理学療法 - 臨床・研究・教育
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19 巻, 1 号
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講 座
研究と報告
  • 廣島 拓也, 杉山 真理, 笠井 健治, 大澤 薫, 西尾 尚倫
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 14-18
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    足底に荷重が困難である者は足底以外の接触面が座位保持能力に影響を与えると考え,両大腿の接触面積の相違が座位保持能力に与える影響について考察した。車いす座位が可能な不全対麻痺者3名を対象に,支持基底面は同一で,大腿の後面が座面と接触する座位(以下条件①)と,大腿の40%が座面と接触する座位(以下条件②)で前方リーチ距離と身体傾斜角度を比較した。対象者2名では,条件①に比べ条件②では前方リーチ距離が減少した。条件①に対する条件②の前方リーチ姿勢時の身体傾斜角度は,上部体幹線は後傾し,骨盤線は前傾方向に変位する対象が2名,頭部線,頸部線が後傾方向に変位した対象が1名であった。大腿の接触面積が狭くなると,前方への不安定性が増し,立ち直り反応がみられ,リーチ距離が減少したと考えた。座位支持基底面は同一であっても,大腿と座面が接触する面積の相違により,座位での動的安定性が変化する症例を認めた。よって,座位動作時の安定性を得るには大腿と座面のより広い接触面積が必要であると考えられた。
  • 宮澤 宏文, 白根 実央, 佐藤 広祝, 佐々木 和人, 鈴木 英二
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 19-22
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    高齢者は疾患にかかわらずバランス能力の低下をきたしていることが多い。当院ではスリングを用いて,運動戦略のうち,股関節戦略,足関節戦略を模したエクササイズを実施している。この股関節運動戦略エクササイズと足関節運動戦略エクササイズについて,各エクササイズ前後にfunctional reach test(以下FRT)とTimed Up and Go test(以下TUG)を実施した。また合わせて重心動揺計を利用して安定性限界の測定も行った。股関節運動戦略エクササイズではFRTの向上が認められ,静的バランスの向上が示唆された。足関節運動戦略エクササイズではFRT,TUGの両方で向上が認められ,静的バランスだけでなく動的バランスの向上が示唆されたが,安定性限界の測定については,有意な変化を認めなかった。
  • ―床反力,股関節屈曲角度に着目して―
    森田 智美, 宮崎 純弥
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 23-26
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    足関節背屈制限を有する者では立ち上がり動作が困難となることが報告されているが,具体的にどの程度の制限が動作を阻害するのかは明らかとなっていない。そこで,立ち上がり動作を容易に行うために必要な背屈可動域を検討するために,金属支柱付き短下肢装具を用いて4種類の足関節背屈可動域(15°,10°,5°,0°)を設定し,各条件下での立ち上がり動作と通常の立ち上がり動作を比較したところ,前方分力・垂直分力のピーク値および離殿時の股関節屈曲角度(体幹―大腿のなす角)に変化が現れた。背屈可動域5°の条件では前方分力の増加と股関節屈曲角度の減少を認め,動作遂行に困難感が伴った。背屈可動域0°の条件では,前方分力・垂直分力の増加と股関節屈曲角度の減少を認め,動作遂行に困難感が伴った。前方分力・垂直分力のピーク値および離殿時の股関節屈曲角度は立ち上がり動作遂行の困難感を示す指標となり得ることが示唆され,動作を容易に行うために必要な足関節背屈可動域は10°以上であることが示唆された。
  • ―プロバスケットボールチームへの介入―
    森山 隆, 高橋 賢, 桜井 徹也, 斉藤 祐介, 石井 義則, 野口 英雄
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 27-31
