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篠塚 敏雄, 遠藤 善弘, 菊池 健志
2017 年24 巻1 号 p.
18-22
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】慢性期脳卒中片麻痺者の歩行速度と非対称性について取り上げ,その原因を探るために,麻痺側下肢筋力・両側関節可動域との相関関係を求めた。【対象と方法】測定対象者は慢性期脳卒中片麻痺者,男性12名,女性8名,平均年齢は67.9歳,発症からの平均年数は8.5年,5 m以上見守りにて歩行可能だった。歩行補助具(杖,装具)は普段通り使用した。快適歩行速度,麻痺側下肢筋力,両側股関節伸展,Straight Leg Raising(以下SLR),足関節背屈の他動的関節可動域を測定し,左右歩幅の非対称性も求めた。【結果】快適歩行速度と筋力,関節可動域(以下ROM)との関係で,相関が強かったのは股屈曲筋力,膝伸展筋力,両側股伸展ROMだった。非麻痺側歩幅と相関が強かったのは膝伸展筋力・股屈曲筋力,両側SLR,非対称性だった。【考察】麻痺側股屈筋群・膝伸筋群の筋力と両側股関節のROMが片麻痺者の歩行速度と関連性が強かったのは,装具と股屈筋群の筋力によって足底背屈筋の筋力低下を代償し,杖と膝伸展筋力によって下肢の支持性低下を補助していること,股関節ROM制限は主要には廃用性のものだと推測されるが歩行速度低下のもう一つの要因であることを示唆している。片麻痺歩行の非麻痺側歩幅は麻痺側下肢の支持性や股関節のROMと関連性が強いことが窺われる。
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―入院期諸因子と回復期身体活動との関連性―
岡 和博, 丸岡 弘, 名字 名前, 大熊 克信, 五味川 右, 中村 智弘, 石田 岳史
2017 年24 巻1 号 p.
23-30
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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【目的】急性心筋梗塞(acute myocardial infarction:AMI)患者の入院中の諸因子と,回復期身体活動(physical activity:PA)との関連性を検討することである。【方法】対象は,AMI患者25例(平均年齢65.6±9.5歳,男性17例)。入院期諸因子として,不安状態,抑うつ状態,ソーシャル・サポートの状態,セルフ・エフィカシー(self-efficacy:SE)の状態,入院前のPA量の状態,最高酸素摂取量,嫌気性代謝閾値の酸素摂取量,握力,膝伸展筋力,冠危険因子数をそれぞれ入院中に測定した。回復期PAは,退院後の日常生活のPAと心臓リハビリテーション(cardiac rehabilitation:CR)実施時の消費カロリーを測定した。統計解析は,回復期PAを従属変数とした重回帰分析を実施した。【結果】回復期PAの関連因子として上肢活動に対するSEが抽出された。【結論】AMI患者の回復期PAは,入院期の上肢活動に対するSEと関連があり,入院期CRプログラムではそれらの要素に着目することが重要であると示唆された。
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大熊 克信, 岡 和博
2017 年24 巻1 号 p.
31-35
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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入院中の間質性肺炎(interstitial preumonia:IP)患者23名,32エピソードに対して呼吸リハ開始時と終了時にmodified Medical Research Council息切れスケール(mMRC),The Nagasaki University Respiratory Activities of Daily Living questionnaire (NRADL),可能な場合は終了時に6分間歩行試験を行った。開始時のmMRCはグレード3,4が大半,NRADL合計点は15点と重症例が多かった。開始時の自宅退院群NRADLで点数が高い項目は,食事,排泄,整容,更衣,病室内移動であった。死亡退院群では全項目で中央値0点であった。呼吸リハ前後では動作速度+5.4点,息切れ+6.1点,合計点+19.47点と有意に改善を認めた。最も改善したのは病棟内移動+4.5点であった。6MWTは12名で実施が可能で平均307 m,うち10名でmMRCが改善していた。本研究ではNRADLを用い,自宅退院した入院期IP患者のADLが,入浴以外のセルフケア項目は点数が比較的高く,移動項目は低い傾向であることを示した。
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小池 友和, 藤谷 順子, 西垣 有希子, 安藤 武, 關口 相和子, 山下 祥平, 川村 和也, 藤江 正克
2017 年24 巻1 号 p.
