日本トキシコロジー学会学術年会
最新号
選択された号の論文の306件中251~300を表示しています
一般演題 ポスター
  • 吉成 浩一, 井上 晋一, 菅原 実香, 山添 康
    セッションID: P-141
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    薬物代謝酵素の発現レベルは栄養状態や生理状態の変化に伴い変動する。最近当研究室で、一般精製飼料(D12450B、Research Diets)を与えたマウスでは、飼育繁殖用一般飼料(CE-2、日本クレア)を与えたマウスに比べて、肝のCyp3a11レベルが低いこと、さらに、精製飼料に2%コレステロールを添加するとCyp3a11レベルが回復することを見出した。これらのことから、飼料中のコレステロール含量と肝Cyp3a11レベルの関連が示唆された。本研究では、この分子機構について、細胞内コレステロールレベルの低下により活性化する転写因子であるSREBP-2に着目して解析した。CE-2、精製飼料または2%コレステロール添加精製飼料を与えたマウスの肝でのSREBP-2標的遺伝子(LdlrHmgcs1SqleSrebf2)のmRNAレベルを調べたところ、精製飼料摂取群で他の2群に比べてこれらmRNAレベルは高かった。レポーターアッセイにおいて、SREBP-2はCyp3a11プロモーターのHNF-4α結合モチーフ(以下DR13a)を含む-1581から-1524 の領域を介してCyp3a11の転写を抑制した。ゲルシフトアッセイでHNF-4αはDR13aに結合したが、SREBP-2は結合しなかった。GSTプルダウンアッセイでは、SREBP-2はHNF-4αとそのコアクチベーターであるPGC-1αと直接結合したが、DR13aに結合したHNF-4αには、SREBP-2は結合しなかった。さらに、レポーターアッセイにおいて、DR13aへの変異導入やPGC-1αの過剰発現を行なうと、SREBP-2依存的なCyp3a11転写抑制は認められなくなった。ChIPアッセイにより、マウス肝のゲノム上のDR13aへのHNF-4αとPGC-1αの結合量を調べたところ、精製飼料を与えた場合には、CE-2を与えた場合に比べてPGC-1αの結合量が低下していたが、HNF-4αの結合には両群間で差は認められなかった。以上の結果より、コレステロール摂取量の低下は、マウス肝でSREBP-2を活性化し、HNF-4αとPGC-1αを介したCyp3a11の転写を抑制することが示唆され、飼料の違いにより薬物の代謝パターンが異なる可能性が示された。
  • 伊藤 雅仁, 永福 由紀子, 竹川 晃司, 杉山 明男
    セッションID: P-142
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    一般に薬物のグルクロン酸抱合代謝物の多くは不活性であり毒性評価の必要がない.しかし,カルボン酸薬に由来する一部のアシルグルクロナイド(AG)はそのタンパクへの共有結合能が毒性発現に関与すると考えられており,リスク評価が必要であるとFDA MISTガイダンスに記載されている.今回,ダンシル蛍光ラベル化したLys-Phe(dKF:PheのC末端をダンシルカダベリンで蛍光誘導体化したもの)をアミノ基含有トラップ剤として使用し,既知のNSAIDs数種について,ヒト肝ミクロソーム代謝により生成させたAGに由来するdKF付加体をLC/MSおよび蛍光検出器で検出し,AGの反応性を定量的に評価した.その結果,3時間のdKF付加反応により,いずれの薬剤でもAGに由来するdKF付加体が検出されたが,肝障害等の副作用報告の多い酢酸系NSAIDではイミン形成を経由するタイプの付加体(シッフベース型)が主として検出されたのに対し,比較的副作用が少ないとされるプロピオン酸系NSAIDではアシル基が直接dKFに転移したタイプの付加体生成が主体であった.また,イミン型付加体生成能はDiclofenac > Tolmetin > Zomepirac > Ibufenacの順で高く,IbuprofenとNaproxenではほとんど生成しなかった.これらのことから,AG由来の毒性発現にはイミン型付加体形成の方がより深く関与している可能性が示唆された.なお,別途実施した他種ダンシル蛍光化トラップ剤(dGSHおよびdECK[Glu-Cys-Lys])の実験では,いずれも上記AG由来のイミン型付加体を明確には検出できなかった.以上より,本dKF法は,AG付加体の種類と量を簡便に評価することが可能であり,AGのタンパク反応性に由来する毒性発現のメカニズム解析やその評価において有用な手法になるものと考えられた.
  • 吉岡 忠夫, 馬場 暁子
    セッションID: P-143
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     グルクロン酸抱合はカルボン酸系医薬品RCO2Hの主要代謝経路であり、生成するアシルグルクロニド(RGA)は一般に水溶性が高く、低分子量医薬品由来のRGAは主に尿中に排泄される。生理的pH及び温度条件下では、RGAは加水分解産物よりも分子内アシル転位産物を優位に与える。RGA及び分子内アシル転位産物はヒト血清アルブミン等の生体内タンパク質と共有結合物を形成することから、RGAはカルボン酸系医薬品の有害作用に関与する活性代謝物と考えられている。これまで演者らは生理的条件におけるRGAの消失速度定数k(=加水分解速度定数kh+分子内アシル転位速度定数km)について構造活性相関モデルを提唱してきた。今回、RGAの体内動態として血流を介した分布及び腎排泄過程を考慮して、血液中の主要タンパク質であるヒト血清アルブミン(HSA)がRGAの消失速度定数にどの様な影響を与えるかという観点から検討を行った。RGAのk値はHSA添加濃度依存性を示し、k値減少型のRGAとk値増大型のRGAに分類され、R基の構造と分類型との関連性が示唆された。k値減少型ではkm値減少と分子内アシル転位産物の加水分解反応速度増大が顕著で、k値増大型ではkh及びkm値増大が特徴であった。HSAによるRGAのk値増大効果は、親薬物RCO2Hの添加によって濃度依存的に抑制された。また、HSAの内因性リガンドとして知られる遊離脂肪酸の添加によっても同様にk値増大効果が抑制された。その抑制効果は中鎖~長鎖脂肪酸で顕著であった。酢酸p-ニトロフェニルエステル添加による阻害実験から、RGAのkh増大にはHSAのエステラーゼ様活性の関与が示唆された。RGAによる有害作用を論じる上で、RGAそのものの求電子反応性の他に、RGAとHSAとの相互作用によるRGAの濃度変動と分子内アシル転位反応の受け易さも重要な因子と考えられる。
  • 王鞍 孝子, 太田 之弘, 長尾 卓也, 楠元 久美子, 小枝 暁子, 上田 忠佳, 八尋 寛司, 田村 朋子, 城村 友子, 池谷 武志, ...
    セッションID: P-144
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    目的:肝細胞あるいは肝ミクロソームを用いた薬物のin vitro代謝試験は探索研究だけでなく、ヒトに初めて投与するときに必要とされる試験とされている(ICH-M3(R2))。特に代謝物の安全性を評価する上で、ヒト代謝物をできるだけ早い段階で検討することが望まれている。これまでのin vitro代謝試験では、臨床で確認されている代謝物の5~6割程度の検出に止まり、その中でも第2相の代謝物生成は低いと報告されている。そこで、我々安全性評価研究会スフェロイド分科会では、より生体に近いと考えられる三次元培養系で、長期培養が可能とされるヒト肝細胞スフェロイドを用いて、各種化合物の代謝物の予測性を検討し、スフェロイド培養系の有用性を評価した。
    方法:培養系はフィーダー細胞(3T3-Swiss albino,JCRB9019)とヒト肝細胞の共培養スフェロイド(Cell-able,トランスパレント)とフィーダー細胞を用いないスフェロイド(マイクロスフェアアレイ,STEMバイオメソッド)を用いた。肝細胞は2種類の付着可能凍結ヒト肝細胞(lot no.228, ベクトン・ディッキンソンならびにlot no. Hu8110, 日本チャールス・リバー)を用いた。スフェロイドを形成後、Day0、2、7、14、21に10-5Mの各種化合物(acetaminophen、midazoram、dicrofenac、lamotorigine、salbutamol、propranolol、imipramine、testosterone)を添加し、2~3日及び7日間培養した。培養上清中に産生された代謝物をLC/MS/MS及びHPLCを用いて測定し、臨床で検出されている代謝物と比較した。
    結果:多施設で実施された第1相及び第2相の代謝物の測定結果を報告するとともに、ヒト代謝物予測におけるスフェロイド評価系の可能性を報告する予定である。
  • 山村 佳也, 伊藤  和実, 吉成  浩一, 山添  康
    セッションID: P-145
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     代謝は、生体内酵素による化合物の構造的変化を介して、生体異物の解毒および活性化に大きく関与する。よって、化学物質に起因した毒性発現機序を考える上で、代謝は重要なプロセスである。多くの芳香環を有する化学物質はCYP分子種によって代謝され、変異原性・癌原性を獲得する。しかし、ヒトと実験動物との間には種差が認められるため、実験動物から得られた知見を、直ちにヒトに外挿することが困難な場合がある。よって、ヒトに対する化学物質の安全性を評価できるin silico技術を用いた予測システムを構築することは、化学物質の毒性について迅速な評価に有用と考えられている。代謝酵素の一つであるCYP1A2は医薬品や内因性物質の代謝に寄与するだけでなく、変異原性・癌原性物質の代謝的活性化にも関与している。我々は、300以上のCYP1A2基質データを利用して構造活性相関解析を行い、2次元の平面テンプレートを導出した。更に、部位特異的な付加情報を取り込むことによって、数値として代謝反応の位置選択性と、その優先順位を予測することを試みた。現在、テンプレートの精密化を検討しており、げっ歯類とヒトの代謝反応における差異の一端を明らかにしたので報告する。
  • 杉原 数美, 佐光 華佳, 荒井 美幸, 佐能 正剛, 北村 繁幸, 藤本 成明, 太田 茂
    セッションID: P-146
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】離乳期のラット・マウスで、肝シトクロムP450(CYP)1A1をはじめとするいくつかのCYP分子種の活性が著しく上昇することより、食餌成分の薬物代謝酵素系への影響を調査している。これまでの研究で、妊娠前より精製成分で構成された精製飼料でマウスを妊娠前から飼育し、出生した仔を同一飼料で飼育した場合、肝薬物代謝酵素活性が通常飼料飼育時より低下することを見出している。そこで、これら飼料による影響をさらに調べるために、DNAマイクロアレイを用いて肝遺伝子発現への差異を検討した。
    【実験方法】マウス(C57BL/6JJcl)を通常飼料(オリエンタル酵母MF)あるいは精製飼料(AIN-93G)で妊娠前より飼育。妊娠、出産後も同一飼料で飼育を続けた。各群、8 週齢 オス マウス肝よりtotal RNAを抽出後、DNAマイクロアレイはAffymetrixのGeneChip Mouse Genome 430 2.0 Arrayを用いた。GeneSpring GXあるいはRMA, WADで解析した。
    【結果】通常飼料は、とうもろこし、米糠、魚粉、アルファルファ、大豆油など天然成分より作成されており、また精製飼料は、カゼイン、スクロース、精製大豆油など精製成分で通常飼料と同じ栄養価になるように構成されている。肝CYP各分子種の発現は精製飼料で飼育したラットで、一般飼料で飼育したコントロールより低値を示した。DNAマイクロアレイ解析では、CYPを始めとする薬物代謝酵素系、脂質代謝系、そしてコレステロール生合成系での差異が認められた。この原因として、精製飼料中の脂質種の単一性、コレステロール含量の低値が考えられた。天然物由来のフラボノイド系低分子化合物の低下だけではなく、脂質量および種類の減少が薬物代謝酵素類誘導の低値に関連していることが示唆された。
  • TANIGUCHI Yuzo, OONISHI Hironobu, YAMADA Saori, YAMANAKA Misako, MORIN ...
