農研機構研究報告
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表紙・目次・編集委員会・奥付
原著論文
  • 田村 健一, 田瀬 和浩, 眞田 康治, 小松 敏憲, 秋山 征夫, 谷津 英樹, 横山 寛, 高山 光男, 林 拓, 牧野 司, 出口 健 ...
    2024 年 2024 巻 17 号 p. 1-22
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    フェストロリウム「ノースフェスト」は越冬性や放牧適性等を育種目標として四倍体のメドウフェスクとペレニアルライグラスの交雑後代を母材に育成された複二倍体品種であり,4 母系 19 栄養系で構成される.北海道内 7 か所での地域適応性検定試験の結果,「ノースフェスト」の越冬性はいずれの地域でもペレニアルライグラス「ポコロ」や既存のフェストロリウム品種より優れた.メドウフェスク「ハルサカエ」との比較においても,越冬条件が厳しい根釧地域で劣ったことを除けば十勝地域を含めたそれ以外の地域では同程度からやや優れた越冬性を示したことから,道北・道央・道南に加え,道東の比較的越冬条件の穏やかな地域に至るまで安定栽培が可能であると判断された. 「ノースフェスト」は放牧利用を想定した多回刈条件において全道平均での収量が「ハルサカエ」および「ポコロ」より多収であり,かつ季節生産性が平準化していたことなどから,放牧利用に適すると考えられる.また総繊維に占める高消化性繊維の割合が高いなどペレニアルライグラスと同等の優れた飼料品質を示すとともに,両草種より初期生育性が優れていることから,経年草地への追播での活用も期待される.

  • 下坂 悦生, 田宮 誠司, 浅野 賢治, 津田 昌吾, 西中 未央, 森 元幸, 小林 晃, 向島 信洋, 赤井 浩太郎, 岡本 智史, 高 ...
    2024 年 2024 巻 17 号 p. 23-37
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    「しんせい」は,ともにジャガイモシストセンチュウ抵抗性でポテトチップ加工適性のある系統「98009-8」を母,「00045-4」を父として,2005 年に北海道農業研究センターにて交配採種し,2006 年に播種した実生集団より育成されたポテトチップ加工用品種である.ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を有し,枯ちょう期は,「スノーデン」よりも早く,「トヨシロ」よりやや遅いが「トヨシロ」と同様の中早生であり,ポテトチップ規格内いも重は「トヨシロ」並みで「スノーデン」より少ない.でん粉価は「トヨシロ」よりやや高く,「スノーデン」より高い.収穫時から翌年 6 月までの長期貯蔵を行なっても「スノーデン」より焦げにくく,チップカラーが優れ,エチレン貯蔵への適性も有することから,国産原料が不足する 2 月から 6 月のポテトチップ原料の安定供給への寄与が期待でき,北海道を中心にポテトチップ加工用バレイショの生産地において「トヨシロ」や「スノーデン」の一部置き換えとして普及することが見込まれる.

  • 津田 直人, 太田 久稔, 横上 晴郁, 藤村 健太郎, 石川 覚, 安部 匡, 福嶌 陽, 梶 亮太, 黒木 慎
    2024 年 2024 巻 17 号 p. 39-52
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    「ふくひびき環 1 号」,「えみのあき環 1 号」は,「コシヒカリ環1号」由来のカドミウム(Cd)低吸収性を東北農業研究センターが育成した水稲品種である「ふくひびき」,「えみのあき」に導入するため,「lcd-kmt2」(後の「コシヒカリ環 1 号」)と「ふくひびき」もしくは「えみのあき」を戻し交配し,東北農業研究センターで選抜,育成した同質遺伝子系統である.それぞれ「奥羽 IL1 号」,「奥羽 IL3 号」の地方名で栽培特性・品質特性を検討し,Cd 低吸収性と原品種との同質性が確認されたため,2021 年に品種登録出願を行った.育成地(秋田県大仙市)での標肥移植栽培における特徴は,出穂期,成熟期,稈長,穂長,穂数,収量性,食味,耐病性等の主な農業特性は,いずれも原品種である「ふくひびき」,「えみのあき」と同程度であった.また,現地栽培試験や Cd 汚染土壌を用いたポット試験の結果から,Cd 吸収性は「コシヒカリ環 1 号」と同程度に極めて低かった.「ふくひびき環 1 号」,「えみのあき環 1 号」は,「コシヒカリ環 1 号」では熟期や耐病性等が問題となる東北地域中部以南の Cd 吸収抑制対策が必要な地域において普及が期待される.

  • 小野崎 隆, 藤本 卓生, 東 未来
    2024 年 2024 巻 17 号 p. 53-69
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    日持ち性は花きの重要形質であり,2014 年から日持ち性の向上を目標としたダリア育種を開始した.22 品種を育種材料として品種間交雑を行い,切り花の日持ち日数を指標とした選抜とその選抜系統間での交雑を 3 世代繰り返した.2020~2021 年に系統適応性検定試験を実施した結果,桃色に中心白色の美しい複色花色の第 3 世代選抜系統 828-18,および濃桃色の系統 937-C58(‘NAMAHAGE キュート’× 第 2 世代選抜系統 628-48)の 2 系統が新品種候補として有望と判定され,2022 年 7 月に,それぞれ ‘エターニティピーチ’ および ‘エターニティシャイン’ として品種登録出願した.2 品種の最大の特徴は,優れた日持ち性である.2020 年および 2021 年の調査で,2 品種の日持ち日数は,蒸留水で6.4~12.3 日(切り花用主要品種 ‘かまくら’ の 1.2~2.2 倍),GLA(1%グルコース,0.5 mL・L-1 kathon CG および 50 mg・L-1 硫酸アルミニウムから構成される品質保持剤)で 9.1~12.1 日(‘かまくら’ の 1.4~2.0 倍)であった.‘エターニティシャイン’ はエチレン処理に対する感受性が低く,落弁が生じにくかった.2020~2021 年に全国 5 カ所で栽培時期の異なる作型で栽培した切り花も同様の良日持ち性を示したことから,2 品種の優れた日持ち性は環境によるものではなく,品種特性であることが明確に示された.

  • 八重垣 英明, 末貞 佑子, 河野 淳, 澤村 豊
    2024 年 2024 巻 17 号 p. 71-77
    発行日: 2024/03/29
    公開日: 2024/03/29
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    地球温暖化の影響によるモモの栽培適地の北上や自発休眠覚醒の遅延への対策として,低温要求量の少ない品種の導入が考えられる.本研究では低温要求量が少ないと考えられる品種および選抜系統の切枝を用いた調査を 4 年間行い,それぞれの低温要求量および高温要求量を明らかにした.供試個体の低温要求量は,chilling hours で 225 CH から 862 CH の,chill unit で 346 CU から 880 CU の差異があったが,いずれも主要品種よりも少なかった.‘TropicSnow’ は 250 CHと 384 CU,‘モモ台木筑波 1 号’ は 592 CH と 706 CU であった.高温要求量は,growing degree hoursで 4694 GDH から 5893 GDH の範囲であった.‘TropicSnow’ は 5278 GDH,‘モモ台木筑波 1 号’ は 4965 GDH などと台木品種が少ない傾向であった.

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