ATP 含量とpH が高い高品質な冷凍マサバを製造するための適切な冷却条件を明らかにすることを目的として,活締め直後のマサバを,-30~0°C の冷媒中で冷却したときの魚肉の温度,冷却時間,ATP 関連化合物量に対するATP 含量の割合(ATP 比率)およびpH の変化を調べた.その結果,魚肉の温度が-10°C 以下の場合は冷却開始後4~24 時間まで,-15°C 以下の場合は300 時間以降まで,ATP 比率80%以上を維持した.一方,pH は,冷却開始から2 時間後に魚肉の温度が-15°C 以下となった場合は,pH 6.5 以上を300 時間以上維持した.なお,0°C 付近においては,冷却開始から約2~4 時間までATP 比率とpH の低下が抑制された一方で,-4~-1°C では,ATP 比率とpH の低下が促進された.
著者らが実験した30 分岐超の垂直ヘッダ型分配器の分流特性に対して,渡辺と勝田による5 分岐ヘッダの1 次元計算モデルを適用し,精度と計算時間を検証した.さらに機器設計に重要なヘッダ上部への液冷媒不到達時の分流特性予測のために,新たにフラッディングの整理式を用いたLBL (Liquid Branch Limit) モデルを検討した.結果,30 分岐超のヘッダにおいて,渡辺モデルの適用により液冷媒の分流特性を示す平均二乗差偏差を0 から-0.6 の範囲で予測でき,計算時間も10 分未満となり産業上の有用性を確認できた.LBL モデル適用により液冷媒の到達高さ比を ±20 ポイント,偏差 ±0.2 以内で予測でき,ヘッダ上部への液冷媒不到達条件における冷媒分流予測精度をさらに向上できた.
空調冷熱用圧縮機では運転範囲の上限拡大が求められている.上限拡大の設計には2 通りあり,行程容積の拡大では冷媒の圧縮荷重増大に伴ってすべり軸受の荷重が増大する.一方,高速化では油膜のせん断発熱による冷凍機油の粘度低下に起因してすべり軸受の負荷容量が減少する.ところで,すべり軸受を潤滑する冷凍機油には冷媒が溶解しており,温度と圧力条件によって冷媒溶解度と溶解粘度が変化する.高負荷,高回転数領域では摩擦熱や冷媒溶解による粘度変化が無視できなくなる.そこで,軸受油膜の温度および冷媒溶解度に起因する溶解粘度の変化を捉えた熱流体潤滑解析モデルを構築し,冷媒溶解度・溶解粘度の変化が軸受特性に及ぼす影響を明らかにした.
今日,氷蓄熱システムなど水の凝固・融解を利用した技術が広く求められている.しかしながら,過冷却現象がシステム制御を困難にし,冷凍負荷を増大させている.また,冷凍食品分野では,品質低下を防ぐために,逆に過冷却を利用した冷却方法が模索されている.本研究は,固液界面上における凝固促進と過冷度,結晶の向きとの関係を明らかにすることを目的とし,MD 法を用いた計算機実験を行い,過冷却状態下にある水分子の挙動とポテンシャル変化の関係を検討した.その結果,過冷却状態下にあり自由度の拘束された分子が固液界面に近づいていくと,凝固潜熱に伴うエネルギーが運動エネルギーへと移行し,分子の自由度が増加することで結晶成長の促進に繋がることが分かった.さらに,凝固時の氷結晶の形へ及ぼす影響,凍結濃縮の軸の違いによる影響などを明らかにすることができた.