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    プロバスケットボールbjリーグのチームに対するメディカルサポートを実施した。サポートは,外傷・障害発生の調査,PT・OTによる介入(個別リハビリ・物理療法),メディカルチェックを実施した。1シーズン平均,外傷・障害合わせて59件,外傷20.5件,障害38.5件であり,外傷・障害を合わせると,足関節,膝関節,手指の順に多かった。介入は,1シーズンの平均はチーム帯同時が177件,当院では60件であった。介入部位は足関節,膝関節,股関節の順で多かった。メディカルチェックの結果,可動域検査では多くの選手に股関節,足関節の可動域低下と体幹の不安定性がみられた。外傷・障害の発生部位で足関節,膝関節が上位を占めるという結果は,他のバスケットボール選手に関する外傷・障害報告と類似していた。外傷と障害の割合については,プロ選手では障害が多かった。障害要因の医学的・運動学的な分析や外傷・術後のリハビリテーションに関しては,専属トレーナーや選手自身では困難であり,ここにスポーツ現場でのPT・OTの専門性・存在意義があると考える。
  • 渡辺 学, 海老澤 玲, 米澤 隆介, 桑原 慶太, 廣瀬 隆一
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 32-37
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    半側空間無視は患者により重症度が異なるほかいくつかの特徴を示す一連の症候群である。その症状の一つに,正面に置いた鏡を通じて物体を提示すると直接つかむことができるが鏡を病巣側に置くと鏡像に注意がとらわれ実物をつかむことができない「鏡失認」がある。鏡失認現象を通じて半側空間無視患者が無視空間をどのようにとらえているかを理解するために,半側空間無視を有する患者における鏡失認の出現率と臨床属性を調査した。さらに鏡失認と半側空間無視の改善のために鏡を利用した治療を行った。対象は当院に入院中で左半側空間無視を認めた右大脳半球損傷患者13例とした。その結果,13例中6例において鏡失認が認められた。特徴として,比較的広範な病巣が多いことと病態失認を合併していることが多いことが挙げられた。鏡を利用した治療では鏡失認を認めた6例中4例で即時的な鏡失認の改善と線分抹消試験での成績の改善が認められた。鏡に対する反応から鏡失認の有無の差は現実の空間と鏡の空間を区別できないことが関連していると思われた。今回の研究結果から考えられる半側空間無視の発現にはその原因が一つではなく,方向性注意障害,表象障害のほか,錯覚など,複数の要因が存在するものと思われた。
  • ―加齢による相違について―
    藤野 雄次, 網本 和, 門叶 由美, 播本 真美子, 斉藤 友美, 小泉 裕一, 深田 和浩, 佐藤 大, 西元 淳司, 細谷 学史, 高 ...
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 38-41
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,座位における体幹の最大側方移動時の姿勢を分析し,加齢に伴う頸部・体幹の姿勢応答の変化を明らかにすることである。対象は骨関節疾患のない若年者10名(若年群)と高齢者10名(高齢群)とした。課題は座位における体幹の左右最大側方移動とし,動作解析にて算出した頭部・身体・上部体幹・骨盤の傾きを2群間で比較した。結果は,左右いずれの移動課題において,身体と骨盤の傾きは高齢者で有意に小さく(p<0.01),上部体幹の傾きは若年者で有意に小さかった(p<0.05)。頭部の傾きは2群間で有意差はなかった。以上のことから,高齢者では身体・骨盤角度の減少と上部体幹角度の増加がみられ,上部体幹において若年者と異なる姿勢方略を用いていると考えられた。
  • ―第一報―
    小林 琢, 阿部 高家, 武田 太, 原田 慎一
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 42-44
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    今回,脳卒中片麻痺者における車いす駆動と体幹機能との関係に着目し,車いす駆動に有用性のある体幹機能検査について検討した。対象は2009年度に当院に入院した脳卒中片麻痺患者のうち,指示理解が可能であり,車いすを移動手段としている157名であった。車いす駆動能力と,FACT(Functional Assessment for Control of Trunk),SIAS(Stroke Impairment Assessment Set),Hoffer座位能力分類の体幹機能検査間の測定値の相関関係と各体幹機能検査の天井効果を算出し検証した。検査結果より,車いす駆動と各々の体幹機能検査間において相関関係を示し,車いす駆動と体幹機能について関連性を持つことが示唆された。その中でもFACTは他の体幹機能検査に比べ天井効果も低く,脳卒中片麻痺者の車いす駆動をとらえるうえで有用性のある評価指標となる可能性が示唆された。
