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後藤 幹尚, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 津野 和宏
ジャーナル
フリー
跨線橋の定期点検では,鉄道の運行が終了する夜間に実施する場合が多く,点検に要する資機材等の搬入出や,き電設備等への防護設置等の時間も要するため,点検実務に割ける時間が少ない.その上,各鉄道事業者による軌道や電気設備等の保守作業もあることから,橋梁点検を実施できる日の決定には制約を受ける.また,架け払いの足場などを用いて点検を実施する場合には,橋梁点検員以外の人員が多く必要となり,その結果,点検以外の費用も多く要する等の課題もある.これらの課題に対して効率的に取組む必要があり,その一つとして新技術の活用が想定されるが,これのみでは改善できる範囲に限りがある.そこで本論文は,跨線橋の定期点検における予算編成から点検の実務までにおいて取り組んできた効率化の実態を示すとともに,今後の更なる効率化に向けた展開についても示した.
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後藤 幹尚, 川越 貴水, 浅野 和香奈, 後藤 朋子, 多和田 俊介, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 津野 和宏
ジャーナル
フリー
次世代の橋梁長寿命化修繕計画の実践を通じて,ライフサイクルコストの縮減による効果には限りがあると考え,社会インフラの実態を十分に周知した上で,これらの存在によって得られる恩恵をより広げることが重要であると考えている.そこで,現代における橋の新たな価値を創造し,この価値から社会活動や日常生活の向上等に資する橋のみを守り,場合によっては新たな機能を拡充した橋へと更新することで,橋の存在によって新たな恩恵を享受することができる.本論文は,メンテナンスの区民協働を通じて橋の新たな価値を創造するために,広報活動とアンケート調査を実施し,この調査結果を報告するとともに,メンテナンスの区民協働の実践に向けた課題と今後の展開について示した.
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後藤 朋子, 後藤 理沙, 後藤 浩, 後藤 幹尚, 藤森 竣平, 岩波 光保, 千々和 伸浩, 津野 和宏
研究報告書・技術報告書
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大田区では,橋のメンテナンスを通じた区民協働による橋の新たな価値創造に向けて,シェリー・アーンスタインによる「住民参加の階段」を踏まえ,橋に関する情報発信に取り組んでいる.令和4年度には,大田区全域に向けた広報紙による情報発信およびアンケート調査を実施した.その結果からは,橋に対する一定程度の関心が伺えたものの,実際に橋のメンテナンスに参加することに対する抵抗感も垣間見えた.今後,橋のメンテナンスの区民協働につなげるためには,まずは“あって当たり前”の存在となっている橋そのものに意識を向けてもらうこと,年齢や世代に見合った情報発信を行い,発信のみの一方通行ではなく相互理解につなげる対話をすることが必要と考え,①橋の存在そのもの,②橋を支える技術や人に対する意識付けおよび③年齢に応じた意識付け活動を実践した.本稿では,より日常生活に密着した身近な存在としての橋に意識を向けてもらうために実践した取り組みについて報告する.
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神林 慶哉, 山崎 花菜穂, 福井 航, 平澤 周一, 榎本 泰典
研究報告書・技術報告書
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東日本旅客鉄道の保線部門では,毎年多くのレールを交換しており,大宮保線技術センターでは2022年度に約4,200RMのレールを交換している.現在,レール交換計画を策定する際には,現場で交換延長の測定やレール溶接位置の確認,交換時における支障物の確認などを行っており,調査に多くの人件費と労力を費やしている.そこで,線路設備モニタリング装置の効率的活用の観点から,同装置から得られる画像データを活用したレール交換計画の策定手法の検討を行った.本稿では,研究から得られた知見や展望について紹介する.
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広田 椋祐, 中村 健二
知能と情報
2025年
37 巻
1 号
562-566
発行日: 2025/02/15
公開日: 2025/02/15
ジャーナル
フリー
我が国では,人員や予算が限られる中で道路附属物などの巡視点検が行われている.巡視点検では,外業にて現地に赴いて点検対象の画像を撮影し,内業でその画像を位置情報等に基づき撮影場所を確認して台帳に整理している.この作業には,多大な労力が必要であり効率化が求められている.既存研究では,3次元モデルを用いて道路附属物の画像を部位ごとに管理する手法や,画像と点検部位の関連付けに2次元コードを用いる手法が提案されているが,部位との関連付けに手作業が必要であるなどの課題が残る.そこで本研究では,指差呼称動作を用いて点検対象の画像を撮影し,さらに撮影する施設の種類や損傷部位を呼称する音声を同時に記録することで,部位との関連付けを効率化する手法を提案し,適用性を検証する.
