日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成27年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の219件中51~100を表示しています
口頭発表
  • 近堂 知子, 芹生 直子, 高橋 節子, 平尾 和子
    セッションID: 2C-a5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】加工食品に用いる澱粉は,天然澱粉に酵素的・化学的・物理的処理を施し種々の特性を付与した加工澱粉を使用することが多い。近年タピオカ澱粉にリン酸架橋,アセチル化リン酸架橋,さらに酵素処理を施した加工澱粉が開発された。そこで,これら加工澱粉の基礎的性質を未加工のタピオカ澱粉およびカスタードクリームによく使用される薄力粉,とうもろこし澱粉,薄力粉の主成分である小麦澱粉と比較した。
    【方法】試料はタピオカ澱粉にリン酸架橋(P),アセチル化リン酸架橋(AP),リン酸架橋+酵素処理(P+E),アセチル化リン酸架橋+酵素処理(AP+E)を施した4種の加工澱粉(グリコ栄養食品(株))とし,比較としてタピオカ澱粉,薄力粉,とうもろこし澱粉,および小麦澱粉の4種を使用した。澱粉の基礎的性質はDSCによる熱分析,ラピッドビスコアナライザーによる粘度特性,テンシプレッサーによるゲルの物性測定により検討した。
    【結果】1)タピオカ澱粉は糊化時の粘度がとうもろこし澱粉の約2倍,薄力粉の約5倍の最高粘度を示した。タピオカ澱粉ゲルの硬さは薄力粉ゲルの硬さに近似し,とうもろこし澱粉の約2/5であり,付着性は小さかった。2)加工タピオカ澱粉4種の粘度はタピオカ澱粉に比べて最高粘度が高く,冷却50℃時の粘度は約2.5倍と高い値を示し,ブレークダウンは小さく,熱安定性のある澱粉といえた。またゲルの付着性はタピオカ澱粉よりも大きく,とうもろこし澱粉の値以上であった。3)加工の種類による特徴としては AP,AP+Eは
    P,P+Eに比べて低温で糊化し,ゲルは軟らかく,付着性は小さく,凝集性の大きい物性を示した。さらにAP,AP+Eにショ糖を添加した際の粘度および物性に及ぼす影響は少ないという特徴が認められた。
  • 芹生 直子, 近堂 知子, 高橋 節子, 平尾 和子
    セッションID: 2C-a6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】先行研究により加工タピオカ澱粉4種の基礎的性質が明らかとなったことから,これら加工タピオカ澱粉の利用を検討する目的でカスタードクリームをとりあげ,未加工のタピオカ澱粉,一般的にカスタードクリームに使用される薄力粉,とうもろこし澱粉と比較検討した。
    【方法】試料はタピオカ澱粉にリン酸架橋(P),アセチル化リン酸架橋(AP),リン酸架橋+酵素処理(P+E),アセチル化リン酸架橋+酵素処理(AP+E)を施した加工澱粉4種(グリコ栄養食品(株))とし,比較としてタピオカ澱粉,薄力粉,とうもろこし澱粉の3種を使用した。カスタードクリームの調製は薄力粉または各種澱粉10g,砂糖50g,牛乳200g,卵黄30gを混合後,アルミ製鍋(直径15㎝×深さ9㎝)を用い蒸発量が15gになるまで中火で加熱した。物性は調製1.5時間後および冷蔵保存1,3,5日後にクリープメーターにより測定した。官能評価は評点法により,薄力粉に置換する各加工澱粉の最適割合の検討およびカスタードクリームに適する加工澱粉の種類の検討の2項目について行った。
    【結果】加工澱粉(P,P+E,AP,AP+E)を用いたカスタードクリームは4種とも近似の物性を示し,硬さはとうもろこし澱粉に近く,付着性はタピオカ澱粉の約8倍、薄力粉およびとうもろこし澱粉の約1.5倍と大きく、凝集性は薄力粉およびとうもろこし澱粉に近い値を示した。また冷蔵保存において,酵素処理をしていないPとAPは,タピオカ澱粉に比べて物性変化が少なく老化抑制効果が認められた。官能評価からPまたはP+Eを薄力粉の10%または20%置換したカスタードクリームは総合評価において薄力粉100%のクリームよりも好まれ,特にP+Eを置換したクリームは,食感の全ての項目において薄力粉100%のものよりも嗜好が高く,添加効果が明らかであった。