  • 渡辺 学, 桑原 慶太, 目黒 智康, 薄木 健吾, 廣瀬 隆一
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 45-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    本研究は,脳血管障害例の構成障害に捕捉課題が効果を示すかを調査したものである。対象は発症から30日以上経過し構成障害を合併した頭頂葉損傷者4例とした。捕捉課題には3種類のキャッチボールを採用した。構成障害の検査および効果測定には立方体透視図模写を用いた。1週間のベースライン期を設定後,捕捉課題を1回行い,介入の直前,直後,24時間後,48時間後に模写試験を行った。さらに5日連続で捕捉課題を行いその48時間後に反復練習効果を測定した。合わせて日常生活動作および構成障害に影響を与える因子との関連を調べた。その結果,捕捉課題介入の直前直後で4例中3例に模写の改善がみられた。また連続介入後では全例で模写の改善がみられた。日常生活動作および構成障害影響因子と介入成績との関連性は明らかにならなかった。このことから捕捉課題は構成障害に少なくとも即時的な改善を示す場合があり,影響因子を介した間接的効果ではない可能性が示唆された。
  • ―就労継続するための条件とは―
    荒木 智子, 河合 麻美, 中邑 まりこ, 奥住 彩子, 飯高 加奈子, 板垣 美鈴, 山田 紀子, 市川 保子
    原稿種別: 研究と報告
    2012 年19 巻1 号 p. 49-53
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    理学療法士(以下PT)における妊娠経過に関する報告は数少ない。本研究ではPTを対象に妊娠経過,それに伴うトラブルへの対応について調査を行った。妊娠の経験回数は平均2.08回だった。妊娠経過は48名中32名(66.6%)が「問題があった」と回答し,内訳は重度悪阻,貧血,妊娠高血圧症候群,切迫流産,切迫早産,流産,早産であった。初回妊娠で問題があったのは31例(64.5%)で,問題があった妊娠回数は平均1.14回であった。対応は業務の軽減,休暇を利用した一方,通常業務の継続,退職したという回答もあった。また,妊娠・出産を理由に退職したのは13名(27.6%)だった。対象の6割に妊娠中のトラブルの経験があり,その対応も様々であった。また業務軽減・配慮は7割を超える施設で行われており,その制度の活用については今後さらに相互理解をすることで可能になると考えた。妊娠・出産を健やかに経験し,就業継続できる環境整備はPTの質の向上にも寄与できると考える。
症例検討
  • ―脳卒中片麻痺患者一例を通して―
    下池 まゆみ, 井上 悦男, 吉田 志保, 武川 真弓
    原稿種別: 症例検討
    2012 年19 巻1 号 p. 54-57
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    今回,車いす乗車時の不良姿勢から非麻痺側の殿部痛が生じた脳卒中左片麻痺患者を経験した。殿部痛の原因は,車いす乗車時に股関節周囲筋の筋緊張低下が不良姿勢を生じさせ,非麻痺側下肢で駆動する際に骨盤の固定ができず非麻痺側坐骨部が擦れ,崩れた姿勢が持続するためと考えた。さらに姿勢の修正が困難なことにより崩れた姿勢のままで駆動し,駆動のたびに殿部が前方へずれるという悪循環となっていた。そこで姿勢の改善,非麻痺側坐骨部の疼痛軽減を目的に,車いす駆動を想定した膝屈曲運動や骨盤前傾運動などの運動療法,車いす乗車時に頻繁に殿部を動かすように除圧指導,車いす上で姿勢を崩れにくくするための車いすの設定変更を行い,若干の改善がみられた。したがって,姿勢改善や殿部痛軽減には運動療法を行ったうえで除圧指導,車いすによる座位調整の必要があると考えられた。
  • 安達 純子, 解良 武士, 飛田 英樹, 桑垣 佳苗, 片桐 健一, 久保 寿朗, 吉野 恭正
    原稿種別: 症例検討
    2012 年19 巻1 号 p. 58-62
