理学療法 - 臨床・研究・教育
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21 巻, 1 号
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講 座
  • ―研究的な視点を持った症例検討―
    渡辺 学
    2014 年 21 巻 1 号 p. 3-7
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    忙しい臨床の中であらゆる症例に詳細なデータの測定と分析を行っていくのは難しい。治療者の記憶に基づいた臨床経験には主観というバイアスが強く働く。患者の回復能力を最大限に引き出すためには,自らの臨床的意思決定を客観的に評価できるようにしなければならない。そのためには研究的な視点を持った症例検討を行う必要があり,手順として,①フィードバック,②症例検討,③臨床的疑問,④症例研究,の順でステップアップしていくのがよいと思われる。理学療法士というプロフェッショナルとしての臨床技術を高め,そして自信を持てるようになるには,データに基づく症例検討を行うことが非常に有効で近道であると思われる。
  • 國澤 洋介, 高倉 保幸, 國澤 佳恵, 武井 圭一
    2014 年 21 巻 1 号 p. 8-11
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    臨床場面での気づきや疑問点を整理し,客観的に捉えて分析していく能力を高めることは,臨床家である我々理学療法士の責務である。症例検討は,この職責を全うするための手段として有用であり,日々の理学療法業務の中から意識的に実践していく必要がある。より有意義な症例検討を行い,理学療法士としてステップアップするためには,臨床活動で生じた興味や疑問にどのように着目していくのか,着目した症例を通して得られた知見をどのように整理するのか,より良い診療を実践していくための手段として臨床研究や症例検討をどのように提示し他者の意見を得るのかが重要と考える。
研究と報告
  • 村田 健児, 金村 尚彦, 国分 貴徳, 松本 純一, 藤野 努, 高柳 清美
    2014 年 21 巻 1 号 p. 12-15
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究はラット棘上筋腱を用いて,加齢と運動の影響を血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:以下VEGF)およびその受容体(VEGF Receptor-2:以下VEGFR-2)についてmRNAレベルで検討することを目的とした基礎研究である。【方法】Wistar系雄性ラット10週齢(通常飼育群)および6ヵ月齢(通常飼育群・運動群)の各群5匹(合計15匹)を用いて検証した。分析対象は棘上筋腱とし,分析はリアルタイムPCR法を用いた。ターゲット遺伝子は,VEGF,VEGFR-2,Ⅰ型コラーゲン(以下COL1A1)とした。【結果,結論】6ヵ月齢のVEGF mRNAの発現量は10週齢に比較して有意に減少したが,運動によって増加した(p<0.05)。また,COL1A1 mRNAは加齢に伴い減少したが(p<0.05),運動による影響は受けなかった(p=0.433)。
  • ―ディスカッション・アンケート調査を通して―
    小暮 英輔, 笹井 俊秀, 榎本 洋司, 小林 竜
    2014 年 21 巻 1 号 p. 16-20
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】回復期リハビリテーション病院における在宅支援をテーマに他職種を含めた若手・中堅スタッフ,管理者でディスカッションを実施した。【方法】ディスカッション参加者を対象としたアンケート調査を実施した。【結果】「スタッフ間での意見共有ができた」などの前向きな意見が多く聞かれ,また若手スタッフにおいては退院時の在宅支援への意識の向上がみられるようになった。【結論】経験年数に関係なくディスカッションを行うことは,若手スタッフへの教育という効果だけでなく,管理者を含めたスタッフ間相互の意見を交換することにより,組織としての一体感を高める効果があると考えられた。また,ディスカッションで提案された事案を実際の業務に実現化することにより,スタッフのモチベーション向上につながり,組織運営の一形態として有効であると考えられた。
  • ―退院直前の歩行能力,ADL,環境整備,自己効力感の観点から―
    塩澤 和人, 廣瀬 圭子, 田口 孝行, 原 和彦