    セッションID: P-147
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    To characterize the morphology of the endoneurial microvasculature of degenerating nerves under hyperglycemia, the morphology of endoneurial microvessels in transected sciatic nerves was examined in normal and streptozotocin-induced diabetic rats. Three months after transaction, the fascicular area and median vascular luminal area at the proximal level of the distal stump were significantly larger in diabetic than in control animals, whereas the number of vessels per fascicle was the same in the two groups. Arterioles in various stages of development were found in the centrifascicular region in some transected nerves. Several sections revealed that these vessels originated from transperineural arterioles. The frequency and magnitude of vascular wall thickening were both greater in diabetic rats. These results suggest that the endoneurial microvasculature responds abnormally to nerve injury under hyperglycemia. In this study, we examined the effects of experimental diabetics on the structure of microvessels in isolated distal stumps of the transected sciatic nerve. First, endoneurial microvessels were significantly more dilated in diabetic rats, and this was accompanied by exaggerated proliferation of endothelial cells and a greater fascicular area. More surprisingly, ‘arteriologenesis’ which has never been documented in previous reports, was observed in chronically transected nerve, and was found more often in diabetic animals than in control animals. In summary, the vascular and fascicular areas of the chronically transected distal stump of the sciatic nerve tended to be increased in diabetic rats. In addition, ‘arteriologenesis’ appears to occur in injured nerve, and this process may be enhanced in the diabetic condition. These vascular responses might affect nerve regeneration, although further studies using a regenerating model are necessary.
  • 豊田 泰之, 常山 幸一, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-148
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】臨床において重篤な薬物誘導性肝障害の報告は男性に比べ女性で多く、一般に女性は薬物誘導性肝障害のリスクファクターに挙げられているが、その詳細なメカニズムは不明である。本研究では、女性ホルモンであるEstradiol (E2) およびProgesterone (Prog) に着目し、これらの女性ホルモンが薬物誘導性肝障害に及ぼす影響について検討した。 【方法】E2、Progおよびestrogen受容体アンタゴニストであるICI 182,780、progesterone受容体アンタゴニストであるRU486 (RU) を雌性BALB/cマウスに7日間連投後、Halothane (HAL) を投与し、血漿パラメータ値、および肝臓中mRNAの発現変動を解析した。また、Prog前投与時におけるMAPK活性化や、ERK阻害剤であるU0126およびクッパー細胞阻害剤であるGadolinium chloride (GdCl3) 前投与により、Progによる肝障害悪化に対するERK経路およびクッパー細胞の影響について検討した。さらに、薬物投与後におけるRU投与の影響について検討した。 【結果および考察】E2投与によりHAL誘導性肝障害の減弱およびProg投与による悪化が認められ、これらの作用は炎症性サイトカイン産生などの、炎症反応を介することが示された。また、これらの作用はアンタゴニスト投与により認められなくなった。Progによる肝障害悪化機序を解明するために、MAPK変動を解析した結果、Prog前投与によりERK経路の活性化が認められ、U0126投与により肝障害悪化作用は認められなくなった。同様に、クッパー細胞阻害時にも、Progによる肝障害悪化作用は認められなくなった。さらに、HAL投与後のRU投与による肝障害減弱が認められ、肝障害惹起後におけるRUの肝障害減弱作用が示唆された。以上より、女性ホルモンは薬物誘導性肝障害に対して炎症反応を調節することにより肝障害の程度に影響を及ぼすこと、Progによる肝障害悪化作用は主にERK経路およびクッパー細胞を介して生じることが示された。
  • 小林 雅典, 樋口 悟法, 深見 達基, 中島 美紀, 横井 毅
    セッションID: P-149
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】甲状腺治療薬メチマゾール (MTZ) は、稀に重篤な肝障害を惹起することが知られている。MTZ誘導性肝障害への免疫学的因子の関与を示唆する報告もあるが、原因は明らかとされていない。薬物誘導性肝障害は,発症メカニズムが不明瞭なため、その予測と回避が困難であり、特に免疫学的因子の関与を明らかにすることが望まれている。我々は、これまでにハロタン誘導性肝障害のモデルマウスを用いた検討から、炎症性サイトカインの1つであるinterleukin-17 (IL-17)がこれらの肝障害に関与することを報告した。本研究では、MTZ誘導性肝障害における免疫学的因子の関与を明らかにすることを目的とした。 【方法】雌性BALB/cマウス(6週齢)にMTZ (450 mg/kg) を経口投与し、6時間後の血液生化学的パラメータ、病理組織学的検査,血漿中IL-4濃度および肝臓中におけるmRNA発現レベルを測定した。また、グルタチオン合成酵素阻害剤L- buthionine sulfoximine (BSO) および抗IL-4抗体併用投与の検討を実施した。 【結果および考察】MTZ 投与6時間後において血漿中AST、ALTおよびIL-4濃度が上昇した。また,IL-4を産生するヘルパーT細胞 (Th2) のマスター遺伝子であるGATA-3の肝臓中mRNA発現レベルが上昇した。MTZおよびBSOの併用投与により肝障害が著しく増悪し、血漿中IL-4濃度および肝臓中GATA-3およびC-Cケモカインの1つであるEotaxinのmRNA発現レベルが上昇した。抗マウスIL-4抗体投与による中和実験の結果、血漿中AST、ALTおよびIL-4濃度が低下し、MTZ投与による肝障害が軽減した。以上の結果から、MTZ誘導性肝障害にIL-4が関与することが示された。これらの知見は、薬物誘導性肝障害のメカニズムを考察する上で有用であると考えられる。
  • 安西 尚彦, JUTABHA Promsuk, 三浦 大作, 上野 誠二, 木村 徹, 櫻井 裕之, 遠藤 仁
    セッションID: P-150
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    スルホニル尿素系薬のglibenclamideは、膵β細胞のATP感受性K+チャネルを抑制し、インスリン分泌を促すことから糖尿病治療薬として用いられている。同薬物は主に肝臓から排泄されるがその責任分子はこれまで明らかにされていない。Glibenclamideは稀ではあるが、胆汁うっ帯、肝炎、肝不全などの肝毒性が存在することが報告されており、その理解のためにも肝臓での排出経路の解明は重要である。同薬物は生理的pHにおいてはアニオンとして存在するため、アニオン性薬物の輸送を担う有機酸トランスポーターが肝臓における取込み口となる可能性がある。そこで本研究では肝細胞に発現するヒト有機アニオントランスポーターであるOAT2そしてOAT7、さらにOATP2に絞り、その遺伝子導入細胞を用いて、それらの有機アニオン輸送とglibenclamideとの相互作用を調べた。 アフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いた実験により、OAT2、OAT7、OATP2の3つトランスポーターがいずれもRI標識glibenclamideを輸送することを見いだした。さらにOAT2およびOATP2では、飽和を示すMichaelis-Menten式にのる濃度依存性の輸送特性が認められ、それぞれKmは53.9、20.2 uMであった。非標識glibenclamideによるOAT2、OAT7、OATPの基質輸送阻害実験により、IC50値はそれぞれ、17.8、9119、7.12 uMであることが明らかになった。これらの結果から特にOAT2とOATP2は肝細胞におけるglibenclamideの経細胞性の取込み口となり、これらがglibenclamideによる肝細胞障害発現にも関与する可能性がある。 現在ヒト肝細胞由来のHuh7およびHepG2細胞にglibenclamideを暴露することで、どのような変化が生じるかについての検討を進めている。
  • 今井 順一, 加藤 史子, 河村 未佳, 渡辺 慎哉
    セッションID: P-151
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】従来の反復投与毒性試験は血液学的検査や病理組織学的検査を主体としているため、生物学的情報の種類が限られる。さらに、病理組織学的検査は判断した者の主観に左右される要素が大きく、同じ病態でも記述される表現が異なる場合があり、異なる化学物質間または異なる臓器間において同一の客観的な指標で比較できなかった。そこで、我々は、効率的かつ高精度な有害性評価システムを構築するための新たな指標を探索する目的で、28日間反復投与試験結果と相関して発現変動する遺伝子群の特定を試みた。
    【方法】国立医薬品食品衛生研究所の「既存化学物質毒性データベース」にある化学物質から40種類を選択し、該データベースのプロトコルに準拠して28日間反復投与試験を行い、DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現プロファイルを取得して比較した。
    【結果】各種化学物質を曝露したラットから最大26臓器を採材し、そこから1,028サンプルの遺伝子発現プロファイルを取得した。次に、化学物質の曝露により発現変動した遺伝子群(生体応答遺伝子群)を抽出した。生体応答遺伝子群の発現変動を指標とすることで、(1)特定臓器における化学物質間の比較により化学物質が生体に与える影響の類似性の評価、(2)特定の化学物質における臓器間の比較により化学物質の標的臓器の評価、を可能とした。特に、肝臓や腎臓において、クラスタ分析で対照群と区別できた化学物質は該データベースで毒性があると報告された化学物質とほぼ一致した。さらに、特定の化学物質投与期間のタイムコース試験を行ったところ、肝臓で投与期間と相関して発現変動する遺伝子群(372遺伝子)を特定した。これらの結果は、従来の毒性学的手法にゲノム学的手法を加えることで、化学物質の有害性の指標となりうる遺伝子群の特定等により、従来の毒性試験では取得困難であった情報を付加し、化学物質の有害影響評価の高度化・効率化に貢献できる可能性を示唆する。
  • 深澤 ちさと, 晴山 聖子, 廣瀬 健一郎, 高橋 勉, 永沼 章
    セッションID: P-152
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     我々は真核生物モデルとして出芽酵母を用いて、アントラサイクリン系制がん剤アドリアマイシンの毒性発現機構の解明を目指している。これまでに小胞体からゴルジ体への小胞輸送経路(COPII小胞輸送経路)の抑制がアドリアマイシン感受性を増強することを見出しているが、その詳細な作用機構については分かっていない。そこで、本研究では、アドリアマイシン毒性軽減機構におけるCOPII小胞輸送経路の役割について検討した。  小胞体で合成された蛋白質(カーゴ蛋白質)は、COPII小胞を介してゴルジ体に運ばれ、そこで様々な修飾を受けた後、目的のオルガネラに選別輸送される。カーゴ蛋白質の中には、特定のカーゴレセプターによって認識され、COPII小胞によって運ばれる蛋白質が存在する。そこで、これまでに知られている9種のカーゴレセプターとアドリアマイシン感受性との関係を検討したところ、Erv14を欠損させた酵母のみがアドリアマイシン高感受性を示した。また、Erv14と小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送経路関連因子 (Sec22) を同時に欠損させても、相加的または相乗的なアドリアマイシン感受性の亢進が認められないことから、Erv14と小胞体-ゴルジ体間の小胞輸送経路が同一のアドリアマイシン毒性軽減機構に関与していることが示唆された。さらに、ゴルジ体から他のオルガネラ(エンドソーム、細胞膜および液胞)への小胞輸送経路の低下はアドリアマイシン感受性にほとんど影響を与えないことも判明した。したがって、Erv14依存的に小胞体からゴルジ体に輸送され、ゴルジ体で機能する蛋白質もしくはゴルジ体から小胞輸送経路を介さずに他のオルガネラに運ばれる蛋白質(X蛋白質)がアドリアマシン毒性軽減に関わっている可能性が考えられる。今後、X蛋白質を明らかにすることによって、COPII小胞輸送経路によるアドリアマイシン毒性軽減機構解明の糸口が得られるものと期待される。
