日本トキシコロジー学会学術年会
最新号
選択された号の論文の306件中201~250を表示しています
一般演題 ポスター
  • 西藤 俊輔, 髙橋 義博, 本門 忠文, 笹木 祐司, 三浦 瞳, 大坪 靖治, 一井 隆亨, 宇都宮 慎治, 山下 祐介, ...
    セッションID: P-91
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,動物愛護の観点から動物実験としてのミニブタの需要が高まりつつある.作出されたばかりの世界最小・超小型ミニブタであるマイクロミニピッグ(MMP: MicrominipigTM)は,性成熟体重が7 kg以下であり,ハンドリングも行いやすい特徴がある.また,薬物の経皮吸収性は,比較的ヒトに近いとされており,皮膚領域の分野でミニブタの利用が注目されている.一方,経皮投与による全身暴露の評価には健常皮膚に加えて,損傷皮膚適用時について検討を行う場合がある.しかしながら,MMPにおける損傷皮膚に関する報告は少ない.そこで,MMP,ラット及びウサギの損傷皮膚を作製し,経表皮水分損失量(Transepidermal water loss:TEWL)の変化及び病理組織を比較した.
    【方法】雌雄MMP,雌雄SDラット及び雄性JWウサギを用いた.皮膚損傷処置前に電気バリカンで毛刈りし,セロハンテープの着脱を繰り返すことにより損傷皮膚を作製した(テープストリッピング法).ウサギ及びラットで,各動物にテープストリッピング5,10及び15回,MMPでテープストリッピング5,10,15及び30回行い,損傷皮膚を作製した.TEWLは皮膚損傷処置前及び皮膚損傷処置後について,測定装置(Cutometer MPA580)を用いて測定した.TEWL測定後,皮膚を採取し,病理組織学的検査を行った.
    【結果】MMPにおけるTEWLは,セロハンテープの着脱回数に依存して上昇した.また,同様な傾向がラット及びウサギにおいても確認された.また,皮膚損傷時のTEWLは,MMPより雌性ラット及びウサギでより高い値であった.また,MMPの病理組織学的検査ではテープストリッピング15あるいは30回処置した部位で角質層の減少がみられた.
  • 山下 祐介, 髙橋 義博, 本門 忠文, 西藤 俊輔, 吉川 剛, 宇都宮 慎治, 大坪 靖治, 一井 隆亨, 和泉 博之, ...
    セッションID: P-92
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年,動物愛護の観点から実験動物としてのミニブタの需要が高まりつつある.特に解剖学的に皮膚はヒトに類似しており,皮膚研究の分野でミニブタの利用が注目されている.中でも作出されたばかりの世界最小・超小型ミニブタであるマイクロミニピッグ(MMP: MicrominipigTM)は,性成熟体重が7 kg以下であり,特に取り扱いが容易である.今回,MMPを用いて、唐辛子の主成分であるカプサイシン(CAP)の4週間反復経皮投与毒性試験を検討する.
    【方法】0,1及び10 w/v% CAPを雌雄各3例のMMPの背部皮膚に0.5 mL/kgを1日1回24時間閉塞下で4週間反復経皮投与を計画し,投与2週目まで実施した.投与期間中,一般状態を1日3回(投与前,ならびに投与後1及び4時間),投与部位の皮膚の観察を1日1回実施した.その他の検査項目は,体重測定(週1回),摂餌量測定(毎日),眼科的検査(投与4週目),血液学的検査(投与2及び4週目)及び血液生化学的検査(投与2及び4週目)で,投与期間終了後に剖検を実施する予定である.
    【結果】投与2週目まで,投与部位の皮膚の観察では,皮膚に肉眼的な著変はみられなかった.一般状態観察では,1及び10 w/v% CAPを投与した動物に,投与後1あるいは4時間に,振戦あるいは飼育ケージに投与部位を擦り付ける動作が散見してみられた.その他の検査結果(体重,摂餌量,血液検査)に異常はみられなかった.なお,本学会では,投与4週目までの結果,ならびに病理検査結果を合わせて報告する予定である.
  • 宇都宮 慎治, 髙橋 義博, 大石 加奈, 今田 竜一, 西藤 俊輔, 大島 洋次郎, 和泉 博之, 洲加本 孝幸
    セッションID: P-93
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】in vivoの光毒性試験では,SDラット,BALB/cマウス,Hartley系モルモットなどのアルビノ動物が汎用されている.しかし,メラニン親和性を有する化合物については有色動物での安全性評価が好ましいと考えられる.今回,有色ラットを用いて,既知の光毒性物質であるNalidixic acid(NA)および8-Methoxypsoralen(8-MOP)を経口投与し,光毒性について検討した.
    【方法】雄の7週齢Long-Evans系ラットに200および400 mg/kgのNA,あるいは10および20 mg/kgの8-MOPを10 mL/kgにて経口投与し,投与30分後より麻酔下あるいは無麻酔下で約10 J/cm2の紫外線(UVA)(デルマレイ-200,東光電気株式会社)を照射した.照射終了後30分,24,48および72時間に,耳介および背部の皮膚反応をDraize法に従って観察し,耳介厚を測定した.また,照射終了後72時間に眼科的検査を行い,耳介,背部皮膚および眼球/視神経を採取し,病理組織学的検査(Hematoxylin-Eosin染色)を行った.
    【結果および結論】NAの200および400 mg/kg群,8-MOPの10および20 mg/kg群では,皮膚に紅斑および浮腫がみられ,NAの400 mg/kg群,8-MOPの10および20 mg/kg群で耳介厚の増加がみられた.眼科的検査では,8-MOP群において照射後に角膜の白濁がみられた.病理組織学的検査では,耳介および背部皮膚の表皮/真皮,皮下組織に変性,浮腫,出血および炎症細胞の浸潤,また角膜の変性/壊死,炎症細胞浸潤,肥厚,水晶体上皮細胞の増加等の変化がみられた.以上より,既知の光毒性物質を用いて明瞭な陽性反応が確認できたことから,有色ラットを用いても光毒性は評価可能と判断した.
  • 斎藤 直美
    セッションID: P-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】網膜における神経伝達物質の1つであるL-glutamateを生後3~7日齢のSprague-Dawleyラットに皮下投与すると,網膜内層が菲薄化することが知られている(Kanno et al., 1991)。今回,ラットの新生児にL-glutamateの5日間連続皮下投与により網膜萎縮を惹起させ,眼科学及び病理組織学的に検討した。 【方法】L-Glutamate(24 mM/g体重)を,生後5日齢のSDラットに5日間連続皮下投与した。対照動物には溶媒(生理食塩液)を同様に投与した。開瞼し,眼科学的検査が可能と考えられた34日齢(投与終了後25日)時に,双眼倒像検眼鏡による眼底観察,蛍光眼底造影(FAG)を無麻酔にて,スペクトラルドメイン型光干渉断層計(OCT)による網膜断層像撮影をxylazine & ketamineの混合麻酔下で行った。検査終了後に動物を麻酔下に安楽死させた後,眼球を摘出して病理組織学的検査に供した。 【結果及び考察】L-Glutamateを投与したラットの眼底観察において,網膜内層血管の狭細化及び眼底の淡明化,一部の例には,眼底の反射光に限局性の乱れが認められた。FAGでは血管の狭細化が認められたが,蛍光色素の血管外への漏出はなかった。OCTでは,網膜内層(内顆粒層から神経線維層)の菲薄化及び楕円形の高反射部位が認められた。病理組織学的検査では,網膜全域において,神経細胞層及び内顆粒層の神経細胞数減少と神経線維層から内顆粒層の菲薄化,更に,網膜異形成(ロゼット形成)がみられ,眼底像ならびにOCT像と一致した。ラット新生児へのL-glutamateの投与により,網膜内層の形成異常のみならず視細胞の配列異常が惹起され,FAGおよびOCTにより網膜内層血管および網膜の形態学的異常を鋭敏に検出できる可能性が示唆された。
  • 本多 正樹, 小松 竜一, 礒部 剛仁, 三浦 幸仁, 伊藤 辰哉, 清川 順平, 田保 充康
    セッションID: P-95
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景及び目的】我々はこれまで,QT延長評価モデルとしてのテレメトリーマーモセットの有用性を示してきたが,同時に明暗周期に伴い,補正QT間隔(QTc)が暗期に約10 ms延長することが明らかとなった。そのQTcの変化はわずかではあるが,テレメトリー試験において極めて微少なQT延長作用を検出するためには,これらの成因と評価に及ぼす影響の可能性を追求する必要がある。そこで本研究では自律神経活動がQTcを調節すると仮説を立て,マーモセットにおける自律神経支配の経時変化を示した。さらにQTcに対する自律神経遮断の影響について検討した。
    【方法】テレメトリー送信器を埋め込んだマーモセット(日本クレア; 雌雄各3匹)を使用し,無麻酔・無拘束下にて心電図を測定した。得られたRR間隔について心拍変動解析を実施し,自律神経活動度を算出した。Propranolol(交感神経遮断薬)及びatropine(副交感神経遮断薬)は腹腔内投与し,5分間ごとにQTcの平均値を求めた。なお,QTcはprobabilistic解析により算出した。
    【結果及び考察】心拍変動解析によって算出した自律神経活動度は,明暗周期に同調して交感,副交感神経支配が変化しており,自律神経活動がQTcに影響を与える可能性が考えられた。交感神経優位な明期におけるQTcはpropranololにより延長し,副交感神経優位な暗期におけるQTcはatropineにより短縮した。これらの結果は,マーモセットにおいて自律神経活動が直接的にQTcへ影響を与えることを示唆する。すなわち,交感神経活動の活性化はQTcを短縮させ,一方,副交感神経活動によりQTcは延長すると考えられた。以上より,マーモセットにおいて自律神経支配が明暗の環境変化によって変化し,その結果,QTcに影響を与えることが示唆された。
  • 山中 洋泉, 佐々木 一暁, 黒田 裕二, 榎 成憲, 永井 賢司, 片山 誠一, 今泉 真和, 直 弘, 橋本 敬太郎, 西 勝英
    セッションID: P-96
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】安全性薬理試験における心筋収縮能は,麻酔動物を用いた方法が一般的であり,無麻酔無拘束下ではほとんど行われていない。今回,テレメトリーシステムを用いて心機能(LVPおよびLVdp/dtmax)を測定し,安全性薬理試験における心機能の背景データを収集した。 【方法】ベトナム産のカニクイザルを用いてテレメトリー送信器(TL11M3-D70-PCTP,Data Sciences International,USA)の心電図電極を心外膜に,血圧センサーを大腿動脈および心臓左心室内に留置した.手術後1,2,3,4および5週間の心機能および心電図パラメータの日内変動を調べた。また,心機能に作用する陽性対照物質を経口または静脈内投与した。 【結果および考察】テレメトリー手術後1週間では心拍数は高値を示したが,術後2週目以降は,心機能パラメーターに大きな変化は認められなかった。また,陽性対照物質投与による心機能の亢進を用量依存的に捉えることができた。以上のことから,安全性薬理試験における心筋収縮能は,テレメトリーシステムを用いれば無麻酔無拘束下で測定および評価が可能であると考えられた。
  • 上総 勝之, 白川 誉史, 木田 昇子, 佐々木 大祐, 竹内 文乃, 藤原 道夫, 大畠 武二, 宮前 陽一
    セッションID: P-97
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    心重量増加は一般毒性試験においてしばしばみられる所見であり、ヒトにおいて心肥大や高血圧の発症などに関連する可能性がある。しかし心重量増加が病理組織検査や生化学検査において変化を伴っていない場合はその機序を推察できず、毒性学的意義の考察は困難である。心エコー検査は心臓の機能的・形態的な変化を経時的・非侵襲的に評価でき、上述のようなケースにおいて機序解明に有用である他、ヒトの診療現場においても常用されるために外挿性にも優れている。今回我々は実験的に心肥大状態を再現し、形態・機能変化の心エコー検査による検出可否について検討した。心肥大モデル動物を作製するため、各群9-10例の雄SDラットにアルドステロン(0[無処置対照群、上水道水飲水]、0.375[低用量群]あるいは0.75ug/kg/h[高用量群])を浸透圧ポンプを用いて2あるいは4週間皮下持続投与した。実薬投与群については同時に生理食塩液を飲水させた。投与終了翌日に採血後剖検し、心重量測定および臨床病理検査を行った。また4週投与群については投与期間中、週1回心エコー検査(左心室Mモード、肺動脈・大動脈・僧帽弁部のパルスドプラ)を行い、経時的変化を観察した。結果、投与2週では高用量群の心絶対重量が、4週では低・高用量両群の心絶対および相対重量が対照群と比較して高値となり、4週の高用量群では臨床病理検査におけるpro-ANPの増加を伴っていた。心エコー検査では、形態変化としては心室壁肥厚を示唆する変化が、機能面では左室流入血流増加を示唆する変化が、それぞれ概ね用量依存的に認められた。以上の結果から、ラットにおけるアルドステロン誘発性心肥大の発現に伴う機能・形態の変化を心エコー検査によって評価可能であることが確認され、一般毒性試験において心重量変化が見られた際の機序解明ツールとして有用である可能性が示された。
  • 中根 史行, 石山 芳則, 門田 利人, 秋江 靖樹
    セッションID: P-98
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】超音波診断装置を利用して心機能評価する際に用いられているMモード法及びパルスドプラ法は,心筋の壁運動を詳細に観察することができ,心臓の収縮能および拡張能の定量化に非常に有用であるとされている.そこで今回,カニクイザルにおける心機能を評価する目的で,心機能抑制物質を投与し,経時的に心臓超音波検査を実施して左室収縮能と拡張能を評価した. 【材料および方法】カニクイザル(雄,3~6歳)4匹に心機能抑制物質30 mg/kgを経口投与し,超音波診断装置(アロカ株式会社 SSD-α5)を用いてメデトミジン鎮静下(20μg/kg,im)で投与前,投与後30,60,90,120分(計5時点)に心機能パラメータの計測を行った.収縮能の指標としてMモード法による左室駆出率(EF),左室内径短縮率(FS),拡張能の指標としてパルスドプラ法による左室急速流入速度(E波),心房収縮期流入血流速度(A波),E/A,半減圧時間(PHT)及びE波減速時間(DecT)を計測した.さらに心拍数(HR),一回拍出量(SV)及び心拍出量(CO)も計測した. 【結果】心機能抑制物質の投与により,全例において収縮能の指標となるEF,FS,HR,SV,CO値に有意な低下が認められた.一方,拡張能の指標とされているE波,A波 E/A及びDecT値は低下傾向を示したが,有意な差は認められなかった. 【結論】以上により,超音波診断装置を利用することでカニクイザルの心臓の形体を定量的に測定することが可能であり,心機能を評価する上で有用な情報が得られると考えられた.