    2014 年 21 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では,退院後生活空間に影響を及ぼす要因を退院直前の歩行能力,ADL能力,家屋整備状況,介護サービス整備状況,ADLおよび外出自己効力感の観点から明らかにすることを目的とした。【方法】分析対象は,回復期リハビリテーション病棟から自宅退院した患者のうち,HDS-Rが19点以上であり,移動手段が屋内歩行自立の者43名とした。退院直前に最大5 m歩行時間(直線歩行能力),TUG(応用的歩行能力),FIMの各運動項目得点(ADL能力),家屋整備状況,介護サービス整備状況,ADL自己効力感得点,退院1か月後にLife-Space Assessment(LSA),外出自己効力感得点を評価した。【結果】高活動群と低活動群間の最大5 m歩行時間,TUG,FIM移動得点,ADLおよび外出自己効力感得点に有意差を認めた。LSAを従属変数,LSAと相関がある項目を独立変数として回帰分析を行った結果,TUG,FIM移動得点,ADLおよび外出自己効力感得点でいずれも有意な標準偏回帰係数が得られた。【結論】退院後生活空間に影響を及ぼす要因は,応用的歩行能力,ADL移動能力,ADLおよび外出自己効力感であることが示された。
  • 内田 亮太, 鈴木 麻美子, 諸持 修, 万治 淳史, 田口 孝行, 原 和彦
    2014 年 21 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では,退院時の運動機能,転倒自己効力感と退院後の健康関連QOLの関連性について明らかにすることを目的とした。【方法】対象は,回復期リハビリテーション(回復期リハ)病院を退院する高齢脳卒中患者28名とした。退院時に10 m歩行速度,機能的自立度評価法運動項目(M-FIM),転倒自己効力感尺度(FES)を評価し,退院1ヵ月後に健康関連QOLの評価として,SF8の身体的側面(PCS)・精神的側面(MCS)を評価した。分析は,PCSおよびMCSそれぞれと,10 m歩行速度・M-FIM・FESとの間の相関係数を求めた。【結果】PCSと10 m歩行速度・M-FIM・FES間では有意な相関関係(p<0.05)が認められたが,MCSとの間には有意な相関関係を認めなかった。【考察】回復期リハでは運動機能と転倒自己効力感にアプローチすることで,退院後の身体的側面のQOLに影響を与える可能性が示唆された。
  • 飛永 敬志, 岡 浩一朗, 宮崎 千枝子, 谷澤 真, 橋本 久美子, 安村 建介, 菅野 吉一, 大関 覚
    2014 年 21 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は人工膝関節全置換術(TKA)患者の30秒椅子立ち上がりテスト(CS-30テスト)の経時的変化と痛みおよびその他の身体機能との関連性について検討した。【方法】対象はTKA患者33例39膝であった。検査項目はCS-30テスト,Timed Up and Go test(TUG),膝伸展筋力,開眼片脚起立時間,Western Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)の日本語版である準WOMACの膝関節の痛みおよび機能であり,各検査をTKAの術前,術後1ヵ月,術後3ヵ月の3回行った。【結果】CS-30テストは術前より術後3ヵ月,術後1ヵ月より術後3ヵ月で有意に改善した。術前のCS-30テストはTUG,術側および非術側の膝伸展筋力,術側および非術側の膝関節の痛みや機能と有意な相関を認めた。術後3ヵ月のCS-30テストはTUG,術側および非術側膝伸展筋力,術側および非術側開眼片脚起立時間,非術側膝関節の痛みおよび機能と有意な相関を示した。【結論】CS-30テストは術側だけでなく非術側の筋力や痛みなどの影響を受ける。TKA患者におけるCS-30テストは下肢筋力の指標になるだけでなく,痛みや身体機能も反映する有用な指標と考えられた。
  • 鈴木 陽介, 原 和彦
    2014 年 21 巻 1 号 p. 36-40
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】三次元動作解析は様々な剛体リンクモデルを用いて分析が行われているが,用いるモデルによる関節中心位置や運動学的な推定値に与える影響は十分に明らかになっていない。本研究ではDavisの股関節の関節中心(以下,HC)推定値と臨床的に用いられるDIFFモデルのHC推定値を比較するとともに,起立動作時の関節角度における影響を検討した。【方法】被験者に静止立位および40 cm台からの起立動作を行わせ,DavisとDIFFの2種類の方法によりHC推定し,関節角度を算出した。【結果】DIFFの推定値はDavisの推定値と比較して,3軸の各方向に20 mm以上異なる部位に位置していた。股関節角度は離殿時に最大となり,10.7±1.9°の差がみられた。【考察】用いるモデルにより算出されるHCや角度は有意に異なり,実験の対象とする動作を考慮してモデルを選択する必要があることが示唆された。
  • 片桐 健一, 解良 武士, 飛田 英樹, 桑垣 佳苗, 吉野 恭正
