microRNA (miRNA)は約22塩基からなる内在性低分子RNAであるが、相補性の度合いに応じて標的遺伝子のmRNAに対して翻訳抑制または分解促進を行うことが知られている。miRNAは多数の遺伝子の制御を介することが予想されており、薬物トランスポーターへの影響も報告されている。
我々はMDR1/
ABCB1遺伝子とBCRP/
ABCG2遺伝子発現の個人差について、miRNAとの関連を検討した。Caco-2細胞を用いた機能解析の結果、
ABCB1遺伝子は2種類のmiRNAによりその機能が制御される結果が得られた。胎盤においてP-glycoprotein発現の個人差との関連を検討したところ、miRNA発現量との間に有意な負の相関関係を認めたことから、これらmiRNAが
ABCB1遺伝子機能の個人差の要因となることが示された。
ABCG2遺伝子はMCF-7細胞において複数のmiRNAにより制御されることがこれまでに報告されており (Li X, et al. 2011, Biochem Pharmacol)、我々の検討においてもヒト胎盤にて
ABCG2遺伝子はmiRNAにより抑制的に制御される結果が得られている。
ABCG2遺伝子の個人差要因となることが想定されるmiRNAが
ABCG2遺伝子の生体内機能予測のバイオマーカーとなりうるのかを検討するため、スルファサラジンの経口投与による臨床試験を行った。その結果、血漿中のmiRNAとスルファサラジンのAUC
0-24に有意な相関を認めた。miRNAは血漿中で非常に安定であることからバイオマーカーとして優れた特性を持つことが知られる。本発表では、miRNA発現細胞からどのようにして血漿側にmiRNAが分泌されるのか検討した結果を合わせて、バイオマーカーとしてのmiRNAの展望を紹介する。
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