  • 明神 千穂, 松倉 美由紀, 加藤 友里恵, 新谷 優理香, 岩城 啓子, 藤田 修三, 川西(朝岡) 正子
    セッションID: 2C-p1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】もち小麦はアミロース含量がほぼ0%であり、つるつる・もちもちとした食感をもち、えん下のしやすさから、高齢者向けの食材としての利用が期待される。蒸しパンの小麦粉、白玉団子の白玉粉をもち小麦と一部置換し、高齢者に適した間食への利用および高齢者の食事支援への活用を目的として、調理特性および嗜好特性について検討を行った。
    【方法】もち小麦『もち姫』を蒸しパン・白玉団子に置換して試料を調製した。蒸しパン、白玉団子においては、レオメーターを用いた物性測定ならびに大学生を対象とした官能評価を、さらに地域の高齢者を対象とした嗜好調査も行い、もち小麦を置換による嗜好性について評価を行った。
    【結果】蒸しパンの物性測定では、もち小麦の置換割合が増加するほど「かたさ」の値が低下し、凝集性が上昇した。白玉団子の物性測定では、もち小麦の置換割合が高くなるほど「かたさ」が有意に増加し、「付着性」は有意に低下した。官能においては、もち小麦を25%、50%、75%置換した蒸しパンでは、味の評価の違いはみられなかったが、のどごしはもち小麦50%、75%置換がコントロールに比べ、有意に好ましいと評価された。白玉団子では、食感に関する項目と総合評価で、もち小麦25%、50%置換がコントロール(もち小麦置換なし)よりも好ましいと評価された。高齢者を対象とした蒸しパンの嗜好調査では、60歳以上において飲み込みやすさと総合評価では、もち小麦置換のものがコントロールより高く評価された。白玉団子では、全ての年代において、もち小麦置換の白玉団子が最も高く評価され、60歳代以上では、25%置換が最も飲み込みやすく、総合評価も高かった。以上のことから、もち小麦を置換した蒸しパンおよび白玉団子は、高齢者においても、飲み込みやすく、嗜好性も高いことが示唆された。
  • 西原 百合枝, 沖邉 敦代, 芹田 千穂, 江頭 和佳子, 朝倉 富子, 舟木 淳子
    セッションID: 2C-p2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】日本では現在、高齢者の摂食嚥下障害が問題となっており、嚥下困難者用食品の必要性が高まっている。本研究では嚥下困難者用食品としてパン粥に着目し、パンの材料や配合がパン粥のテクスチャーへ及ぼす影響を検討した。
    【方法】パンは直捏法で作製した。リーンな配合、リッチな配合のパンをそれぞれ強力粉と薄力粉を用いて合計4種類作製し、食パン型に焼成した。クラムを2cm角に切ったものを、パンの重量の3倍の水とともに攪拌した。試料温度を70℃に保ちつつ、10秒間に1回攪拌しながら、3分30秒間加熱しパン粥を作製した。45℃で30分間保温したパン粥と、20℃で60分間保温したパン粥について、それぞれクリープメータ(株式会社山電)を用いてテクスチャー解析を行った。
    【結果】45±2℃で測定した場合、パン粥の硬さは強力粉リーンが0.90±0.07 kPa、強力粉リッチが0.65±0.13 kPa、薄力粉リーンが1.42±0.30 kPa、薄力粉リッチが1.22±0.11 kPaであった。また、パン粥の付着性は、強力粉リーンが0.33±0.04 kJ/m³、強力粉リッチが0.23±0.06 kJ/m³、薄力粉リーンが0.63±0.21 kJ/m³、薄力粉リッチが0.51±0.04 kJ/m³であった。硬さと付着性いずれにおいても薄力粉リーンは強力粉リーン、強力粉リッチよりもそれぞれ有意に大きく(p<0.01)、薄力粉リッチも強力粉リーン、強力粉リッチよりそれぞれ有意に大きかった(p<0.01)。これは20±2℃で測定した場合も同様であった。薄力粉を原料としたパンを使用したパン粥は、強力粉を原料としたパンを使用したパン粥より硬く、付着性が高い傾向がみられた。
    本研究の成果の一部は、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、戦略的イノベーション創造プログラム委託研究の成果である。
