理学療法 - 臨床・研究・教育
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16 巻, 1 号
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講 座
研究と報告
  • 白子 淑江
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 10-13
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児に対する車椅子作製の経験を述べた。外来移行に際し,外来受診時間内乗車可能な車椅子作製の必要性があった。そこで,変形拘縮に対応した姿勢保持機能と消化管通過障害に対応した角度調節機能を搭載した車椅子を作製した。症例の場合,骨盤の正中位方向への誘導が可能となる股関節アライメント,体幹部の支持面と,前方滑り座りの一要因である膝伸展制限角度を把握し作製した。さらに胃内容物排出可能角度を設定することで,長時間の外来受診が可能となった。一方で,組み立て・折り畳みに時間を要すること,移乗時に注意を要すること,定期的な修正が必要であることなどの課題が考えられた。
  • 小野寺 恭子, 山﨑 宗隆, 牧田 茂
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    3枝病変を有する虚血性心疾患患者の心臓リハビリテーション(心リハ)を実施する際,安静時や軽労作においても高度の虚血や重篤な不整脈が起こりやすいため,リスク管理に基づいたトレーニングと安全なゴール設定が重要となる。今回,冠動脈3枝病変を有する高齢心筋梗塞症例に対し保存的治療と心リハ介入により自宅退院が可能となった症例を経験した。運動中のリスク管理として,負荷前後に標準12誘導心電図にて虚血や不整脈評価を行い,自覚症状,バイタルサインをチェックしながら心リハを進行した。βブロッカーの増量やレジスタンストレーニングと有酸素運動の継続により,同一運動強度における二重積の減少をもたらし虚血閾値の改善につながったと考えた。今回の症例を経験して,多枝病変や合併症を有する高齢心疾患患者も,虚血のリスク管理下での心リハにより自宅退院をゴールとすることが十分可能であると考えられた。
  • 豊島 彩子, 吉田 圭子, 山岸 沙絵子, 小野寺 牧子
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児(者)の多くは,胸郭の変形,脊柱の側弯,骨盤の傾斜・回旋,「風に吹かれた股関節」などの非対称変形を複合的にもち,例えば,その中の「風に吹かれた股関節」の状態が悪化すると脱臼に至り,非対称変形を増悪させていく。今回,非対称変形群を維持・改善させるため,2症例の協力を得て,最も変形の起きやすい姿勢に対して姿勢ケアを実施し,評価した。結果,非対称変形は早期から適切な評価・介入を行えば予防でき,起きてからでも進行をとどめるばかりでなく,改善するということを経験した。2症例において非対称変形の改善は活動能力面の改善にも大きな影響を与え,日常生活においての環境調整も積極的な理学療法のアプローチとなった。さらに,定期的に計測を行い記録していく縦断的定量的評価は,患者様の現状評価のみならず,経過の中での予後予測,変形の早期発見,治療法の決定,治療の効果判定に有効であり,その大切さを再確認した。
  • 唐澤 剛
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 23-25
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    踵骨骨折は頻度が高い骨折である。距踵関節面に骨折面が達している場合はプレート固定を用いて関節面を正確に整復することが多くなった。しかしながら荷重時痛を訴え理学療法を施行する上で難渋することが多い。本症例は糖尿病のためギプス固定期間が長期になりROM訓練が遅れたため内がえしが制限され,後足部外反アライメントの状態になり,荷重時痛を呈していた。荷重時痛の原因として後足部外反アライメントが距骨下関節にストレスを与えたことと,手術による腓骨筋腱の侵襲が足関節の筋安定化機構を弱化させ正常アライメントで支持できなくなったことであると考えた。治療の結果これらが改善したことで荷重時痛が減少した。踵骨骨折後の理学療法では関節可動域の改善だけではなく,後足部のアライメント,荷重時の足関節筋群の筋安定化機構に注目したアプローチが必要と示された。
