ハムレットが親友ホレイショーに向かって言う。「様々の苦難にあっても苦痛の色を見せない、運命の女神からの打撃も恵みも等しく感謝の思いで受け止めるという男だからな、君は。幸せだよ、感情と理性がみごとに調和を保って、運命の女神の気紛れに吹き鳴らされる笛なんかに乗らない人達は。激情の奴隷になったりしない人がほしいのだよ、そしたら大事にしまっておく、胸の奥、胸の底の底にね、その人がつまり君さ。」(「ハムレット」第3幕、第2場木下順二訳)
「父の復讐を遂げたい」という感情をつのらせる一方で、「自分に暗殺の真意を告げた亡霊は、幻想にすぎなかったのではないか」と、理性で感情に歯止めをかける。シェイクスピアの描いたハムレットは、常に感情と理性の狭間で揺れ動き、人間の本質を浮き彫りにする。
抄録全体を表示