  • 小俣 翔子, 川上 陽子, 下鳥 春奈, 北林 紘, 山崎 貴子, 岩森 大, 伊藤 直子
    セッションID: 2C-p3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】加工食品には食品添加物として、無機リン化合物が使用されていることが多く、これらは有機リン化合物に比べ、消化吸収率がよいことが知られている。患者にとって、リンの過剰摂取は高リン血症を惹起するため、食品添加物の含有に留意する必要があるが、原材料表示からはリン含有の有無はわかりにくい。我々は、食パンの総リン量、水溶性リン(無機リンの含有が高い)及び不溶性リン(有機リンの含有が高い)量を調べた。【方法】 市販食パン及び透析患者用のタンパク質調整食パンを破砕後、水で懸濁し、遠心分離して水溶性画分と不溶性画分に分離した。これらの画分と無処理の食パンをそれぞれ灰化し、バナドモリブデン酸吸光光度法にてリン量を測定した。その後リンを用いている可能性の高い食品添加物(イーストフード・乳化剤)の有無でリン量を比較した。【結果】タンパク質調整食パンの総リン量と水溶性リン量は、市販食パンの平均に比べるとそれぞれ約54%、31%であった。市販食パンにおいて食品添加物の有無で総リン量を比較すると、有意差はみられなかったが、可溶性リン量は食品添加物含有食パンのほうが有意に多かった。また、可溶性リン、不溶性リンの推定吸収率をそれぞれ90%、50%として試算すると、食品添加物が添加されている食パンのほうが有意に多かった。【考察】市販食パンにおいてリン量には有意差はなかったものの、食品添加物としてイーストフード、乳化剤を含有している食パンでは推定吸収率が高いことが示唆され、腎臓病患者はこれらの含有には注意する必要があると考えられる。しかしパッケージには、いずれもリンの記載はなく、リン含有のわかる記載が望まれる。
  • 臼井 桃美, 辻 美智子, 藤井 恵子
    セッションID: 2C-p4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】アレルギー対応と食料自給率向上という背景から米粉を利用した食品が市場に出回るようになったが、米粉で生産された食品は、価格、保存性が普及の障壁とされている。グルテンフリー米粉パンにおいてはデンプンの老化が急速に進むため、糊化状態の維持が課題である。そこでグルテンフリー米粉パンの製パン性向上を目的として、熱応答性キシログルカンおよびキサンタンガム粉末添加が製パン性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】米粉、砂糖、食塩、ドライイースト、オリーブオイルを基本材料として米粉パンを作製し、これをコントロールとした。これに熱応答性キシログルカン(MTG)およびキサンタンガム粉末(XT)を0.25%、0.5%、0.75%、1.0%の割合で添加してパンを作成した。材料を混合したのち37℃、RH90%で50分間発酵させ、200℃で14分間焼成した。焼成後25℃で2時間放冷後、比容積、色度、水分含量、破断特性を測定して製パン性を評価した。また生地の特性として動的粘弾性の温度依存性を求め、製パン性に及ぼす影響を検討した。
    【結果】グルテンフリー米粉パンにMTGおよびXTを添加すると、生地の貯蔵弾性率は増加傾向がみられたが、比容積は有意に低下した。またいずれの添加物の場合も0.75%以上の添加で水分含量は有意に増加し、破断応力、破断エネルギーは有意に低下したことから、コントロールに比べ軟らかくしなやかなパンができたと評価された。色度においては、XT添加ではa*値(赤度)、b*値(黄度)が増加傾向を示したが、MTG添加では低下傾向を示したことから、MTGを添加するとパンの焼き色が生じにくくなり、米粉の白色度が保持されることが示された。
  • 小嶋 幸恵, 伊藤 聖子, 新井 映子