  • 桑野 康一, 松下 大輔, 平山 知子, 本門 忠文, 軸薗 竜也, 亀之園 剛, 和泉 博之, 洲加本 孝幸, 福﨑 好一郎 ...
    セッションID: P-99
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ブタの循環器系は解剖学的・生理学的にヒトとの類似点が多く,最近では毒性試験における非げっ歯類動物として霊長類やイヌの代替動物として欧米を中心に有望視されている.一般のミニブタの体重は30~40 kg以上にも及ぶことから,小型化が望まれており,近年,性成熟時体重が7 kg程度の世界最小・超小型ミニブタであるマイクロミニピッグ(MMP)が作出された.我々はMMPの薬物性QT延長評価モデル動物としての有用性を,QT延長作用を有するdl-sotalolを用い検討した.【方法】4匹の雄MMP(体重10~13 kg,11ヶ月齢)を用い,同一動物に対照物質(0.5 w/v%メチルセルロース水溶液)及びdl-sotalol(10及び30 mg/kg)を単回経口投与した.動物用ホルター心電計:JETシステム[JET/Jacketed External Telemetry system(DSI Inc.)]を用いて,覚醒・非拘束条件下で心電図を薬物投与約2時間前から投与約24時間後まで記録し,心電図の各指標(心拍数,PR間隔,QRS時間,QT間隔及びQTc)への影響を評価した.さらにQTc/RR間隔を回帰分析法により解析し,一般的なQT補正式(Bazett,Fridericia及びMatsunaga)のMMPへの応用性を検討した.【結果】dl-Sotalolは,10 mg/kgからPR間隔,QT間隔及びQTcの有意な延長(投与前値と比べ,10%以上の増加)を示したが,QRS時間には変化を認めなかった.心拍数の低下傾向を10 mg/kgから認めた.QT補正式を用い,MMPにおけるQTc/RR間隔を評価したところ,MMPではFridericiaの式が最も心拍数の変動を受けにくいことが示された.【考察】MMPは霊長類やイヌと同様にdl-sotalolの薬理作用を検出できた.MMPのQT間隔の補正にはFridericiaの式が最も望ましいと考えられた.MMPは薬物の心電図に対する作用を検出するための評価モデル動物として有用かもしれない.
  • 松山 拓矢, 新野 訓代, 清澤 直樹, 甲斐 清徳, 三分一所 厚司
    セッションID: P-100
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現解析は、毒性機序解明の際の有用なアプローチとして活用されている。我々は、精巣毒性評価のための遺伝子マーカー探索を目的として、精巣毒性モデルラットの網羅的遺伝子発現変動解析を行った。 【材料および方法】精巣毒性モデル化合物として、セルトリ細胞および精母細胞傷害が報告されている1, 3-dinitrobenzene (DNB)を用いた。雄性F344ラット(9週齢、N=5/群)に溶媒(PEG 600)あるいはDNB(10、25および50 mg/kg)を経口単回投与した後、4時間後および24時間後に精巣を採材して病理組織学的検査およびマイクロアレイ解析(Affymetrix社・Rat 230 2.0 GeneChip)を行った。さらに、発現変動が認められた遺伝子の一部についてはReal time RT-PCR法により発現変動を確認した。 【結果および考察】病理組織学的検査において、投与後24時間解剖群でセルトリ細胞の空胞化および精母細胞の単細胞死が25 mg/kg以上でみられ、その変化は用量に伴い増悪した。マイクロアレイ解析では、パキテン期精母細胞特異的に発現する遺伝子(Cklf、Prok 2、Lef1など)の発現減少および細胞接着関連遺伝子(Cdh2、Testinなど)の発現増加が認められた。これらの遺伝子発現変動は病理組織学的検査で確認された精母細胞傷害や、文献的に報告のあるセルトリ‐生殖細胞間接着異常など、DNB誘発精巣毒性のメカニズムを反映する変化であると推察された。また本試験で発現変動が認められた遺伝子群の発現プロファイルが、パキテン期精母細胞の障害や細胞間接着異常を評価するためのバイオマーカーとなり得る可能性が期待された。
  • 水由 健介, 榊 秀幸, 本川 憲征, 蓑毛 博文, 谷口 康徳, 山下 浩幸, 田淵 秀剛, 杉本 崇至, 大島 洋次郎, 洲加本 孝幸
    セッションID: P-101
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    医薬品開発においてバイオ医薬品の開発が注目されている。バイオ医薬品での毒性の評価を効果的に行うためには、受容体またはエピトープが発現しており、被験物質が薬理学的活性を示す動物種の選択を行う必要がある。このため、バイオ医薬品の非臨床安全性試験には非ヒト霊長類、特にカニクイザルが用いられることが多い。非臨床安全性試験における反復投与毒性試験での精巣毒性および雄性生殖能を評価する際の指標となる、月齢、精巣容積、精子検査(精子数、精子運動性、精子形態による奇形率)および血清中テストステロンの相関について、無処置動物を用いて検討したので報告する。 57箇月齢~98箇月齢、体重4.2~8.7 kgの雄カニクイザル184例を使用した。精巣容積は精巣外径の長径、短径から算出した。精子検査は、陰茎電気刺激法により精液を採取し、精子運動能解析装置(IVOS sperm analyzer、Hamilton Thorne Biosciences社)を用いて精子数および精子運動性(運動精子率、遊泳速度、頭部の振幅平均値、頭部の振動数、直線性、軌道平均速度、直線速度および軌道直線性)を測定し、奇形率については塗抹標本を鏡検して算出した。血清中テストステロン値は9時~10時と21時~22時の2回採血し、ELISA法により測定した。 精子数は月齢と僅かに正の相関がみられた。精巣容積と精子数、精巣容積と血清中テストステロンには正の相関がみられた。また、運動精子率と奇形率には負の相関がみられた。血清中テストステロンと精子数、精子運動性および奇形率には相関がみられなかった。したがって、精巣容積は、カニクイザルの雄性生殖能を評価する際の、再現性ある指標のひとつと判断した。
  • 福田 浩司, 小山 周三, 小原 栄, 有馬 昭宏, 宇野 泰広, 中間 和浩, 福﨑 好一郎
    セッションID: P-102
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、カニクイザルの排卵日をレボノルゲストレル(LNG)混餌投与によって同期化し、妊娠日の同期化を検討している。これまで、月経周期(卵胞期、排卵期、黄体期)のいずれの時期にある個体においても、14日間のLNG投与後、一定期間内に排卵することをエストラジオールとプロゲステロン測定により推察していたが、妊娠日の同期化には、排卵日を正確に特定する必要があった。また、LNG投与による卵胞発育や排卵、黄体形成等の卵巣活動への影響についても明らかではなかった。腹腔鏡を用いた卵巣の直接観察により、排卵日を正確に特定し、卵巣の活動を経時的に捉えることが可能になった。そこで、腹腔鏡を用いて卵巣を直接観察し、LNG投与後の排卵日の特定と卵巣への影響について調べた。 【方法】25~35日の月経周期が連続して3回以上みられた44匹の雌カニクイザルに、LNG(50 µg/day)を14日間混餌投与した。投与後、消退出血を確認した日を月経0日目、次の月経までの期間を月経周期とした。事前の月経周期より予測した排卵日の4日前から2日毎に腹腔鏡を用いて卵巣を観察し、排卵を確認した日を排卵日(月経0日目からの日数)とした。また、排卵日より次の月経までの期間を黄体期間とし、これらの期間について調べた。 【結果および考察】消退出血は、LNGの最終投与日から3.7±1.2日目で確認され、月経開始の同期化が示された。月経周期、排卵日および黄体期間の平均値はそれぞれ、30.3±3.2日、14.3±3.6日、16.2±2.0日であり、個体毎の月経周期は投与前とほぼ同じサイクルを維持していた。さらに、卵胞発育、排卵、黄体形成等の正常な卵巣活動が観察できたことから、LNG投与による卵巣への影響はないと推察した。腹腔鏡観察により、排卵日が特定されるようになったことから、人工授精や胚移植等による妊娠日の同期化が可能になると考えられた。
  • 林 清吾, 武田 賢和, 井上 薫, 高橋 美和, 松尾 沙織里, 渡辺 元, 田谷 一善, 鈴木 浩悦, 西川 秋佳, 吉田 緑
    セッションID: P-103
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】殺虫剤の共力剤であるPBOは子宮の萎縮を引き起こすことが報告されている。PBOの雌性生殖器への影響の機序を明らかにするために以下の実験を実施した。 【方法】<実験1>6週齢のDonryu雌ラットにPBO(5000、10000及び20000 ppm)を4週間混餌投与した。予備試験で体重増加抑制が認められたことから、PBO投与群と同様の体重推移を示すように給餌量を調整した群(制限給餌群)を設け、体重増加抑制による影響の有無も検討した。<実験2>卵巣摘出したDonryu雌ラットにPBO(5000、10000及び20000 ppm)を2週間混餌投与した。同時に17β-estradiolを1 μg/kgの用量で2週間皮下投与した。投与終了後に剖検し、子宮重量を測定した。子宮は病理組織検査に供し、子宮粘膜上皮の高さを測定した。<実験3>ヒトエストロゲンレセプターα(ERα)アンタゴニスト活性の有無をレポーター遺伝子アッセイによって検討した。 【結果・考察】<実験1>PBO投与群において、投与初期に体重減少が認められたが、投与1週間後以降には僅かな増加を示した。10000 ppm以上投与群で血中エストラジオール濃度の低下が、20000 ppm投与群で発情休止期の持続、血中LH濃度の増加、閉鎖卵胞の増加、新黄体の減少、間質細胞の空胞化、子宮萎縮、膣上皮の粘液変性が認められた。制限給餌群(20000 ppm)では、体重減少後に発情休止期が持続したが、その後は正常な性周期に復した。<実験2>PBO 10000 ppm以上投与群で子宮絶対重量が有意に低下したが、同群で体重減少が認められため相対重量の変化は認められなかった。子宮粘膜上皮の高さは20000 ppm投与群で有意に低下した。<実験3>PBOは弱いERαアンタゴニスト活性があることが示された。以上より、PBOの雌性生殖器への影響は血中エストラジオール濃度の低下及び抗エストロゲン作用の2つが関わっている可能性が示唆された。
  • 稲田 拓, 千原 和弘, 福田 知春, 山下 晃人, 立石 湯美, 木村 重紀, 船橋 斉, 関 高樹
    セッションID: P-104