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    上腹部開腹手術後の評価として肺活量や1秒率などのスパイロメトリー,胸腹部の運動性についての報告はこれまで数多くあるが,呼吸中枢出力の指標である気道閉塞圧(P0.1)がその評価に用いられたことはない。今回,我々はこのP0.1やその他の換気パラメーターを上腹部手術前から経時的に観察することを試みた。症例は,症例A:60代後半と症例B:80代前半の胃癌による上腹部開腹術を受けた女性2名であり,いずれも対象者からインフォームド・コンセントを得た。いずれも術前より理学療法介入を行い,術後硬膜外麻酔と座薬による疼痛管理が行われた。術前後にP0.1と肺活量を気道閉塞装置と差圧トランスデューサー,流量計を組み合わせた器具で測定した。術後は上記に加えvisual analog scale(VAS)を用いて安静時および深呼吸時の疼痛を評価した。経過は症例A,Bともに術前と比べ術直後ではVASの上昇,P0.1と呼吸数の増加,肺活量の著しい減少を認めた。これらはVASの減少と共に徐々に術前値へと改善を認めた。しかし,最終評価時ではVASの減少は認めたが,P0.1と呼吸数,肺活量は術前値まで改善しなかった。症例Aについては,食事形態変更後に腹部膨満感の訴えを認めていた。上腹部開腹術後は全身麻酔の影響や疼痛により肺活量の減少をきたすことが多いが,これは手術侵襲に伴う神経反射による横隔神経の活動抑制が関わっていると推察されている。しかしながら術後P0.1が増加したことから,横隔神経の活動抑制と呼吸中枢出力の増大の関係についてはさらに精査が必要である。
  • 渡邊 雅恵, 塩田 和史, 菅野 雄介, 石渡 睦子, 青木 淳子, 青木 朝子, 岸林 千晶
    原稿種別: 症例検討
    2012 年19 巻1 号 p. 63-66
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    活動性の高い二分脊椎の児だが,末梢の筋力が低下しており両股関節外旋および両足関節下垂足,両足部外反扁平が著明であった。両足関節下垂足,足部外反扁平を改善させる目的で両側プラスチック型短下肢装具を装着していたが,歩行時に転倒が多い状態であった。立脚期の支持性増強の目的でプラスチック型短下肢装具から金属支柱付短下肢装具に変更し,立脚期のアライメントをより正常に整えるためにツイスターを処方したところ,股関節外旋が減少し正常な歩容に近づき歩行が安定した。また,両側プラスチック型短下肢装具を装着しているときは発赤・傷が絶えなかったが金属支柱付短下肢装具に足部を皮革にしたところ発赤・傷も消失した。以上より,筋力が低下しているが活動性の高い症例に対しては金属支柱付短下肢装具の処方により立脚期の支持性が増強され有用であること,股関節外旋歩行に対しては立脚期のアライメントをより正常に整えるためツイスターが効果的であること,足部の変形が強い症例に対しては足部全体を皮革で覆うことが望ましいことが示唆された。
  • 田村 亮, 武田 太, 大角 彰宏
    原稿種別: 症例検討
    2012 年19 巻1 号 p. 67-70
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/03/23
    ジャーナル フリー
    車いす利用者の中には,車いす上での座位姿勢の問題として,骨盤の前方滑りを起す事で,転落のリスクに繋がるケースが少なくない。医療スタッフの中には,座位自体を介助で,治す場面を見かけることがある。しかし,我々専門職は,身体機能面と車いす構造上の問題点から,骨盤の前方滑りが起こる理由を考え,対策を抗じなければならない。今回,脳梗塞による右片麻痺を呈し,車いす座位に見守りが必要な症例を担当させて頂いた。この症例は,骨盤の前方滑りにより,車いすからの転落のリスクがある症例であった。症例に対して,脳梗塞の二次的障害として,廃用症候群を予防していくためにも,車いすを利用し,離床時間を促していく必要があった。そのため,骨盤の前方滑りによる車いすからの転落のリスクを軽減する必要があり,指標椅子座位姿勢に基づいたシーティングを施行した。シーティング前後で効果を測定するものとして,日本シーティングコンサルタント協会が開発した「ズレ度JSC版」を使用した。シーティング後,骨盤の前方滑りの改善が,離床時間が65分間から120分間へ増加し,病棟でのスタッフや他患との交流の増加へと繋がり,ADL動作の介助量軽減やQOLの改善へと繋がった。
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