    2014 年 21 巻 1 号 p. 41-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究では,肩関節拘縮を有する患者に対する運動療法が肩関節の機能改善だけでなく,胸郭の可動性や呼吸機能に与える影響を明らかにすることを目的とした。【方法】当院整形外科外来通院中の肩関節拘縮を有し運動療法実施中の患者を対象とし,運動療法の前後で,肩関節屈曲,外転の可動域と,肺気量分画測定,胸郭拡張差,呼吸中枢出力の指標である気道閉塞圧(P0.1)を計測した。【結果】肩関節の可動域(屈曲,外転)は運動療法後に有意に改善した(屈曲p<0.01,外転p<0.05)。一方,予備呼気量が運動療法後に有意に向上したが(p<0.05),P0.1やその他の換気諸量,胸郭拡張差についてはいずれも有意差を認めなかった。【考察】肩関節拘縮に対する運動療法は即時効果として肩関節可動域を改善させる。しかしながら胸郭に及ぼす影響はほとんどないかきわめて小さいと考えられる。
  • 中野 克己
    2014 年 21 巻 1 号 p. 45-50
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】短下肢装具(以下,装具)は,歩行能力の向上に貢献しているが,従来より,麻痺側下肢立脚期における矢状面上のチェックが中心で,人間の歩行を十分に検討しているとはいえない。そのため,装具の作製時及び仮合わせ時におけるチェック表の作成を試みた。【方法】プラスチック装具(継手付を含む)と金属支柱付き装具を対象とした。作製時チェック表は,当センターで装具を作製した163例で,装具検討会資料より項目を集計し分類した。仮合わせ時チェック表は,当センター理学療法士18名にアンケートを依頼し,得られた回答を分類した。【結果】作製時チェック表は,782項目を集計した結果,10大項目と22小項目,仮合わせ時チェック表は,182項目を集計した結果,9大項目と23小項目で作成された。【結論】装具作製は,麻痺側下肢立脚期の矢状面上のみならず,前額面上や水平面上,そして麻痺側遊脚期のチェック項目も検討する必要があることが示唆された。
  • 谷澤 真, 飛永 敬志, 伊藤 俊一
    2014 年 21 巻 1 号 p. 51-55
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】短時間の静的ストレッチングが柔軟性や筋機能にどのような影響をもたらすかについて,未だ一定の見解が得られておらず,最も効果的な伸張時間も確立されていない。そこで,静的ストレッチングにおける伸張時間の違いが柔軟性および筋出力に及ぼす影響について検討した。【方法】健常成人20名を対象とした。伸張時間を30秒間と6秒間の2条件に定め,柔軟性の評価としてSLRを測定し,筋出力の評価としてBIODEXを用いて等尺性膝屈伸筋力,等速性膝屈伸筋力を測定した。【結果】伸張時間が6秒間では関節可動域は拡大しないものの筋出力は向上し,30秒間では関節可動域は拡大したものの筋出力は低下した。【結論】静的ストレッチングは伸張時間の違いにより効果が異なり,目的・用途に合わせて伸張時間を選択する必要があることが示唆された。
  • 久保田 喬之, 兵頭 甲子太郎
    2014 年 21 巻 1 号 p. 56-58
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】筋疲労の評価として,筋血流量や乳酸値,筋電図を使った評価などが知られているが,現場での使用が難しくより簡便な評価法が求められている。そこで今回は,非侵襲で簡便性に優れた,唾液から分析できるストレスマーカーに注目し,筋疲労と唾液アミラーゼの変化について研究を行った。【方法】対象は一般健常大学生10名とした。運動課題は30秒間の自転車エルゴメーター駆動とし,課題終了後に安静臥位,ストレッチング,振動刺激により筋疲労の回復を図った。課題実施前,実施後,筋疲労回復処置後に唾液アミラーゼを採取し,筋疲労発生と回復過程においてどのような変化があるか比較・検討した。【結果】安静臥位,ストレッチング,振動刺激すべてにおいて唾液アミラーゼが有意に低下をした。【結論】筋疲労の程度が異なる段階において,唾液アミラーゼの値に変化がみられたことから,筋疲労と唾液アミラーゼの間に何らかの関連性があるのではないかと考えられる。今後は,筋血流量や乳酸値の測定などを合わせて行い,より詳細な関連性について検討していく必要がある。
  • ―理学療法学科学生について―
    井上 和久, 平野 裕子, 山本 英子, 新井 恵, 黒澤 岳博
    2014 年 21 巻 1 号 p. 59-65