  • 荻村 栄一朗, 関根 秀一, 堀江 利治
    セッションID: P-153
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    <目的>胆汁酸排泄トランスポーターBSEP(Bile salt export pump)は肝臓胆管側に発現しており、胆汁酸排泄による、胆汁流形成、コレステロール代謝、脂質等の吸収などを担う。また、重篤な肝障害を引き起こし製造中止となった抗糖尿病治療薬トログリタゾンはその硫酸抱合体とともに、BSEP阻害をおこすことが報告されており、BSEP機能変動による胆汁酸の肝蓄積が肝障害の要因の一つであると考えられている。Sandwich cultured hepatocytes(SCH)は既存の初代培養肝細胞に比べ、高い代謝活性、トランスポーター機能を維持していることから、肝臓でのIn vitro薬物動態評価法として注目されている。そこで本研究では薬剤性肝障害の新たな評価系としてSCHを用い、BSEP機能低下と胆汁酸毒性を定量的に評価する事ができる系の構築を行った。 <方法>Sprague-Dawley ratからSCHを調製した。血漿中に含まれる各胆汁酸を培地に加え、肝障害性薬剤として知られる化合物(シクロスポリン、ケトコナゾール等合計約30化合物)を24時間SCHに暴露、LDHアッセイにて肝細胞毒性を評価した。また、各薬剤によるBsep機能低下を[³H]-Taurocholate(1µM)を用いBEI(Biliary Excretion Index)にて評価した。 <結果・考察>本検討に用いた胆汁酸および、被検化合物のみをそれぞれ、SCHへ暴露した場合では毒性が見られない一方で、両者を同時に暴露することで、用いた被検化合物の約40%が有意に毒性を発現した。また、毒性が見られた被検化合物はBEIを有意に低下させ、毒性とBEIの間には良好な相関関係が見られた。これらの結果から、SCHを用いたBsep機能低下による胆汁酸依存性薬剤性肝障害評価系の構築に成功し、本評価系をヒト肝細胞に用いることで、臨床で起こりうる肝障害を前臨床において予側することが可能となる事が期待される。
  • 湯田 浩太郎
    セッションID: P-154
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    最近になり、化合物の安全性の重要性が創薬、化合物デザイン、環境等の様々な分野で高まりつつある。また、研究対象となる化合物数や種類も急速に増大し、従来から実施されてきたWET実験による安全性評価とは別にインシリコ(コンピュータ)による安全性評価がWET実験効率向上の支援技術としてその重要性を増している。  インシリコによる安全性予測は薬理活性や物性等と異なり、高い予測値の達成や信頼性の高い要因解析を行うことが難しい。この原因として、毒性発現のメカニズムが極めて複雑であり、さらに予測対象とする化合物の種類や構造が極めて多岐にわたることである。  前記理由から、薬理活性や物性予測で適用されているQSARやドッキング等を安全性評価に利用することは出来ない。この安全性評価分野でも実施可能な技術として「化学多変量解析/パターン認識(ケモメトリックス)」がある。適用当初(約20年ほど前)はその予測値と実測値との差が大きく、安定性を欠き、研究現場でのニーズを満たすレベルには程遠かった。しかし、現在はコンピュータ計算パワーは急激に向上し、化合物を扱うケモメトリックス研究も大きく進歩し、さらには予測を行うデータ解析手法も昔とは比較にならないほど強力な手法が開発され、インシリコ安全性予測を実施する環境も昔とは大きく変化した。また、現在のインシリコ安全性予測に求められるのは、WET実験結果との比較ではなく、WET実験を最適化するための支援技術としての役割へと大きく変化している。  本ポスターでは、湯田が安全性予測手法として開発した極めて強力な(サンプル数やサンプル分布にかかわらず常に100%分類達成)データ解析手法(KY法)について、その概要を発表し、さらにKY法をAmes試験データについて適用した事例も発表する。
  • 武居 綾子, ブービス アラン, エンブリー ミッシェル, パスター ティム
    セッションID: P-155
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    The Health and Environmental Sciences Institute (HESI) is the global branch of the International Life Sciences Institute (ILSI) whose mission is to stimulate and support scientific research and educational programs that contribute to the identification and resolution of health and environmental issues of concern to the public, scientific community, government agencies, and industry.
    The HESI Risk Assessment in the 21st Century (RISK21) project was launched in March 2010. Over 120 scientists are involved in four multi-stakeholder teams, aimed at developing methods to create a more accurate and efficient science-based approach to human health risk assessments, developing a mechanism for transitioning to novel approaches, as available and when appropriate. Although toxicology and exposure science have rapidly evolved new technologies and approaches, there is a marked lack of consensus on how best to use and incorporate the information from these new methods into quantitative human health risk assessments. The RISK21 vision is to develop a coordinated approach to 21st century risk assessments. RISK21 is comprised of four overlapping and complementary projects: Exposure Science, Dose-Response, Integrated Evaluation Strategies, and Cumulative Risk. Each team is a balance of individuals from North America and Europe from the academic, government, and private sectors. As the project develops, additional scientists from Asia, Latin America, and other geographic regions will likely join this endeavour. This poster will present an overview of the project and progress to-date.
  • 蓑毛 博文, 谷口 康徳, 和田 香代子, 堤 志穂, 杉本 崇至, 田淵 秀剛, 林 純也, 神田 由美, 門倉 豪臣, 中間 和浩, 洲 ...
    セッションID: P-156
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    凝固・線溶系マーカーであるトロンビン・アンチトロンビンIII複合体(TAT),プラスミノーゲン活性化抑制因子(PAI-1),α2プラスミンインヒビター・プラスミン複合体(PIC)を用いてカニクイザルにおける凝固・線溶系の変化を検出可能か確認するため,凝固活性化・線溶抑制作用が知られているLPS及び凝固・線溶活性化作用が知られているトロンビンをカニクイザルに投与し凝固・線溶系マーカーの変化を調べた. カニクイザル雄3例に,生理食塩液,LPS(10 µg/kg)及びトロンビン(76 U/kg)を単回静脈内投与し,各投与前,投与後2(トロンビン投与では投与後30分),4,6,8,24時間に採血し,血液学的検査,PT,APTT,フィブリノーゲン,Dダイマー,TAT,PAI-1,PICを測定した. LPS投与では,TAT,PAI-1濃度は投与後上昇し,TAT濃度は投与後2時間に,PAI-1濃度は投与後4時間にピークに達し,投与後24時間には投与前と同程度に回復した.PIC濃度の上昇もみられたが,その程度は軽微であった. トロンビン投与では,TAT,PIC濃度は投与後上昇し,TAT,PIC濃度は投与後30分にピークに達し,投与後8時間には投与前と同程度に回復した.PAI-1濃度の上昇もみられたが,その程度は軽微であった. TAT,PAI-1,PICの変化は,カニクイザルへのLPS及びトロンビン投与による凝固・線溶系の想定される変化を反映しており,ヒトやラットで報告されている変化と同様であった.これらの結果から,TAT,PAI-1,PICを指標としてカニクイザルにおける凝固・線溶系の変化を検出可能であると考えられた.
  • 平澤 由貴, 倉田 昌明, 中島 実千代, 坂本 憲吾, 小田部 耕二, 佐藤 伸一, 野村 護
    セッションID: P-157
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】一般毒性試験における血液凝固系検査では,血小板数,PT,APTT及びフィブリノーゲン(Fbg)がルーチンに測定されるが,これらの項目だけでは血小板機能や線溶系の異常は検出できない.薬物の血液凝固系への統合的な評価には,これらの測定を補足する必要がある.今回,ヒトに類似する実験動物であるカニクイザルについて,血小板機能検査である血小板凝集能,また血管異常も含め凝固異常を総合的に評価できる出血時間,FDPについて測定したので報告する.また,ルーチン項目に関し,産地間差(フィリピン,中国,ベトナム,インドネシア)も含め基礎的に検討した. 【方法】(1)出血時間:市販の注射針を一定の深さに穿刺できるように加工して,穿刺器具とした.無麻酔下で尾背部を穿刺部位とした.湧出血を一定間隔で濾紙に吸い取り,吸着血痕が1mm以下となった時間をエンドポイントの出血時間とした.(2)血小板凝集能:無麻酔下に大腿静脈からクエン酸加採血し,遠心分離(200×g)して多血小板血漿(PRP)を分取し,さらに遠心分離(2000×g)し乏血小板血漿(PPP)を分取した.PRPの血小板数が約35×104/μLになるようにPPPで希釈調製した.凝集誘発剤はADP 5,20 μmol/L及びコラーゲン3 μg/mL(いずれも最終濃度)を用い,光透過法により凝集率を測定した.(3)その他のルーチン項目(血小板数,PT,APTT,Fbg)は自動分析装置,FDPは用手法にて測定した. 【結果】(1)出血時間:出血時間は1~3.5分であった.2回の繰返し穿刺でも出血時間に差はなかった.今回の方法では,穿刺傷は小さく出血量も限られており,生体に対する侵襲性は小さいと考えられた.(2)血小板凝集能:最大凝集率はADP 5 μmol/Lで約63%,ADP 20 μmol/Lで約75%,コラーゲン3 μg/mLで約75%あった.また,ADP 20 μmol/Lで誘発した凝集の日内と日差変動に大きな変動はなかった.(3)血小板数,PT及びAPTTに産地による大きな違いはみられなかった. 【結論】ルーチンの血液凝固系検査項目に加えて,血小板凝集能(ADP,コラーゲン凝集)及び出血時間について基礎的なデータを得ることができた.これらの検査は侵襲性が小さく,さらに線溶系検査を組み合わせることで,一般毒性試験でより詳細かつ統合的な血液凝固異常の評価が可能である.
  • 藤田 正晴, 秋元 美由紀, 梅屋 直久, 湯浅 敦子, 日置 孝徳, 柿沼 千早
    セッションID: P-158
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【要旨】28日間反復投与毒性試験では、投与検体の分散法として水系および油系分散剤が使用できるが、水系分散剤を優先して選択することになっており、均一分散できれば化合物の物性に依らず水系分散剤の選択が可能である。しかし、化合物の分散剤に対する溶解性や生体内での吸収性を考慮して分散剤を選択しなければ、体内動態に差が生じ毒性変化にも大きな影響を与える可能性が考えられる。そこで、本研究では化合物を2種類の分散剤で投与し、血漿中濃度を測定することにより化合物の体内動態解析を行なった。その結果、分散剤の違いによって生体内への吸収性に大きな差が認められることが明らかとなった。 【試験法】既存化学物質点検報告から物性が異なる4化合物(1-メトキシナフタレン;以後MN,トリフェニルクロロメタン;以後TP,4-エチルビフェニル;以後EB,1,3-ジフェニルグアニジン;以後DG)を選定した。これらを0.5%メチルセルロース水溶液(以後MC)およびオリーブ油(以後OO)に均一分散した後、SDラットに単回および28日間反復での経口投与を行なった。単回投与では投与後24時間までの間で経時採血し、反復投与では投与後7日毎に経時採血した。得られた血液は、前処理後HPLCまたはLC/MS/MS測定して化学物質の血漿中濃度を求めた。 【結果】単回投与において、MN,TPおよびEBではOO分散の方がMC分散に比べてCmaxおよびAUC共に高かった。また、3化合物とも用量に依存したAUCの増加が認められた。一方、DGではMC分散の方がOO分散に比べてCmaxおよびAUC共に高く、用量に依存したAUCの増加も認められた。反復投与においては、MNではいずれの時点においてもOO分散の方がMC分散に比べてCmaxおよびAUC共に高かった。 【考察】疎水性の高いMN,TPおよびEBではOO分散の方が溶解性が良く、親水性の高いDGではMCへの溶解性が高いため、生体内への吸収性が良く、CmaxやAUCが高くなったものと考えられる。以上の結果から、化合物本来の毒性評価を行なうには、化合物の物性に応じた分散剤を選択して試験することが重要であることがわかった。
  • 長井 大地, 大辻 摩希子, 柿木 基治, 片木 淳, 松本 範人, 金田 信也, 吉岡 祐一郎, 井上 由紀子, 岩井 久和, 長尾 卓也 ...
