物理探査
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61 巻, 5 号
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論文
  • 德永 裕之, 三ケ田 均, 真田 佳典, 芦田 讓
    2008 年 61 巻 5 号 p. 375-383
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     地中を伝播する弾性波には,縦波であるP波と横波であるS波が存在する。反射法地震探査の受振記録からP波とS波を分離することができると,それぞれの波の影響を受けない反射P波イメージと反射S波イメージを得ることができる。本研究では,分散関係式を利用してP波とS波を分離する手法を合成2次元反射法地震探査記録に適用し,手法の有効性を確認した。次に球面波が局所的に3種類の平面波(P波,SV波,SH波)の組み合わせで代表できるとする仮定を導入することで,上記の手法を3次元反射法地震探査データに拡張した。拡張された手法を3次元モデリングデータおよび実データに適用し,その有効性を確認した。
  • 山中 浩明, 元木 健太郎, 山田 伸之, 福元 俊一, 山田 悦子, 瀬尾 和大
    2008 年 61 巻 5 号 p. 385-396
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     2007年能登半島地震では,能登半島北部地域を中心に大きな被害が発生した。とくに,震源域の輪島市門前町中心部の走出や道下地域で木造家屋の倒壊が数多くみられた。この地域は,南北を山地に挟まれた八ケ川沿いに広がっており,地盤条件は良好ではない。Yamanaka et al.(2008)は,この地域で余震観測を実施し,被害の多かった地点では表層地盤による地震波の増幅を示唆する明瞭な卓越周期が存在することを明らかにした。こうした地盤増幅特性を理解するために,この余震観測が行われた7地点において半径1mから1kmまでの複数のアレイで微動の上下成分の観測を実施し,周期0.1秒から3秒の間でレイリー波の位相速度を求めた。各地点での位相速度の逆解析により,深部および表層地盤の1次元S波速度構造を明らかにした。これらの地盤モデルを用いて,門前町地域でのS波の地盤増幅特性について検討した。表層地盤に対するS波の1次元理論増幅特性の卓越周期は,余震観測による地盤増幅特性の卓越周期とほぼ一致しており,地盤モデルが妥当なものであることがわかった。また,観測増幅特性のピーク振幅は,得られた地盤モデルの深さ30mまでの平均S波速度と線形関係にあることがわかった。しかし,ピーク振幅の絶対値は,1次元地盤モデルでは説明できず,表層地盤の2・3次元構造の影響の可能性が示唆された。
  • 亀井 宏行, 阿児 雄之, 工藤 博司
    2008 年 61 巻 5 号 p. 397-406
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     奈良県明日香村にある高松塚古墳は, 1972年に石室内に極彩色の壁画が発見され,国宝に指定されて,厳重に保存策がとられて来た。しかし, 2002年秋に,壁画に黒カビが発生したことが報告され,翌年から緊急に対策が施されることになった。その対策を施す前に,カビ成長の一因である水分の墳丘内の分布を非破壊で推定するために,墳丘は版築で構成され均質な土壌と考えられることから,比抵抗の比較で水分量の大小を判定できると想定し,電気探査を実施した。そして,墳丘の樹木を伐採し遮水シートで覆うという防水対策を施すことが決定されたが,その保存対策の効果をモニターするためにも電気探査が用いられた。墳丘内の水分分布推定では, 1m間隔で配置された複数の測線に沿って, 0.25m間隔で設置された108本/測線の電極を用いてWenner法で測定された見かけ比抵抗データから,三次元逆解析を行い,墳丘内の比抵抗の3次元分布を求めた。その結果,カビの発生した石室東面の外側で最も比抵抗が低いという結果が得られた。保存対策効果のモニターでは,遮水シートの下に残した2測線分の電極ピンを使い, 1年間にわたって墳丘内の比抵抗の変化を観測した。石室の壁画に影響を及ぼさない範囲で測定された地温と土壌含水率のデータと比抵抗データの比較検討から,水分量の変化を考察した。石室の東側ではすべての深度において対策開始前よりも,開始1年後の比抵抗のほうが低いという結果から,この保存対策が,墳丘内の水分を減少させるには有効でなかったことが示された。
  • 広島 俊男, 牧野 雅彦
    2008 年 61 巻 5 号 p. 407-425
    発行日: 2008年
    公開日: 2014/05/09
    ジャーナル フリー
     地震探査などの測線上で測定された重力データを二次元構造とみなして解析した場合,測線下の三次元地下構造と,その解析された地下構造の深度との間には少なからず誤差が含まれる。測線下の三次元地下構造と,重力データから解析される深度との差を四つの地溝モデルによって推定した。三次元地溝を二次元地溝とみなして解析した場合に生じる誤差を精度よく算出する計算式を導出した。無次元誤差曲線図の作成方法,及びその利用法を紹介した。これらの結果によればモデル構造の中心点からの長さが,モデル構造の下部深度の2.5倍以上あれば,深度誤差は10パーセント以下になることが判った。
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