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】抗てんかん薬バルプロ酸ナトリウム(VPA)は、ヒトに多嚢胞性卵巣症候群様の生殖内分泌異常を誘発することが知られている。今回、我々は、ラット培養卵胞を用いてVPAの生殖内分泌に及ぼす影響及びその生殖内分泌異常発現メカニズムについて検討した。【方法】検討1:生後14日の雌ラットから採取した卵胞を24時間前培養した後、VPA(0、0.2及び1.0 mM)を添加し、添加後48時間まで培養を継続した。培養後、培養液中のProgesterone(PROG)、Androstenedione(AND)、Testosterone(TEST)及びEstradiol濃度(EST)を測定し、PROG/AND、AND/TEST及びTEST/EST比を算出した。また、培養後の卵胞についてAromataseの免疫組織化学染色を行った。検討2:検討1と同様の方法でVPA(0、0.04及び0.2 mM)添加後48時間まで培養を継続し、Aromatase発現との関与が報告されているProstaglandin E2(PGE2)について培養液中濃度を測定した。検討3:PGE2分泌に関与しているCyclooxygenase(COX)-1及び2並びに5- Lipoxygenase(LO)に対するVPAの影響を評価した。【結果】検討1:VPAの0.2及び1.0 mMでAromatase発現の低下を伴うAND、TEST及びESTの低下及びTEST/EST比の上昇が認められた。検討2:0.04及び0.2 mMでPGE2濃度の低下が認められた。検討3:VPAによるCOX-1及び2に対する影響は認められなかったが、5-LO活性化傾向が認められた。【考察】ラット培養卵胞にVPAを添加することによりAromatase阻害作用を伴う生殖内分泌異常が認められ、そのメカニズムの1つとして5-LOの活性化に起因するPGE2分泌低下の関与が示唆された。
  • 辻 暁司, 織原 由佳理, 堤 俊輔, 岩城 理進, 大野 理絵, 中西 豊, 佐藤 靖
    セッションID: P-105
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    安全性試験でみられた変化が毒性かどうかを評価する際、対照群との比較だけではなく、背景データを利用することが多々ある。自施設内の背景データを利用する際には飼育条件が同一であるため問題とはならないが、他施設で実施された背景データ或いは公表論文等のデータを利用する場合には、飼育条件が異なっており注意する必要がある。今回、背景データに大きな影響を及ぼす可能性のある「飼料」について注目した。そこで、一般に用いられているもののビタミンD3(V.D3)含有量の異なる2種類の飼料(CRF-1、CE-2)と、カルシウム(Ca)含有量の低い飼料(CE-2低Ca)を用いて、骨の成長の著しい6週齢の雄性ラットを用いて骨関連パラメータに及ぼす影響について検討した。
    【方法】
    CE-2 低Ca、CE-2、CRF-1を28日間給餌した雄性ラット(6週齢)を用いて、14日目に血液生化学的検査、尿生化学的検査及び骨マーカー検査(DPD、PTH、オステオカルシン)、28日目に腸からのCa及び無機リン(IP)吸収量を測定した。29日目に剖検し、大腿骨及び胸骨の病理組織学的検査を実施した。
    【結果および考察】
    飼料に含まれるCa量の少ないCE-2低Ca群において、経口から摂取するCaの絶対量の不足を補うために腸からのCa吸収率の増加や、骨からのCa放出量の増加を示唆する骨梁の減少がみられた。いずれの変化も血中Ca濃度の恒常性の維持を示唆する変化であり、骨マーカーも前述の変化を裏付けるものであった。CE-2群に比べてV.D3含量の高いCRF-1群において、V.D3による腸からのCa吸収率が増加し、血中Ca濃度が高値を示したが、尿中からのCa排泄量が高値であったことから、恒常性を維持していることがCRF-1群の結果から推察された。 基礎飼料として毒性試験に汎用されているCE-2及びCRF-1を用いて28日間飼育しても骨に変化は認められなかったが、Ca代謝に影響がみられたことを考慮すると、長期反復投与の場合には標準飼料であってもCa代謝或いは骨に影響する可能性があることが明らかとなった。
  • 堀 寿子, 石井 俊也, 阿部 一, 梅田 明広, 鈴木 大己, 渡辺 大, 石川 勉
    セッションID: P-106
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】イヌにおける毒性試験では、通常、動物は生後6箇月齢以降で試験に用いられるが、近年は、生後3週齢程度の幼若動物を用いる評価も数多く行われるようになってきた。しかしながら、毒性試験の現場では成犬に比べて幼若犬の背景値が不足しているのが現状であり、一方では、複数の測定項目において成犬との相違が問題となることを経験している。そこで、我々は幼若犬の背景値検討の一環として、当研究所にて実施した幼若ビーグルを用いた毒性試験における心電図測定値(対照群値)を集計し、成犬のそれとの比較検討を行った。【材料及び方法】2006年から2010年の5年間に実施した毒性試験において、対照群として使用した生後3箇月齢以内の雌雄ビーグル犬を対象とした。心電計はフクダエム・イー工業(株)のLABO-SYSTEM ZM-5012を用い、無麻酔下、標準肢誘導にて心電図波形を記録した。解析項目としては、毒性試験で標準的な13項目[心拍数、QRS間隔、PR間隔、QT間隔、電気軸、平均RR間隔及び電位(ST1、ST2、P波、Q波、R波、S波及びT波)]に加え、各種補正式(Bazett、Matsunaga、Fridericia及びVan de Water)により算出したQTc値について月齢ごとの平均値±SDを集計し、成犬(生後6箇月齢)の背景値を対照として比較検定を行った。【結果】成犬に比して幼若犬の心拍数は生後高値を示したが、成長に従って成犬値に近づいた。また、これに伴って各波形の間隔も成犬値に近づいた。QTc値については、成犬において一般に知られているように、Bazettの補正値に比して他の補正値の変動が小さかった。【まとめ】今回の調査によって得られた成績は、幼若犬を用いる毒性試験の心電図評価において、有用な情報を提供するものと考えられる。
  • 石井 俊也, 堀 寿子, 石神 誠, 水口 浩康, 渡辺 大, 石川 勉
    セッションID: P-107
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】イヌにおける毒性試験では、通常、動物は生後6箇月齢以降で試験に用いられるが、近年は、生後3週齢程度の幼若動物を用いる評価も数多く行われるようになってきた。しかしながら、毒性試験の現場では成犬に比べて幼若犬の背景値が不足しているのが現状であり、一方では、複数の検査項目において成犬との相違が問題となることを経験している。そこで、我々は幼若犬の背景値検討の一環として、当研究所にて実施した幼若ビーグルを用いた毒性試験における血液学及び血液化学検査値(対照群値)を集計し、成犬のそれとの比較検討を行った。【材料及び方法】2006年から2010年の5年間に実施した毒性試験において、対照群として使用した生後4箇月齢以内の雌雄ビーグル犬を対象とした。毒性試験で一般的に評価されている血液学検査(RBC、HGB、HCT、MCV、MCHC、PLT、Retic、WBC、白血球百分率、PT、APTT、FIB)及び血液化学検査(AST、ALT、LDH、CPK、ALP、T-CHO、TG、PL、T-BIL、GLU、BUN、CRNN、Na、K、Cl、Ca、P、TP、ALB、A/G)について月齢ごとの平均値±SDを算出し、成犬(生後6箇月齢)の背景値を対照として比較検定を行った。【結果】成犬と比較すると、血液学検査では赤血球系パラメータの低値、白血球数の高値等、血液化学検査ではCPK、総コレステロールの高値等が認められた。ALPは生後3箇月齢まで漸増した後、徐々に減少する傾向を示した。【まとめ】今回の調査によって得られた成績は、幼若犬を用いる毒性試験の評価において、有用な情報を提供するものと考えられる。
  • 石原 可奈, 高井 了, 伊藤 辰哉, 齊藤 遼太, 原 俊子, 北條 隆男, 羽仁 俊夫, 荒川 仁, 木村 和哉
    セッションID: P-108
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】カニクイザルに投与操作を施すことによる好中球数増加やサイトカイン上昇は以前から報告されており,これらのパラメータ変動が試験成績の評価に及ぼす影響が懸念されている。本研究では,カニクイザルに反復静脈内投与することで,各種炎症パラメータが投与後どのように変動するかを確認した。また,投与ストレスとの関連性についても検討した。
    【方法】2~3歳のカニクイザル(雄,n=10)に生理食塩液を橈側皮静脈より反復投与(週に1回,計3回)し,各投与の直前,投与後2,4,8,24,72時間及び7日に伏在静脈より採血した。採取した試料を用いて血液学的検査及び血液化学検査を実施した。なお,ストレスのパラメータとして血中コルチゾールを,炎症パラメータとしてサイトカイン及びCRPを測定した。
    【結果及び考察】好中球,コルチゾール,IL-6,CRP,LD,CK,AST,ALTは初回静脈内投与24時間後までに大半の個体で上昇し,投与72時間後までに投与前とほぼ同レベルまで回復した。好中球及びコルチゾールは2回目投与以降についても各投与後に初回投与後と同程度の一過性の上昇を示したが,IL-6,CRP,LD,CK,AST,ALTについては投与回数を重ねる毎に上昇の程度が小さくなることが明らかとなった。各パラメータの相関性から炎症パラメータの一過性の上昇は,投与操作によるストレスのみに依存して惹起されるものではなく,投与操作時の拒絶等に伴う運動に関連していることが考えられた。これらの結果から,反復投与によりサルが投与操作を学習し,保定時の拒絶に伴う運動等が抑えられた結果,炎症パラメータの上昇の程度が小さくなったことが推察された。安全性試験の開始前に投与操作をトレーニングの一環として実施することは一過性の炎症パラメータ上昇抑制に有効である可能性が示唆された。
  • 鈴木 慶幸, 斉藤 裕之, 久保田 貴之, 高尾 みゆき, 橘田 久美子, 小松 弘幸, 松尾 高博, 坂田 孝, 秋江 靖樹
    セッションID: P-109
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】動物福祉の観点から,特にヨーロッパでは実験動物としてイヌや霊長類の利用が容易ではないため,ミニブタが広く使用されてきている.しかし,実験に使用するには大きさや取り扱いの難しさなどの課題がある.より使いやすい実験動物の改良が希求されている中,成獣でも10 kgに満たない「マイクロミニピッグ」が開発された.マイクロミニピッグは,従来のミニブタに比べ小型で,扱いやすく,イヌの飼育施設を改良して飼育することができる.今回われわれは,マイクロミニピッグを毒性試験で使用するにあたり臨床検査値の背景データを得るため,血液学的検査,凝固系検査,血液生化学的検査及び尿検査を実施した. 【方法】6-8ヶ月齢の雌雄マイクロミニピッグを使用した.採血は前大静脈洞より行った.血液検査用はEDTA加血液,凝固検査用はクエン酸加血漿,血液生化学検査用は血清及びヘパリン加血漿を用いた.また,新鮮尿(尿定性,尿沈渣)及び24時間蓄尿(尿量,電解質,比重)の一般尿検査を実施した. 【結果】検査値取得のための血液及び尿試料は,イヌと同様の操作で採取することができた.得られた検査データをミニブタと比較した.血液検査(XT-2000iV)ではブタモードにおいて,目視法との相関を得ることができた.血小板数測定では,血小板凝集塊,破砕赤血球もしくは小型赤血球の混入が示唆された.凝固系検査(CA-1500)ではAPTTがミニブタと異なる傾向を示した.血液生化学検査(JCA-BM6010)では再現性のあるデータの取得が可能であったが,T.Bilでは低値傾向が見られた. 尿検査では,尿沈渣にリン酸アンモニウムマグネシウム結晶が比較的多く観察された.他の尿検査値ではミニブタと大きな違いはみられなかった. 以上より,マイクロミニピッグの臨床検査は現有の検査機器を用いての測定が可能であった.マイクロミニピッグを毒性試験に利用するために,今後,例数を増やして検査データを収集し,詳細に検討する予定である.