    セッションID: P-159
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】培養肝細胞を用いた肝毒性評価は有用な試験系であるが,肝臓の有する代謝機能を維持した状態での長期間培養は困難であった.このため従来の単層培養法では,毒性検出のために高濃度の化合物曝露が必要,あるいは,代謝活性化による毒性検出が不十分,などの必ずしも生体の反応を反映できていないという問題点があった.そこで我々安全性評価研究会スフェロイド分科会では,より生体に近い3次元構造によって代謝機能を維持した状態で長期培養が可能とされるスフェロイド培養を用いて,ヒト肝細胞に対する長期曝露での化合物の毒性評価を複数施設で実施し,肝毒性評価におけるスフェロイド培養系の有用性を検討した.
    【方法】培養系はフィーダー細胞(3T3-Swiss albino,JCRB9019)とヒト肝細胞の共培養系によるスフェロイド(Cell-able,トランスパレント)とフィーダー細胞を用いないスフェロイド(マイクロスフェアアレイ,STEMバイオメソッド)を用いた.肝細胞は付着可能凍結ヒト肝細胞(Lot.228,ベクトン・ディッキンソンならびにLot.Hu8110,日本チャールス・リバー)を用いた.維持培養は,共培養系では1%FBS含有RM-101培地(トランスパレント),非共培養系では10%FBS添加ウィリアムスE培地で行った.それぞれスフェロイドを形成させた後,化合物曝露を週3回隔日に3週間行った.化合物には主に代謝活性化による肝毒性発現が報告されているTroglitazone,Flutamide,Diclofenac,Benzbromarone,Chlorpromazine,Tacrineを用い,曝露用量は臨床用量での最高血漿中濃度を参考に,その100倍程度を最高用量に5用量を設定した.毒性は,曝露の各時点における形態観察,写真撮影,培養上清中のAST,ALT,LDH,γ-GTP,Albuminの測定により評価した.
    【結果】現在,各施設にて実験を実施しており,その結果を報告するとともにスフェロイド評価系の有用性を報告する予定である.
  • 岩井 久和, 井上 由紀子, 柿木 基治, 大辻 摩希子, 田中  翔, 長井 大地, 上田  忠佳, 八尋 寛司, 田村 朋子, 池谷 武 ...
    セッションID: P-160
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】肝臓は化合物などの生体異物に対し高い曝露を受けることから毒性が発現し易い臓器である。そのため医薬品等の開発では,代謝能を維持した状態の肝細胞を用いた種々の毒性評価が各社にて試みられている。我々安全性評価研究会スフェロイド分科会では,ヒト肝細胞による長期培養が可能とされ,より生態に近い3次元in vitro 評価系であるスフェロイドを用いて,化合物の長期曝露による毒性評価を複数施設にて実施し,その有用性を検討した。
    【方法】培養系はフィーダー細胞(3T3-swiss albino,JCRB9019)とヒト肝細胞の共培養スフェロイド(Cell-able,トランスパレント)とフィーダー細胞を用いないスフェロイド(マイクロスフェアアレイ,STEMバイオメソッド)を用いた。肝細胞は付着可能凍結ヒト肝細胞((lot no.228, ベクトン・ディッキンソンならびにlot no.Hu8110, 日本チャールス・リバー)を用いた。Acetaminophen,Ticlopidine,Amiodarone,Imipramine,Isoniazide,Cyclosporin Aについて臨床用量でのCmaxを参考に,その100倍程度を最高濃度とした5用量による曝露を行った。化合物は共培養系では1%FBSを含有したRM-101培地(トランスパレント)を用い,非共培養系では10%FBS添加ウィリアムスE培地に溶解させ,予め各種スフェロイドを形成させたプレートに週3回隔日に3週間化合物を含む培地を交換することで曝露を行った。毒性は毎回の培地交換の際の形態観察,写真撮影ならびに培地上清中のAST,ALT,LDH,γ-GTP,Albumin(ELISA)を測定して評価した。
    【結果】現在各施設にて実験を実施しており,その結果を報告するとともにスフェロイド評価系の有用性を報告する予定である。
  • 片木 淳, 松本 範人, 金田 信也, 吉岡 祐一郎, 長尾 卓也, 楠元 久美子, 柿木 基治, 大辻 摩希子, 城村 友子, 小関 恵美 ...
    セッションID: P-161
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     非ステロイド性抗炎症剤などのカルボン酸を有する薬物が肝臓でグルクロン酸抱合を受けて生成する反応性代謝物のアシルグルクロニドは,肝臓組織蛋白等に共有結合することにより肝障害を誘発することが推定されている.また,抗ウイルス剤として用いられるヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬は,ヒトミトコンドリアのDNA合成酵素(DNA polymerase γ)も阻害するため,長期に投与するとミトコンドリア障害が原因で肝障害を引き起こすことが知られている.これらの薬物群の中には,一旦上市されて多くの患者に使用されることにより,重篤な肝障害の発現が明らかとなり,市場から撤退した薬剤がある(ibufenac, fenclofenac, fialuridine, etc.).これらの薬剤性肝障害は動物実験や培養肝細胞等を用いたin vitro試験では,その毒作用は殆ど検出されないのが実情である.  近年,細胞懸濁液を播種するだけで3次元構造を容易に形成することができる培養ツール(トランスパレント社のCell-ableやSTEMバイオメソッド社のマイクロスフェアアレイ)が開発されてきた.これらの新しい細胞培養基材を用いたヒト肝細胞のスフェロイド培養により,3次元構造によって代謝機能を維持した状態で長期間の肝細胞の培養維持が可能となってきた.本研究は,ヒト肝細胞スフェロイド培養による薬物代謝能を維持した状態での長期培養により,反応性代謝物アシルグルクロニドやDNA polymerase γ阻害作用に基づく肝障害を検出することを試みた.現在,いくつかの面白い結果が得られつつあり,複数施設での試験結果と併せてスフェロイド評価系の有用性を報告したい.
  • 安東 賢太郎, 高木 観, 局 博一
    セッションID: P-162
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】マウスおける胃排出抑制がヒトの嘔吐と関連があり、特にcisplatinやdoxorubicinによる胃排出抑制作用はヒトの嘔吐と同様にセロトニン3(5HT3)受容体を介していることを我々は報告した(J. Toxicol. Sci. 36, 23-)。そこで、嘔吐しない動物であるラットにおいてマウスと同様の機序が認められるかを検討した。【方法】SD系雄性ラット(7週齢)を一晩、絶食して使用した。直径0.8mmのレジンビーズ 40個を経口投与し、その1時間後に胃から排出したビーズ数を元に胃排出率を計算した。cisplatinはビーズ投与1時間前、doxorubicin、ondansetronはビーズ投与直後に投与した。また、陽性対照として硫酸銅をビーズ投与と同時に投与した。【結果】Cisplatin(0.1-3mg/kg iv)、doxorubicin(0.3-10mg/kg iv)は用量依存的に胃排出を抑制し、硫酸銅(1-30mg/kg po)は10mg/kg以上で胃排出を抑制した。5HT3受容体拮抗薬 ondansetron(3-100μg/kg iv)は用量依存的に胃排出を促進する傾向を示したが、有意な差ではなかった。Cisplatin 1mg/kg、doxorubicin 3mg/kg、硫酸銅 10mg/kgとondansetronを併用したところ、それぞれ30、10、100μg/kg以上で胃排出抑制作用の有意な改善作用が認められた。【考察】マウス同様、ラットにおいてもcisaplatin、doxorubicinによる胃排出抑制作用は5HT3受容体を介していることが示唆され、マウスでははっきりしなかった硫酸銅による胃排出抑制作用も同様の機序を含むことが分かった。以上より、ラットの胃排出遅延作用を指標にガン化学療法剤による催吐作用の予測が可能と考えられた。
  • 芝井 亜弥, 柿沼 千早, 日置 孝徳, 笠原 利彦
    セッションID: P-163
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    in vitro小核試験は遺伝毒性の検出に重要な試験法であり、染色体異常試験の代替法として使用されている。小核試験は、染色体異常試験よりも簡単に遺伝毒性を検出することができることから、ハイスループットスクリーニングアッセイとして利用されてきている。そこで、我々は共焦点イメージングプレートリーダーIN Cell Analyzer1000を使って小核試験のバリデーション試験を実施した。本研究では、構造異常および数的異常能を有している30化合物の評価を、96マイクロウェルプレートに播種したチャイニーズハムスター肺由来細胞(CHL細胞)を用いて実施した。マイクロプレートは、ヘキスト33342およびCellMask Redの2種類の蛍光色素で染色し、蛍光イメージから自動的に小核を持った細胞を計数した。IN Cell Analyzer1000を用いた30化合物の小核試験の結果は、通常の小核試験や染色体異常試験の文献から引用したデータとほとんど一致していた。従って、このハイスループット小核試験は、化合物開発の初期ステージにおいて高い効率性および精度をもったスクリーニングアッセイとして有用である。
  • 河井 良太, 村松 啓子, 白井 真人, 赤井 誠, 古川 忠司, 三分一所 厚司
    セッションID: P-164
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    [目的]吸収波長(290-700 nm)を有し、皮膚や眼に分布する可能性を有する薬剤については、光毒性評価が推奨される。しかしながら、in vivoの非臨床光毒性評価については、まだ標準化には至っておらず、ラットを用いた検討についても報告が少ない。そこで、Ciprofloxacin hydrochloride (CPFX)、Sparfloxacin (SPFX)および8-Methoxypsoralen (8-MOP)をアルビノおよび有色ラットに単回投与(静脈内または経口)し、長波長紫外線(UVA)照射後の光毒性反応について評価した。[方法]アルビノおよび有色ラットに、雄性Crl:CD(SD)およびIar:Long-Evansラットを用いた。静脈内投与では、CPFXとSPFXの0、50および100 mg/kg、さらに8-MOPの10 mg/kg群を設けた。経口投与では、CPFXとSPFXの0、100および1000 mg/kg、さらに8-MOPの10および50 mg/kg群を設けた。静脈内投与では投与直後に、経口投与ではCPFXは投与1時間後、SPFXは投与3時間後、8-MOPは投与10分後に、約10 J/cm2のUVAを照射した。UVA照射前およびUVA照射終了後0.5,24,48および72時間に、左右耳介をDarizeの判定基準に従って肉眼的に観察し、さらに耳介厚の測定を実施した。[結果・考察]臨床では光毒性が問題となっていないCPFXでは、各系統の各投与経路ともに有意な変化は認められなかった。臨床での光毒性の報告があるSPFXでは、各系統の各投与経路ともに投与用量依存的な皮膚反応が認められた。さらに8-MOPも陽性反応が認められた。両投与経路でCrl:CD(SD)ラットの方がIar:Long-Evansラットよりも強い皮膚反応を示した。以上、臨床への外挿性の高いラットを用いた光毒性評価が可能であると考える。
  • 岡村 俊也, 鎌田 貴志, 畠山 和久, 楠岡 修, 小川 竜也, 梅下 和彦, 望月 雅裕, 榎並 倫宣, 岡崎 修三
    セッションID: P-165
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【緒言】Wistar Hannover (RccHanTM:WIST)ラットは、従来のWistar Hannover系ラットの長所を維持しながら、その短所を排除した系統として、現在、毒性試験やがん原性試験への利用に向けて背景データの収集が進められている。今回、当社における104週間飼育時の背景データを報告する。【方法】動物は4週齢で入手、検疫・馴化後に雌雄各100匹を固形飼料群又は粉末飼料群の2群に配し、6週齢より104週間飼育した。飼料はCR-LPF(放射線滅菌、オリエンタル酵母)を用いた。動物は温度23±3℃、相対湿度50±20%、換気回数10~15回/1時間、照明1日12時間に制御された飼育室でステンレス製網ケージに個別収容し、飼料及び水道水を自由摂取させた。観察期間中、一般状態の観察(毎日)、体重及び摂餌量測定(1回/1~2週)並びに眼科学検査(4、13及び26週、並びに12、18及び24箇月)を実施した。104週間の実験終了時に、血液・血液化学検査用に血液を採取した後剖検し、病理組織学検査に供した。本データとの比較にはSD〔Crl:CD(SD)〕ラット(以下SD)及びF344 (F344/DuCrlCrlj)ラット(以下F344)の背景データを用いた。【結果】観察期間終了時の生存率は、雄では固形飼料群で70%、粉末飼料群で66%であり、いずれもSDとF344の中間の値を示した。雌では固形飼料群で74%、粉末飼料群で80%であり、SDより高値を示し、F344と同程度の高い生存率を示した。体重及び摂餌量は、雌雄ともにSDより低値、F344より高値で推移した。眼科学検査では、雌雄ともに各検査ステージで限局性の角膜混濁がSD及びF344と比べて高頻度にみられた。剖検では、雌雄で下垂体結節、雄で腎臓の表面顆粒状、大型化及び退色、雌で胸腺の結節、皮下結節及び子宮のポリープが比較的高頻度にみられた。本会では、血液・血液化学検査及び病理組織学検査の結果を加えて報告する。
