Synthesiology English edition
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3 巻, 1 号
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研究論文
  • - 創薬ターゲット遺伝子の網羅的機能解析 -
    諏訪 牧子, 小野 幸輝
    2010 年 3 巻 1 号 p. 1-12
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    大量の生命情報データの情報洪水の中、バイオインフォマティクス技術の役割は高まり、実験上の大きなリスクを軽減し、実験の設計に資する情報を提供する形で貢献することが期待されている。この目的のもと、私たちは細胞膜に存在するGタンパク質共役型受容体(GPCR)を中心に、ゲノム配列から遺伝子を同定してそれらの機能解析を行うための計算パイプラインを構築し、その応用結果を網羅的な機能解析総合データベース(SEVENS)として練り上げてきた。このコア技術が共同研究の呼び水となり、その後循環発展的に展開しながら今日も続いている。この流れは、三つの要素(長期熟成されたコア技術、実験研究者との密な連携、技術インキュベーションを生む環境)を駆動力として進む研究の方向性と、進展の速いライフサイエンス分野の方向性の相互作用として進み続けるダイナミックな形態である。
  • - 5万分の1地質図幅の作成 -
    斎藤 眞
    2010 年 3 巻 1 号 p. 13-25
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    地質図幅は、地層や岩石など国土の構成物を表した図面であり、人間が自分の周囲の地球環境を科学的に理解するための基本的な情報が記載されている。資源、防災、立地、環境、学術など、多種多様な用途がある。大学や企業が作成する地質図は、それぞれが興味をもつ特定の地層・岩石を対象にすることがほとんどであるが、産総研が作成する地質図幅は、その地域に分布するすべての地層・岩石に関わる調査結果を、その地域の形成史を矛盾なく表せるよう1枚の図面に統合したものである。地質図幅は個々の研究成果を統合して作成していくが、これまで作成の考え方と過程を記した研究論文がないので、著者が関わった5万分の1地質図幅を例に地質図幅の作成方法論を示す。
  • - 熱電対のための温度の標準体系構築 -
    新井 優, 小倉 秀樹, 井土 正也
    2010 年 3 巻 1 号 p. 26-42
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    1990年代後半から、熱電対による1550 °Cまでの温度計測のための国家計量標準を整備し、それに基づく標準体系を構築して、高温域の温度計測の信頼性を向上させた。温度の国家計量標準が何段階かの校正の連鎖を経て、実際の計測に使われる熱電対に移転される仕組み(トレーサビリティ体系)を、標準器の利用の容易さ、校正事業者と産総研との役割分担など、多くの要素を考慮に入れて設計した。新しく開発した標準技術と、現在までに民間企業が培ってきた技術とを適切に融合させて、新しい技術の普及を見定めながら、全体として我が国にとって最も望ましいトレーサビリティ体系を構築した。
  • - POCTデバイスとしてのマイクロチップ基板の可能性を探る -
    片岡 正俊, 八代 聖基, 山村 昌平, 田中 正人, 大家 利彦
    2010 年 3 巻 1 号 p. 43-52
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    近年、「医療現場での臨床検査」Point of care testing(POCT)つまり患者の傍らでの即時検査が求められている。そして疾患関連バイオマーカーの迅速・省サンプルな測定デバイスの構築に向け、各種ナノバイオデバイスを用いたPOCTへの応用研究が多数なされている。我々は、臨床経験を踏まえた生物系ユーザーの立場から、市販のマイクロチップ電気泳動による血液中に存在する糖を対象とした解析への応用や、マイクロ流体を利用したマイクロ流路上での抗原抗体反応による迅速な血中タンパク質検出系の構築を行っている。これらの知見をもとに、本論文ではマイクロチップ基板を用いたPOCTデバイス実用化への可能性を検討した。
  • - 信頼性のある効率的なトレーサビリティ体系の構築への取り組み -
    嶋田 隆司, 土井原 良次, 寺尾 吉哉, 高本 正樹
    2010 年 3 巻 1 号 p. 53-63
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    膨大な石油製品の取引や課税の数量の根拠となる石油類の流量測定の計量標準は、通商上、省エネ政策実施の観点、プラントの高度な品質管理の観点から重要である。そこで、標準の信頼性、達成可能な不確かさ、利便性について石油流量の標準供給体制を調査・分析し、わが国に適した国家標準の性能および供給の仕組みを設計した。これに基づいて、校正技術の検討、安全対策と不確かさ低減のための技術開発を行い、中核となる液種と流量範囲で世界最高水準の国家標準を確立するとともに、校正事業者の国家認定制度を利用した標準供給体制の発足を技術的に主導した。さらに、国際比較による国家標準の同等性の検証などを通して本事業の評価を行った。
  • 技術移転の方法論に向けて -
    木下 佳樹, 高井 利憲
    2010 年 3 巻 1 号 p. 64-76
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    情報処理に関するリスクを抱える現場に対して、情報学の研究成果を用いてそのリスクを軽減する活動に固有の学術としての臨床情報学を提唱する。本稿では特に、数理的なシステム検証技術のシステム開発現場への技術移転を例にとり、技術移転の過程の体系化を試みる。具体的には、技術移転のシナリオを野外科学的方法論のなかに位置づけ、シナリオで用いるフィールドワークやインタビュー、参与観察などの各要素技術の役割を論じる。
  • - 技能の可視化および代替に関する研究 -
    松木 則夫
    2010 年 3 巻 1 号 p. 77-85
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    中小製造業の現場にある熟練技能者の技能を抽出し、後継者に円滑にその技能を継承するため、鋳造、鍛造、メッキなどの加工技術について、熟練技能者のもつ判断の技能を抽出する方法を提案する。この方法に基づき、各加工法の個別の技能について、その代替となる実際の加工現場で利用可能な計算機システムを開発した成果を報告する。また、将来の製造業における熟練技能者の在り方についても議論する。
  • - サイドチャネル攻撃の標準評価環境の構築 -
    佐藤 証, 片下 敏宏, 坂根 広史
    2010 年 3 巻 1 号 p. 86-95
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/08/20
    ジャーナル フリー
    近年、暗号アルゴリズムを実装した暗号モジュールの利用が急速に拡大しており、その実装の安全性評価手法の標準化と、公的機関による評価・認証制度の確立が求められている。特に、暗号モジュールの消費電力や電磁波を解析して、その内部の秘密情報を盗み出すサイドチャネル攻撃が大きな注目を集めている。しかし、各研究機関における独自の実験環境が、その解析結果の追試や評価手法の標準化を妨げていた。そこで我々は、サイドチャネル攻撃の標準評価環境として暗号ハードウエアボードおよび解析ソフトウエアを開発し、世界中の研究機関での利用を進めながら、国を超えた産学官連携により、国際標準規格策定への貢献を行っている。
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