理学療法 - 臨床・研究・教育
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14 巻, 14 号
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講座
研究と報告
  • 坂本 望, 宮本 裕子, 崎本 充, 森尾 卓哉, 山根 直哉, 平岡 昌樹, 安永 彰子, 茶川 治樹, 飛松 好子
    2007 年 14 巻 14 号 p. 16-20
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     回復期リハビリテーション病棟入院における転倒の特性を知るために,入院時,退院時のFIM改善度を比較し,検討した。対象は,当院回復期リハビリテーション病棟を退院した患者83名とし,転倒群,非転倒群に分け,退院時FIMの得点から入院時のFIMの得点を引き,改善得点を算出した。セルフケアは,食事,整容,更衣・上半身,更衣・下半身において転倒群の方が有意に高かった。移乗は,ベッド・椅子・車椅子,トイレにおいて転倒群の方が有意に高かった。移動は,歩行・車椅子において転倒群の方が有意に高かった。社会的認知は,問題解決において転倒の方群が有意に高かった。合計も転倒群の方が有意に高かった。日々のADLの変化に着目し,FIMの改善が予測される患者には,早急に転倒予防の整備をすることが,回復期リハ病棟の転倒予防の手段の一つと考えられる。また,今後の転倒予防への指標の1つにしたいと考える。
  • ―術前・術中因子の比較と術後離床日数・在院日数との関係―
    齋藤 康人, 柳澤 千香子, 押見 雅義, 鈴木 昭広, 礒部 美与, 高橋 光美, 洲川 明久
    2007 年 14 巻 14 号 p. 21-27
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     肺癌術後心肺合併症に影響する因子や術後離床日数及び在院日数との関係について術式別に検討した報告は少ない。今回我々は一側肺全摘除術患者の術前・術中因子が術後心肺合併症に影響するか,また,術後心肺合併症の有無が術後離床日数及び在院日数に影響したかを検討した。対象は当センターで肺癌による一側肺全摘除術を施行し術前術後リハビリテーションを行った連続42例とした。対象を術後心肺合併症非合併群(N群)と心合併症群(C群),肺合併症群(P群)に分類し,術前・術中因子,術後離床日数・在院日数を比較した。術前・術中因子の比較では術側,N群とC群との間での麻酔時間,N群とP群との間でのFEV1.0%に有意な差が認められた(p<0.05)。術後離床日数・在院日数の比較ではN群とC群との間で術後離床日数に,N群とP群との間で術後在院日数に有意な差が認められた(p<0.05)。以上より,手術中の不整脈や循環不全などにより麻酔時間が延長した症例やFEV1.0%が低下している症例では,慎重かつ重点的な術前術後リハビリテーションアプローチが必要と考えられた。また,C群では術後離床までの日数が遅延していたことから,今後は心合併症症例に対する術後リハビリテーションプログラムや実施基準について長期的に検討していきたい。
  • ―股関節回旋筋力と疲労調査の検討から―
    瀬下 寛之, 鳥居 俊, 新谷 益己
    2007 年 14 巻 14 号 p. 28-33
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     投球動作は,身体のあらゆる部位が連動して行われる一連の動作を言い,この連動過程に何らかの障害が発生すると投球障害を招く危険性を示唆する。今回,投球障害の予測因子として股関節回旋筋力と主観的疲労感に着目し,それらの関連から投球障害の予測因子について検討した。対象は高校硬式野球部員39名とした。方法は質問紙により基本情報,疲労,疼痛に関する調査を行い,その中の疲労に関して,練習中及び練習後の疲労好発部位を記録させ,それが翌日まで残存するか否かにより残存群と非残存群とに分類し,両群の股関節回旋筋力を比較した。軸脚及び非軸脚内・外旋筋力を残存群と非残存群とで比較したところ,残存群で有意に低値を示した。さらに,残存群での軸脚及び非軸脚の比較において,内旋筋力は非軸脚で有意に低値を示したが,外旋筋力は有意差が認められなかった。今回の調査は,投球障害を予測する一つの指標として活用できるものと考える。
  • 荒木 智子, 鳥居 俊
    2007 年 14 巻 14 号 p. 34-41
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     幼児の足部形態を計測し,利き手・利き足の調査結果をもとに足長・足幅の左右差から上下肢の機能分化との関連を検討した。対象は健常な幼児257名である。荷重位・非荷重位の足長・足幅を計測し,利き手・利き足に関する質問紙調査を実施した。足長・足幅は月齢と有意に相関して増加した。荷重非荷重差は男児右足幅を除く全てで有意差は示され(p<0.01),全ての年齢で有意な左右差が示された(p<0.05)。左右差の月齢に伴う増大は足幅でのみ示された(p<0.01)。利き手・利き足は約80%が右で,3歳から5歳では月齢と利き足の点数分布で有意差があり,利き手・利き足の機能分化に差異があることが示された。足長は長軸方向へ成長をしながら右が大きくなり,足幅は筋や腱などの成長に伴い,支持機能を持ち左が大きくなると推測された。幼児期では利き手・利き足の分化と足部の成長が同時に進み,成長に伴い利き足が右へ分化することから,左は支持機能を持ち,足部形態に左右差が生じることが示唆された。