  • 田中 健太郎, 内田 陽, 山田 小百合, 日和田 美恵, 田隝 修
    セッションID: P-166
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、冷凍ギョウザ事件、飲料への農薬混入事件など、食品への有害物質混入事件は社会問題へと広がっている。食品への有害物質の混入、嘔吐毒等の汚染が疑われた際、それら有害物質混入の有無およびその生体への影響について迅速に把握することは重要となる。吐き気や嘔吐といった生体反応は、有害物質に対する初期の主要な生体防御反応と考えられていることから、これら嘔吐反応を指標とし、食品への有害物質混入、嘔吐毒汚染の可能性を迅速に検査する手法としてスンクス嘔吐行動解析およびラット電気生理学的手法の応用について検討した。
    【方法】まず、嘔吐実験動物として知られるスンクス(Jic:SUN-Her)に硫酸銅、メタミドホス等を単回強制経口投与し、その後3時間にわたり個別ケージにて行動観察を行い、嘔吐行動について調べた。また、スンクス嘔吐行動観察の効率化のため、スンクス嘔吐時の鳴声の音声解析を行い、嘔吐行動検出を自動化できないか検討した。さらに、電気生理学的手法を用いて、硫酸銅やメタミドホスを、麻酔下で強制経口投与したラット腹部迷走神経活性の変化を解析した。
    【結果及び考察】スンクスは、硫酸銅ほか、メタミドホス等の食品に関係する有害物質に対して、嘔吐反応を示すことを確認した。また、スンクスの嘔吐時の鳴声は、音声周波数帯20kHz前後の連続的な細かな音声シグナルを検出することで、自動で検出できることを見出し、音声解析と動画解析を組み合わせたスンクス嘔吐行動自動検出システムを構築した。さらに、メタミドホスはスンクスで嘔吐が見られた投与用量で、ラット腹部迷走神経活性を増大させたことから、メタミドホスの嘔吐発現には腹部迷走神経を介した嘔吐誘発機序が関与している可能性が示唆された。
  • 福田 哲也, 小島 智代美, 白石 育代, 勝山 宏巳, 関戸 徹, 峯島 浩, 青木 豊彦
    セッションID: P-167
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    本邦における非臨床安全性試験に用いるラットの系統は,SD系ラットが繁用されているが,近年,主に欧州で用いられているWistar Hannover(以下,Wistar Han)ラットの有用性が注目されている。このような背景から,安全性試験で評価する様々なパラメーターについての系統差についての報告が近年多くみられるようになってきた。生後発育に関連した身体発育,行動検査は,生殖発生毒性試験での生後発育試験のみならず,近年,小児の安全性を評価するために多く実施されている。幼若動物毒性試験においても重要なパラメーターとなっているが2系統の差についての報告は少ない。今回我々は,これらパラメーターについてSD及びWistar Hanラットの系統差について調べた。 「方法」SDとしてCrl:CD(SD)及びWistar Han としてCrl:WI(Han)の母動物ラット各6例から自然分娩より得られたF1児雌雄各4匹/腹を検査に供した。一般状態,体重測定の他,身体発達観察として耳介開展,切歯萌出,眼瞼開裂,膣開口,陰茎包皮開裂を,感覚機能・反射検査として正向反射,触覚断崖回避,背地走性,ピボティング,聴覚性驚愕反応,視覚立ち直り反射,スプレイングを実施した。更に,運動協調性,運動量,学習及び記憶試験として,ロータロッド検査,オープンフィールド・テスト,複合T型水迷路順路,逆路を実施した。 [結果] 出生児の体重は雌雄ともに若干SDラットが重く生後7日以降では明確な差となった。身体発達観察では膣開口,陰茎包皮開裂でWistar Hanラットの早期成熟がみとめられた。感覚機能・反射検査及び行動検査では正向反射,ピボティング,スプレイニング,ロータロッド検査,複合T型水迷路に両系統の差が示唆された。特にロータロッド検査においてはWistar HanラットがSDラットに比べ落下までの時間が長く,複合T型水迷路ではWistar Hanラットで到達時間が長く総エラーが多い傾向が認められた
  • 青木 嘉信, 下村 和裕, 松本 清, 鈴木 睦, 浜野 宝子, 竹内 くみこ, 梶原 力, 中村 和市
    セッションID: P-168
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    医薬品は主として成人を対象として開発される場合が多く、小児においては多くの医薬品において適応が取得されていない現状である。このような医薬品を小児に適応するためには、小児における治験や幼若動物を用いた非臨床試験が実施され、小児に対する安全性を十分に確保するべきである。臨床試験に関しては2000年にICH-E11「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」が通知され、小児における治験が促進されている。非臨床試験に関しては,米国FDA(2006年)及びEMA(2008年)においてガイダンスが公表されており、さらにICH M3(R2)「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」に「小児における臨床試験」の項に小児集団における臨床試験での安全性情報を得るための1つの手段として幼若動物を用いた毒性試験があげられている。一方、日本においては幼若動物を用いた毒性試験の実施方法のガイダンスは未整備であったが、2010年10月に厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所、医薬品医療機器総合機構を中心に幼若動物を用いた安全性試験ガイドラインの作成が開始されている。 このような状況を踏まえ、今回我々は、本邦で平成11年9月~22年12月に小児適応を取得している医薬品を対象に、幼若動物を用いた毒性試験の実施状況に関して調査した。今回の調査では、公開されている審査報告書、承認申請資料及び添付文書を基に、幼若動物試験の実施有無、試験種、動物種などまとめたので、その結果を報告する。
  • 鈴木 睦, 下村 和裕, 松本 清, 青木 嘉信, 浜野 宝子, 竹内 くみこ, 梶原 力, 中村 和市
    セッションID: P-169
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    医薬品は主として成人を対象として開発される場合が多く、小児においては多くの医薬品において適応が取得されていない現状である。このような医薬品を小児に適応するためには、小児における治験や幼若動物を用いた非臨床試験が実施され、小児に対する安全性を十分に確保するべきである。臨床試験に関しては2000年にICH-E11「小児集団における医薬品の臨床試験に関するガイダンス」が通知され、小児における治験が促進されている。非臨床試験に関してはICH M3(R2)「医薬品の臨床試験及び製造販売承認申請のための非臨床安全性試験の実施についてのガイダンス」に「小児における臨床試験」の項に小児集団における臨床試験での安全性情報を得るための1つの手段として幼若動物を用いた毒性試験があげられている。 これまでに日本においては幼若動物を用いた毒性試験の実施方法のガイドラインは未整備であったが、2010年10月に厚生労働省、国立医薬品食品衛生研究所及び医薬品医療機器総合機構を中心に幼若動物を用いた安全性試験ガイドラインの作成が開始されている。海外では米国FDA(2006年)及びEMEA(現EMA、2008年)においてガイダンスが既に公表されており、日米欧3極のガイドラインが揃うことになり、今後は各極間におけるガイドラインでハーモナイズされることが期待されるであろう。 本演題では2極間のガイドライン及びICH M3(2)を比較し、今後ハーモナイズされることが期待される事項について議論したい。
  • 伊吹 裕子, 豊岡 達士
    セッションID: P-170
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    放射線等によりDNA二本鎖切断が誘導されると、その部位を中心に近傍のヒストンH2AXがリン酸化される。最近になって、このヒストンH2AXのリン酸化がDNA二本鎖切断だけでなく、他のDNA損傷を起因としても誘導されることが報告され、新しいDNA損傷マーカーとして注目されている。本研究では、化粧品、医薬品、農薬等に含まれている化学物質の光遺伝毒性の検出におけるヒストンH2AXのリン酸化応用の有用性について検討した。
    ヒト培養表皮細胞HaCaTに、強い光毒性を示すことが知られている化学物質 (8-methoxypsoralen, 5-methoxypsoralen, promethazine hydrochloride, chlorpromazine hydrochloride) 、弱い光毒性を示すことが知られている化学物質(bithionol, 6-methylcoumarin, rose bengal sodium salt,neutral red, tetracycline)、及び光毒性を有さない化学物質 (sodium lauryl sulfate,L-histidine) を30分作用し、UVA (5J/cm2) を照射した。一定時間後に、H2AXのリン酸化をウェスタンブロット法及び免疫染色法によって検出した。さらに、それらH2AXのリン酸化の検出感度を、細胞生存率の変化及びパルスフィールドゲル電気泳動法によるDNA二本鎖切断の検出結果と比較した。
    ヒストンH2AXのリン酸化は、光毒性を有することが報告されている化学物質すべてにおいて検出された。その検出感度は、生存率、電気泳動によるDNA二本鎖切断の出現と比較し10~1000倍程度高かった。一方、光毒性を有さないとされる化学物質については高濃度を曝露した場合においてもH2AXのリン酸化を誘導することはなかった。以上の結果より、化学物質の光遺伝毒性検出において、高感度検出が可能な上に、偽陽性を示しにくいヒストン H2AXのリン酸化は、有用な一指標であると考えられた。
  • 浦野 浩司, 町田 一彦, 西中 栄子, 伊東 一昭, 冨澤 政史, 小倉 智幸, 保田 昌彦, 堤 秀樹
    セッションID: P-171
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    rasH2マウスはヒト発がん物質に対して高い感受性を有しており、短期がん原性試験用の動物として最も多く使用されている。本マウスは現在、日米2施設(日本クレア及びTaconic社)で生産されており、我々はこれら2施設で生産されたrasH2マウスの発がん感受性を、陽性対照物質N-methyl-N-nitrosourea (MNU)に対する反応性を指標として定期的に検証している。原則として5年毎(生産施設種コロニー更新の翌年)に全身諸臓器における発がん性を検証(Full volume モニタリング)する一方、それ以外の年はMNUに対して最も感受性の高い前胃の腫瘍性病変の発生率を指標として本マウスの発がん感受性を検証している(簡易モニタリング)。 2006年に実施したFull volumeモニタリングではいずれの施設で生産された動物についても前胃乳頭腫または扁平上皮がん:87~100%、悪性リンパ腫: 53~67%、皮膚乳頭腫:42~71%の発生率であり、両施設間で大きな差がなく背景データ(Usui et al. 2001)ともほぼ一致していた。また、2008年、2009年及び2010年に実施した簡易モニタリングでは、いずれの施設で生産された動物についても前胃腫瘍性病変(乳頭腫または扁平上皮がん)の発生率はそれぞれ89~100%、80~90%及び90~100%であり、両施設間で有意差がなく背景データともほぼ一致していた。以上より、2006年から2010年の間に日本クレア及びTaconic社で生産されたrasH2マウスの発がん感受性には差がなく、ILSI/HESI国際共同検証試験時の発がん感受性を維持していることが確認された。2010年に両施設で生産種コロニーを更新したことから、2011年にFull volumeモニタリングを実施する予定である。
  • 藤澤 紘, 樅山 貴也, 道谷 済之, 畠山 佳貴, 山崎 則之, 松井 博之, 松田 芳和
    セッションID: P-172
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】細胞毒性型の制癌剤は,作用機序には違いはあるが,がん細胞における細胞分裂抑制を主作用とする.しかしその主作用の延長線上に正常細胞への障害(副作用)がある.これらはいずれも重篤な副作用と言え,癌患者のQOL(Quality of life)を著しく低下させる.しかしながら,それら副作用軽減に関する研究報告は決して多いとは言えない.そして我々は,制癌剤における副作用を簡便に評価することが可能になれば,それら副作用に対処する方法の確立が可能であると考えた.また,このモデルは制癌剤と他の医薬品又はサプリメント等の健康食品との相互作用にも利用出来ると考えられ,様々な利用性を模索出来るモデルではないかと考えた.そして制癌剤5-フルオロウラシル(5-FU)を用いて,その主たる副作用である造血臓器毒性及び消化管毒性評価を中心とし,ラットを用い制癌剤毒性モデル作製の検討を行った. 【方法】8週齢の雄性ラットCrl:CD(SD)に5-フルオロウラシル(5-FU)を30 mg/kg/dayの投与量で7日間強制経口投与した.投与から8日目に病理解剖学的検査(剖検)を実施し,造血臓器毒性及び消化管毒性評価に関連する項目である血液学的検査や病理組織学的検査等を行った.
