.5)、と入院患者が有意に低かった(P<0.05).外来と入院患者の骨格筋量は有意な相関を示さなかったが(r=0.66)、血清クレアチニンでは有意な相関を示した(P<0.01).
【説明と同意】
ヘルシンキ宣言に沿い対象には、目的・方法を十分に説明し、研究発表をする旨の同意を得た.
【考察】
入院、外来とも透析患者の骨格筋量は標準より低下していた.入院患者と外来患者の間には骨格筋量には有意な差がなかった.クレアチニンとFIMは入院患者が有意に低下していた.この結果により、ADLに有意な差があっても、骨格筋量に差がないという興味深い結果が得られた.また、血清クレアチニンに有意な差が得られたことより、骨格筋の質に差があるのではないかと予測される.今後、更に多くのデータ収集を行い、第2報へ繋げたいと考える.一見元気に見える外来透析患者は長年の透析治療を受けているため、FIMの得点は高いが骨格筋量は低下しており、透析患者はADLの維持のために日頃の運動療法が必要であるのではないかと考える.
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西村 繁典, 文 哲也, 中島 義博, 加藤 美津子, 斎藤 弘道, 志波 直人, 橋口 道俊, 長藤 宏司, 岡村 孝
セッションID: 388
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
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【はじめに】
造血器腫瘍患者は多剤高用量の抗がん剤を使用し、基本動作・歩行能力・日常生活活動等に制限を来たす症例を多く経験する。
今回、造血器腫瘍患者への治療や活動制限によって生じる影響を日常生活活動量の視点から検討し、活動状態の把握を行った。また同時に、造血器腫瘍患者の活動量計測を行う際に使用する機器の検討も行った。
【対象と方法】
1.低活動強度動作に対する加速度計計測の妥当性
対象は、健常人男性1名(年齢36歳)。使用機器は、3軸加速度計(パナソニック電工株式会社、身体活動量計アクティマーカー、活動強度:METs表記、以下3軸)及び、1軸加速度計(株式会社スズケン、生活習慣記録機ライフコーダーGS、活動強度:0,0.5,1~9の11段階表記、以下1軸)。方法は、3軸・1軸を腰部装着し各々の動作(トレッドミル歩行、立ち上がり、起き上がり、寝返り)を5分間継続して実施し、計測される活動強度(METs)を確認した。
2.造血器腫瘍患者の日常活動状態の把握
対象は、治療により活動制限のある造血器腫瘍患者5名(男性2名、女性3名、34歳~73歳、平均60歳)。方法は、3軸を腰部装着してもらい、活動制限(ベッド上、病室内、病棟内)されている日常活動状態における活動量を計測し、活動強度レベル及び活動時間を把握した。本研究は、対象者に説明・同意を得て行った。
【結果】
1. 3軸・1軸ともに立ち上がり動作・歩行動作に関しては動作中の活動強度をカウントしており、活動強度は動作に応じた値を示していた。低活動強度(寝返り・起き上がり)での動作は、1軸において活動強度カウントは0.5(装着による体動での微小動作から1.8METs未満の動作までを示す)あるいは2(2.3METs)であり、動作中の活動強度を全てカウントしていなかった。3軸では、動作中活動強度をカウントしており4~6METsであった。
2.活動範囲により活動強度に差が見られたが(ベッド上(<3METs)・病室内(<3.5METs)、病棟内(<4METs))、活動時間の差はなかった。
【考察とまとめ】
健常人にて3軸・1軸の加速度計による同時計測を行い、歩行動作及び低活動強度動作での活動強度の比較検討を行った。低活動強度動作での1軸の動作測定は、動作中カウントできておらず(0.5あるいは2)、数値が各動作を示すものとは言い難く、3軸は動作をカウントしており、1軸と比較し3軸で計測したものが低活動強度動作をより検出していた。その為今回の機種比較では3軸で計測を行うことが、低活動状態を強いられる造血器腫瘍患者の活動を把握するためには適当と考える。
また、造血器腫瘍患者の日常活動状態を計測した結果、活動範囲により活動強度に差が見られ、病棟内を活動している患者でも3~4METs以下であり、今後活動強度を考慮したアプローチも重要と考える。
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1軸および3軸加速度計を用いて
文 哲也, 西村 繁典, 斎藤 弘道, 加藤 美津子, 中島 義博, 志波 直人, 岡村 孝, 長藤 宏司, 橋口 俊道
セッションID: 389
発行日: 2010年
公開日: 2011/01/15
会議録・要旨集
フリー
【目的】
造血器腫瘍患者の治療は多様で,多剤高用量の抗がん剤を使用するため有害事象が強く出ることが多く,患者の日常生活動作(以下ADL)を制限し,長期臥床および廃用症候群を引き起こす.今回,各活動範囲における造血器腫瘍患者の日常生活活動量を把握する目的で活動強度に着目し測定した.
【方法】
対象は,治療により活動範囲制限のある造血器腫瘍患者8名(男性4名,女性4名,57.6±12.9歳,ベッド上1名,病室内2名,病棟内2名,院内5名)で,活動強度測定には加速度計付歩数計(以下,加速度計)を用い,入院中の活動強度(MET)を測定した.加速度計には生活習慣記録機(Lifecorder GS,株式会社スズケン,以下1軸加速度計),身体活動量計(アクティマーカー,パナソニック電工株式会社,以下3軸加速度計)の2種類を用い,それぞれを1日中腰部に装着して各活動制限状態における活動強度を比較した.〈BR〉なお,本研究はヘルシンキ宣言の主旨に沿うこととし,内容,方法を口頭と書面で説明し,同意を得た後に行った.
【結果】
活動制限によって活動強度に差が見られ,最高活動強度の平均は,1軸加速度計ではベッド上2.3METs,病室内2.6METs,病棟内2.9METs,院内3.9METs,3軸加速度計ではベッド上3.0METs,病室内3.3METs,病棟内3.8METs,院内4.0METsであった.
【考察とまとめ】
1軸および3軸加速度計を用いて入院中の造血器腫瘍患者の身体活動強度を比較した.1軸加速度計では3軸加速度よりも活動強度が低値になる傾向があった.非運動性身体活動(Non-Exercise Activity Thermogenesis,以下NEAT)は,安静臥床以上で3.0METs以下の微小な活動である.活動範囲制限がある場合では,特にその積み重ねは身体活動量の向上につながり,3軸加速度計は,この検出が多い傾向にあった.本研究により,治療による活動範囲制限や入院生活自体が活動強度を制限する因子となりうることが示唆された.2010年度より始まったがんのリハビリテーションでは,リハビリテーションは入院中しか認められておらず,退院までに通常の日常生活の活動強度も考慮し、活動制限の範囲に応じたリハビリテーションの提供を考える必要性がある.
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