九州大学は,福岡市西部に新しく造成された新キャンパス(伊都キャンパス)へ,2005年10月から工学部を皮切りに大学の統合移転を行っている。新キャンパス内およびその周辺には,前方後円墳や円墳などの多数の埋蔵文化財が確認されており,福岡市教育委員会によって大規模な事前発掘調査が行われている。新キャンパス内には6基の前方後円墳が確認され,そのうち5基が九州大学によって保存が確定している。これまで,保存が確定している古墳の測量調査が九州大学の考古学研究室によって行われ,また電気探査が物理探査学研究室によって実施された。
前方後円墳を対象にした電気探査結果の解釈を行う際には,築造された地域や時代の特色を持つ古墳の外形や内部構造などの考古学的な見識に基づいた解釈を行う必要があり,考古学者の協力が重要となる。
本報告では,まず九州大学の新キャンパス内に存在する前方後円墳のひとつである塩除古墳について,2極法電極配置による2次元電気探査を実施した結果について報告した。次いで,インバージョン解析によって得られた比抵抗分布を考古学者にもわかり易く表示するために比抵抗3次元イメージングソフトウェアを新たに開発し,そのイメージング手法について詳述した。
開発したソフトウェアを使用して,九州大学の新キャンパス内に存在し,保存が確定している前方後円墳の一つである塩除古墳で実施した電気探査結果を表示すると,後円部中央付近で認められた粘土槨と推定される低比抵抗異常の分布形状や,測線の端点に位置する墳丘斜面付近で認められた高比抵抗異常と古墳の墳丘斜面のほぼ全体にわたり残存が認められた葺石との位置関係が,手軽な操作と現実感のある3次元画像により確認でき,本ソフトウェアが探査結果を評価解釈する上で有効であることが確認できた。
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