  • 三木 篤子, 相見 真紀, 橋本 知水, 友成 由紀, 岩井 淳, 大西 康之, 平塚 秀明
    セッションID: P-110
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】Wistar Hannoverラットは長期飼育における生存率が高く自然発症性病変が少ないことから癌原性試験への有用性が期待されているが,日本での使用実績は少ない.我々はRccHanTM:WISTラットの癌原性試験への使用に向けて104週間飼育の背景データを集積した.本ラットの特徴を,Crl:CD(SD)ラットの104週間背景データと比較し報告する.
    【方法】6週齢のRccHanTM:WISTラット(株式会社日本医科学資材研究所より入手,以下WH)の雌雄各50匹をつり下げ型金網ケージで104週間個別飼育した.飼料はCR-LPF固型飼料を自由摂取させた.飼育期間中は滅菌済み水道水を週5日間経口投与し,一般状態を1日1回毎日観察した.体重及び摂餌量を1週間に1回(26週以降は2週間に1回)測定し,内臓の触診を含む詳細観察を週1回実施した.飼育終了後に剖検し,血液学的検査,生化学的検査及び器官重量測定を実施した.
    【結果】104週経過時の生存率は,雄72%,雌76%であり,SDラットの生存率(雄42%,雌42%)と比較して高い数値を示した.途中死亡・瀕死期解剖動物の死因・衰弱原因は,雌雄ともに下垂体腫瘍が最も多く,雄では途中死亡・瀕死期解剖動物中の43%,雌では67%を占めた.SDラットでもこの傾向は同様であるが(雄38%,雌72%),SDラットの雌で多い乳腺腫瘍(38%,下垂体腫瘍と同じ動物も含む数値)はWHラットの雌では8%であった.104週経過時の体重は,雄549.9 g,雌399.8 gであり,同週齢のSDラット(雄771.8 g,雌481.2 g)と比較して小さく,その傾向は雄でより顕著であった.摂餌量は雄25.94 g,雌22.28 gであり,同週齢のSDラット(雄29.04 g,雌23.09 g)と比較して少なかったものの,体重当たりの摂餌量は飼育期間を通してWHラットが高い傾向を示した.血液学的検査では,赤血球数がSDラットと比較して高値であり(雄は117%,雌は122%に相当),白血球数が低値であった(雌は58%,雌は62%に相当).また,器官重量では副腎重量がSDラットと比較して低値であった(相対重量で雄は79%,雌は69%に相当).組織学的検査は現在実施中である.
  • 富田 真理子, 小嶋 五百合, 高橋 尚史, 相馬 克実, 荒木 雅行, 青山 博昭, 原田 孝則, 吉田 敏則
    セッションID: P-111
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    微量元素には鉄,亜鉛,セレン,銅などが含まれ長期間の経静脈や経腸栄養管理,加齢,腫瘍などに伴って微量元素欠乏症が生じる。このうち銅の欠乏症によって貧血が生じることが知られており,実験動物では飼料中の銅を減少させることで銅欠乏性貧血を誘発することができる。我々は銅のキレート剤クプリゾン(CPZ)誘発性の脳脱髄性病変を検索する中でマウスに貧血が生じることを見出した。CPZ誘発性貧血は我々の検索した限り報告はなく,今回その概要を報告する。CPZを0または2000 ppmの濃度でC3Hの2亜系統のC3H/HeN(野生型)およびC3H/HeJ (TLR4のmutant)マウスに6週間投与後,1週間の回復期間を設け,経時的に血液検査を実施した。投与3および6週間後の投与では,Ht,HbあるいはRBCの減少がみられ,MCHおよびMCVの減少を伴っていた。網赤血球数は投与3週より増加したが,網赤血球のHb含有量および大きさを示すCHrおよびMCVrがそれぞれ減少し,鉄欠乏性貧血様の像を示した。両系統の比較では,C3H/HeJに比較しC3H/HeNのほうがCHrおよびMCVrの減少が明らかで,貧血に対する感受性が高い傾向にあった。白血球数では,単球数と好中球数がC3H/HeNのほうがより低い傾向を示したが投与の影響は明らかではなかった。以上のことから,CPZ投与により鉄欠乏性貧血様の変化が観察されることが明らかとなった。銅は鉄利用に関連し,鉄とtransferrinの結合を補助すると考えられており,CPZ誘発性の貧血は銅と鉄の関連性を調べる上でよいモデルとなりうると考えられた。また,C3H/HeJに比較しC3H/HeNのほうが単球数が低く,macrophageの貯蔵鉄量を反映している可能性も示唆され,両系統のCHrおよびMCVrの差との関連性についてさらに検討を加える必要があると考えられた。
  • 伊勢 良太, 近藤 哲司, 加藤 寛人, 今井 統隆, 秋山 英雄, 宇野 泰広
    セッションID: P-112
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】カニクイザルは、安全性や薬物代謝をはじめとする様々な新薬開発の研究に使用されている重要な動物種であり、これらの試験には主に成獣が使用される。一方,小児臨床試験を行う場合,新生児または幼若動物における毒性評価を先行実施する必要があり、カニクイザルを用いた試験も実施されている。しかしながら、新生児や幼若動物の肝臓で発現している遺伝子の情報は成獣と比較してほとんど得られていない。そこで本研究では、薬物代謝に重要なチトクロームP450(CYP)遺伝子の肝臓での発現を、胎児、新生児及び幼若動物で定量し、成獣と比較した。CYP3A分子種は、ヒトでは半数以上の医薬品の代謝に関与し、肝臓での発現がCYPの中で最も高く、最も重要な薬物代謝酵素の1つであることから、CYP3A4及びCYP3A5遺伝子について解析を行った。
    【方法】胎児(妊娠79-138日目)、新生児(約30日齢)、幼若動物(6、12、18ヵ月齢)、成獣(3~7歳)由来のカニクイザル(計20頭)から肝臓を採取した。total RNAを抽出した後、リアルタイムRT-PCR法によって各CYP遺伝子の発現を定量した。
    【結果と考察】CYP3A4、CYP3A5の遺伝子発現を胎児、新生児、幼若動物及び成獣の肝臓で調べた結果、両遺伝子の発現とも、新生児、幼若動物及び成獣では胎児と比較して高かった。発現量の挙動としては、胎児期から上昇して生後12ヶ月でピークを迎え、その後わずかに減少する傾向であった。さらに、カニクイザルCYP専用DNAマイクロアレイを用いた解析で得られた20種のCYP発現プロファイルについても報告する。カニクイザルにおける発生及び成長段階におけるCYPの遺伝子発現挙動は、妊娠期や幼若期のカニクイザルを用いて試験を行う際の基盤情報として活用できる。
  • Oneda Satoru, Lalayeva Narine, Watson Rebecca, Lin Patricia, Tsusaki H ...
    セッションID: P-113
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    Abnormal development of the immune system is one of the possible outcomes of the embryo-fetal in utero exposure of pharmaceuticals. The objective of this study was to evaluate the development of immune responses in infant cynomolgus monkeys (4 to 6 months of age) to repeat intramuscular injection of Keyhole Limpet Hemocyanin (KLH) on postnatal days 120, 150 and 180 through the production of anti-KLH specific antibodies (Abs, IgG and IgM), to immunophenotype peripheral blood, to perform immunohistochemistry on select tissues, and to measure total immunoglobulins (IgA, IgG and IgM). Repeat administrations of KLH at 500 µg were well tolerated by the animals. No KLH-related responses were noted in clinical observations, body weights, hematology, total immunoglobulins, or on the populations of peripheral blood lymphocytes (T-, B- or NK cells). There was a robust and anticipated immune response demonstrated by the production of Abs and a class switch from IgM to IgG KLH-specific Abs. Following the first boost with KLH, the mean IgM values increased by approximately 2-fold and the mean IgG values increased by approximately 5-fold. Immunophenotyping data in peripheral blood showed expected immune development and normal lymphoid organ histology was observed. In conclusion, infant cynomolgus monkeys show a robust immunological response following KLH administration and, thus, are an essential component in assessing potential immunomodulating effects in preclinical biologic testing.
  • 田山 邦昭, 坂本 義光, 安藤 弘, 久保 喜一, 高橋 博, 長澤 明道, 矢野 範男, 湯澤 勝廣, 大山 謙一, 小縣 昭夫, 中江 ...
    セッションID: P-114
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】フェニレンジアミンには、o-m-及びp-の3異性体(OPD, MPD, PPD)があり、化学品中間体やMPD, PPDは染毛剤原料として用いられている.これら物質の雄性生殖器系、特に精子への影響を調べた報告は少ない.今回、3異性体の精子機能を含めた影響を調べたので報告する. 【方法】薬物:OPD, MPD, PPD 投与量:OPD, MPDについては予備実験で求めた最大耐量を、PPDについては最大耐量とその値から公比2で設定した3用量を用いた.投与法:薬物はプロピレングリコールに溶解し、 Crlj:CD-1マウス, 雄, 11週齢, 5匹/群に、OPDは200、MPDは25、PPDは25, 12.5, 6.25 mg/kg/日の投与量で、5日間連続皮下投与した.検査:投与後1及び5週目で剖検し、生殖器系の臓器重量計測後、左精巣上体尾部から採取した精子について、数・粒度分布計測(CDA-500)、運動性計測(SQA-IIC)、形態観察(位相差顕微鏡)、さらに生殖器系臓器の病理組織学的検討を行った. 【結果・考察】死亡:期間中みられなかった.体重:溶媒対照群との比較で、MPD群では投与期間中低下がみられたが、1, 5週目の剖検時では差はなかった.相対重量:1週目のMPD群で、前立腺重量に低下傾向、5週目のOPD群で、精巣重量に低下がみられた.精子パラメータ:数・運動性は、OPD群の1週目で低下し、5週目で低下傾向を示した.形態観察や粒度分布曲線には、顕著な変化を認めなかった.組織学的観察:OPD群の1週目で、精上皮の変性・壊死や精巣上体の管腔内における精子数減少が認められ、5週目ではそれらの変化が軽度になった.また、5週目のMPD群一例で軽度な精上皮の変性・壊死がみられた.以上より、精巣・精子障害性は、現在その発がん性から染毛剤への使用が禁止されているOPDでみられたが、染毛剤原料のPPDでは認められなかった.MPDについては、今後さらに検討する.
  • 西村 享平, 福本 奈央, 福島 亮, 菱川 敦子, 兼藤 雅子, 鳥井 幹則
    セッションID: P-115
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】 近年,Peroxisome Proliferator Actevated Receptors (PPARs) の生殖系における発現が報告され,胚発生や胎盤栄養膜の増殖や分化に関連していることが示唆されている.その中でPPARδは,げっ歯類胎盤の迷路部及び基底層や,胎盤形成以前の子宮内膜の脱落膜化細胞に発現し,着床後の胎盤形成に重要であると考えられている.本研究では,PPARδの選択的アゴニストであるGW501516をラットに投与し,胎盤形成及び胚・胎児への影響を調べることを目的とした. 【材料と方法】 ラットに妊娠6~17日の12日間GW501516を0,30及び100 mg/kg/日で経口投与した.妊娠21日に帝王切開し,胎児及び胎盤の肉眼的観察を行い胎児体重及び胎盤重量の測定を行った.さらに,胎盤形成に最も影響を与える投与時期を特定するために妊娠7~12日のいずれか1日にGW501516を350 mg/kg/日の投与量で単回投与し,妊娠21日に帝王切開し胎盤の肉眼的観察を行った. 【結果と考察】 GW501516 100 mg/kgの反復投与により,着床後死亡率の増加,生存胎児数の減少,胎児体重の減少及び胎盤重量の増加が認められた.胎児に外表異常は認められなかったが,100 mg/kg投与群の37/52例の胎盤に水腫が認められた.この後実施した予備検討の結果,妊娠8~11日にGW501516を反復投与したときに胎盤異常が最も認められたことから,上述した単回投与試験を行った.その結果,妊娠7~12日の全ての投与日に胎盤の水腫が認められ,なかでも妊娠9,10,11日投与では高頻度で胎盤に水腫が認められた.これらの結果から,GW501516がラットの胎盤形成に悪影響を及ぼし,その影響は胎盤発生初期により顕著であることが示唆された.GW501516投与後の胎盤の経時的な変化についての病理組織学的検査の結果も報告する.
