農研機構研究報告
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2020 巻, 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
表紙・目次・編集委員会・奥付
原著論文
  • 長田 健二, 小林 英和, 千葉 雅大
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 2020 巻 5 号 p. 1-9
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2022/02/01
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    近年開発された業務用向け水稲新品種「恋初めし」の温暖地西部地域での生育収量および品質特性を明らかにするために栽培試験を行った.2015 ~2018 年において6 月上中旬移植,総N 施肥量12 g m-2 の条件で検討した結果,「恋初めし」は4 年平均で735 g m-2 の高い収量性を示し,主食用一般品種「ヒノヒカリ」に対する増収程度は13%で,業務用品種「あきだわら」と同等であった.「恋初めし」は総籾数は少ないものの千粒重が大きいためにシンク容量が大きく確保されることに加え,登熟歩合が高く,多収を実現していた.また,外観品質は「ヒノヒカリ」と同等で,同一作期に作付けした「あきだわら」より優れる傾向にあった.一方で,「恋初めし」では,「ヒノヒカリ」より苗がやや伸長しやすく,生育期間中の分げつ発生が少ない特徴を有することが,栽培管理上の留意点として明らかになった.

  • 松下 景, 前田 英郎, 山口 誠之, 笹原 英樹, 重宗 明子, 長岡 一朗, 後藤 明俊
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 2020 巻 5 号 p. 11-20
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2022/02/01
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    「亜細亜のかおり」は多収の高アミロース米品種の育成を目的として,高い収量性をもつ「関東239 号」(後の「やまだわら」)を母とし,高アミロース米系統「北陸207 号」(後の「越のかおり」)を父とする人工交配から育成され,2018 年に品種登録出願された.移植栽培での「亜細亜のかおり」の出穂期および成熟期は「あきだわら」並で,その早晩性から,「亜細亜のかおり」の栽培適地は北陸および関東以西である.稈長および穂長は「あきだわら」よりやや短く,穂数はやや少ない.精玄米重は「あきだわら」並で,「越のかおり」と比較し標肥で20%,多肥で25% 程度多収である.玄米千粒重は26 ~27g で,玄米外観品質は「あきだわら」「越のかおり」より劣る.「亜細亜のかおり」のアミロース含有率は「越のかおり」並の30 ~35% で,尿素崩壊性は“難”であり,米麺の食味は「越のかおり」並である.葉いもち圃場抵抗性は“やや強”,穂いもち圃場抵抗性は“弱”である.白葉枯病圃場抵抗性は“中”,縞葉枯病には“罹病性”,耐倒伏性は“中”,障害型耐冷性は“弱”,穂発芽性は“やや難”である.

  • 山迫 淳介, 末吉 昌宏
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 2020 巻 5 号 p. 21-30
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2022/02/01
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    農業環境変動研究センターに一般コレクションとして所蔵されているハエ目標本を調査し,外国産ミバエ科標本全4 亜科55 種171 点について目録を作成した.これらには,重要な農業害虫種11 種80 個体の他,原記載以降記録が極めて少ない種やDacus (Zeugodacus) katoi Hardy,1974 の正模式標本も含まれる.本目録ではこれらの標本情報を掲載し,全種について標本写真を付した.

  • 長坂 幸吉, 杜 建明, 日本 典秀, 守屋 成一, 後藤 千枝, 櫻井 民人, 山内 智史, 澤田 守
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 2020 巻 5 号 p. 31-48
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2022/02/01
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    施設ミニトマトにおいて有機JAS 規格で実施可能な害虫管理プログラム(IPM プログラム)を検討するために,2009 年~2013 年および2015 年~2019 年の栽培期間中,茨城県内の有機認証圃場(面積11 ~22 a)において2 週間に1 回,植物上の害虫種と個体数を調査した.主要害虫は,コナジラミ類,アブラムシ類,トマトサビダニであった.コナジラミ類は天敵ツヤコバチ類の放飼により著しい被害がでない程度に抑制した.ワタアブラムシには天敵コレマンアブラバチを用いた.2009 年と2010 年の接種的放飼ではワタアブラムシがハウス全体に広がったため,2011 年以降はバンカー法を実施することで,継続的に低密度に抑制した.チューリップヒゲナガアブラムシは,2010 年以降,天敵チャバラアブラコバチ(試験的使用含む)を用いて抑制した.2016 年のみは定植直後からのチューリップヒゲナガアブラムシの発生により,天敵による密度抑制が不可能となり,栽培を中止したハウスがあった.これは,育苗圃への害虫の持ち込みが原因であったため,翌年以降はこれを防ぐ作業分担とした.トマトサビダニは2009 ~2011 年は被害株率が20%以上におよんだが,ミルベメクチン乳剤が有機栽培適合資材となり散布できるようになったため,2012 年以降抑制が可能となった.これらの対策により,当初2,000kg /10a に満たなかった収穫量が,2019 年には5,000kg に達した.これらの圃場での実践を経て確立したIPM プログラムを提示した.

  • 中野 優子, 早川 文代, 香西 みどり
    原稿種別: 研究論文
    2020 年 2020 巻 5 号 p. 49-56
    発行日: 2020/11/30
    公開日: 2022/02/01
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    温度及び味・風味が粒子に関連する口中感覚に及ぼす影響を,ニンジンピューレと微結晶セルロース懸濁液を用いて検討した.破砕の程度が異なる3 種のピューレについて,コントロール(20 °C,無添加)と低温(10 °C),高温(60 °C),グラニュー糖添加(20 °C),クエン酸添加(20 °C)試料間の2 バイトテクスチャー試験による硬さ,凝集性,付着性および官能特性を比較した.低温試料では,機器測定による硬さと付着性はコントロールよりも有意に高かったが,知覚される粒子感やなめらかさに差は無かった.破砕の程度が粗いピューレでは,高温またはグラニュー糖添加でなめらかさが高く,この影響は粒子を感じやすい条件で現れると考えられた.次に粒子を知覚しやすい微結晶セルロース懸濁液を用い,コントロール(20 °C,無添加)と低温(10 °C),高温(60 °C),グラニュー糖添加,クエン酸添加,バニラエッセンス添加,レモンエッセンス添加(いずれも20 °C)試料の粒子感を,口に入れた直後,口腔内保持中,嚥下後に評価した.その結果,香りは粒子感に影響せず,高温またはグラニュー糖添加で粒子感は低下した.クエン酸添加試料では嚥下後の方が粒子感は強く,口に入れてからのタイミングを考慮した評価の必要性が示された.

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