    セッションID: 2C-p5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】グルテンフリーパンは、パンの基本骨格となるグルテンを含まないため、発酵や焼成時に発生した気泡を保持できず、膨化が不十分となる。この解決策として、キサンタンガムや澱粉などの増粘剤の添加によって生地の粘性を変化させる方法が報告されている。澱粉は糊化する事で増粘剤としての役割を果たすが、澱粉糊の性状は原料の違いや架橋化などの加工処理によって大きく異なる。本研究では、うるち米粉、もち米粉、タピオカ澱粉及びその加工澱粉で調製した糊を添加したグルテンフリーパンを焼成し、パンの品質を比較検討した。

    【方法】市販のうるち米粉(NGR)、もち米粉(GR)、タピオカ澱粉(TS)、リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉(PE)及びアセチル化リン酸架橋酵素処理タピオカ澱粉(APE)をそれぞれ水と共に加熱糊化したものを糊試料とした。各糊試料の粘度特性は、RVAを用いて測定した。製パン試験は、糊試料、水、うるち米粉、グラニュー糖、食塩、オリーブ油、ドライイーストを混合し、ホームベーカリーを使用して焼成した。焼成したパンは、外観・断面の観察、比容積及びクラムのテクスチャー測定を行い評価した。

    【結果】パンの比容積は、NGR糊添加パンと比較して、GR糊添加パンは小さく、TS糊添加パンは同等、PE糊及びAPE糊添加パンは大きくなる傾向を示した。GR糊添加パンは内部に空洞が生じ、他のパンと比較して内相が粗かった。一方、PE糊添加パンは他のパンと比較して微細な内相であった。パンクラムのテクスチャーは、GR糊添加パンが最も硬く、凝集性も低かった。NGR糊、TS糊、PE糊、APE糊添加パンの硬さ及び凝集性は、いずれもほぼ同等であった。
  • 伊藤 知子, 安藤 真美, 今義 潤, 江口 智美, 久保 加織, 髙村 仁知, 露口 小百合, 中平 真由巳, 原 知子, 水野 千恵, ...
    セッションID: 2D-a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】食用油原料であるゴマおよびナタネの生産性の高い栽培システム構築を目的とし、ゴマ「まるひめ」とナタネ「ななはるか」の輪作体系の確立が検討されている。これらの食用油原料としての特性およびその調理特性を明らかにするために、それぞれから調製された油の物理化学的性質、フレーバー特性等について検討を行った。

    【方法】試料油および対照として数種の市販食用油を用い、カルボニル価(CV)、酸価(AV)、粘度、色(ガードナー値)、成分等を測定した。フレーバー特性を明らかにするために官能評価を行った。また、揚げ媒体としての適性を調べるために、揚げ種としてバッターを用いて、170℃で15分ごとに合計3時間連続揚げを行った。

    【結果】「まるひめ」油および「ななはるか」油の粘度は市販サラダ油よりやや低めであった。「まるひめ」油はToc含量が高く、「ななはるか」油はクロロフィルを1.4ppm含んでおり、色が濃かった。「まるひめ」油および「ななはるか」油は対照の油と同様に、それぞれ「香ばしさ」、および「刺激臭」「酸敗臭」「青臭さ」が強い傾向にあり、いずれもやや香りが強い傾向にあった。この特性を利用し、「かけて食べる」など調味料的な利用方法が考えられた。揚げ調理に用いた場合、「まるひめ」油は発煙が多く、揚げ媒体としての適性は低かった。これには精製方法が影響していることが考えられた。「ななはるか」油は揚げ調理による粘度、CVの上昇はサラダ油と同じ程度1)だが、AV、色の上昇は少なく、揚げ媒体としての適性を有していることが分かった。1)伊藤他、国産菜種油の調理特性の比較、食科工、58、309-317(2011).
  • 早川 文代, 風見 由香利, 神保 聡子, 浦田 貴之
    セッションID: 2D-a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】こめ油は米糠を原料とし,稲の有効利用という利点に加え,風味のよさや健康に対する有益性から,市場では高価格で取引されている.さらに,加熱による酸化重合物の生成が少なく,また,油酔いしにくいことも知られている.すでに演者らは,未加熱のこめ油は後味が残りにくく,甘い香りやまろやかさが特徴的であることを示した(文献1).本研究では,加熱したこめ油の油脂風味の特徴を官能評価によって明らかにした.