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穴吹 まほろ, 青木 泰一郎, 木村 真嗣, 後藤 幹尚, 岩波 光保
ジャーナル
オープンアクセス
定期点検での橋梁や損傷に対する撮影技術や,画像データからひびわれ等の変状を検知するAI技術の発展に伴い,鉄筋コンクリート構造の橋脚や床版に対し,近接目視に代わる方法の一つとしてデジタル画像とAIとを組み合わせた橋梁点検が一部実践されている.この点検方法の更なる適用拡大に向けて,点検時間等に制約を受ける跨線橋点検の効率化に向けた,鉄筋コンクリート床版に生じるひびわれを対象にした点検と,交通規制を伴う横断歩道橋点検の効率化に向けた,鋼部材に生じる腐食を対象にした点検の,二つの橋梁点検でのデジタル画像とAIの活用結果を報告する.また,この取り組みから得られたデジタル画像とAIの活用における効果と留意点についても報告する.
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三森 章太, 木ノ本 剛, 日和 裕介, 和田 尚人, 後藤 幹尚, 岩波 光保
ジャーナル
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我が国の道路橋は,高度経済成長期に集中的に整備され,今後急速に高齢化を迎える.道路橋のうち鋼橋では点検によって疲労き裂が確認されることがある.疲労き裂の調査は,磁粉探傷試験による調査が一般的である.近年,長距離無線通信が可能なLPWA(Low Power Wide Area)無線モジュールが開発されているが,実橋で適用された報告事例は少ない.そこで,本論文では,交通規制や現場作業に制約がある実橋で発生した疲労き裂に対し,動ひずみ計測を行い,発生原因を推定した.また,疲労き裂の対策を施す前後を含んだLPWAによるモニタリングを行い,対策効果について検証した.計測の結果,発生原因の推定と対策効果の確認が可能であることが示され,LPWAを活用した計測の有効性が確認できた.
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栄 翔太, 横井 芳輝, 藤田 憲二, 河野 晴彦, 後藤 稜平, 溝上 善昭, 石川 敏之
ジャーナル
フリー
センターステイは,大規模地震時に損傷を許容する部材であるが,来島海峡第一大橋では疲労による損傷も発生している.このため,定期的に近接目視を行うとともに超音波探傷による検査を行っている.しかし,これらの間欠的な点検等ではき裂の発生や進展,破断について早期に把握することは困難である.一方で,近年,IoT技術を活用した無線ひずみ計測機器による疲労き裂の発生・進展をモニタリングする手法も提案されている.そこで,センターステイの常時遠隔監視手法の確立のため,実橋のセンターステイロッドに無線ひずみ計測機器を設置し,WEBプラットフォーム上で監視を行った.その結果,監視中にセンターステイロッドの破断が生じ,破断の兆候のモニタリング,破断の検知が可能であることを確認した.
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廣尾 智彰, 中村 貴久, 河野 昭子
ジャーナル
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軌道構造と支持構造が同一の区間でも,つき固め作業後に軌道変位が徐々に元の形状に戻る事象が確認されているが,そのメカニズムの詳細は明らかになっていない.軌道検測データより,本事象の実態を調査した結果,マルチプルタイタンパよりもハンドタイタンパによるつき固め作業後に本事象が生じやすいことがわかった.また,本事象の発生メカニズムを検討するため,バラスト軌道の1/5縮尺模型を用いて,つき固め作業後に移動載荷試験を実施した.その結果,軌道のこう上量が局所的に大きい箇所で局所的な沈下が大きくなり,こう上量が局所的に大きくない場合は局所的な沈下が抑制されることがわかった.さらに,不連続体解析の結果,こう上量が大きい場合につき固め作業後のまくらぎ下100mmまでのバラスト密度が低下し,沈下が大きくなることがわかった.
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山田 凱登, 遠藤 敏雄, 森 弘継, 三浦 幸治, 小野 憲司
ジャーナル
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軟弱な埋め立て地盤上に整備された東京国際空港では,空港機能を適切に維持するために,滑走路や誘導路等の舗装の標高を計測・管理する夜間測量作業(空港舗装動態観測)を過去30年以上にわたって継続して実施してきた.しかし,近年の働き方改革に伴う労働環境の改善や労働力不足への対応が求められる中で,夜間の人力による測量作業の軽減が重要な課題となっている.本研究は,空港制限区域への夜間の人の立ち入りを最小限度にとどめることが可能な新たな測量手法の検討とその空港舗装動態観測への具体の適用方法を提案することを通じて,東京国際空港における夜間測量作業の最小化と,併せて空港舗装動態観測データのデジタル化を図り,もって空港舗装維持管理業務のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一助とすることを目的とする.