36-39
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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呼吸リハビリテーションにおいては胸郭可動域を改善させることによる換気量の増大が期待されている。胸郭拡張差と肺活量の関係は諸家により検討されているが,胸郭拡張差と一回換気量に関しての報告は少ない。今回我々は,胸郭計測システムを用いて胸郭可動域と深呼吸時の換気量の関係について検討した。胸郭拡張差と最大吸気量には相関が認められ,胸郭拡張差1 cmにあたり剣状突起高では男性約168.8 ml,女性約458.9 ml換気量が増えており,第10肋骨高では男性約229.0 ml,女性では約326.0 ml換気量が増えていた。性差等を考慮する必要があるものの胸郭の可動域の改善が換気量の増大につながることがわかった。
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守岡 義紀, 武井 圭一, 山本 満
2017 年24 巻1 号 p.
40-42
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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【目的】当院におけるダウン症候群児(以下,DS児)に対する下肢装具療法の現状を明らかにすることを目的とした。【対象および方法】当院で理学療法を行ったDS児のうち下肢装具を作製した児を足底装具群(A群)14名,非足底装具群(靴型・短下肢装具:B群)9名に分類した。下肢装具の目的と作製月齢,歩行獲得の月齢を診療録より調査した。【結果】装具の目的は,A群は外反扁平足・開張足の改善,膝関節症状の改善,B群は加えて立位安定性の向上であった。装具作製月齢の中央値(A群・B群)は,31ヵ月・29ヵ月であり有意差を認めず,歩行獲得月齢は24.5ヵ月・36ヵ月であり有意差を認めた。2群ごとの装具作製月齢と歩行獲得月齢の比較では,A群は装具作製に対して歩行獲得が有意に早く,B群は装具作製に対して歩行獲得が有意に遅かった。【結論】当院では,足底装具はDS児の中でも歩行を順調に獲得する児に対して歩行獲得後に作製し,非足底装具は歩行獲得が遅延する児に対して歩行獲得前に作製する傾向を認めた。
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飛永 敬志, 岡 浩一朗, 宮崎 千枝子, 谷澤 真, 齊藤 孝道, 東村 隆, 大関 覚
2017 年24 巻1 号 p.
43-47
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】本研究は人工膝関節全置換術(TKA)患者の退院後における身体活動量を調査し,その関連する要因について検討した。【方法】対象は変形性膝関節症により初回片側TKAを施行した37例とした。身体活動量は活動量計AM-120(カロリズム)を装着し歩数を算出した。身体機能評価はTimed up and go test(TUG),開眼片脚起立時間,30秒椅子立ち上がりテスト,5 m最大歩行速度,膝伸展筋力を測定した。自己効力感(SE)の評価は虚弱高齢者の身体活動SE尺度を用いた。各測定は術後3ヵ月に実施した。身体活動量と各因子との関連性を検討した。【結果】身体活動量は2,809.7±1,999.2歩であった。身体活動量は非術側膝伸展筋力,5 m最大歩行速度,歩行SEおよび階段SEと有意な相関を認めた。【結論】TKA患者の退院後における身体活動量は極めて低く,非術側膝伸展筋力,移動能力および身体活動SEを高めることが重要であることが示唆された。
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―災害時避難方法の認識・想定状況・不安要因の要介護度別分析―
菊地 裕美, 原嶋 創, 村上 幹, 伊藤 慎也, 山際 正博, 田口 孝行, 原 和彦
2017 年24 巻1 号 p.
48-54
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】震災等の災害時において,要介護高齢者の屋外避難対策が必要とされている。本研究では,災害時避難方法の認識,想定状況,不安要因について要介護度別に実態を明らかにすることを目的とした。【方法】対象者はA県内の通所・訪問リハビリテーションを利用する要介護高齢者175名とした。調査方法は,避難方法の認識(4項目),想定状況(1項目),不安要因(2項目)について聞き取り調査を実施した。【結果】避難方法に関する介護度別の特徴について,要介護4・5は避難方法の認識が低く,すべて避難方法未想定であり,主に避難経路・避難動作方法に不安を有した。要支援・要介護1・2は避難方法の認識は高いが,半数は避難方法未想定であり,主に転倒・迅速な動作方法に不安を有した。一方,要介護3は避難方法の認識・想定状況・不安要因ともに絞り込めない特徴があった。【結論】要介護度によって災害時避難における不安要因に違いを認めたことから,それぞれの要介護度に適した指導方法を実施することが重要と考える。
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細井 俊希, 藤田 博暁, 新井 智之, 丸谷 康平
2017 年24 巻1 号 p.