    【方法】こめ油,とうもろこし油,なたね油,パームオレイン油,大豆油の市販あるいは業務用同等品を用いた.各油を180℃で0,60,120分間加熱し,試料油とした.試料油の性状として,脂肪酸組成,カルボニル価(CV),極性化合物(PC) 量等を測定した.油脂風味の強度の評価にはTime-Intensity(TI)法を用いた.訓練されたパネリスト8人が,試料0.3gを口に入れ,180秒後まで可動域10cmのTIスイッチで継続して評価した.波形から,最大強度,最大強度の時間,曲線下面積,全応答時間,30,60,90,120,150秒における強度を算出した.油脂風味の質の評価は,定性的なプロファイリング法を用いた.120分加熱の5種の試料油をテイスティングし,44語の候補用語から多肢選択で評価させた.
    【結果】加熱時間に伴って試料油のCVは増加し,こめ油以外の試料油4種のPC量は増加したがこめ油は増加しなかった.こめ油は,いずれの加熱時間の試料でも,口に入れてから60秒以降の油脂風味の強度が低く,後味の残りにくい油であることが示された.また加熱時間に伴う最大強度の増加はみられず,加熱に対する安定性の高さが示唆された.さらに,油脂風味の質の評価から,加熱したこめ油の特徴は、甘い香りや香ばしさであることが示された.(1)早川他,調理科学,47,333-340 (2014)
  • 野村 知未, 古谷 規行
    セッションID: 2D-a3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】小豆を煮熟する際は,初期の煮汁を捨てて新たな水に置換し再び加熱される“渋切り”の工程が行われ,タンニンやサポニンなどの不快味成分が除去される。渋切りのタイミングや回数は作り手側の勘によりおこなわれることも多い。渋切りにより除去される煮汁中には不快味成分の他に,小豆独特の香り成分も含まれるとされている。そこで本研究では,品種や調理加工法の違いによる煮熟小豆の香りの変化について検討することを目的とした。
    【方法】試料は,北海道小豆の‘エリモショウズ’と京都大納言小豆の‛紅舞妓大納言’,‘馬路大納言’とした。それぞれを渋切り方法を変え,小豆重量の5倍の水を加えて煮熟後の硬さが品間で同じになるまで常圧で加熱した。得られた煮熟小豆の香りについては,におい識別装置(FF-2020/島津製作所)を用いて9種の基準ガス(硫化水素,硫黄系,アンモニア,アミン系,有機酸系,アルデヒド系,エステル系,芳香族系,炭化水素系)をもとに香りの強さ(臭気寄与),および質(類似度)の評価を行った。
    【結果】渋切りの有無によって,各品種とも渋切りを1回行うことで臭気寄与が小さくなり,香りの強さは減少した。また,渋切りを1回した煮熟小豆の香りを品種間で比較すると,臭気寄与に大きな差は認められないものの,類似度については‘馬路大納言’ではアミン系,エステル系,芳香族系の値が他品種に比べて高く,品種によって香りの質が異なることが示された。 今後はさらに,真空加熱,圧力加熱など調理法の違いが香りに及ぼす影響について検討する。
    なお,本研究は,日本豆類協会の補助金(平成27年度)を得て実施した。
  • 吸水率、調理方法による大豆のビタミンB1量の変化
    吉田 恵子, 伊部 さちえ, 古庄 律, 四十院 成子, 岡本 洋子
    セッションID: 2D-a4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】現在の「調理学」の教科書に記載されている豆類の吸水率は、1983年に松元文子先生によって作成されたものがほとんどである。演者らは改めて各種豆類(大豆など7種類)について吸水率を測定し新データを作ることを目的とした。また大豆を調理するときに、0.3%重曹水中で調理するとアルカリにより大豆中のビタミンB1が減少するという記述も、多くの教科書に記述されている。ビタミンB1は水溶性であり、アルカリで分解されるというデータはあるが、大豆中のB1が重曹添加で減少するという報告はみあたらない。そこで大豆の調理方法とビタミンB1量の関連についても検討することを目的とした。