  • ―若年-高齢者間の立ち上がり動作の相違を重心軌跡の曲率特性の視点から―
    万治 淳史, 新田 收
    2007 年 14 巻 14 号 p. 42-47
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     高齢者の手すりを用いた立ち上がり動作における重心移動軌跡の特徴を数値として明確に分析することを目的として,若年-高齢者の立ち上がり動作の特徴を重心軌跡の曲率という視点から比較した。対象は若年群(19歳~22歳)10名,高齢者群(65歳~95歳)11名とした。方法は被験者に前方に設置したピックアップウォーカーを用いて立ち上がりを行ってもらい,身体各指標点にマーカーを貼付し,VICON360により座標を計測,重心位置を算出,動作中の重心移動軌跡およびその曲率を計測・算出した。算出された曲率値から曲率最大値と,最大値を記録した時間(曲率最大点)について比較検討した。結果,曲率最大値は若年群が高齢者群に対し有意に大きい値を示し,若年者では,立ち上がりにおいて有意に遅く最大曲率を示すことがわかった。このように,起立動作における重心移動軌跡の曲率およびその経時変化という視点から若年‐高齢者間に差が認められた。
  • 崎本 充, 坂本 望, 平岡 昌樹, 荻田 康則, 宮本 裕子, 森尾 卓哉, 金井 千賀子, 山根 直哉, 中澤 紀子, 安永 彰子, 茶 ...
    2007 年 14 巻 14 号 p. 48-51
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     当院回復期リハ病棟では,目標指向的アプローチの一環として平成17年6月より早出業務を実施している。今回,当院における早出介入による「しているADL」への効果を検討した。対象は,平成17年6月20日から9月30日の期間に,回復期リハ病棟に入院した患者のうち,PT・OTが早出で介入した73名であった。介入項目は,更衣・食事・整容・移動動作の4項目で,各項目ごとに介入頻度別に1回群,複数群に分け,疾患別では整形群,中枢群に分類し,介入前後での各患者のFIM得点を比較した。更衣動作における1回群,複数群,中枢群では有意差が認められた。その他の項目については,有意差が認められなかった。更衣動作は,ADL場面において実施頻度が高いため効果が得られたと考えられた。整容・移動動作においては,動作の「質的向上」が図られたと考えられた。
  • ―現状把握と今後の課題―
    増田 岳彦, 井田 真人, 榎本 陽介, 菊池 隼, 近藤 麻美, 斉藤 理恵, 塚田 陽一, 松谷 実, 荻野 雅史, 田中 直, 野内 ...
    2007 年 14 巻 14 号 p. 52-57
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     脳卒中片麻痺患者へ行う理学療法においては種々の方法論が提唱されているが,治療法の選択などは施設,理学療法士(PT)により様々である。当院は脳卒中急性期病院であり,リハビリテーション(リハ)を実施する片麻痺患者に対し,装具の処方・作製を積極的に取り入れている。今回は,当院における装具処方の現状把握と,今後の装具処方・作製に反映させ,臨床での装具療法の一助とするために,平成13年から平成18年までの装具処方状況を調査した。その結果,当院における装具処方はプラスチック短下肢装具(PAFO)が最も多く全体の約6割を占めていた。装具処方までの期間は先行文献と比較して全体的に多くの期間を要しており,装具療法の早期展開の必要性が示唆され,それに対するPTの担う役割は非常に重要であると考えられた。
  • 村上 雅也, 荒川 美穂, 川上 康子, 久保田 章仁, 森山 英樹
    2007 年 14 巻 14 号 p. 58-62
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/05/15
    ジャーナル フリー
     在宅生活を送る要介護高齢者30名(要支援4名,要介護26名)を対象に意欲と生活動作能力との関連について調査・研究を行った。意欲の評価にはMood Check List-Short Form(MCL-S.1)を用いた。高次生活動作能力の評価には老研式活動能力指標を,日常生活動作(以下ADL)能力の評価にはBarthel Indexを用いた。統計学的分析は各質問項目を点数化し,スピアマンの順位相関係数の検定を用いて行った。その結果,高次生活動作能力の多くは意欲と相関がみられなかったが,高次生活動作能力の一部「知的能動性」とADL能力に意欲との相関が認められた。
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