日本冷凍空調学会論文集
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37 巻, 4 号
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原著論文
  • 稲垣 裕之, 阿部 駿佑, 浅岡 龍徳
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 387-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル フリー

    エリスリトールスラリーの流動中の管閉塞を抑制するため,管内壁に施した撥水コーティングが管内壁面への結晶の固着を抑制する効果について検討した.外側から冷却された円管内にエリストールスラリーを流動させ,管内壁面への結晶の固着の様子を観察した.管内の結晶の固着の様子を観察するために観察部として透明なアクリル管を選定し,コーティングを施していない裸管と2 種類の異なる撥水コーティングを施した管について結晶の固着傾向を比較した.実験の結果,固着の発生条件(固着が発生する冷却量と流速の関係)は裸管とコーティングを施した管とでほぼ同様であり,固着の発生条件は変わらなかった.しかしながら,エリスリトールスラリーの流れが不均質流れ,均質流れになる流動条件においては,撥水コーティングにより固着する結晶の量を減少させる効果があることがわかった.

  • 森本 崇志, 木村 正人, 浅岡 龍徳, 熊野 寛之
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 397-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,微細な分散質を有する懸濁液を対象とし,垂直加熱冷却壁を有する矩形容器内において,分散質の固液相変化を伴った場合における懸濁液の自然対流について解析的に検討を行った.本解析では微細な粒子を有する懸濁液を単相流体として取り扱い,分散質の融解・凝固を,固相率を導入することで取り扱った.解析と実験結果の比較より,分散質の相変化を伴った場合において,伝熱特性を良好に再現することはできなかったものの,固相率の導入により,矩形容器内での対流は良好に再現することができた.また,解析より,分散質の相変化を伴った場合における,懸濁液中に形成される複数の温度層は,懸濁液内で形成される層状の固相率分布の影響であることが示唆された.

  • 玉置 亮, 李 潤珠, 鈴木 徹
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 411-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    [早期公開] 公開日: 2020/11/15
    ジャーナル フリー

    n-Hexadecane(HD)の結晶化に与えるn-Dacane(DCA)およびn-Octane(OCT)の影響を調べた.これにより,脂質成分どうしの相互作用が脂質の過冷却解消に及ぼす影響を体系的にとらえることを目的とし た.HD-DCA , HD-OCT 系それぞれについて平衡凝固点に対して結晶核生成温度をプロットしたところ,一次の相関が見られた.しかしながらその傾きから評価すると,HD は水溶液系ほど過冷却が進行しなかった.n-Alkane 類は極性を持たず,水溶液系ほど分子間の相互作用が強くないため,過冷却解消の障壁が高くないことがひとつの要因として推察された.また,HD-OCT 系よりHD-DCA 系の方が相対的に過冷却が進行する結果となり,共存物質によって過冷却の進行度合いが異なることも明らかとなった.

  • 角田 功
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 417-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    [早期公開] 公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    電気自動車では,走行用として蓄えている電力の一部が,暖房用としても使われる.暖房システムとしては,構造の簡単さからCOP1以下である電気ヒータが使われるが,消費電力が大きいため,暖房運転が走行距離を短縮するという問題が生じる.その対策として暖房効率の高いヒートポンプが検討されているが,様々な課題を有している.室外熱交換器着霜による性能低下はその中でも解決が難しい課題である.建物用のヒートポンプでは,定期的な除霜運転を行う.しかし自動車の場合には走行することと,暖房空間の狭さから一時的に暖房を停止するのは難しいため,着霜したまま運転を続ける.本稿では自動車のヒートポンプにおいて,室外熱交換器に着霜させたまま連続で暖房運転した場合に,その性能と効率の変化を確認したため,その内容を報告する.

  • 福冨 翔, 松浦 裕真, 田中 三郎, 佐々木 直栄
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 423-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,エアコンの暖房運転時の温湿度環境を再現して,強制対流下で霜層を60 分間生成し,その有効熱伝導率(以下,熱伝導率)および密度を15 分ごとに測定した.実験時の環境条件は,空間の温度を1.31.8℃,絶対湿度を0.00330.0036 kg/kg(DA),基板付近の風速を2.02.3 m/s,基板の表面温度を-17.7-17.2℃とした.熱伝導率は法を用いて測定し,霜層の成長過程はデジタルマイクロスコープを用いて観察した.霜層の熱伝導率および密度は,生成時間の経過に伴い増加傾向を示し,熱伝導率は0.050.14 W/(m·K)の範囲であり,密度は55115 kg/m3 の範囲であった.それらの増加率は,生成時間が1530 min のときに顕著であり,30 min 以降は緩やかな傾向に変化した.また,熱伝導率は密度の増加に伴って上昇する傾向を示した.