  • 田口 俊哉, 国分 貴徳
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    肩関節周囲炎を呈する患者において結帯動作にて痛みを生じるケースは比較的多く,ADL上問題になることが多い。結帯動作における主要問題点としては肩甲上腕関節・肩甲胸郭関節が挙げられ,どちらに介入するかによってその後の治療展開が異なる。今回は,本田らが述べている結帯動作において母指先端が尾骨から第7胸椎に到達するまでに6.6°しか内旋せず,下垂位から母指先端が尾骨に到達するまでにほぼ最大に近い内旋を行っているという過去の知見を用いて評価を行い,問題点を肩甲胸郭関節に絞り,体幹機能との関連からアプローチした結果,良好な結果が得られた症例について報告する。結帯動作の評価を行う際には,肩甲上腕関節内旋・肩甲胸郭関節のどちらに問題が強いかを鑑別した後,他部位との相互関係を多角的に評価し,的確なアプローチに繋げていくことが重要である。
  • 藤崎 圭哉, 輿石 尚美, 板垣 奈津子, 竹内 祥大, 松村 菜緒子, 関 純, 呉 盛光
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 30-34
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    回復期リハビリテーション病棟では転倒事故のリスクが高く,その防止は重要課題である。転倒事故を予防するため,当院リハビリ病棟入院中に転倒した患者の特性を明らかにすべく調査・研究を行った。当院入院患者367名を対象として転倒群・非転倒群に分類し,先行研究において有意に転倒・転落に関係しているとされる項目とその詳細に関して調査を実施した。転倒群は平均年齢が高い,転倒歴がある患者が有意に多い(p<0.05),ADL要介助の患者が有意に多い(p<0.05),認知機能が低下している患者が有意に多い(p<0.05)という結果となった。転倒した患者は筋力低下,ADL要介助といった運動要因,認知機能低下といった高次要因が相互に関連して転倒していると考えられた。
  • 川口 桂蔵, 杉山 真理, 山崎 大, 石崎 耕平, 武川 真弓
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    完全対麻痺者にとってpush upは,日常生活活動(ADL)の自立度を高める重要な動作である。今回,長坐位push upは足部下の摩擦力に大きく影響を受けていると考え,上肢機能に問題のない完全対麻痺者5名に対し,足部下をA)靴下のみ,B)靴下+スライディングシート,C)裸足+滑り止めマット,という環境でpush upを行った。この時の殿部最大挙上の保持時間,殿部最大挙上距離,殿部最大挙上時の身体各部位の屈曲角度を求め,Aを基準としB・Cと比較した。その結果,Bでは,push up時に足部の引き込みが可能であり体幹・股関節を屈曲させ身体を前方に回転する動作パターン,Cでは体幹・股関節屈曲角は減少し,肩甲骨下制により殿部挙上させる動作パターンが生じた。したがって,足部下の環境はpush upの動作パターンを変化させる要因となるため,十分に配慮する必要があると考える。
  • ―MIS-UKAを行った3症例―
    千明 譲, 古田 晴朗, 島貫 かおる, 近藤 千愛, 笹 哲彰, 鈴木 秀彦
    原稿種別: 研究と報告
    2009 年 16 巻 1 号 p. 41-45
    発行日: 2009年
    公開日: 2009/03/12
    ジャーナル フリー
    超高齢化社会を迎え,何らかの内科的基礎疾患を有しながら変形性膝関節症に罹患した患者が増加している。高齢者にとって膝関節痛は日常生活に制限をもたらす耐え難い要因の一つである。今回,我々は変形性膝関節症患者に対して施行した最小侵襲手技による人工膝関節単顆置換術(MIS-UKA)の術後経過を調査し,リハビリテーションにおけるその有用性に関して検討した。MIS-UKAの術後,関節可動域,下肢筋力の回復が早かったため,ADL動作及び歩行能が早期に改善された。MIS-UKAの低侵襲性は術後のリハビリテーション期においても有用であり,身体や基礎疾患に与える影響が少ないため,高齢者や基礎疾患を伴う患者に対しても有効であると推察された。
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