  • 野崎 裕美, 松浦 正男, 木口 雅夫, 堀本 政夫, 平田 真理子, 古川 正敏, 石川 典子, 中山 拓生, 横谷 亮
    セッションID: P-173
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】我々はヒトの肥満状態により近い食餌性肥満動物モデルを開発するため、配合する飼料成分に関する検討を行っている。これまでにラットにファストフード様飼料を与えると脂肪肝化及びLDL/HDL比の上昇がみられ、脂肪蓄積機序が従来の高脂肪食モデルと異なる可能性を報告した。そこで今回は飼料成分のうちタンパク質含量及びコレステロールの添加によるラットの脂質代謝に及ぼす影響について検討した。
    【方法】5週齢のSD系雄ラットに普通飼料(I群;タンパク質20%・コレステロール0%)、コレステロール添加飼料(II群;タンパク質20%・コレステロール0.25%)、コレステロール添加タンパク質減量飼料(III群;タンパク質13%・コレステロール0.25%、IV群;タンパク質8%・コレステロール0.25%)の4種類の飼料を14日間自由に摂取させ、体重及び摂餌量を測定した。摂餌14日の翌日に解剖し、肝臓及び腸間膜脂肪重量、血清脂質を測定した。
    【結果・考察】I群と比べてIII及びIV群の摂餌量はタンパク質含量の減少に伴い増加傾向を示し、体重はIV群で増加抑制傾向を示した。肝臓重量はI群に比べてII及びIII群で有意に増加し、IV群でも増加傾向を示した。肝臓の肉眼観察ではII及びIII群で淡褐色化、IV群で黄褐色化を呈していた。またIV群では腸間膜脂肪が増加傾向を示した。血清脂質ではI群と比べてLDL-CはIII群で有意な増加、HDL-CはIV群で有意な低下が認められた。各群のLDL/HDL比はコレステロールの添加及びタンパク質含量の減少に伴い上昇する傾向がみられた。
    以上より、飼料のタンパク質含量の減少及びコレステロールの添加はラットの肝臓への脂肪蓄積に関与し、LDL/HDLバランスに影響を及ぼすことが示唆された。
  • 山下 浩幸, 水由 健介, 内野 博志, 福田 剛司, 野尻 光一郎, 田淵 秀剛, 杉本 崇至, 瀬戸口 綾子, 付 尼斯, 吉川 剛, ...
    セッションID: P-174
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】カニクイザルは非臨床安全性試験で用いられるnon-human primatesで、フィリピン、中国、インドネシア、ベトナム、カンボジアなどから輸入されている。(株)新日本科学では、中国から輸入したカニクイザル(中国産カニクイザル)を主に使用しているが、昨年よりカンボジアの自社検疫施設から輸入を開始した。今後、カンボジアから輸入したカニクイザル(カンボジア産カニクイザル)を非臨床安全性試験で用いるためには、背景データを収集し、中国産カニクイザルと比較することが重要と考えた。
    【方法】雌雄各60匹のカンボジア産カニクイザルについて、血液学的検査および血液生化学的検査を実施した。また、近年、抗体医薬品等の試験で実施することが増えている末梢血イムノフェノタイピングおよび血清中サイトカイン測定を雌雄各20匹で実施し、得られた値から平均値±標準偏差を求め、中国産カニクイザルの血液検査の社内背景データと比較した。
    【結果】カンボジア産カニクイザルの血液学的検査値、血液生化学的検査値および末梢血イムノフェノタイピングの各パラメータの平均値は、中国産カニクイザルの社内背景データの平均値±標準偏差の範囲内にあり、明らかな差はないと判断した。血清中サイトカイン測定では、いずれのパラメータも定量下限未満を示し、中国産カニクイザルと同様の結果であった。カンボジア産と中国産で差が見られなかったのは、中国産が元々カンボジアを含むインドシナ半島由来であるためだと考えられる。
  • 伊勢 良太, 吉川 剛, 山下 浩幸, 宇野 泰広
    セッションID: P-175
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景と目的】カニクイザルは、安全性および薬物代謝等の新薬開発の研究に使用されている動物である。実験用カニクイザルの繁殖地として,中国およびカンボジア等のインドシナ半島を含む地域が存在する。しかしながら、これら繁殖地間での遺伝子発現に関する解析は十分ではない。そこで本研究では、薬物代謝に重要なチトクロームP450(CYP)遺伝子の肝臓での発現量を、カンボジアおよび中国で繁殖されたカニクイザルで比較した。CYP1A分子種は、薬物代謝、がん原物質の代謝的活性化等に関与する酵素であり、またCYP3A分子種は、ヒトでは半数以上の医薬品の代謝に関与し、肝臓での発現がCYPの中で最も高く、最も重要な薬物代謝酵素の1つであることから、CYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5遺伝子発現量を解析した。
    【方法】カンボジア(雄雌各10匹、3-4歳齢)および中国(雄雌各3匹、5-7歳齢)由来のカニクイザルから肝臓を採材し、total RNAを抽出したのち、リアルタイムRT-PCR法によって各CYP遺伝子発現を定量した。
    【結果と考察】カニクイザルCYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5の遺伝子発現量は,カンボジアおよび中国の繁殖地間で有意な差異はなかった。両繁殖地で差異が見られなかった理由は、中国で繁殖されたカニクイザルは、カンボジアを含むインドシナ半島由来であるためと考える。また、カンボジアのカニクイザル肝臓で発現しているCYP1A1、CYP3A4およびCYP3A5の雌雄差は、それぞれ1.4、1.2および1.1倍であり、何れも有意な差ではなかった。さらに、DNAマイクロアレイを用いた網羅的な解析で得られた肝臓の遺伝子発現データについても報告する。今後,カンボジアで繁殖管理された個体を用いて試験を行う際、これらの結果を薬物代謝プロファイルを考察する上で活用する。
  • 大信田 系裕, 前田 晃央, 橘川 美香, 菅 佐智子, 岩野 俊介, 三好 智也, 宮本 庸平
    セッションID: P-176
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
     マウス局所リンパ節アッセイ(LLNA)は、免疫毒性物質の感作性を評価する試験であるが、免疫抑制についても高感度かつ特異的に評価することができる。著者らは、カルシニュリン抑制薬(タクロリムス、シクロスポリンA)、代謝拮抗薬(メトトレキセート、アザチオプリン)、ステロイド(デキサメタゾン、プレドニゾロン)およびアルキル剤(シクロホスファミド)でマウスに処理し、LLNAを行った。さらに、高感度DNAチップ(3D-GeneTM)解析および定量的PCRを用いて、LLNAで得られたリンパ節において遺伝子発現の広範囲な解析を行った。
     その結果、免疫抑制化学物質で処理したすべての動物においてZfp459発現が増加した。LtfCbll1およびLiasの発現はカルシニュリン抑制薬処理で、Fmo2および9630033F20Rikの発現はアルキル剤処理で、Krt8Gjb1Hmha1およびSfrs7はステロイド処理で、Gbp1およびMup5は代謝拮抗薬処理で増加した。
     以上のことから、Zfp459LtfCbll1LiasFmo29630033F20RikKrt8Gjb1Hmha1Sfrs7Gbp1およびMup5は、免疫抑制の新規マーカーと考えられた。また、これらの発現を免疫抑制化学物質の作用機序を評価に用いることが可能だろう。
  • 弓立 恭寛, 甲斐 敏裕, 箕輪 洋介, 青木 幹雄, 山田 徹, 木村 徹, 小野 敦, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆谷 徹郎
    セッションID: P-177
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
    リン脂質症は、肝臓・肺・腎臓などの細胞内にリン脂質が過剰に蓄積する病態を指し、新薬開発の遅延や中止につながる可能性がある。したがって、研究開発の早期にリン脂質症誘発ポテンシャルを評価することは重要である。しかしながら、ラットの病理組織学的検査では、化合物を数週間投与しないと病変の検出は困難であり、より早期に評価可能なバイオマーカーが望まれている。そこで我々は、単回投与ラットの肝臓の遺伝子発現プロファイルから、新たなリン脂質症バイオマーカーの探索と検証を行った。

    【方法】
    TGPデータベースの150化合物の中から、6個のリン脂質症陽性化合物と21個の陰性化合物を学習セットに選び、SDラットに単回投与後24時間の肝臓の遺伝子発現データを使用して、遺伝的アルゴリズムによりマーカーセットの最適化を行った。次に、検証試験として6個の陽性化合物と5個の陰性化合物をラットに投与し、その遺伝子発現データを用いてマーカーの予測性能の検証を行った。

    【結果】
    学習セットの27化合物の遺伝子発現データに対し、遺伝的アルゴリズムを用いて、リン脂質症誘発ポテンシャルを予想できる最適な25遺伝子からなるマーカーセットを選択した。得られたマーカーセットの予測性能を検証するために、11化合物の検証セットの遺伝子発現データからリン脂質症誘発ポテンシャルを計算した。その結果、11化合物中9化合物を正しく予測することができた(予測率80%)。リン脂質症の病理組織学的変化は、化合物を連続投与した後にみとめられることから、これらの単回投与データから得られた遺伝子セットは、病理組織学的変化に先立ってリン脂質症を予測できるバイオマーカーと言える。
  • 清澤 直樹, 平井 岳大, 田崎 康一, 西村 正利, 矢本 敬, 久保 祐一, 眞鍋 淳, 三分一所 厚司
    セッションID: P-178
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】トキシコゲノミクス(TGx)は創薬初期段階における毒性スクリーニングに有用なツールであるものの、膨大な発現データの効率的な解析・解釈が課題である。我々は以前、特定の生物学的パスウェイ活性化を反映する遺伝子セットを定義し、その発現変動レベルのスコア化による効率的なデータ解析法(D-score解析法)を報告した(Int J Mol Sci 2010 11:3397-412)。本発表ではオープンソースソフトウエアを組み合わせ、TGxデータおよびD-score法を用いた肝臓遺伝子発現プロファイリングを自動化するデータ解析系の構築例を紹介する。【方法】統計解析ソフトRを使い、CRANとBioconductorのRパッケージを利用した。発現変動遺伝子抽出では、薬剤投与群と対照群の間でF-検定/t-検定でP < 0.05を満たし、かつ発現変動レベルが2倍以上のプローブセットを抽出した。D-score算出には58種の遺伝子セットを用い、結果のレーダーチャート表示、ヒートマップ表示、およびGraphvizによる遺伝子セット間ネットワーク表示を実装した。最後に各プログラムをKNIMEにより統合・ワークフロー化し、解析を自動化した。【結果および考察】解析に際しては(1)GeneChipデータ、(2)群構成定義ファイル、(3)解析対象群指定ファイルを用意し、発現変動遺伝子はcsv形式で、またD-score計算結果はHTMLによりサマリーを表示した。HTMLからはD-scoreレーダーチャート、ネットワーク表示の他、各遺伝子セットを構成する個別遺伝子の発現変動レベルヒートマップ表示に遷移する。これにより従来半日を要した解析時間が数十分程度に短縮され、手作業によるヒューマンエラーが軽減され、かつTGx解析に不慣れなユーザーでもTGxデータからの活性化パスウェイの検索、およびそれに関連する遺伝子の同定を効率的に実施することが可能となった。
  • 坂東 清子, 国松 武史, 木村 重紀, 船橋 斉, 関 高樹, 馬場 健史, 福崎 英一郎
    セッションID: P-179
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】医薬品により間質性肺炎や線維症などの肺障害が誘発されることがあるが、発症機序には不明な点が多く、薬剤誘発性肺障害をモニターできる良好なバイオマーカーがないことが医薬品開発の重要な課題となっている。本研究では、薬剤誘発性肺障害の発症機序の解明及びバイオマーカー探索を目的に、ブレオマイシンを気管内投与し、肺障害を惹起したラットから経時的に気管支肺胞洗浄液(BALF)を採取し、メタボローム解析を実施した。
    【方法】雄性SDラットにブレオマイシン塩酸塩(5、10 mg/kg)を単回気管内投与後、投与後6時間から21日間まで経時的にBALFを採取した。BALF細胞分画を行うとともに、BALF上清からクロロホルム/メタノールで高極性代謝物を抽出し、誘導体化を行った後にGC-MSで分析した。多変量解析を行い、代謝物プロファイルの変動を確認するとともに、同定化合物について毒性発現との関連性について考察を行った。また、同時点で肺を採取し、病理組織学的検査を実施した。