  • 松本 亮介, 西浦 雄人, 塩川 貴大 , 槇原 拓郎, 小田 豊, 清水 智弘, 依岡 拓也 , 荒木 拓人
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 431-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    [早期公開] 公開日: 2020/10/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,霜層の微細構造をX μCT を用いて測定し,冷却面の表面性状が霜層の微細構造に及ぼす影響について調べた.霜は冷却面上に凝縮した微小液滴を起源として成長する.液滴が合体成長の後に凍結し,その氷滴の頂部より柱状結晶が成長し,霜層が形成される.冷却面の表面性状は,この霜形成初期段階の滴状凝縮の液滴形状に影響をおよぼすと考えられる.本研究では,接触角が15 °以下の親水性と接触角96.2 °のはっ水性の2種類のシリコンチップの冷却面上に霜層を形成した.はっ水性の冷却面では親水面に比べ小さい氷滴が冷却面上に形成され,平板状の氷結晶が氷滴上部を覆い,その上部では霜密度が小さい箇所の存在が確認された.

  • 田岸 未来子, 大久保 英敏
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 441-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    [早期公開] 公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    冷凍空調分野で長年問題となっている熱交換器への着霜は,熱交換量の低下と通風抵抗の増大の原因となり,除霜運転が不可欠である.近年,低温機器の成績係数(COP)の向上を目的として,融解を伴わない機械的除霜が提案されている.この機械的除霜を実現するために,霜結晶の冷却面への付着力低減が大きな課題となっている.本研究では,霜層の掻き取り力を低減することを目的として,冷却面表面の微細加工形状として,単純な矩形凹凸面の凸部にR形状を設けたM字型凹凸面形状を提案する.この提案に基づき,数値解析および霜結晶の生成・成長の観察実験を行った.その結果,霜結晶が生成・成長する冷却面面積の低減と,霜結晶同士のブリッジングを抑制する効果について,M字型凹凸面形状の優位性を確認できた.

  • 横山 翔一, 大久保 英敏, 関 光雄, 安喰 春華
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 451-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    [早期公開] 公開日: 2020/12/15
    ジャーナル フリー

    着霜現象は,熱移動および物質移動の同時移動現象であり,霜層を形成する氷結晶が冷却面表面上から生成・成長する非定常現象である.この着霜現象を系統的に理解し,低温機器の熱交換器で問題となっている人工霜の生成・成長を防止または抑制することは,低温機器の消費エネルギーを削減する効果があり,革新的な省エネルギー技術となる.本研究では,微細凹凸面が凹凸面の凹部(溝部)の着霜を抑制し,凸部表面から霜結晶を生成・成長させる方法に関する基礎的研究を行った.結果として,着霜曲線の領域I(-40.1℃≦tw<0℃,tw : 冷却面表面温度)における着霜低減化の可能性を明らかにした.

  • 大西 元, 中野 紘佑, 春木 将司, 多田 幸生
    原稿種別: 原著論文
    2020 年37 巻4 号 p. 459-
    発行日: 2020/12/31
    公開日: 2021/12/31
    ジャーナル フリー

    低温環境下で使用する空気-冷媒熱交換器で生じる霜の形成は,空気流路を徐々に閉塞しながら熱抵抗を増大させるため,伝熱性能の低下を招く.本研究では,着霜の原因となる空気中の水蒸気の直接除去法に着目し,水蒸気吸着剤を塗布した熱交換器を蒸発器として利用することを提案する.そして,吸着剤の有効性を検討するために,吸着剤塗布熱交換器と一般的なフィンアンドチューブ熱交換器を用いて,一定の温度および湿度の空気が連続的に流入する条件下で低温に保たれた熱交換器に対し,風速をパラメータに,吸着剤の塗布が着霜様相,熱・物質移動特性に与える影響について比較検討した.その結果,着霜条件において吸着剤の水蒸気吸着効果により無着霜時間が見られた.すなわち,吸着剤は着霜抑制効果があることがわかった.

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