55-58
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】地域在住高齢者のうち,埼玉県内のある地域に在住するある高齢者たち(老人福祉センターに1回/月程度自力で通える者)の自宅周辺環境と実際の歩行量やIADL実施頻度との関連性について明らかにすること。【方法】地域在住高齢者11名を対象とし,国際標準化身体活動質問紙環境尺度日本語版(IPAQ-E)により自宅周辺環境を調査した。併せて歩数計により歩数を,質問紙によりIADL実施頻度を調査した。【結果】IPAQ-E合計点と歩行量およびIADL実施頻度の間に有意な相関が認められた。【結論】自宅周辺環境が地域在住高齢者の活動量に影響を与えていることが示唆された。地域在住高齢者の介護予防や退院後の活動量低下を予防するには,周辺環境を見据えた目標や計画の立案が必要である。
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芝﨑 伸彦, 加藤 太郎, 沼山 貴也, 望月 久
2017 年24 巻1 号 p.
59-61
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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一般成人における咳嗽時最大呼気流速と音圧の関連性に対する知見を得ることを目的とした。一般成人17名を対象に,咳嗽時最大呼気流速と音圧(自然発声時と最大発声時)を測定し,咳嗽時最大呼気流速と音圧および,咳嗽時最大呼気流速または音圧と,年齢,身長,体重との関連性をSpearmanの相関係数を用いて検討した。その結果,咳嗽時最大呼気流速と最大発声時の音圧との間,咳嗽時最大呼気流速と身長との間に中等度の相関関係を,咳嗽時最大呼気流速と体重との間に高い相関関係を認めた。咳嗽時最大呼気流速と最大発声時の音圧との関連性は,呼吸理学療法における咳嗽力と言語聴覚療法における声量など,それぞれの測定結果を関連付けて多職種で情報共有することで,患者の多角的な評価に繋がる一助となり得る。
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武田 尊徳, 山崎 弘嗣, 田代 英之, 中村 高仁, 星 文彦
2017 年24 巻1 号 p.
62-67
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
本研究は歩行中の重心移動のパターンを評価するための基礎的な指標を得ることを目的とし,jerk最小モデルから予測される運動軌道との差を検討した。対象は健常成人女性8名とし,3次元動作解析装置を用いて歩行時の重心移動を計測した。jerk最小モデルを用いて計算される1歩行周期の重心移動の最適軌道を基準とし,軌道波形のピークの位置から定性的な一致度を調べ,前後,左右,上下の3方向で実測値との差の実効値を算出した。前後,左右方向の実測軌道と最適軌道は波形が類似しており,上下方向においては軌道のパターンの差が顕著であった。重心変位の最大値で正規化した実効値は左右方向15.7%,前後方向2.4%,上下方向70.1%であった。左右,前後の2方向において健常成人における実測軌道は予測した最適軌道に近似し,本研究で示した数値を用いて歩行動作の機能的制限を定量化することが可能である。本研究は歩行動作における重心移動解析の基礎的資料となり得る。
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平田 恵介, 国分 貴徳, 一寸木 洋平, 久保田 圭祐, 園尾 萌香, 金村 尚彦
2017 年24 巻1 号 p.
68-72
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】健常人歩行のArm swing,体幹,骨盤回旋運動の非対称性の傾向における一貫性,もしくは共通性を調査することで,制御上の相互関係の有無を検討する。またArm swingのパラメータとして質量中心(COM)の有用性を検証する。【方法】成人男性11名の4速度条件での歩行の三次元動作解析を行った。対称性の評価にSymmetrical Index(SI)を用い,平均値,標準偏差,分散を求めた。Arm swingは上腕仰角法と COM仰角法の2手法で解析し,積率相関分析を行った。【結果】Arm swing,体幹,骨盤でSIは10%以下であった。標準偏差,分散はArm swing,骨盤,体幹の順でばらつきが少なかった。上腕仰角法とCOM仰角法によるSIの結果は相関係数0.97(p<0.05)と高い類似性を示した。【考察】体幹,骨盤回旋に対し一貫した傾向のある非対称性を示したArm swingには,複数の制御因子の関与や独立した制御機構が存在する可能性が示唆された。
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丸毛 達也, 金村 尚彦, 山崎 弘嗣, 白銀 暁, 国分 貴徳, 藤野 努, 塙 大樹, 山下 祐輔, 高柳 清美
2017 年24 巻1 号 p.