    【結果および考察】BALFの細胞分画および肺の病理組織学的検査の結果、ブレオマイシン投与により惹起される肺の炎症性変化のピークは投与後3から7日であり、炎症性変化の消失とともに線維化が進行し、投与後21日には広範な線維化にいたることが確認された。BALFのメタボローム解析において経時的、用量依存的な代謝物プロファイルの変動が認められ、投与後3および7日に最も大きな変動が認められた。投与直後からグルタチオン代謝に影響が認められ、毒性発現には酸化ストレスの関与が考えられた。また、投与直後からコラーゲン組成アミノ酸の増加およびアスコルビン酸の減少が認められ、炎症初期からコラーゲン合成が亢進していることが明らかとなった。これらの代謝物変動が肺線維化のバイオマーカーとなる可能性が示唆された。
  • 中津 則之, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 泰雄
    セッションID: P-180
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】
     ヒトでの肝毒性を早期に検出あるいはモニターするためには血液等の非侵襲性サンプルの使用が必要である。我々はラットをモデルに肝毒性を惹起する薬剤を投与したラット血液を用いて網羅的遺伝子発現解析を実施し、血液中の肝細胞壊死マーカー候補遺伝子を抽出した(第37回日本トキシコロジー学会学術年会)。これらの遺伝子群について腎毒性物質による影響を検討し、肝細胞壊死に特異的なマーカーの探索を試みた。

    【方法・結果】
     ラットで肝細胞壊死の惹起が報告されているチアオセトアミド、メタピリレン、クマリン、ブロモベンゼンをCrl:CD(SD)ラットにそれぞれ単回および反復経口投与し、網羅的遺伝子発現解析を実施した。AST, ALT等に相関の高い遺伝子(Ifit2, Cxcl10等)を、肝細胞壊死マーカー候補遺伝子として報告した。  腎障害を惹起するゲンタマイシン、トリアムテレン、N-フェニルアントラニル酸、アロプリノール3, 7, 14日間反復投与後に、2-ブロモエチルアミン、フェニルブタゾン単回投与後3, 6, 9, 24時間後に剖検を実施した。PAXgene Blood RNA System (PreAnalytiX社)を用いて全血からRNAを抽出した。抽出したRNAについてGLOBINclear kit (Ambion社)によりグロビンmRNAを除去した後、Rat Genome 230_2.0 Gene Chip (Affymetrix社)を用いて遺伝子発現データを取得中である。これらの結果より肝細胞壊死マーカー候補遺伝子の肝臓特異性および肝/腎における壊死共通の変動について検討を行い報告する。

    【謝辞】
    本研究は厚生労働科学研究費補助金H14-トキシコ-001およびH19-トキシコ-001による。
  • 上原 健城, Low Yen, 箕輪 洋介, Sedykh Alexander, Muratov Eugene, Fourches Deni ...
    セッションID: P-181
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    Quantitative Structure-Activity Relationship (QSAR) modeling and toxicogenomics have been explored independently as predictive toxicology tools. In this study, we employed a rigorous QSAR modeling workflow to predict the hepatotoxicity for 127 well-known compounds in the TG-GATEs using both approaches. Predictor variables included chemical descriptors as well as short-term gene expression data in rat liver (24h after dosing). The prediction target, hepatotoxicity, was defined by histopathology and serum chemistry after 1M repeated dosing. Using a comprehensive set of chemical descriptors and several classification methods, external predictivity of QSAR models expressed as Correct Classification Rate (CCR) and evaluated by 5-fold external cross-validation was as high as 59%. In parallel, toxicogenomic models were built using gene expression data. Optimal models comprising of 85 genes had a CCR of 76%. Finally, hybrid models combining both chemical descriptors and gene expression data were developed but their predictivity was under 76%. Although the accuracy of the QSAR models was limited due to the high chemical diversity of the small dataset, using both chemical and biological descriptors enriched the interpretation of the modeling results: the 85 predictor genes were mechanistically relevant, involving hepatotoxicity-related pathways, and structural alerts were identified among hepatotoxicants. In conclusion, concurrent exploration of chemical features and treatment-induced changes in gene expression affords predictive and interpretable models of hepatotoxicity.
  • 南 圭一, 上西 千晶, 五十嵐 芳暢, 木野 潤一, 神吉 将之, 阿部 香織, 堀之内 彰, 小野 敦, 山田 弘, 漆谷 徹郎, 大野 ...
    セッションID: P-182
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景および目的】トキシコゲノミクス・インフォマティクスプロジェクト(TGP2)は,トキシコゲノミクスによる安全性バイオマーカーの探索を行い,医薬品開発の効率化を目指す産官共同研究である.昨年はグルタチオン(GSH)枯渇型肝障害について,アセトアミノフェン(APAP)投与ラット肝障害モデルのメタボロミクス/ゲノミクス解析を用いたバイオマーカー(5-Oxoproline及びcholate類)について報告した.本検討では,ラットにグルタチオン枯渇剤であるbuthionine-sulfoximine(BSO)を前処置したラットに対してAPAPを投与し,種々のバイオマーカー,関連する酵素について検討し,既報のバイオマーカー間の有用性検証及び,ラットにおける毒性の個体差解明を目的とした.
    【方法】ラット(Crl:CD (SD)IGS;12週齢)にBSO(0または450 mg/kg)を前処置(腹腔内投与)し,1時間後にAPAP(0, 300, 1000 mg/kg)を経口投与した.APAPの投与後3, 6, 9及び24時間において肝及び血漿を採取し,血液生化学マーカー測定,血漿中miRNAの測定,肝グルタチオン(GSH)含量測定及び肝病理組織学的検査を行った.さらに,投与後24時間の全例においては,肝mRNAのマイクロアレイ解析を実施した.
    【結果】BSOによるGSH枯渇作用はAPAP投与後3時間から9時間において認められていた.また,APAP投与後24時間において顕著な肝障害が認められ,特にBSO併用群において強く認められた.しかしながら,肝障害が最も顕著であった個体はAPAP単独群に含まれており,この個体は還元型及び総GSH含量が他の個体に比べて高値であったことから,GSH抱合能を中心に原因究明のための追加検討を行っている.現在,肝マイクロアレイ,GST遺伝子多型と肝障害フェノタイプとの関連について検討中である.
  • 喜古 健敬, 鳥塚 尚樹, 太田 恵津子, 永山 裕子, 揚村 京子, 今出 寿雄, 藤川 康浩, 菅沼 彰純, 築舘 一男
    セッションID: P-183
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】非臨床安全性研究における薬剤性肝障害の早期予測・評価は,ヒトでの有害事象や開発中止等のリスク回避に向けての重要な課題である。近年,循環血中に存在する25塩基前後のmicroRNA(miRNA)が,既存の血中肝毒性マーカーであるALTやASTなどの血中酵素よりも鋭敏に肝毒性を評価するマーカーになりえると報告された。そこで本研究では,肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシスを誘発する化合物をラットに投与し,血漿miRNAの変動を解析した。 【方法】8週齢の雄性Crl:CD(SD)ラットに肝細胞壊死誘発化合物としてアセトアミノフェン,ブロモベンゼン,四塩化炭素,胆汁うっ滞誘発化合物としてα-ナフチルイソチオシアナートを単回経口投与した。また,フォスフォリピドーシス誘発化合物として,アミオダロン,クロロキン,トリパラノール,フロキセチンを2週間反復経口投与した。ALTを含む生化学検査を行うとともに,マイクロアレイ(GeneChip miRNA Array)にて包括的に血漿miRNAを解析するとともに,特に注目すべき変動を示したmiRNAについて定量的PCR解析を実施した。 【結果及び考察】肝細胞壊死化合物の投与により,miR-122およびmiR-192は,ALTの上昇が見られた用量で著明に増加し,さらにALT上昇が認められない用量でも増加した。また,ALT上昇は24時間後のみに見られた一方で,miR-122およびmiR-192は投与1時間後から上昇した。したがって,これらmiRNAはALTの増加と相関を示すのに加え,より早期に肝毒性を検出できることが示唆された。肝細胞壊死,胆汁うっ滞,フォスフォリピドーシス誘発化合物の比較では,それぞれのメカニズムで特異的に変化するmiRNAが複数見出された。以上より,血漿miRNAは,特異性と感度に優れた新規肝毒性マーカーとしての利用が期待された。
  • 相崎 健一, 五十嵐 勝秀, 種村 健太郎, 安彦 行人, 高橋 祐次, 高木 篤也, 北嶋 聡, 菅野 純
    セッションID: P-184
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    あらゆる化学物質暴露による毒性に対応したより高感度で迅速な毒性評価を実現するためには、網羅的な遺伝子発現解析技術の導入が必要である。我々は将来の毒性評価のリファレンスとなる高精度かつ大規模のトキシコゲノミクスデータベースを生成するために、定量RT-PCRやマイクロアレイデータから細胞1個あたりのmRNA発現量を測るPercellome手法(特許4415079)を開発した。これを基に、100種類超の化学物質によるC57BL/6マウスにおける生体影響のトランスクリプトームをAffymetrix GeneChip MOE430 2を用いて網羅的かつ高精度に測定し、大規模トキシコゲノミクスデータベース(Percellomeデータベース)を構築した。 Percellomeデータベースの基本データセットは、4時点における溶媒対照群+3~4用量の計16~20群構成(n=3)となっている。その情報量を最大限に活かすため、遺伝子発現データはプローブセット毎に、時間,用量および遺伝子発現コピー数の3次元曲面(Surfaceグラフ)に変換した。さらに全Probe setに対応するSurfaceグラフの中から特徴的な発現パターンを示すものを自動的に抽出するRSortアルゴリズムを開発し、効率的な網羅的解析を実現した。 国衛研・毒性部では、Percellomeプロジェクトの成果を、速やかに毒性学・生物学等の専門家に提供し研究活動の活性化を図るために、2006年よりオンラインデータベースシステムを一般公開してきたが、この度、サーバー機器の更新にあわせ、解析を大幅に効率化するマルチSurfaceやRSortフィルター等の新機能を搭載したWebアプリケーションを新規開発し、一般公開を再開した。 本発表では、ユーザー登録(無料)や操作方法を解説し、本オンライン解析システムを利用した具体的な解析例を示す。
  • 森川 裕二, 上原 健城, 箕輪 洋介, 中津 則之, 奥野 恭史, 小野 敦, 五十嵐 芳暢, 山下 智也, 山田 弘, 大野 泰雄, 漆 ...
