農研機構研究報告
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2023 巻, 14 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
表紙・目次・編集委員会・奥付
原著論文
  • 吉村 元博, 藤原 崚, 秋山 征夫
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 2023 巻 14 号 p. 1-7
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    植物高などの高さ情報を無人航空機で取得する方法に,複数の多視点画像から3 次元モデルを構築する技術がある.高精度なモデル構築には地上基準点(GCP)を用いた標定か無人航空機によるRTK-GNSS 測位が望ましいが,前者は GCP の維持管理やモデル構築前に手作業で補正を行う労力がかかり,後者の機能は国産機体には未実装である.カメ ラを真下向き(角度-90°)にして撮影した画像から3 次元モデルを構築すると,出力結果が中央から外周に向かって歪むことが知られているため,GCP の配置とカメラ角度を変えて精度検証点の推定誤差を比較し,少ないGCP で推定誤差が小さい条件を検討した.その結果,カメラ角度が-60°のときはGCP を四隅のみに絞っても鉛直方向の推定誤差が1.3 cm 程度に抑えられ,中心部と周縁部の鉛直方向の推定誤差も小さく,出力結果の歪みが小さかった.一方カメラ角度が-90°のときは,GCP を17 個に増やしても鉛直方向の推定誤差が13 cm であった.以上より,数cm レベルの高さ情報の推定精度と作業効率を両立するためにはカメラに角度をつけ,GCP を四隅のみに絞ればよいことが示された.

  • 八重垣 英明, 末貞 佑子, 山口 正己, 土師 岳, 澤村 豊, 安達 栄介, 山根 崇嘉, 鈴木 勝征, 内田 誠
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 2023 巻 14 号 p. 9-18
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    ʻ麗和ʼとʻ和郷ʼは果樹茶業研究部門において育成されたウメ新品種である.ʻ麗和ʼは1998 年にʻ加賀地蔵ʼにʻ月知梅ʼを交雑し育成した実生から,ʻ和郷ʼはʻ剣先ʼに選抜実生のMM-43-22 を交雑し育成した実生から選抜したウメ品種である.ʻ麗和ʼとʻ和郷ʼは2008 年からウメ第3 回系統適応性検定試験に,ウメ筑波12 号とウメ筑波14 号として供試し,2020 年2 月の令和元年度果樹系統適応性検定試験成績検討会で新品種候補にふさわしいとの合意が得られ, 2022 年8 月17 日に登録番号29369 号および29370 号として種苗法に基づき品種登録された.ʻ麗和ʼとʻ和郷ʼともに花弁は白色であり,ʻ麗和ʼは八重で,ʻ和郷ʼは一重である.ʻ麗和ʼとʻ和郷ʼともに花粉を有し、自家和合性で結実良好である.育成地において,開花期はそれぞれ3 月12 日と3 月11 日であり,収穫期はそれぞれ6 月22 日と6 月18 日である.1 樹当たりの収量は11 ~13 年生樹の平均でそれぞれ22.7 kg と61.7 kg である.果実重はそれぞれ38 g と34 g 程度であり,果汁の滴定酸度は両品種ともに6.7%程度である.核重はそれぞれ2.7 g と1.7 g,核重率はそれぞれ7.1%と4.9%であり,ʻ和郷ʼはウメ品種の中では極めて核重率が低い.ヤニ果の発生は,両品種ともに少ない.ʻ麗和ʼの加工適性は,梅干しではʻ南高ʼより劣る評価となったがʻ白加賀ʼとは同程度であった.梅ジュースでは酸味が強く渋味があった.ʻ和郷ʼの加工適性は,梅干しではヤニ果が少ない時にʻ白加賀ʼより良い評価であるが、多いと評価が下がった.梅ジュースではʻ白加賀ʼとʻ南高ʼと同等かやや低い評価であった.

  • 清水 ゆかり, 石川 哲也, 梅本 雅
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 2023 巻 14 号 p. 19-28
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    農業労働力の減少や米価下落等を背景に,日本の稲作経営数は大きく減少し,水田農業における担い手は従来にない速度での規模拡大が進み,100 ha を超える大規模稲作経営も全国各地で成立してきている.それら大規模経営では,圃場枚数の増加や作型の多様化に伴い,適期内での作業遂行や的確な栽培管理が困難となりやすく,繁忙期における作業競合の回避と共に,労働力や農業機械の適切な配置が重要となる.本研究は,茨城県の規模拡大事業及び農水省スマート農業実証事業に参画した大規模稲作家族経営2 法人を対象として,規模拡大過程の3 年間における農地の集積状況と労働力,春作業の作業構造の変化を検討し,急激かつ大幅な規模拡大への対応方策を明らかにする.事例分析の結果,急速かつ大幅な規模拡大が想定される場合の方策として,(1) データ活用型の作業・栽培管理の実施,(2) スマート農機・スマート技術の活用による従業員の技能の補完・向上とそれによる労働力体制の再編,(3) 農地の集約化等,土地条件の高度化を進めること等の新たな取り組みが重要であると考えられた.

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