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木下 義昭
ジャーナル
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市町村は約7割の橋梁を管理しているが,修繕実施状況は措置完了率62%に留まっている.2023年度において我が国の橋梁定期点検は2巡目を完了しているが,財源不足を抱える市町村においては自主財源を多く必要とする定期点検のコスト縮減は重要である.本稿では,玉名市役所における橋梁定期点検の実務を事例とし,法令に基づき定期点検が今後も繰り返される点に着眼し,1巡目から3巡目における点検業務の段階的な改善を立案した上で,1巡目での記録の拡充により2巡目において劣化進行有無の調査を実践するなど,最前線の実務者の立場で1巡目から3巡目までの定期点検を段階的に改善しながらスパイラアップしたボトムアップによる実務改善のプロセスについて述べるとともに,3巡目点検時において橋梁定期点検費用を約3割縮減した最前線の実務事例について示す.
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田井 政行, 白旗 弘実, 青木 工, 芦田 洋祐, 髙木 千太郎
ジャーナル
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本研究では,橋梁点検における「損傷・劣化の見過ごし,見誤り」や「損傷程度の誤判定」を防ぎ,信頼性の高い点検実施のために,デジタル野帳を開発し,実橋梁での実装検証を行った.デジタル野帳を用いることで,タブレット端末に構築した橋梁3Dモデル上に,類似橋梁の損傷事例や,損傷・変状が生じやすい個所を表示することができるため,従来手法と比べて塗膜割れの点検漏れ防止に有効である傾向が得られた.また,点検1個所当たりの作業時間や点検調書の作成時間についても,従来手法と比較して短くなる傾向を示しており,デジタル野帳を使用することで,点検精度の向上による信頼性の確保と作業の効率化に有効である可能性を示した.
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森 伸一郎, 長井 春希, 今井 美文, 三浦 夢乃, 中畑 和之, 松田 敏, 須賀 幸一, 野上 武志
ジャーナル
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愛媛県内のあるPC床版橋において,横締めPC鋼棒の破断・突出事例が発生した.突出の有無にかかわらず破断の判定をする必要があった.近接目視,打音検査,透過法超音波試験による全数調査を実施した.明らかに破断・分離している鋼棒においても,鋼棒端部から入射した超音波が,振幅が低減されながらも鋼棒の他端部のセンサーで検出された.鋼棒を伝播した超音波が破断部で周辺コンクリートをバイパスして鋼棒に再入射するというメカニズムが想定された.そこで,そのバイパスメカニズムを確認するための小型の鋼棒コンクリート梁模型を用いて実験を行った.鋼棒が破断・分離していても透過超音波が他端で検出できた.梁模型をモデル化した数値解析を行い,波動バイパスメカニズムを検証し,横締めPC鋼棒破断検出のための透過超音波試験方法として成立する可能性を示した.
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小瀬 喜巳, 細田 暁, 齋藤 誠, 宇津木 浩行
ジャーナル
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臨海部付近に位置する都市トンネルにおいて海水混じりの漏水に起因した塩害劣化の進行が著しく,維持管理に苦慮している.そのため,繊維入りポリマーセメントモルタルにカルシウムアルミネート系混和材の急硬材と塩分固定材を配合し,液体可塑剤を吹付設備の先端ノズル手前で添加する新たな吹付け補修工法を開発した.さらに,実構造物を用いて,施工後の補修部周辺におけるマクロセル腐食による再劣化に対する抑制効果を自然電位測定によって確認した.その結果,補修から24ヶ月後も腐食電流は制限され,再劣化の傾向はみられなかった.その後,鉄道営業線内における実構造物での補修工事に適用した.その結果,補修箇所に初期ひび割れなどの変状は発生せず,十分な付着強度も確認され,かつ鉄道営業線工事において約20%の工事費縮減を実現した.