73-76
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
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【目的】スクワット動作は多関節の協調的な運動が要求される動作であり関節運動の変化による影響を受けやすい。これまで高齢者のスクワット動作における各トルク成分については明らかにされていない。本研究の目的は逆動力学計算を用いて高齢者のスクワット動作における関節運動特性を明らかにすることとした。【方法】対象は高齢者,成人各10名。課題動作はスクワット動作とした。逆動力学計算を用いて総トルク(NET),筋トルク(MUS),重力トルク(GRA),相互作用トルク(INT)を算出した。下肢3関節における各トルク成分の伸展・屈曲(背屈・底屈)トルクの最大値を2群間で比較した。【結果】股関節伸展 MUS,膝関節伸展INT,足関節底屈NET・MUS・INTは高齢群において有意に高値を示した。【結論】高齢群は足関節底屈MUSと股関節伸展 MUSが増加した結果,膝関節伸展INTと足関節底屈INT増加に寄与し成人群と異なる各トルク成分の発生が生じたと考えられる。
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―運動学的異常は関節軟骨・半月板変性の独立した危険因子であるのか―
村田 健児, 国分 貴徳, 鬼塚 勝哉, 藤原 秀平, 中島 彩, 森下 佑里, 藤野 努, 高栁 清美, 金村 尚彦
2017 年24 巻1 号 p.
77-83
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】関節軟骨の変性は,生物的ストレスとメカニカルストレスが関連しているが,各ストレスが独立したリスク因子であるか明確でない。我々は,運動学的異常に着目し,新たなモデルを用いて,メカニカルストレスが軟骨および半月板に及ぼす影響を実験的に検証した。【方法】外科的に前十字靭帯(Anterior cruciate ligament: ACL)を切断し,関節内の炎症に伴う生物的ストレスと関節不安定性に伴うメカニカルストレスが惹起されたACL-Transection(ACLT)群,異常関節運動を制動することでメカニカルストレスを軽減したControlled Abnormal Joint Movement(CAJM)群に分類した。術後12週で組織学的解析を実施した。【結果】軟骨変性ならびに半月板は, ACLT群とCAJM群の両群で進行したが,ACLT群の変性が重度であった。【結論】異常関節運動を軽減させることで軟骨変性や半月板変性の進行が抑制でき,本結果は関節運動の変化が膝関節内組織に対して異なる物理的刺激となり得ることを組織学的に示した。
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小川 秀幸, 西尾 尚倫, 堀 匠
2017 年24 巻1 号 p.
84-87
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【はじめに】重症くも膜下出血症例の変化する問題点に対して,客観的な分析から理学療法介入を変更していくことで独歩で家庭復帰した症例を報告する。【症例紹介】40歳代女性。脳底動脈瘤破裂による急性くも膜下出血を発症し救急搬送となった。開頭術後に脳幹梗塞を合併した。【経過】初期は体位変換時にめまいや嘔気が強いこと,廃用性に全身の筋力が低下していたことにより,離床困難であった。症状改善に伴い日常生活活動は拡大したが,運動失調によるふらつきが顕在化した。【結論】めまいと嘔気に対しては画像所見と身体機能評価を照らし合わせて目標を設定し,運動失調によるふらつきに対しては重心動揺計を用いて評価し,前庭性運動失調に対する理学療法へと変更したことで,運動失調によるふらつきが減少し,独歩で家庭復帰が可能となった。
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―生活期における脳卒中片麻痺患者に対するクリニカルリーズニング―
園尾 萌香, 平田 恵介, 国分 貴徳
2017 年24 巻1 号 p.
88-92
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】リーチ動作の獲得を目標とした生活期脳卒中片麻痺患者に対する治療経験について機能面に対する自身のクリニカルリーズニングの過程を報告すること。【症例】8年前に脳梗塞を発症,右片麻痺となった70歳代男性。【経過】リーチ動作早期から異常運動が出現したが末梢からの介入で異常運動の軽減を認めたため,肘関節以遠の分離と肘伸展機能の向上を促した。しかしながらリーチ動作の改善に至らなかったため,介入による異常運動の軽減の差を機能変化の差と合わせて再検討し,統合・解釈し直した結果,肩関節の随意性低下という問題点が表出した。具体的には本症例は末梢介助下のリーチ動作において肩関節屈曲要素を肘関節伸展トルクで相互作用的に代償していたことが明らかとなり,再検討した結果を治療に反映させることでリーチ動作の質的改善を認めることができた。【まとめ】生活期では非神経学的要素が多く混在するため病態が複雑であり,経過の中から問題点を適宜把握・修正し,仮説を取捨選択して行く必要性があると感じた。
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長谷部 民人, 馬崎 昇司
2017 年24 巻1 号 p.