    【方法】吸水率の測定には、黒大豆、大豆、大福豆、金時豆、うずら豆、ささげ、小豆を用い、水に浸漬後2時間ごとに24時間吸水量を測定した。調理方法によるビタミンB1量については、丹波錦白大豆を用い、水中加熱、1%食塩水中加熱、0.3%重曹水中加熱を行った豆について、pHを測定後、ビタミンB1量を定量した。定量方法は前処理後、TSKgel Amide-80カラムを用いHPLC で定量した。
    【結果】吸水率:7種の豆類のうち吸水率の高かった豆は黒大豆で、他の豆類も以前のデータとは異なる挙動を示した。ささげは小豆と違い種瘤からのみではなく、表皮全体から吸水され吸水曲線のカーブも大豆に似ていた。
    3種の調理方法による大豆のビタミンB1量:水煮での煮豆、1%食塩水での煮豆、0.3%重曹水での煮豆ともに、生の時の約30%に減少した。この減少は添加物の影響はなく、調理することにより水溶性であるビタミンBが煮汁などに溶出したためと熱で分解したものと推察される。
  • 古谷 規行, 野村 知未, 松井 元子, 大谷 貴美子
    セッションID: 2D-a5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】京都府産の大納言アズキの需要は高いものの,生産は減少傾向で需要量を満たしていない。そこで京都府では生産しやすく加工適性の高い品種育成を進めている。これまでは収量性,耐病性など生産面の評価が得られた後に製餡特性など実需評価を受けていた。育種の一層の効率化を図るため,生産面の評価と同時に理化学的特性により加工適性の評価を行うために,高品質とされる大納言品種の理化学的特性について調査を行い,加工適性の指標となる項目について検討した。また,和菓子組合員から高品質な大納言アズキに必要な特徴・形質について聞き取り調査を行った。
    【方法】京都府が育成した紅舞大納言,京都大納言や馬路大納言,瑞穂大納言の在来小豆などを試料とした。各品種の形状,色調,百粒重,種皮歩合の調査を行った。60,75,90,105,120分間加熱した煮熟アズキの物性測定はクリープメータ(RE2-3305B/YAMADEN)で3種類のプランジャー(くさび,円柱,針)を用い,煮熟アズキの餡粒子径の測定はレーザ回折式粒子径分布測定装置(SALD-3100/SHIMADZU)を用いて調査を行った。
    【結果】形状は俵型(両端が平ら)から烏帽子型(一端が少し尖った)に分類された。色調はL*値の差異は小さく,a*値(赤み)において差が認められた。種皮歩合や7.9~8.9%(北海道産アズキ9.4~10.4%),餡粒子の平均経は133~157μm(エリモショウズ102μm)であり,煮熟増加率・破断強度の経時変化においても品種間差異が認められた。今後,和菓子業者が品種毎に調整した粒あんを官能試験に供試して理化学的データとの関連性について検討し,加工適性の育種時における評価指標の確立を目指す。
  • 郡山 貴子, 佐藤 瑶子, 飯島 久美子, 香西 みどり
    セッションID: 2D-a6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】豆を高温高湿下で貯蔵すると硬化が起こることが知られている。また,野菜の硬化は主に60℃付近の低温域で顕著にみられる。乾物である豆は保存性の高い食材であり,調理の際には浸漬処理を必要とすることから,貯蔵および温水浸漬処理による豆の硬化が加熱時間に影響すると考えられる。そこで,本研究では豆の硬化に及ぼす貯蔵および温水浸漬の影響について検討することを目的とした。
    【方法】試料は大豆,金時豆,八升豆の3種を用いた。貯蔵条件は‐20℃,4℃/35%,4℃/80%,20℃/60%,30℃/75%,貯蔵期間は0~11ヵ月とし,浸漬温度は,20℃,50℃,60℃,70℃,80℃,浸漬時間は0~24時間とした。貯蔵および浸漬処理後に試料を加熱し経時的に硬さを測定した。また,ペクチン分画および定量(カルバゾール法),金属イオンの定量(原子吸光光度計),たんぱく質の定量(ケルダール法),でんぷん糊化温度(DSC),SDS-PAGEを測定した。