    セッションID: P-185
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【背景・目的】Ames試験で陰性となった化合物の発がん性はがん原性試験等を実施しなければ見極めることができず、費用や期間の面から簡便かつ短期間で実施可能な評価方法の確立が望まれている。本研究ではトキシコゲノミクスプロジェクトにおいて構築されたデータベース(TG-GATEs)を用いて、細胞障害性の非遺伝毒性肝発がん化合物のリスク評価マーカの探索および、予測モデルの構築を行い、その有用性を検討した。【方法】6週齢の雄性ラットに各種化合物(低・中・高用量)を単回・反復投与し、投与開始後3・6・9・24時間後、あるいは4・8・15・29日目に屠殺した。その後、Affymetrix社製のGeneChipを用いて肝臓の網羅的遺伝子発現データを取得し、次の手順で判別分析を行った。(i)「Ames試験陰性、且つラットで細胞障害性肝発がんを誘発することが知られている6化合物の反復29日の最高投与量」を正例とし、「ラットで肝発がんを誘発しないことが知られている54化合物の単回3~24時間および反復4~29日の最高投与量」を負例に設定した。(ii) 正負例間での遺伝子発現値の倍率変化、Mann-WhitneyのU統計量、SVM Marginを指標として遺伝子の総合ランキングを算出した。(iii) 抽出した遺伝子を使用し、SVMによりモデルを構築した。モデルの検証には5-fold Cross Validationを用い、ROC解析により最適遺伝子数を決定した。【結果】ランキング上位の9遺伝子を使用した際にモデルの判別性能が最大となり、感度は約99%、特異度は約97%であった。選抜した遺伝子には発がんとの関連性が報告されているCd276Cdh13などの既知遺伝子や、細胞増殖・細胞死・DNA修復関連の遺伝子が含まれていた。また、これら遺伝子は、細胞障害性の遺伝毒性肝発がん物質でも共通の発現変動を示した。【結論】我々の構築した予測モデルは、化合物の肝発がんリスクを早期に評価することが可能であり、創薬の初期段階において有用であると考えられた。
  • 加藤 雅一, 上村 規行, 臼井 あけ美, 畠 賢一郎
    セッションID: P-186
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    化粧品や化学物質の安全性を確認する眼刺激性試験は、ウサギを用いたドレイズ法が一般的な試験方法であるが、動物福祉の観点からin vitro眼刺激性試験の検討が求められている。われわれは、3次元ヒト培養角膜モデルLabCyte CORNEA-MODELを用いたWST-8法によるin vitro眼刺激性試験法を開発した。本発表では、同モデルを用いてより微弱な刺激を検出すべく組織標本を用いた眼刺激性新規指標の探索を行ったのでその概要を報告する。 LabCyte CORNEA-MODELの表面にin vivoにおける眼刺激性程度が確認されている陽イオン界面活性剤である塩化ベンザルコニウム(BAK)溶液(0.0005%-5%)を1分間曝露し、PBSで10回洗浄した。BAK適用後の組織を24時間後培養したのち、ヘマトキシリン&エオジン染色、Terminal deoxynucleotidyl transferase dUTP nick end labeling (TUNEL)染色、Claudin-1に対する免疫組織染色によりそれぞれ組織構造、アポトーシス陽性細胞、細胞間結合(タイトジャンクション)について観察した。 BAK適用後のLabCyte CORNEA-MODELのTUNEL染色像において、BAKの濃度依存的なアポトーシスが確認された。低濃度(0.005%-0.3%)BAKを曝露した組織では表面部のみにアポトーシス陽性細胞を認めたのに対し、中濃度(0.5%-1.0%)BAKを曝露した組織では表層と下層にアポトーシス陽性細胞を認めた。一方、高濃度(3%-5%)BAKを曝露した組織ではアポトーシス陽性細胞は認めなかった。これは、高濃度BAKが組織の激しい損傷を引き起こした結果ネクローシスによる細胞毒性を示した可能性を示している。また抗Claudin-1抗体を用いた免疫染色により、BAK濃度依存的な細胞間結合の崩壊が確認されたが、その感度はTUNEL染色のほうが鋭敏であった。これらの検討を通じて、LabCyte CORNEA-MODEL標本を用いたTUNEL染色法による組織評価は高感度な新規眼刺激性予測のための指標として有用である可能性が示された。
  • 渡辺 美香, 小林 美和子, 奥富 弘子, 新藤 智子, 熊谷 文明, 斉藤 義明, 山影 康次
    セッションID: P-187
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    近年、3次元ヒト培養皮膚モデルであるEPISKINおよびEpiDermを用いた試験が、実験動物を用いた皮膚刺激性試験の代替法としてOECDガイドラインで採用されている。我々は、日本国内で販売されている3次元ヒト培養皮膚モデルであるLabCyte EPI-MODEL(ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング社)を用いて、19種類のモデル化学物質(PERFORMANCE STANDARDS; ECVAM SIVS)のin vitro皮膚刺激性試験を実施し、本法においてもEPISKINおよびEpiDermと同等の結果が得られることを確認した。
    さらに、LabCyte EPI-MODELの6日間培養品が、通常モデルである13日間培養品に比べて角質層が薄いことに着目し、角質層が成人より薄い乳幼児や刺激等に敏感な皮膚の刺激性を検出するための皮膚モデル(敏感肌モデル)としての可能性を検討した。通常モデルと同様に6日間培養品を化学物質で15分処理し、42時間の後培養後にmethylthiazole tetrazolium (MTT) 法により細胞生存率を求めた結果、通常モデルで陽性(細胞生存率50%未満)を示す物質は、6日間培養品においてもすべて陽性となったが、通常モデルで陰性を示す物質の中には6日間培養品で陽性を示す物質も認められた。また、陽性を示した物質について用量反応曲線を通常モデルと6日間培養品で比較したところ、6日間培養品が通常モデルより低用量で陽性を示すことが確認された。以上ことから、6日間培養品は低刺激性物質の検出も可能であり、敏感肌モデルとして有用である事が示唆された。
  • 藤田 恵子, 渡辺 美香, 小林 美和子, 奥富 弘子, 新藤 智子
    セッションID: P-188
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】皮膚感作性試験の代替法として開発されたhuman Cell Line Activation Test(h-CLAT)はヒト単球由来株化細胞であるTHP-1細胞に化学物質を暴露し、細胞表面に発現するCD86およびCD54を指標として感作性の有無を評価する試験法である。本法を用いて化学物質の感作性を調べるためには、導入した試験方法が物質の感作性を正しく検出できていることを確認する必要がある。そこで感作性既知の化学物質についてh-CLATを行い、感作性の判定結果や陽性反応を示す化学物質濃度を既報と比較した。
    【方法】感作性陽性の物質4種類[Dinitrochlorobenzene(DNCB)、Nickel sulfate(Ni)、Phenylacetaldehyde(PAA)およびp-Benzoquinone(p-BQ)]、陰性の物質3種類[Sodium lauryl sulfate(SLS)、Lactic acid(LA)およびSalicylic acid(SA)]を用いた。8濃度の各化学物質をTHP-1細胞に24時間暴露した後、FITC標識-抗CD86抗体およびFITC標識-抗CD54抗体で染色した。フローサイトメーター(FACS Calibur)で測定した平均蛍光強度から相対蛍光強度(RFI)を算出し、1回の実験中8濃度のいずれかでRFI値がCD86≧150あるいはCD54≧200であれば陽性、それ以外を陰性とした。2回の実験で得られた同一結果から最終的な感作性を判定した。
    【結果および考察】陽性物質4種類は全て感作性陽性であった。陰性物質の中でSLSおよびLAの2種は感作性陰性であったがSAは感作性陽性を示した。感作性陽性となったSAでは、CD54における陽性反応が報告されており、感作性の判定は全て既報と同一の結果であった。また、陽性反応が検出された化学物質の濃度も既報と同様であった。既知の化学物質の感作性を正しく検出できたことから、試験法の導入に問題はなく、感作性未知の化学物質についても実験可能であると考えられた。発表においては、いくつかの化学物質の結果を追加する予定である。
  • 今井 教安, 岡本 裕子
    セッションID: P-189
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】現在in vitro試験法は細胞培養系を応用するケースが主となっており、非水溶性物質の評価は困難であることが多い。その中で皮膚刺激性試験については、再構築皮膚モデルを利用した試験法がOECDガイドラインに収載されるなど、新たな培養技術を応用し、非水溶性物質をも評価可能なツールが開発された。その一方で、皮膚モデルはコストや入手に時間がかかるなどの点で、ルーチンワークとしての評価系には適応させ難い点もある。そこで我々は、最近、眼刺激性試験の代替法として開発されているSTE(Short Time Exposure)法の被験物質暴露方法に着目した。すなわち、非水溶性物質を評価するとき流動パラフィン等の油性溶媒に希釈した被験物質を、培養液を除去した細胞に直接暴露して評価する暴露方法である。この方法を応用し、単層細胞培養系を利用した油剤の皮膚刺激性試験法の検討を行った。 【方法】ウサギ角膜細胞(SIRC)を培養したプレートの培養液を除去し、必要に応じて流動パラフィンを用いて希釈した被験物質を細胞に直接添加し、暴露した。暴露後は洗浄し、培養液を再度添加して培養し、ニュートラルレッドを用いて細胞生存率を測定した。 【結果・考察】検討の結果、油剤を単層培養系にて評価することができた。また、強度から中程度の皮膚刺激性を有する油溶性成分については、ある程度の予測性があることが示唆された。従来、単層培養系を使用した評価方法では、非水溶性物質である時点で適用不可と判断されていたが、今回検討した試験方法を用いることで、非水溶性物質の皮膚刺激性を安価で簡便にスクリーニング的評価を実施できる可能性が示唆された。
  • 増渕 康哲, 山口 裕子, 黒岩 有一, 岡崎 和志, 田村 一利, 岡崎 修三
    セッションID: P-190
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/08/11
    会議録・要旨集 フリー
    rasH2マウスなどの遺伝子改変動物を用いた短期(26週間)がん原性試験は、長期がん原性試験の代替モデルとして期待されている。なかでもrasH2マウスを用いたモデルは有力な候補であるが、今のところ日本国内での普及は限定されている。がん原性試験において、被験物質のがん原性を適切に評価するためには、施設ごとに使用動物の自然発生性腫瘍の背景データを充分得ておくことが重要である。今回、我々の施設としては初めてrasH2マウスの自然発生性腫瘍を含む背景データを収集したので報告する。 「方法」8週齢のrasH2マウス雌雄各50匹に媒体(0.5 w/v%メチルセルロース溶液)を26週間投与し、一般状態、触診による腫瘤の観察、体重、摂餌量、血液・血液化学検査、骨髄像検査、肝薬物代謝酵素活性の測定、剖検、器官重量及び病理組織学検査を実施した。また、発がん陽性対照群として雌雄各15匹のN-Methyl-N-nitrosourea(MNU)群を設け、75 mg/kgの投与量で単回腹腔内投与した。 「結果」投与26週間後の生存率は、雄47/50例(生存率:94%)、雌46/50例(生存率:96%)であり、雌雄各1例で腫瘍性病変に起因すると思われる死亡がみられた。また、体重、摂餌量、血液・血液化学データは公表されている文献と大きな差はなかった。MNU群では、10あるいは12/15例/性がリンパ腫等の腫瘍性病変で死亡し、本試験系における発がん感受性に問題なかった。現在検索中の病理組織学検査結果を含め、その成績を報告する。
feedback
Top