農研機構研究報告
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2023 巻, 15 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
表紙・目次・編集委員会・奥付
総説
  • 田渕 研, 石岡 将樹, 對馬 佑介, 吉田 雅紀, 小野 亨, 新山 徳光, 高橋 良知, 中島 具子, 上野 清, 松木 伸浩, 吉村 ...
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 1-52
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    電子付録

    斑点米カメムシ類は東北地域のみならず全国で依然として水稲の最重要害虫である.日本海側地域で分布と被害を拡大しているアカスジカスミカメに加えて,近年では東北太平洋側地域で温暖化によると思われるクモヘリカメムシの分布拡大も報告されている.このため,被害発生リスクは高止まりのままであり,今後の発生状況に注視していかなければいけない.斑点米カメムシ類による被害への将来的な研究展開や技術開発に資するため,2014 年から 2021 年にかけて東北地域において調査された斑点米カメムシ類と斑点米被害の発生状況を取りまとめ,主要種の変遷や開発された対策技術を概観した.また,斑点米カメムシ類が全国的に問題となった 1990 年代後半から現在までの主要種の全国的な変遷,被害状況や注意報・警報発表の推移,予察手法,斑点米被害に影響する要因とその対策研究,今後懸念される問題点について解説し議論した.

原著論文
  • 伊藤 淳士, Stephen Njehia NJANE
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 53-60
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    大規模均一栽培圃場での生育調査は,大きな労力を要する.それらをドローン空撮および画像解析により代替する手法を検討した.複数の画像から対象物の形状を3次元的に構成する手法に SfM がある.ドローン空撮画像を SfM 処理する手法は広く使われているが,空撮の際に地上基準点(GCP)を適切に配置することでその精度を高める必要がある.大規模均一栽培圃場では全面を作物で被覆しているため,GCP の設置に制約がある.特に圃場内部への GCP の設置は作業強度が高く,かつ圃場均一性への影響もあるため極力避けたい.検証の結果,圃場の 4 つの角および 4 つの辺の中程の計 8 箇所に GCP を設置すれば,圃場内部にも GCP を設置した場合と比較しても遜色ない精度で草高を推定できることが分かった.また,ドローンの飛行時間は飛行高度の 2 乗に反比例するため,より高い高度で飛行することが時間短縮につながるが,高度を上げればそれだけ空間分解能は低下する.本試験の条件下では,4 ha 程度の圃場の場合,前述の GCP を 8 個設置し飛行高度を 50 m とすることで十分な精度が得られた.これらにより,ドローン空撮により従来の生育調査をより省力的にかつ高精度に行うことができることを示した.

  • 細山 隆夫, 杉戸 智子
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 61-69
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    近年の北海道では稲プラス露地野菜の大規模水田作複合経営の形成が課題とされている.そのなか,同複合経営が展開する道南地域が注目された.そこで,本稿は道南地域の農業構造を把握するとともに,大規模水田作複合経営の存立条件を明らかにした.

    その検討結果は次のように整理される.第1に道南地域では(1)借地流動化が進み,経営規模も拡大するとともに,(2)野菜作のウェイトが高い実態にあった.(3)稲作と野菜作との複合経営展開という点から見ると,胆振が代表的地域となっていた.第2に胆振管内X町の大規模水田作複合経営の存立条件としては,雇用型法人経営のもと,(1)露地野菜作遂行に常雇を複数確保していたこと,(2)水稲,露地野菜の作物ごとに大面積農地の団地が形成されていたことがある.

  • 本城 正憲, 塚崎 光, 濱野 惠, 由比 進, 片岡 園, 奥 聡史, 日浦 聡子, 細田 洋一, 對馬 由記子, 東 秀典, 山田 修, ...
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 71-76
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    ‘夏のしずく’ は 2011 年に ‘みやざきなつはるか’ に,06sAB-4e(‘なつあかり’×盛岡30号)を交配して育成したイチゴ品種である.草姿は立性で,草勢は強く,ランナーの発生本数は多い.四季成り性であり,国産イチゴの端境期である夏秋期に収穫できる.‘なつあかり’ や ‘サマーベリー’ より収量が多く,夏期冷涼な立地では 3 t/10 a 以上の商品果収量が見込める.収穫期間を通じた商品果平均 1 果重は ‘なつあかり’ や ‘サマーベリー’ と同程度の約 10 g 前後である.果実は円錐形で,果皮色は赤,果肉色は淡赤である.痩果深度は果皮並で,夏秋どり栽培において問題となりやすい種子浮き(種子が表面に強く突出する状態)は生じにくい.輸送性・日持ち性に関わる果実硬度は ‘なつあかり’ や ‘サマーベリー’ より高く,夏秋期における業務需要に適する.糖度,酸度ともに高く,ケーキなどのスイーツに向く食味である.

短報
  • 上地 奈美, 高梨 琢磨
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 77-
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    果樹を加害するカメムシの主要種であるチャバネアオカメムシ成虫において,未交尾の雌雄成虫がパルス状の振動を発生することを初めて確認した.とくに,雌成虫では腹部を頻繁に上下方向に動かす行動が観察された.発生した振動のパルスの長さは約 0.18 秒,加速度は約 0.16 m/s2,優位な周波数は 150 Hz,実効値(優位周波数における加速度の二乗平均平方根)は0.006 m/s2であった.また,動画解析より算出したパルスの頻度は 1 秒当たり 7.5 回,振幅は約 0.077 mm であった.したがって,チャバネアオカメムシの成虫が雌雄および個体間の交信に基質を伝わる振動を用いていることが示唆されるとともに,人為的な振動を用いた行動制御技術を適用できる可能性が高まった.

  • 湯本 弘子
    2023 年 2023 巻 15 号 p. 83-
    発行日: 2023/07/31
    公開日: 2023/07/31
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    青果物の呼吸を抑制することは,体内の代謝とそれに伴う内容成分の消耗を抑えることにより収穫後の品質保持に有効である.本研究では切り花の貯蔵技術開発のため,輪ギク,小ギク,バラ,カーネーション,トルコギキョウ,エゾリンドウ,ササリンドウ,ユリ,チューリップ切り花を用いて,低酸素環境が呼吸速度に及ぼす影響について調査した.その結果,輪ギク,小ギク,ササリンドウ,ユリでは酸素濃度 10 %以下で,トルコギキョウ,エゾリンドウ,チューリップでは酸素濃度 5 %以下で通常酸素濃度(21 %)区に比べて呼吸速度が低下した.一方,バラとカーネーションでは酸素濃度 2 %区と通常酸素濃度(21 %)区の間に呼吸速度の有意な差がみられなかった.このように,呼吸の抑制に有効な酸素濃度は切り花品目によって異なることが明らかになった.

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