  • 大田 泰史, 池見 直起, 島津 伸也, 吉田 龍二, 川島 邦夫
    セッションID: P-116
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は,ステロール合成阻害作用を有する化合物を用いて,この化合物が有する口蓋裂の特異的な作用について,実験的研究を行っている.今回はこの化合物をラットに反復投与と単回投与したときの口蓋裂発生の頻度と臨界期について報告する.【方法】(実験1)本化合物の15,20,25 mg/kgを妊娠6~15日(膣栓確認日=妊娠0日)の10日間,1日1回強制経口投与した.妊娠20日に帝王切開し,胎児の外表検査を行った.(実験2) 本化合物の100 mg/kgを妊娠10,11,12,13及び14日の各妊娠日に単回投与した.妊娠20日に帝王切開し,実験1と同様に胎児の外表検査を行った. 【結果】(実験1)外表検査において,口蓋裂,切歯孔開存(一次口蓋と二次口蓋が癒合する部位が結合できずに小さな穴がみられる),曲尾及び短尾が認められた.口蓋裂の発生頻度は15,20及び25 mg/kg群でそれぞれ11,43及び76%であり,用量依存的に増加した.また,切歯孔開存の発生頻度は15,20及び25 mg/kg群でそれぞれ11,15及び20%,曲尾の発生頻度は15,20及び25 mg/kg群でそれぞれ6,13及び24%,短尾の発生頻度は0.05,0及び1%であった.(実験2) 妊娠10~13日のいずれの単回投与でも口蓋裂が認められたが,反復投与でみられた切歯孔開存,曲尾及び短尾は認められなかった.発生頻度の比較により,口蓋裂発生の臨界期は妊娠13日と考えられた.一方,妊娠14日の単回投与では口蓋裂は認められなかった.
  • 木村 栄介, 吉田 龍二, 和泉 宏幸, 平塚 秀明
    セッションID: P-117
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     Wistar Hannoverラット(RccHanTM:WIST)を用いて,母動物の分娩・哺育および出生児の生後検査データを収集し,SDラット(Crl:SD(SD))との比較を行った.
     母動物については体重,摂餌量,分娩時検査および哺育期検査,出生児については体重,発育分化検査,機能検査,情動性検査,運動協調性検査,学習能力検査および生殖能力検査のデータについて収集を行った.
     Wistar HannoverラットをSDラットと比較した場合の特徴は以下の通りであった.母動物の特徴としては,体重および摂餌量で妊娠期間および分娩後期間を通して,終始低い推移を示した.また,分娩時検査では着床数,出産児数および出生児数が若干低かった.出生児の特徴としては,雌雄とも離乳以降から顕著に低い体重増加の推移を示し,発育分化検査では,雌雄の切歯萌出および雄の包皮分離で分化が遅かった.情動性検査(オープンフィールド)では,雌雄とも潜時の延長および移動区画数の減少がみられ,雌の脱糞回数および排尿回数で若干高い値が認められた.運動協調性検査(ロータロッド)では,雌雄とも落下回数が少なく,高い運動能力を示した.また,学習能力検査(T型水迷路)では迷路検査の3日間を通して雌雄ともゴール到達時間の延長および錯誤回数の増加が認められた.
     以上のようにWistar HannoverラットについてのSDラットと比較した場合の特徴を捉えたが,生殖発生毒性試験の評価を行う上で特に問題となる特徴は認められなかった.ただし,発育分化検査については,SDラットと比較した場合,分化に時間を要することから,今回収集したデータを基に検査日の設定を行うことが望ましいと考えられた.
  • 吉田 龍二, 木村 栄介, 和泉 宏幸, 平塚 秀明
    セッションID: P-118
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
      Wistar Hannoverラット(RccHanTM:WIST)を用いて,受胎能に関する試験および胚・胎児発生に関する試験を実施し,SDラット(Crl:SD(SD))との比較を行った.
      受胎能に関する試験では,雌雄とも10週齢時から交配開始前2週間および交配期間を通して1日1回飲水を経口投与し,生殖能力検査,精子検査を実施した.   胚・胎児発生に関する試験では12週齢で交配し,妊娠7日~17日に飲水を経口投与し,妊娠20日に帝王切開時検査を行った.生存胎児は体重を測定し,外表,内臓および骨格検査を実施した.
      SDラットと比較したときのWistar Hannoverラットの結果は次のとおりであった.雌雄親動物および母動物の体重,摂餌量は低い推移を示した.生殖能力検査では高い交尾率を示したが,受胎率はSDラットの94.74%~100%に対し,Hannoverラットは90.91%とやや低かった.生存胎児数はやや低値を示したが,10例以上の生存胎児は確実に得られた.骨化進行度では,SDラットよりHannoverラットが早い傾向であった.
      以上のことから,Hannoverラットを用いての生殖発生毒性試験の評価は十分可能と判断されるが,背景データの十分な蓄積が必要と考えられた.
  • 白井 明志, 竹ノ下 瑛莉, 浅井 史敏, 坂上 元栄, 山本 雅子, 有嶋 和義
    セッションID: P-119
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     動脈管は胎生期において肺動脈と大動脈を結ぶバイパスとして機能し、出生後は収縮閉鎖する血管である。インドメタシンは、ヒトや動物において妊娠末期の母体に投与するとその胎子の動脈管が収縮することは広く知られているが、胎生期に暴露されたインドメタシンが出生後の動脈管に及ぼす影響に関する詳細な報告はほとんどみうけられない。そこで、本研究では、妊娠末期に母体経由で暴露されたインドメタシンが新生子の動脈管に及ぼす影響について検討した。
     Wistar系ラットを用いた。妊娠20日目の13時にインドメタシンを母体に経口投与した。インドメタシンの投与量は1、3および10 mg/kgとした。対照群には同様に5%アラビアゴム溶液を投与した。妊娠21日目の13時に帝王切開によって新生子を取り出した。新生子は帝王切開後0、30、60、120および180分に急速凍結した。凍結した新生子の動脈管および肺動脈の内径を全身急速凍結法にて測定し、動脈管内径と肺動脈内径の比(DA/PA比)を算出した。
     インドメタシン1 mg/kg投与群では帝王切開後60、120分において、インドメタシン3および10 mg/kg投与群では帝王切開後30、60、120分において、新生子のDA/PA比は対照群と比較して有意な高値を示し、出生後の動脈管の収縮が抑制されていた。また、このインドメタシン投与群でみられた動脈管の収縮の抑制は用量依存的な変化であった。帝王切開後180分において、インドメタシン1および3 mg/kg投与群の新生子動脈管は対照群と同様にほぼ完全に収縮閉鎖していた。一方、インドメタシン10 mg/kg投与群では帝王切開後120分以降180分までにほとんどの新生子が死亡した。
     これらの結果から、妊娠末期に母体経由で暴露されたインドメタシンがラット新生子の動脈管収縮閉鎖過程を用量依存的に抑制することが明らかとなった。
  • 瀬沼 美華, 吉田 由香, 桑形 麻樹子, 折戸 謙介, 今井 弘一, 高島 宏昌, 小島 幸一
    セッションID: P-120
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     我々は第36回の本大会で,胎児への移行性を有するペントバルビタール(PB)を帝王切開20分前の母動物に投与すると児が60分間麻酔状態にあることを報告した.今回,PB投与後帝王切開までの時間短縮が可能であるかを検討するとともに,児の生存性について検討した.
     SD系ラットは妊娠21日に,ICR系マウスは妊娠18日(膣栓確認日=妊娠0日)にそれぞれ帝王切開した.帝王切開の5,10あるいは20分前に,当日の体重を基に40 mg/kgのPBを静脈内投与して母動物を麻酔した後,帝王切開した.6匹の生存胎児について保温下で60分にわたり痛覚刺激に対する反応を観察し,独自に作成したスコアを用いて評点化した.全ての児は観察期間終了後に外表を観察し,開胸して心拍動の有無で生死を判断した.その結果,ラット,マウスともいずれの摘出時間においても帝王切開直後から児の活動性は低下し,麻酔状態が観察期間中継続した.PB投与5分後に帝王切開した群(PB5分群)では,摘出直後の痛覚刺激に対する反応が僅かに強く観察されたが,PB10あるいは20分群と比較して顕著な差は認められなかった.
     また,PB20分群では観察終了時に約40%の児が死亡していたことから,死に至るまでの状態を明らかにするためにPB10および20分群について児の心電図を記録した.その結果,両群ともに帝王切開後10分の時点では毎分約70回あった心拍数は,30分以降より減少し,50分後では毎分約10回まで減少した.しかし,観察期間を通じて波形の大きな乱れは観察されなかったことから,児は深麻酔の状態のまま徐々に心拍数が減少し,死亡していると考えられた.
     以上の結果から,PBの40 mg/kg投与後10分から20分後に帝王切開をすると,胎児は摘出後60分間麻酔状態にあり,また,一部の児では摘出後30分頃より心拍数が減少することが明らかになった.