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】規範意識の実態調査について,規範意識の逸脱があるかどうか理学療法学科新入生を対象に調査し,知識・技術以外の教育を行う必要性について明確にするために検討することを目的とした。【方法】理学療法学科1年生44名を対象に質問紙調査を実施した。調査内容は,基本属性9項目と規範意識に関する5つのカテゴリー96問について回答した。回答は,5件法で求め単純集計による分析を行った。【結果】有効回答数は41名で回収率93.2%であった。回答者の内訳は女性27名,男性14名で,未成年の飲酒・喫煙に関する回答は,飲酒11名,喫煙0名であった。「大学生活」「慣習」「家庭生活」の回答結果は,「自分自身体験がある」が回答者の8割以上と多く,「他人の行動について良い」という回答も同様に多かった。【結論】規範意識の調査結果から理学療法士養成校において,学内教育に必要な情報として意義があると思われた。
症例検討
  • 岩崎 寛之, 國澤 洋介, 武井 圭一, 森本 貴之, 前川 宗之, 山本 満
    2014 年 21 巻 1 号 p. 66-68
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【はじめに】断端自己管理に着目し,断端トラブル予防が可能であった大腿切断症例を経験したので報告する。【症例】症例は,糖尿病を併存疾患にもつ右大腿切断術を施行した55歳の女性である。断端自己管理については5つの項目でチェックを行い,荷重ソケット作製時では,義足の装着時間の順守・断端袋の調整は未実施であり,断端の観察は不十分であった。【経過】術後113日より義足歩行を開始し,術後162日目で自宅退院となった。断端自己管理は経過の中で評価・指導を行い,義足の装着時間の順守・断端袋の調整・断端の観察を含めた5つの項目を習得することができた。また,退院後1ヵ月時点では,義足歩行が困難となるような断端トラブルは認めなかった。【考察】断端自己管理について経過の中で評価・指導を行い,断端の具体的な確認方法と断端管理の重要性を切断者自身が認識でき,退院後の断端トラブルを予防することができると示唆された。
  • 西田 和正
    2014 年 21 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本症例は右視床出血により主に体幹筋群の筋活動低下を生じていたため,食事時に座位アライメントが崩れ,食事動作に一部介助を要していた。理学療法では座位能力向上を目標とし,担当チーム(Ns,PT,OT,ST)では食事動作向上を目標に挙げ,関わった。その結果,座位アライメントが改善し,食事動作の改善に繋がったので報告する。【方法】座位でのリーチングと長下肢装具を使用した立位保持練習を行い,体幹筋群・股関節周囲筋群へアプローチした。担当チームが食事時に関わり,その場で情報共有と発信を行った。【結果】内外腹斜筋の機能が向上し,座位で正中位を保持することができるようになった。食事では,良肢位で座位を保つことができ,食べこぼしが少なく自力摂取できるようになった。【結論】理学療法アプローチによって体幹・股関節周囲筋群の筋活動が向上し,それを担当チームで密に情報交換しながら関わったことで,向上した能力を実際の食事場面へ活かすことができたと考えられる。
  • ―立位アライメントの修正に着目した一症例―
    石井 佑穂, 中野 克己, 山崎 大, 吉田 志保, 西尾 尚倫, 廣島 拓也, 高山 智絵
    2014 年 21 巻 1 号 p. 73-76
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】後脛骨筋の過緊張により立位アライメント不良が生じ,立位バランスが低下した四肢体幹失調患者に対し,短下肢装具で足関節を固定し立位アライメント及び立位バランス改善の効果を検証した。また,装具を取り外した直後の持続効果を利用した理学療法アプローチを実施した。【症例】30歳代男性,動作時の後脛骨筋が過緊張で立位において足関節が底屈内反位であった。そのため立位アライメントが不良となり,立位保持時間5秒,歩行は歩行器で中等度介助であった。【介入】両側下肢に短下肢装具を装着し足関節を固定した。装具の装着前,装着時,取り外し直後で立位アライメント,立位保持時間,重心動揺の変化から装具の効果を検証した。また,その立位アライメントの修正効果を利用して立位バランス練習,歩行練習を4週間実施した。【結果】装具装着により立位アライメントは改善し,立位保持時間は2分以上となり,重心動揺の改善がみられた。また,装具を取り外した直後にも立位アライメントの改善と立位保持時間の延長が持続する傾向がみられた。アプローチ開始から4週間後,装具なし,4点杖での見守り歩行が可能となった。【考察】失調症により足部の筋緊張が原因で立位バランス障害を呈する本症例に対して,短下肢装具を用いて立位アライメントを修正することは立位バランス改善に効果的であり,装具を取り外した直後の持続効果を利用した理学療法アプローチは有用である可能性がある。
  • 渡部 未来, 茂木 宏昌, 大熊 克信, 五味川 右
    2014 年 21 巻 1 号 p. 77-80