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梶山 大貴, 水野 光一朗, 保坂 直道, 向井 鷹則, 増井 洋介
ジャーナル
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東日本旅客鉄道株式会社では,膨大な数量の地下・トンネル構造物を維持管理している.これらのトンネルでは,供用開始後に軌道構造を支持する路盤に変状が発生することがある.トンネルの路盤部の安定性を維持するためには,デジタルツールを用いて路盤の変状を精度よく把握し,効率的に維持管理していく方法の確立が求められる.本稿では,鉄道トンネルの路盤の沈下に関する調査の効率化について,技術者による路盤の沈下に起因する変状の状態及び変化の把握に,軌道整備の履歴やMobile Mapping Systemで取得した三次元点群データを活用することで,技術者による調査の精度的な補完や調査の範囲を拡充させる方法を検証した.一連の検証により,提案する方法による路盤の沈下に関する調査の効率化の可能性について論じ,期待される効果を示した.
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栗林 健一, 大島 竜二, 佐藤 保大, 久田 真, 皆川 浩, 宮本 慎太郎
ジャーナル
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国内の鉄道構造物は老朽化が進む中,高齢化・人口減少に伴う鉄道の運輸収入の減少や技術者不足が予想される今日において,鉄道構造物の維持管理は省力化が喫緊の課題となっている.本研究では,メンテナンスデータのデジタル化とサイバー空間上への集約化,さらにデジタルツイン技術を活用することによる維持管理手法の省力化を目標とし,現状の目視検査の課題を指摘し,AIを活用した画像認識技術による変状データの自動抽出・分類に関する方法,保守用車によるコンクリート表面の自動撮影の方法,そして3D GISプラットフォームによるデータ管理を提案した.
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Le Trung Kien, 湊 俊彦, 佐藤 健一, 野村 昌弘, 深田 宰史
ジャーナル
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本研究の対象橋梁は,1959年(2024年現在,65年経過)に竣工された橋長15.0mの単純鉄筋コンクリートT桁橋である.対象橋梁は,近接目視点検により,主桁,支承および下部構造において健全性 IIIの判定を受けた.このような劣化した中小規模の橋梁に対する補修・補強や撤去・更新の最終判断は,非常に難しい問題である.本研究では,このような問題に対して,コンクリートの材料調査からのアプローチに加え,試験車2台を用いた静的載荷試験と有限要素解析の両面から主桁の構造性能評価を行い,残存耐荷力を明らかにすることで補修・補強や撤去・更新の判断材料の一つを提供した.
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林 和彦, 飛鷹 政亘, 酒井 凌, 福山 裕史, 渡井 忍
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劣化した既設ガードレール支柱に対して,鋼管内部に鉄筋コンクリート部材を3つに分割挿入し,内部で1つの部材に接合して支柱を補強する方法を提案した.高さ10mmの台形状のせん断キーを用いた分割部材の一体化について検討した結果,部材の曲げ破壊まで達し,鋼材の強度と鋼材量を確保した場合において設計耐力を満足することができた.定性的な解析の結果,分割部材の鋼管による拘束が効果的に機能し,部材界面に設けられたせん断キーがせん断力を伝達することで,一体化部材として曲げモーメントに抵抗すると推察した.
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酒本 知幸, 野村 昌弘, 亀田 浩昭, 熊谷 善明, 青山 敏幸, 柳田 龍平, 深田 宰史
ジャーナル
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石川県の日本海沿岸部に位置し,塩害劣化を生じたプレテンションPC桁の架替えに伴い,外観変状の異なる2本の桁を選定して静的載荷試験を行った.その結果,目視により顕著な剥離,鉄筋腐食が見られない桁の方が,コンクリートの剥離とPC鋼材の腐食がかなり進行した桁に比べて耐荷力が低下していた.本研究では,両桁の外観変状と耐荷力との整合性を検討するため,材料調査および各種試験を行ったところ,両桁ともに塩害とASRによる複合劣化を生じていたことがわかった.これらの結果をもとに,塩害による鉄筋腐食が顕著な桁を対象として,数値解析からPC鋼材の腐食範囲と曲げ耐荷力の関係を明らかにした.
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青島 亘佐, 常門 大祐
ジャーナル
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社会インフラの維持管理において,現状把握のための点検・調査の省力化及び効率化を図ることが近年の喫緊の課題の一つとなっている.この課題に対して,深層学習等のAIを用いた技術が注目を集めている.しかし,深層学習はデータの質と量への依存度が高く,実用に供する精度の達成がボトルネックとなっている.そこで,本稿では,下水道管渠を対象として深層学習による損傷検出の精度の向上を図り,そのうえで実務的な活用方法の検討を行った.検討の結果,深層学習を用いた損傷の検出が,下水道管渠のスクリーニング調査へ適用可能であることを確認できた.
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