  • 大谷 勝己, 山崎 蒼
    セッションID: P-121
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】筆者らは既に第33回トキシコロジー学会において内分泌撹乱化学物質であるジブロモクロロプロパン(DBCP)によるラット精子のミトコンドリア代謝能の低下についてコンピュータ画像解析法(CASA)との比較検討により発表した。その後 CASAを利用している間に(1)塗沫や染色の操作を必要とせず無傷の状態の精子の形態を観察できること、(2)画像を容易に保存できること、(3)暗視野の画像のために未成熟精子を肉眼で検出しやすい、などの有用性を見出した。そこで、今回はもう一度DBCPを試験物質としてCASAの画像による形態解析の利用法について述べることにする。 【方法】12週齢F344雄性ラットに溶媒としてオリーブオイルとともにDBCP (25 -100 mg/kg)を週2回4週間皮下投与した(全8回投与)。対照群には溶媒のみを投与した。1週間の休薬の後、ネンブタールで麻酔して解剖し、生殖臓器重量等を測定した。5%牛血清アルブミンを含むメディウム199中で、精巣上体尾部に鋏をいれ、精子を培地中に浮遊させ、CASA(機種はハミルトン社製IVOS)による各種運動能パラメーターの測定等を行った。またCASAにおける拡大画像を保存し後日画像を呼び出し、短形精子、未成熟精子、無頭精子、無尾精子を計測し最終的に正常精子率を求めた。さらに、精巣上体尾部を均質化し染色後CASAにより精子数を求めた。 【結果】DBCPの75 および100 mg/kg投与群において有意な精子減少を確認した。運動能に関しても75 および100 mg/kg投与群において運動能の急激な低下を認めた。他方、正常精子率もまた75 および100 mg/kg投与群において減小を認めた。また、頭部・尾部離断精子が同様の群で顕著に多く認められた。 【考察】DBCPの影響として精子数の低下、精子運動能の低下は従来から認められていたが、運動能低下の原因は頭部・尾部離断精子の増加によるものと思われる。また、精子尾部の形態解析には本法が有効と考えられる。
  • 小山 周三, 福田 浩司, 小原 栄, 有馬 昭宏, 宇野 泰広, 中間 和浩, 福崎 好一郎
    セッションID: P-122
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々は、カニクイザルの排卵日をレボノルゲストレル(LNG)投与によって同期化し、少数の母集団から妊娠個体を計画的に得ることにより、短期間での生殖発生毒性試験の実施を検討している。妊娠個体を得るためには、交配が必要であるが、自然交配では、雌雄の相性があり、交尾に至らない場合がある。人工授精は、交尾を必要とせず、加えて雄1例の1回の射出精液から、複数の雌への交配が可能になる。人工授精の高確率での成立には、子宮深部への精液注入が必要と考えられているが、カニクイザルの子宮深部への精液注入は、子宮頸部の構造上、困難である。そこで我々は、子宮深部への器具の挿入を必要とせず、外子宮口に精液を貯留させるカニクイザル用人工授精デバイスを試作(試作デバイス)し、排卵同期化した雌動物への人工授精を用いて、妊娠動物の作出を試みた。 【方法】実験1:試作した人工授精デバイスを用いて精子懸濁液(50×106cell/ml)を麻酔下の雌1例に人工授精し、24および48時間後に、左および右の卵管を採取してリン酸緩衝生理食塩液で還流し、卵管内の生存精子の有無を確認した。実験2:排卵同期化処理し、腹腔鏡を用いた卵巣の直接観察により排卵直前であることを確認した雌10例に、雄3例より採取し、調製した精子懸濁液を用いて人工授精を施した。20日後に超音波検査により、妊娠診断を行った。 【結果および考察】試作デバイスを用いて人工授精を行ったところ、24および48時間後に生存精子が観察されたことから、生存精子が卵管膨大部まで到達することが確認できた。排卵同期化した雌個体への人工授精では、3例が妊娠し、受精可能であることを確認した。現在、胎仔の発育状況を観察中であり、流産、催奇形性および胎仔発育を観察することにより、LNGによる同期化の影響を確認する予定である。また、今後、注入精子濃度の最適化により、妊娠率の向上を図る。
  • 寺島 ゆかり, 小林 一男, 横井 亮平, 高倉 郁朗, 丸山 喜正, 茅野 友信, 田原 享, 黒田 淳二
    セッションID: P-123
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    [目的] Wistar Hannover(WH)ラットは欧州で毒性試験に頻用されている系統であり,長期飼育における高い生存率等からその有用性が日本でも認知され,国内においても使用されつつある。そこで,WHラットを用い,既知の小核誘発物質を投与し,その小核誘発性についてこれまで小核試験に広く使用されている系統であるSprague-Dawley (SD) ラットと比較した。 [材料および方法] 被験物質としてCyclophosphamide (CP), Mytomycin C (MMC) 及びEthyl methanesulfonate (EMS) を用いた。9週齢の雄性SDラット(Crl: CD(SD))及びWHラット(RccHan: WIST)に,被験物質を単回経口又は腹腔内投与し,24時間後に骨髄塗抹標本を作製した。アクリジンオレンジ染色後,1個体あたり2000個の多染性赤血球を観察し,小核出現頻度を求めた。また,ニューメチレンブルー超生体染色後,1個体あたり1000個の赤血球を観察し,網状赤血球比を求めた。 [結果及び考察] CP, MMC及びEMSの投与により,いずれも用量依存的に小核出現頻度の有意な増加が認められ,その反応性にWHラットとSDラットとの間で違いは認められなかった。また,網状赤血球比にも系統間で明らかな差は認められなかった。以上より,既知の小核誘発物質による小核誘発性について,WHラットとSDラットとの間に系統差は認められず,骨髄小核試験でSprague-Dawley ラットにかわり,Wistar Hannoverラットを使用することに関して,遺伝毒性の評価に影響を与えることはないと考えられた。
  • 岸野 有紀, 永田 真由美, 服部 千春, 荒川 真悟, 長谷川 智子, 三井田 由紀子, 渥美 亮, 矢本 敬, 眞鍋 淳, 三分一所 厚 ...
    セッションID: P-124
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     In vitro遺伝毒性試験では、代謝活性化システムとして薬物代謝酵素誘導剤を投与したラットS9を用いる。我々はこれまでに、誘導剤投与による薬物代謝酵素の発現パターンの変化がラットin vitro遺伝毒性試験結果に与える影響について評価し、昨年の本会にて発表した。本研究では、誘導剤がラットin vivo遺伝毒性試験結果に与える影響を検証し、in vitro試験結果と比較した。
     Phenobarbital (PB) 100 mg/kgを2日間経口投与した雄性F344ラット(8週齢)に、cyclophosphamide (CPA) (2、10、20 mg/kg)あるいはchlorpheniramine (Chl) (10、30、100 mg/kg)を経口投与し、骨髄および肝臓における小核出現頻度を算出した。
     CPAの骨髄小核試験の結果、用量依存的な小核出現頻度の増加が認められたが、小核出現頻度の増加はPB前処置により減弱した。CPAのラット肝小核試験の結果、小核出現頻度の増加は認められず、PB前処置による小核出現頻度の変動も認められなかった。Chlの骨髄小核試験および肝小核試験の結果、いずれにおいても小核出現頻度の増加は認められず、PB前処置による小核出現頻度の変動も認められなかった。以上から、ラットin vivo小核試験において、誘導剤の前処置はCPAおよびChlの小核誘発性を変化させない、あるいは減弱させ、誘導剤の前処置により小核誘発性が増強するin vitro試験結果と異なっていた。これは、in vitro試験はPB前処置により変動する化合物の代謝経路の一部を高感度に検出しているためと推察された。従って遺伝毒性リスク評価では、化合物の体内動態を考慮した上でin vitro試験結果を解釈し、in vivo試験結果と併せて考察することが必要である。
  • 小山 直己, 安井 学, 木村 葵, 高見 成昭, 鈴木 拓也, 増村 健一, 能美 健彦, 増田 修一, 木苗 直秀, 松田 知成, 今井 ...
    セッションID: P-125
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    [背景/目的] 食品の安全性において、加熱調理過程で生成するアクリルアミド(AA)が問題になっている。特に、AAはスナック菓子、ベビーフード等に多く含まれていることから、子供への影響が懸念されている。AAは生体内で薬物代謝酵素CYP2E1により、グリシダミド(GA)に変換され、その遺伝毒性や発がん性が増強すると明らかになっている。ヒトおよびラットの幼若期と成熟期では、CYP2E1等の活性に差があり、子供と大人ではAAを摂取した場合の発がんリスクが異なることが考えられる。[方法] 本研究ではライフステージ(週齢)の違いによるAAの遺伝毒性感受性の違いを検討した。 3週齢(幼若),7週齢(成熟)の雄 のgpt delta トランスジェニックF344ラットにAAを20, 40, 80 ppmの濃度で28日間飲水投与させ、各臓器における遺伝毒性試験[突然変異(肝臓、精巣)、小核試験(骨髄)、アルカリコメット試験(肝臓)]を実施した。また、各臓器(肝臓,精巣,乳腺,甲状腺)におけるGA由来のDNA付加体(N7-GA-Gua)量をLC/MS/MSを用いて測定した。[結果] AAを飲水摂取させることにより、幼若および成熟いずれの群においても肝臓に対するDNA損傷を確認した。また,幼若の80 ppm摂取群で,骨髄の小核誘発頻度は有意に増加し,精巣では、gpt遺伝子突然変異頻度が有意に増加した。さらに,DNA付加体(N7-GA-Gua)の生成が顕著にみられ,成熟群より幼若群でDNA付加物レベルが有意に高いことが分かった。[考察] AAの遺伝毒性は,骨髄で染色体異常誘発性を示し,肝臓では,DNA損傷性を示した。また、精巣では、幼若群で強い遺伝毒性が確認され、その強さはDNA付加体レベルと相関していた。AAの曝露によって,幼児に対する発がんリスクが高まることが懸念された。
  • 福山 朋季, 田島 由香里, 林 宏一, 上田 英夫, 小坂 忠司
    セッションID: P-126
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    一部の有機リンおよび有機塩素系化合物による免疫抑制作用の報告は数多くなされており,我々の研究室でもin vivoおよびin vitro下で検証を実施した。近年,免疫抑制反応の回復段階で増殖した異常リンパ球細胞により,アレルギーや自己免疫性疾患といった免疫異常の発症リスクの上昇が危惧されている。本研究では,有機リンおよび有機塩素系化合物といった環境中化学物質により引き起こされる免疫抑制作用と,化学物質アレルギー発症の関連性について調査を行った。実験には4週齢の雌性Balb/cマウスを用い,免疫抑制化学物質として有機リン化合物のパラチオン(0, 0.15, 1.5 mg/kg)と有機塩素系化合物のメトキシクロル(0, 30, 300 mg/kg)を4週齢時に5日間経口投与した。8週齢時にTh1タイプアレルゲンのDNCB(0%, 0.03%, 0.1%, 0.3%)とTh2タイプアレルゲンのTMA(0%, 0.1%, 0.3%, 1%)を用いたLocal Lymph Node Assay(LLNA法)を実施した。また,DNCB 0.1%とTMA 0.3%についてリンパ節中のT細胞分類,サイトカイン産生量およびアレルギー関連遺伝子発現解析を行った。LLNA法の結果,DNCBおよびTMAのEC3値 (感作陽性の指標)が,パラチオンおよびメトキシクロルの用量依存的に減少し,パラチオンおよびメトキシクロルの投与がアレルギー反応の増大に寄与していることを示していた。また,採取したリンパ節を詳細に解析した結果,パラチオンおよびメトキシクロル投与により,Helper-およびCytotoxic-T細胞,サイトカイン産生量およびアレルギー関連遺伝子発現が有意に増加しており,LLNA法の結果を補佐していた。上記結果は,パラチオンやメトキシクロルといった免疫抑制化学物質による免疫機能の破綻が,化学物質アレルゲンに対する反応性を増大させることを示唆していた。
  • 小松 弘幸, 鈴木 慶幸, 橘田 久美子, 江田 景, 末岡 綾乃, 久保田 貴之, 高尾 みゆき, 河治 早苗, 小林 立弥, 佐藤 福弘 ...
    セッションID: P-127
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】免疫抑制剤(シクロスポリンA,シクロフォスファミド)をラットに28日間反復経口投与し,免疫毒性試験(リンパ球サブセット,T細胞依存抗体産性能)の背景データ取得し,同時に安全性薬理(呼吸,中枢)及び遺伝毒性(骨髄小核)検査項目が本試験へ組み込み可能であるかを検討した. 【材料及び方法】媒体(0.5%メチルセルロース),シクロスポリンA(20mg/kg)及びシクロフォスファミド(5mg/kg)を雄ラット(Crl:CD(SD),SPF,投与時6週齢)に28日間反復経口投与した.グループ1(免疫病理試験)は各群10例とし,投与終了後に血液・血液生化学的検査,病理学的検査,リンパ球サブセット解析(血液,脾臓及び胸腺)及び遺伝毒性(骨髄小核検査)検査を実施した.グループ2(抗体産生能試験)は各群10例とし,経口投与第9日及び23日にKLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)を尾静脈内投与した.経口投与第15日目及び最終投与翌日に採血しKLH特異的IgM及びIgG抗体量をELISA法で測定した.中枢神経系の評価は各群半数例を用い初回投与時に投与前,投与後0.5,1,3及び6時間の計5時点について.機能観察総合評価法(FOB)に基づき実施した.呼吸機能は各群半数例(FOBで使用していない動物)を用いて,FOBと同じ計測時点でWhole body plethysmograph法で実施した. 【結果及び結論】シクロスポリンAは胸腺のヘルパーT細胞(CD4)を減少させ,抗原特異的抗体産性能を低下させた.一方,シクロフォスファミドは脾臓のB及びT細胞を減少させ抗原特異的抗体産生能を低下させた.これらの試験条件下において安全性薬理パラメーター(中枢系,呼吸系)に変化は見られなかった.また,遺伝毒性物質であるシクロフォスファミドは小核検査で陽性反応を示した.従って,今回実施した免疫毒性試験の方法によって安全性薬理,遺伝毒性検査項目も同時に評価可能であることが示された.   以上,本試験結果より,今回確立した試験系によって免疫毒性を十分に検出でき,同時に安全性薬理(中枢系,呼吸系)及び遺伝毒性も評価可能であると結論された.
  • 宮脇 出, 志摩 典明, 坂東 清子, 堀江 泰志, 馬場 健史, 福崎 英一郎, 土橋 均, 木村 重紀, 船橋 斉, 関 髙 ...