93-96
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【目的】脳卒中片麻痺者に対し,プラスチック短下肢装具着用にてバランスボードエクササイズ実施後,歩行時間短縮が得られる方と,変化がない方の比較を行った。【症例】院内歩行自立している入院患者1名,屋外歩行自立している外来患者1名。【方法】10 m歩行,Time up and Go test(以下TUG)を測定後,バランスボードを使用した運動を行い,同評価を再測定した。【結果】変化がない対象者は10 m歩行,TUGがカットオフ値を越えており,手放しでshift-weight可能だった。短縮が得られた対象者は10 m歩行,TUGが遅く,平行棒に掴まらないとshift-weightができなかった。【結論】脳卒中片麻痺者においてプラスチック短下肢装具を着用した状態では,把持物に捕まりバランスボード上でshift-weightできる程度の患者にて,即時効果として歩行速度の短縮が得られる可能性が考えられた。
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三井 直人, 国分 貴徳
2017 年24 巻1 号 p.
97-101
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
両膝関節全人工関節置換術術後より,長期的な両膝関節痛,膝の不安定感を自覚し,歩行や趣味の踊りが困難になった症例である。評価結果より,両膝関節共に不安定性に加え,過伸展を呈しているといった身体機能的特徴が認められた。また動作パターンにおいても膝関節屈伸筋群の出力のimbalanceが認められた。これらの身体的特徴と運動学的特徴の相互作用が膝関節痛の原因と考えた。筋活動パターンに着目し,異常な筋活動パターンを修正するアプローチを行うことで両膝関節痛の軽減と共に,膝の不安定感の訴えの消失が見られた。静的な支持機構の破綻を伴う症例においても,関節の動的安定化に焦点を置き,治療構築を行っていくことが重要である。
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矢作 賢史, 圷 誠斗, 矢作 翔平, 吉野 恭平, 久高 正嗣, 福田 佳男, 藤井 基晴
2017 年24 巻1 号 p.
102-105
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
【はじめに】手指屈曲時において浅指・深指屈筋腱の逆転現象を呈した弾発指症例を経験した。本症例に対し運動療法を実施し,弾発現象の改善を得た。弾発現象の発生機序と治療方法についてその要点を運動学的視点から検討する。【方法】弾発現象の改善を目的として浅指屈筋腱の滑走性改善を主体とした運動療法を実施した。PIP関節の他動運動により浅指屈筋腱の滑走に必要な関節可動域を獲得し,DIP関節伸展位でのPIP関節自動屈曲運動である指腹つまみを反復することで浅指屈筋腱の滑走を促した。【結果】理学療法開始後1年の時点で屈筋腱の逆転は観察されなくなり,弾発現象と手指関節可動域も改善した。【考察】屈筋腱の逆転による弾発現象は運動療法により改善可能な病態であると考える。浅指屈筋腱の滑走性改善が必要であり,DIP関節伸展位でのPIP関節自動屈曲運動である指腹つまみが屈筋腱逆転を防止する重要な手指屈曲様式になると考える。
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国分 貴徳, 大野 元気, 藤野 努, 小川 勝由, 四維 浩文
2017 年24 巻1 号 p.
106-109
発行日: 2017年
公開日: 2017/04/27
ジャーナル
フリー
肩関節周囲炎患者が訴える痛みは非常に複雑で,理学療法場面において,評価および治療介入の選択に難渋する。疼痛の要因となりうる多くの因子の中で,肩峰下滑液包は,解剖学的・関節運動学的特性から疼痛好発部位として知られるが,同部の所見を簡単な整形外科的テスト等で精査することは非常に困難であるとされている。今回我々は,肩関節周囲炎患者の疼痛除去を目標に,理学療法評価をベースにクリニカルリーズニングを行い,医師との連携の中で肩峰下滑液包注射のタイミングを決定した3例を経験した。今回の方法により,従来までの報告と比較し,円滑かつ早期に除痛を図ることが可能であった。肩関節周囲炎の痛みを理学療法士が精査できるような理学療法評価プロトコルを確立し,エビデンスに基づいた介入方法を確立する上で,本報告ではその一助となる知見が得られた。
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