冷媒水平蒸発管に対するねじりテープ挿入の伝熱促進効果を調べることを目的とする.冷媒には混合冷媒R410A を使用した.試験部銅管に内径17.05 mm と7.93 mm の2 種類を用意し,各管についてピッチが異なる2~3 種類のねじりテープを順に挿入して実験を行った.77~613 kg/m2s の冷媒質量速度条件で,平滑管とねじりテープ挿入管のそれぞれについて,冷媒クオリティを変化させて試験部圧損と熱伝達率を測定した.また,試験部上流と下流で可視化を行った.低質量速度で冷媒が層状流動状態のとき,ねじりテープ挿入管の熱伝達率は最大で1.6 倍程度増大したが,圧損増大も顕著で,テープ挿入の負の効果が上回った.一方,高質量速度の条件で噴霧流に移行する流動域において,クオリティが1に近づくにつれてテープ挿入管の熱伝達率は最大2.2 倍程度まで急増し,圧損は2~3 倍程度の増大を維持したため,テープ挿入による伝達促進効果が明確に表れた.
扁平多孔管を用いたコルゲートフィン熱交換器はコンパクトで高性能であるが,蒸発器に用いる場合には,排水性の問題を有している.本研究ではコルゲートフィンを排し排水性を高めた扁平多孔管を用いた蒸発器の研究を行った.冷媒流路サイズ,冷媒流路数が異なり,冷媒が流れないプレート部を有する扁平多孔管の最適形状を数値解析により検討した.この結果を参考に4 種類の扁平多孔管とそれを用いた熱交換器を試作した.それらを温度,湿度,速度を制御可能な風洞に設置し,伝熱管の空気側表面が乾き面,濡れ面の2 つの状態に対して,熱交換量と空気側圧力損失を測定し性能を評価した.本扁平管及びそれらを用いた熱交換器は結露水が滞留することなく流下する特長を有し,空気側圧力損失の上昇も抑えつつ,単位前面面積あたりの伝熱量を上昇させることが可能で,従来型熱交換器より高性能となることが分かった.
本研究では,ブランチング処理の有無が冷凍枝豆の香気に与える影響について調査した.ブランチング処理をした枝豆試料と非ブランチング試料を真空包装後に急速凍結させ,同等な食感を与える調理条件の下で茹で加熱し,官能評価とにおい嗅ぎGC-MS(GC-MS/O)による香気分析を行った.官能評価の結果より,喫食時に鼻から抜ける香りでは有意差が認められなかったが,喫食直前の莢の香りでは,非ブランチング冷解凍試料の方が有意に良好であった.また,GC-MS/Oの分析結果より,非ブランチング冷解凍試料ではグリーン様香気表現がより多く検出された.したがって,ブランチング処理の有無において枝豆香気に影響を与えるのは莢であることが示唆された.
本研究では,入浴時ヒートショックの体質的な危険度を定量的に評価できるシステムの構築を目的に,冷温熱刺激装置と近赤外線を用いた末梢血管透過撮影装置を作製し性能を評価した.さらに本装置を被験者の手掌と手指に装着し,手掌を冷却・加温した際の手指血管を撮影し血管径の変動を計測した.冷温熱刺激装置の性能評価の結果,無負荷条件及び手掌に装着した状態においても冷却および加温が可能であった.さらに生体計測実験では冷却と加温によって末梢血管径に変動がみられ,同一日内でも時間帯によって温度に対する血管運動性が変化したことが観察された.本結果は,構築したシステムが局所冷温熱刺激に対する血管運動性を定量的に評価できる可能性を示唆した.
未利用エネルギー活用を目的とした熱媒体としてエリスリトールスラリーを提案する.本研究では,熱輸送媒体として使用する上での障壁となりうる伝熱面での結晶の析出や固着を考慮した熱伝達特性について把握することを目的とした.実験では,二重円管の内管にスラリー,外管に冷却水を流し,結晶の析出が起こる条件下でスラリーの流速と固相率を変化させて熱伝達係数を測定した.乱流域では,管内壁での結晶の固着により,いずれの固相率でも水溶液の理論値よりもスラリーの熱伝達係数が低くなることがわかった.固相率5 mass%では,乱流化による熱伝達係数の急激な増加が見られた.対して固相率10,15 mass%では熱伝達係数に同様の増加は見られず,低レイノルズ数から乱流域での理論値に近い傾きで増加した.加熱条件に比べ冷却条件では潜熱放出の影響による熱伝達の促進と結晶の固着による熱伝達の阻害の両者が顕著になることがわかった.また,潜熱放出の影響による熱伝達の向上は固相率10 mass%程度で頭打ちになることがわかった.ヌセルト数比と管摩擦係数比の比較では,結晶の凝固が圧力損失に及ぼす影響よりも,潜熱の放出による熱伝達向上へ及ぼす影響の方が大きいことが示唆された.以上の結果より,冷却条件におけるエリスリトールスラリーの流動・伝熱モデルを考案し,過冷却が熱伝達特性に影響を及ぼしている可能性を示した.