    セッションID: P-128
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    緒言
    メタンフェタミン(MA)は、わが国で最も乱用されている薬物であり、多量摂取で精神障害を惹起する神経毒性物質である。しかし、非臨床試験での神経毒性評価は一般症状観察が主体で実験者の熟練度に依存する部分が多い。そこで、今回はより客観的かつ簡便な毒性評価を目指し、一般症状観察に加え自発運動量および運動軌跡を基にMAの神経毒性を評価した。加えてメタボロミクス手法を用いて、神経毒性発現時に生じている内因性代謝物の変動を解析した。
    方法
    8週齡の SD系雄性ラットに薬効量(2 mg/kg/回)及び毒性量(10 mg/kg/回)のMAを1時間毎に4回腹腔内投与し、最終投与直後及び24時間後に行動観察に加え自発運動量の測定を実施した。また、毒性量群では投与24及び96時間後に尿ならびに血漿サンプルを得た。得られたサンプルからクロロホルム/メタノールで高極性代謝物を抽出し、GC-MS、CE-MSを用いて分析した。同定された化合物を用いて多変量解析を行い、内因性代謝物の変動を確認した。
    結果・考察
    MA投与終了時点でいずれの投与量群でも興奮様症状(易刺激性)が発現し、さらに毒性量では首振り運動、自傷行動といった異常行動が認められた。一方、自発運動量において薬効量群では総運動数及び立ち上がり回数の有意な増加を示したのに対し、毒性量群では逆に自発運動量の減少とともに神経毒性を反映したと考えられる異常な運動軌跡(運動パターン)を示した。加えて血液及び尿のメタボローム解析において毒性量群にエネルギー産生に関わる代謝物の変動が観察された。
       以上、詳細な行動観察に加え、自発運動量測定や運動軌跡の取得はMAの薬効量と毒性量での行動の差を明確に区別することができ、神経毒性評価に有用であることが示された。当日は内因性代謝物の変動と神経毒性との関係について考察を加えたい。
  • 富田 正文, 勝山 博信, 渡辺 洋子, 奥山 敏子, 伏見 滋子, 石川 隆紀
    セッションID: P-129
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    覚せい剤(MAP)がストレス環境下で使用される可能性は非常に高く,薬物の作用にストレスが大きな影響を及ぼすことが考えられる。今回われわれは,ストレスとMAPの1ヶ月におけるマウス肝臓・心筋および骨への影響を検討した。
     【材料と方法】マウスをNormal 群 (N群),MAP 群 (M群),stress 群 (S群), stress+MAP 群 (MS群)に分けた。ストレスは月曜から金曜まで次のように1ヶ月間処置した:月曜;温度変化/6h (4℃⇆室温,各1h),火曜;電気ショック(0.4mA, 5sその後25s休みを計60回)+温度変化/4h,水曜;拘束+温度変化/6h,木曜;温度変化/6h,金曜;水浸拘束/3h 。MAPは10 mg/kgを3回/週腹腔内投与した。血液,心・肝・大腿骨を採取した。血中コルチコステロン(CORT)はELISAで定量し,心・肝はH.E.染色にて観察,さらに心筋での遺伝子発現をreal-time PCRで検討した。大腿骨はラシータにて骨密度を計測した。
     【結果と考察】ストレスの指標である血中CORT値は,M群では変化がみられず,S群で有意に促進し,MS群ではその促進が抑えられた。組織ではとくにS群の肝で,中心静脈性に顕著な細胞脱落がみられ強い虚血性変性が示唆されたが,MS群では改善された。一方,心筋ではとくにMS群で過収縮像と強い凝固壊死像の部位が多く観察された。心筋でのRNA発現変化を約50遺伝子について検討した結果、Hsp, Fas, BNPはM群で,メタロチオネインはストレス負荷群で促進, NOS2はストレス負荷群で低下した。また酸化ストレス関連遺伝子にも影響が認められた。一方,骨密度はM, S, MS群で対照群に比べ有意に低下した。以上,ストレスと覚醒剤の1ヶ月における相互作用を検討した結果,心・肝および骨について強い相互作用が認められた。
  • 安藤 雅光, 吉川 佳佑, 岩瀬 裕美子
    セッションID: P-130
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】 近年、哺乳動物細胞を用いたin vitro遺伝毒性試験において陽性を示した化合物について、遺伝毒性誘発機序解析及び証拠の重み付けにより遺伝毒性リスクを適切に評価することが推奨されている。本研究では、遺伝毒性誘発の機序解析のため、27種類の遺伝毒性物質及び9種類の非遺伝毒性物質についてhigh content analysis systemを用いて、Hep G2細胞のγ-H2A.X及び細胞周期に及ぼす影響を検討した。
    【方法】 384ウェルプレートに播種したHep G2細胞に化合物(公比2、各10濃度)を1及び24時間曝露した後、CellCiphrTM cytotoxicity assay kitを用いて蛍光染色を施し、ArrayScanVTIを用いてγ-H2A.X(1時間曝露)及び細胞周期(24時間曝露後の2N/4N比、リン酸化ヒストンH3及びチューブリン)の各パラメーターについて画像解析を行った。
    【結果及び考察】 遺伝毒性物質のうち9化合物(活性酸素産生物質、topoisomerase阻害薬及びDNA polymerase阻害薬等)においてγ-H2A.Xの上昇が認められ、DNA損傷作用をもつことが示唆された。また、遺伝毒性物質のうち13化合物(代謝拮抗薬、topoisomerase阻害薬、DNA polymerase阻害薬等)においてS/G2期停止が、2化合物(微小管作用薬)においてM期停止が認められた。一方、非遺伝毒性物質では1化合物のみにM期阻害と考えられる変化が認められたが、γ-H2A.Xの上昇やS/G2期阻害を示唆する変化は認められなかった。以上の結果から、本法によるγ-H2A.X及び細胞周期の解析は、遺伝毒性誘発機序の推定に有用と考えられた。
  • 藤本 和則, 岸野 寛之, 大場 智恵子, 新野 訓代, 清澤 直樹, 矢本 敬, 眞鍋 淳, 三分一所 厚司
    セッションID: P-131
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    初代培養肝細胞を用いたin vitro細胞障害性試験は、新薬開発の初期段階での化合物の肝障害リスクを予測するスクリーニング方法として活用されている。その細胞障害性を評価する方法としていくつかのアッセイが利用されているが、我々はラット由来の初代培養肝細胞を用いて、その細胞から漏出した乳酸脱水素酵素の活性を測定するLDHアッセイと細胞内の脱水素酵素活性を測定するWST-8アッセイで化合物の細胞障害性を評価している。これら2つのアッセイの結果は概ね相関しているが、稀にLDHアッセイにおいて細胞毒性が認められないにもかかわらず、WST-8アッセイで顕著な細胞機能の低下が認められることがある。そこで、いくつかの肝障害モデル化合物を検索した結果、ウスニン酸が同様のプロファイルを示す代表的な化合物であることを見出した。また、細胞内ATP含量、カスパーゼ活性、ミトコンドリア膜電位、酸素消費速度の測定の他、GeneChipを用いた遺伝子発現解析を実施した結果、ウスニン酸が特異的なミトコンドリア毒性を発現する化合物であることが確認できた。したがって、LDHアッセイの結果とWST-8アッセイの結果の乖離はミトコンドリア毒性を反映した変化の可能性があり、初代培養肝細胞を用いたin vitro細胞障害性試験においてLDHアッセイとWST-8アッセイを組み合わせることにより、ある種のミトコンドリア毒性を評価することが可能であることが示唆された。
  • 岩瀬 裕美子, 本多 達也, 中島 羊奈子, 佐々木 義文
    セッションID: P-132
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    Balb/c 3T3細胞を用いた光細胞毒性試験(光3T3試験)は、一般に偽陽性結果が多いと考えられているが、光線過敏症の報告がない経口薬に関する光3T3試験の報告は非常に少ない。今回、光3T3試験と経口薬の光線過敏症との相関性を調べるため、68種類の国内上市薬(添付文書に副作用として光線過敏症の記載がある42種類と記載がない26種類の化合物)を用いて光3T3試験を実施した。さらにPhoto Irritation Factor(PIF)と光線過敏症の発現頻度、光照射時の50%細胞増殖抑制濃度(IC50)とヒト血中濃度との相関についても検討した。
    その結果、「光毒性あり」(PIFが5以上)、「光毒性の可能性あり」(PIFが2以上5未満)及び「光毒性なし」(PIFが2未満)と判定された化合物は、それぞれ25、3 及び40化合物であった。PIFが2以上の化合物を陽性として判定した場合、光線過敏症の陽性検出率は52.4% (22/42)、陰性検出率は76.9% (20/26)、陽性予測率は78.6%(22/28)、陰性予測率は50.0%(20/40)、総合検出率は61.8%(42/68)であった。光線過敏症について注意喚起等が記載されている化合物や発現頻度が高い化合物の多くは、PIFが15以上であった。光線過敏症の記載がある光3T3陽性化合物において、光照射時のIC50値は、未変化体のヒト血中Cmax値と同レベル~約100倍(中央値は10倍)であった。光線過敏症には光毒性反応だけではなく光アレルギー反応も含まれているが、現状では光アレルギー反応を適切に評価する試験系は確立されていない。非臨床における光安全性評価において、光3T3試験単独では限界があるため、今後、光アレルギーを評価する系の開発が望まれる。
  • 斉藤 淳一郎, 池田 一彦, 埴岡 健一, 長沼 悟, 佐藤 剛, 大畠 武二, 宮前 陽一
    セッションID: P-133
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    High Content Analysis(HCA)は,顕微鏡観察と画像解析を組み合わせたセルベースアッセイであり、種々の蛍光プローブを用いて個々の細胞の形態変化、細胞内部の様々な変化を画像として取得し、目的とする変化を数値解析することのできる新しいツールである。最近、安全性研究の分野においても細胞毒性あるいは肝毒性についての研究例が報告されており、その有用性について注目されている。今回、このHCAを用いてin vitro細胞毒性及び肝毒性評価系としての有用性を検討したので,報告する。 本研究ではヒト肝癌細胞HepG2を用い、細胞内変化を検出するパラメータとして、核の形態、細胞内活性酸素種レベル、細胞内グルタチオンレベル、ミトコンドリア膜電位及び細胞膜透過性について検討した。これらのパラメータの細胞内変化を、陽性対照化合物としてラジカル発生剤メナジオン、グルタチオン枯渇剤のL-buthionine-S,R-sulfoximineあるいはDiethyl maleate及びミトコンドリア膜電位を消失する脱分極剤バリノマイシンを用いて検証した。その結果、これらの化合物のメカニズムに応じた細胞内変化を数値解析することができた。また、これらの解析パラメータの変化は、細胞死よりも低い用量から検出可能であったことから、本評価系が細胞毒性評価系として有用であることが示唆された。 次に、肝毒性評価系としての有用性を検討するために、ヒトで肝毒性の報告のある肝毒性陽性26化合物及び肝毒性陰性10化合物を用いてこれらのパラメーターの変化を調べた。その結果、肝毒性陽性化合物は26化合物中15化合物(57.7%)でこれらの解析パラメータに変化が認められ、一方、肝毒性陰性化合物は10化合物中2化合物(20.0%)に変化が認められたのみであった。以上より、化合物暴露後の細胞内変化をHCAを用いて解析することによって、肝毒性のポテンシャルのある化合物を検出できる可能性が示唆された。
  • 小川 哲郎, Rakwak Randeep, 柴藤 淳子, 澤 智華, 齋藤 智美, 村山 綾, 桑形 麻樹子, 塩田 清二
    セッションID: P-134
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】カロリー制限は多くの生物において寿命を延長させることが知られている。しかし、胎児期低栄養環境による出生時低体重は後に生活習慣病のリスクを高めることが知られており、動物実験においても妊娠動物への給餌制限により児のインスリン抵抗性、高血圧、肥満の誘発等に加え、寿命の短縮が報告されている。このように成人の疾患が発達期の環境にあることは近年、DOHaD(Developmental Origins of Health and Disease)研究として論じられるようになった。我々は、カロリー制限の成人および胎児に対する効果が全く逆であることに注目し、DOHaD説の責任遺伝子の網羅的検索を目的に本実験を行った。【方法】妊娠マウスを妊娠17日より絶食し、翌日に帝王切開を行い母動物および胎児から肝臓を採取した。DNAマイクロアレイの解析により母動物および胎児で発現が逆方向に変化する遺伝子を検索した。【結果】絶食により母動物では約6000個、胎児では約3000個の遺伝子の発現に変化が認められたが、母動物および胎児間で発現の変化が逆の遺伝子を211個見出すことができた。これらの遺伝子には、最近、糖代謝への関与が報告されているNeuregulin 1や長寿遺伝子Sirt1の活性化に関与すると思われるNADH dehydrogenase、ヒストンのメチル化に関与するDot1等が含まれていた。【考察】本実験からDOHaD説の責任候補遺伝子を見出すことに成功した。さらにこれらの中でエピジェネティックな調節を受ける遺伝子の検索を進めている。低体重出生児の出生率の高い日本(OECD加盟国中第2位)において、低体重出生につながる胎児期の栄養をはじめとした環境の検索は生活習慣病の予防を目的とする研究として重要であり、また、胎児期の環境により影響を受ける遺伝子を明らかにするとともに、これを元に戻す方法の検討が必要である。現在、プロテオーム解析を実施しており、その結果も合わせて報告する予定である。
  • 今泉 直樹, 安仁屋 洋子
    セッションID: P-135
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ミトコンドリア膜透過性遷移孔(mitochondrial permeability transition pore : MPTP)はカルシウムや酸化ストレスなど種々の要因によって開口し、内膜(IMM)の透過性を亢進し、ミトコンドリアを経由する細胞死の引き金となる重要なステップである。最近、著者らは第2相の薬物代謝酵素であるグルタチオントランスフェラーゼ(GST)、特にミトコンドリア膜結合性のGST(mtMGST1)が酸化ストレス性のMPTPに関与していることを見出した。そこで本研究では酸化ストレス性のMPTPにmtMGST1がどのように関与しているかについて強力な酸化剤であるperoxynitrite (PON)を用いて検討した。【方法】雄性SDラットを一晩絶食後断頭し、肝臓を摘出後、常法にて肝ミトコンドリア画分(mit)を分離した。このmitにPONを作用させ、GST活性及びMPT現象であるミトコンドリアの膨化(Swelling:SW)に及ぼす影響について検討し、ミトコンドリア蛋白の変化をImmunoblotting(WB)で解析した。【結果・考察】mitにPONを作用させるとSWを引き起こし、このSWはGST及びMPT阻害剤やジスルフィド結合還元剤のdithiothreitol(DTT)によって抑制された。この反応液を遠心し、得られた沈殿をMGST1抗体を用いてWB解析すると高分子タンパク(HMP)の生成がみられ、このHMP生成はGST及びMPT阻害剤やDTTによるSWの抑制に伴って減少した。このことからHMPがMPTPであることが示唆された。さらにHMPはMPT regulatorであるAdenine nucleotide translocator(ANT)、Cyclophilin D(CypD)の抗体にも反応した。そこでこのHMPを電気泳動後、ゲルから抽出し、還元条件で電気泳動/WBを行ったところmtMGST1、ANT、CypDを含んでいることが判明した。またPONを作用させたmitoplastをIMMとマトリックスに分け、WBを行うとHMPはIMMにのみ検出された。以上のことから内膜のmtMGST1はANT、CypDとジスルフィド結合を介したMPTPの形成をしていることが示唆された。一方、ミトコンドリア外膜のGST活性はPONによって増加し、スルフェン酸還元剤によって減少し、ミトコンドリアGSTの活性化に関与していることが示唆された。
  • Hong Ji-Young, Kwon Soon-Sung, Hara Kenjirou, Sato Eisuke, Inoue Masay ...