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】人工股関節全置換術患者は在院日数の短縮化で早期退院する症例も多いが,質的な機能向上も重視する必要があるとの意見もある。若年性人工股関節全置換術の症例に対し,歩行時の代償動作の軽減を目的にアプローチを工夫し実践したので報告する。【方法】1本杖歩行自立後も歩容へのアプローチのために代償動作の少ない歩行器歩行を継続し,術前,術後14日,退院時に三次元動作解析装置で,独歩の股関節運動を測定した。【結果】代償運動は軽減し,左右立脚後期の股関節伸展角度は正常近くまで改善を認めた。【結論】歩行時の効率的な筋の使用を学習することで,術後早期の代償動作が新たに習慣化せず歩容改善に繋がった。
  • 尾曲 真一, 梅本 幸季
    2014 年 21 巻 1 号 p. 81-84
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】左被殻出血により右片麻痺と重度感覚障害を呈した40歳代女性に対して,屋外移動範囲拡大を目指してアプローチを実施した。【方法】感覚障害に伴う身体イメージの低下によって円滑な重心移動が阻害され,筋緊張亢進を招き,歩行耐久性低下の一因となっていた。視覚的フィードバックを利用したトレーニングが有効と考え,鏡を利用した立ち直り反応の促通及び重心移動練習を実施した。自宅にて運動の自己管理や良肢位保持の意識付けを行うと共に,訪問リハビリテーションと情報や課題の共有を図った。【結果】感覚機能に改善は認められなかったが,右腹斜筋群の筋出力の増大と立ち直り反応が促通され,立位での下肢最大荷重量(体重比)が両側共に増加した。歩行時の筋緊張亢進が軽減し,屋外連続歩行距離は100 mから400 mへと延長し,夫と一緒に買い物に行くことができるようになった。【結論】身体機能の改善が困難な生活期においても個々に応じた運動課題によって動作能力の向上を図ることが可能である。通所施設における個別練習効果を実生活に結び付ける為には,在宅生活を考慮した関わりと他サービスと協働して支援することが重要である。
  • 圷 誠斗, 山田 峻, 鈴木 伸, 矢作 翔平, 矢作 賢史, 吉野 恭平, 藤井 基晴
    2014 年 21 巻 1 号 p. 85-88
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【はじめに】上腕骨小頭滑車骨折の治療は可能な限り観血的整復固定術が行われる。今回我々は硬式テニス部に所属する13歳男子の術後理学療法を行い,4ヵ月間の理学療法で日常生活活動,スポーツ活動ともに支障なく,良好な成績を得たので報告する。【方法】運動療法開始から肘関節自動・他動屈曲伸展運動を実施し,ギプス固定後の筋伸張性改善を図った。理学療法4週目から上腕三頭筋内側頭と上腕筋に対する軽負荷での反復等尺等張性収縮と内側側副靭帯後斜走線維のストレッチを行った。【結果】理学療法14週目で肘関節屈曲140°,伸展0°となり,日常生活活動,スポーツ活動に支障なく実施可能となった。【結論】理学療法開始早期から関節運動を行うことでギプス固定後の拘縮を改善できた。また,単関節筋である上腕三頭筋内側頭と上腕筋に対して選択的に反復等尺等張性収縮を行うことで筋腱移行部の滑走や関節包を牽引することができ,肘関節可動域改善に繋がった。
資 料
  • ―生活習慣病への応用―
    佐藤 慎一郎, 秋山 純和
    2014 年 21 巻 1 号 p. 89-92
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/02/05
    ジャーナル フリー
    【目的】本研究は,バットスウィングにおける生理的運動強度を提示することによって,生活習慣病予防のための身体活動の一助として資することを目的とした。【方法】対象は,健常男子大学生10名とし,自覚的運動強度(RPE)11,13,15に基づく3種類の運動負荷によるバットスウィングを3秒1回,連続3分間,計60回実施した。生理的運動強度は代謝当量(METs)と予測的最大心拍数による運動強度(%HRR)を算出した。統計学的解析は3種類の運動負荷におけるMETs値,%HHRを一元配置分散分析と多重比較法にて比較した。【結果】RPE11,13,15のMETs値と%HRRは4.0±0.4 METs,48.3±2.4%,5.8±0.6 METs,56.8±2.6%,7.3±0.8 METs,67.9±4.5%であり,一元配置分散分析および多重比較法の結果,各群間および3群全ての間に有意差を認めた。【結論】RPE11と13においては,3秒1回のバットスウィング動作は3 METs以上6 METs未満の運動強度となることから,本研究における運動課題は,生活習慣予防のため身体活動の一助として利用可能と考える。
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