    セッションID: P-136
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    Apoptosis can be triggered by extracellular death signals, deprivation of survival signals, and genetic or toxicological damage. There are two major pathways of caspase activation: (1) ligand-dependent or receptor-induced activation through death receptor and; (2) mitochondria-dependent activation via cytochrome c release. Here, we propose a mathematical model for mitochondria-dependent and independent apoptosis induced by cisplatin, an effective chemotherapeutic agent widely used for the treatment of cancer patients. Standard mass action models for the apoptotic pathways are formulated by using Michaelis-Menten kinetics when the total enzyme concentration is constant. Then, we modeled the signal transduction network of apoptotic reactions that are also modeled by ordinary differential equations. The present study provides a mechanistic mathematical model describing key elements of receptor-mediated and stress-induced caspase activation for apoptosis. To validate our model, we compared predictions with experimental observations. Our simulations successfully reproduced experimental results. Further, we could predict the sequential events of apoptotic signal response according to cisplatin concentration, demonstrating that our model predictions are consistent with available information and experimental data. Thus, the model could aid in better understanding apoptosis mechanism(s) and in identifying therapeutic approaches promoting or retarding apoptotic cell death.
  • 澁谷 徹, 堀谷 幸治
    セッションID: P-137
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年,多くの外因性物質によって,「エピジェネティクス(EG)」が撹乱され,生体が大きな影響を受けることが知られつつある.これらの現象は「環境エピゲノム撹乱:Environmental Epigentics Desruption(EGD)」と呼ばれている.また,EGは個体発生過程では成体よりも高度に制御されている.そのため,胎児細胞は成体細胞に比べて,EGDによって大きな毒性影響を受ける可能性がある.さらに,EGは細胞分裂によっても維持されるので,生殖細胞も体細胞と同様にEGDを伝達する可能性が考えられ,経世代的にさまざまな毒性が誘発されることも考えられる. Skinnerらは, ラット始原生殖細胞への経胎盤投与によって,4世代に渉って「環境エピゲノム撹乱」が伝達されたという結果を得た.さらに父ラットあるいはマウスのかたよった栄養状態が,その子孫の健康状態に影響を与えたという経世代影響についての論文が相次いで発表されている. さらに,J.P. Barker(1986)は,多くの成人病の素因は受精時,胎生期にすでに形成され,成長期あるいは老年期における,種々の疾患の素因になるとの「成人病胎児期発症説(DoHAD)」を提唱した.それらの多くの部分は,EGDによるものだと考えられている. 以上のことから外因性物質によるEGDを「基盤毒性」として,毒性試験に発生・生殖毒性試験の考え方を重視することが必要となる.そして,これまでの毒性試験を,胎児期の始原生殖細胞(PGC)投与を起点とし経世代影響を観察する,新しい毒性学(PGC-based Epigenetic Toxixology)として再構築し直すことがこれからの課題である.今後は,EGDという概念によって,前臨床試験としての「毒性試験」,ヒトを用いた「臨床試験」さらには「臨床医学」まで包括する,新しい毒性学の試験・研究分野が包括される可能性がある.
  • 大塚 亮一, 武田 真記夫, 山口 悟, 小嶋 五百合, 富田 真理子, 大沼 彩, 高橋 尚史, 桑原 真紀, 吉田 敏則, 中島 信明, ...
    セッションID: P-138
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    フェノバルビタール(PB)の反復投与によりラットで肝発癌が誘発されることはよく知られており,発癌にいたる過程において,細胞周期の停止に加え,アポトーシスの抑制,肝逸脱系酵素の減少ならびにメチル基転移酵素であるDnmtの発現抑制が誘発されることが知られている。我々は第27回日本毒性病理学会においてDnmt1の発現抑制において,プロモーター領域におけるE2F結合配列に対するE2f1の結合が減少することを報告し,その原因として,細胞周期の停止によるRbとの結合によりE2f1が不活化した可能性を示した。今回は,以前報告したF344ラットにPBを4週間にわたり強制経口投与した肝臓サンプルを用い,Dnmt3aを含む他の因子の遺伝子発現ならびに転写因子の結合性を解析した。RT-PCRの結果,肝逸脱系酵素であるGot1およびDnmt3aの遺伝子発現はPB投与により抑制されていた。これらの遺伝子領域およびアポトーシス関連因子であるcaspase 3にはcyclic AMP responsive element(CRE)が存在することから,ChIP assayを実施した結果,Dnmt3aのCRE領域ではリン酸化cyclic AMP responsive element binding protein(Creb)の結合が投与群において有意に減少していた。PB投与により肝臓における低酸素影響が増悪することは以前から知られており,さらに,Crebとembryogenesis必須因子であるhypoxia inducible factor 1a(Hif1a)との相互関係も報告されている。一般的に,新規メチル化酵素であるDnmt3aはembryogenesisにおいて高発現であることから,Hif1a,CrebおよびDnmt3aに何らかの関連性が考えられ,Hif1aの発現を測定したところ,投与群において有意に減少していた。また,Creb活性化に関与するprotein kinase Aの遺伝子発現においては有意な変化が認められず,またcAMP量においても有意な変化は認められなかった。以上のことから,Hif1aの発現抑制によりCrebそのものの発現が抑制されている可能性が示唆された。現在,Crebの転写制御に関して検索中である。
  • 田畑 肇, 坂本 和仁, 門倉 豪臣, 蓑毛 博文, 瀬戸山 孔三郎, 谷口 康徳, 福岡 香織, 北村 知宏, 所 和美, 洲加本 孝幸, ...
    セッションID: P-139
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    Fluoride is a natural component of the biosphere, the 13th most abundant element in the earth’s crust. Fluoride has been known to play an important role in mineralization of bone and teeth, and can be therapeutically used at low doses for dental care and prevention or at high doses for the treatment of osteoporosis. Particularly in cases of the development of a fluoride compound as a proprietary drug, liberated fluoride ions may bring the risk of causing dental or skeletal fluorosis in animals treated with high doses of fluoride drugs in toxicity studies. However, there are limited data on changes in fluoride levels in hard tissues of the body over animal life spans. In the present work, we obtained plasma, teeth (incisors and molars), bones (alveolar, femur and tibia) and nails from SD rats at 8, 11, 20, 33, 46, 59 and 72 weeks of age and determined fluoride levels individually. Fluoride accumulated time-dependently in bones, nails and molars in a similar manner, with fluoride levels increasing 2-3 folds from 8 to 72 weeks of age. In contrast, fluoride levels in plasma and incisors, which grow continuously in living rats, showed almost constant values. These data can be used not only as a historical database for the effective evaluation of data from toxicology studies, but also as a contribution to biological characterization of SD rats.
  • 小林 靖奈, 竹下 由梨枝, 梅本 岳宏, 日比 健志, 真田 裕, 山元 俊憲
    セッションID: P-140
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】生体に投与された薬剤は最終的に体外へと排泄されるが、その過程には輸送担体の介在が必要となる。ABC 系の輸送担体は乳癌などの腫瘍組織に高発現し、細胞外への薬物排泄によって多剤耐性に関与している。乳癌は年々増加傾向で、治療にはアントラサイクリン系やタキサン系、フッ化ピリミジン系薬剤等がある。なかでも paclitaxel は転移・再発乳癌に対してガイドラインで推奨されている。Paclitaxel の経細胞膜輸送に関しては、hOAT2や P-gp の基質となるが、乳腺には P-gp、OCT1/3、OCTN1/2、OATPA/B、CNT3、ENT3、MRP1/2/5、BCRP 等が発現している。しかし、P-gpとMRP2 以外は paclitaxel を基質とせず、取り込み機能は不明である。そこで、paclitaxel の輸送に関わる遺伝子を単離し、機能の特定を行った。 【方法】ヒト乳癌 mRNA より cDNA library を構築した。塩基配列は ABI 310 自動シークエンサーを用いた。組織分布は RT-PCR および real-time PCR にて行った。機能解析は [3H]paclitaxel を用い、アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた。 【結果および考察】単離した遺伝子は 526 個のアミノ酸をコードする遺伝子で、ヒト特異的であった。RT-PCRおよびreal-time PCR を行ったところ、正常組織に比べて腫瘍組織で発現量が上昇していた。卵母細胞発現系で解析した結果、[3H]paclitaxel の輸送は、Na+ 非依存性、pH 依存性を示し、Km 値は 412.6 nMであった。Efflux 実験の結果、取り込み型であった。以上、単離した遺伝子はヒト乳腺に発現し、[3H]paclitaxel の輸送に関わるものと推察される。このことは、paclitaxel による乳癌治療においてその適正使用に役立つかもしれない。
feedback
Top