    【結果】すべての豆に共通して30℃/75%貯蔵では3ヶ月後より硬化が生じ,金時豆と八升豆では4℃/35%,20℃/60%貯蔵においても硬化した。いずれの豆も50℃~70℃浸漬8h以降に硬化がみられ,豆も野菜と同様60℃付近で硬化することが示された。また,豆の硬化に吸水率の変化は直接関わっていないことがわかった。成分変化として,30℃/75%貯蔵により硬化したすべての豆でたんぱく質の不溶化がみられた。金時豆と八升豆において,硬化した豆ではたんぱく質が変性し,その影響によりでんぷんの糊化が妨げられたことが示唆された。また,硬化した八升豆ではたんぱく質同士の相互作用が示唆された。豆の硬化には貯蔵,温水浸漬ともに影響を及ぼすが,現象,機構は品種により異なることが示唆された。
  • 重松 明子, 今井 悦子
    セッションID: 2D-p1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】スポンジケーキのような菓子類では、卵白は泡立てて用い、その泡の特性が製品の品質に大きく影響する。多くの料理本や参考書、学術論文には、卵白への油や卵黄の混入は微量であっても起泡性を大きく低下させると書いてある。しかし予備実験では、卵白への少量の油の添加は必ずしもそうとは限らないのではないかと考えられた。そこで、本研究では卵白の起泡性に及ぼす油及び卵黄混入の影響について明らかにすることを目的とした。
    【方法】市販鶏卵の卵白100g(だけをコントロール:C)に、食用サラダ油を卵白の0.1~3%(油泡)、または卵黄を0.1~1%(卵黄泡)添加し、Kitchen Aid Mixerを用い、S6で2~8分間泡立てた。継時的に得られた泡の外観を写真撮影し、比重、離液率(10~30分)、テクスチャー特性値等を測定した。それぞれ最も良い泡立て時間の泡を用いて、シフォンケーキ及びエンゼルケーキを焼成し、高さ及び体積を測定した。
    【結果及び考察】外観から判断した最も良い泡は、Cは3分で、油を添加してもそれは変わらなかったが、卵黄泡は添加量が増加するにつれて良い泡を得るための泡立て時間が長くなった。外観の良い泡の比重においてCと有意差がなかったのは、油泡では2%まで、卵黄泡では0.1%までであった。30分後の離液率は、油泡も卵黄泡も0~最大量まで有意差はなかった。泡の硬さ、凝集性、付着性においてCと有意差がなかったのは、油泡の全てと卵黄泡の付着性で、卵黄泡の硬さと凝集性は0.2%までであった。シフォンケーキ及びエンゼルケーキの高さは、油泡では1%まで、卵黄泡では0.1%までCと有意差がなかった。微量の卵黄の混入は、卵白の起泡性や起泡卵白を用いた菓子類の品質低下をもたらすが、油混入の影響は卵黄より小さいと考えられた。
  • 山本 亜衣, 吉岡 慶子
    セッションID: 2D-p2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】キウイフルーツは、タンパク質分解酵素アクチニジンを含み、食肉をその果汁に浸漬すると、アクトミオシンおよびコラーゲンを分解して肉質の軟化に作用する。本研究では豚肉をキウイ果汁に浸漬し、加熱豚肉の物性測定、組織観察および官能評価を行い、豚肉への軟化効果と嚥下調整食への応用性を検討した。
    【方法】試料調製:キウイフルーツはHayward種を用い、ミキサーで砕切してろ過し、キウイ果汁とした。試料肉は、豚ロース肉(LWD種)を厚さ15mmに切り、肉重量の50%のキウイ果汁に浸漬し、3時間、24時間浸漬保存した。浸漬後、過熱水蒸気オーブンで中心温度が80℃に達するまで8分-10分加熱した。物性測定:テンシプレッサー、卓上型物性測定器でテクスチャー試験を行った。組織観察:試料肉片を化学固定し、走査型電子顕微鏡(S-3000N)で観察した。官能評価:栄養科学部学生17名で評点尺度法で官能評価を行った。
    【結果】加熱肉のかたさは未処理肉、3時間、24時間の順に浸漬時間の経過に伴って軟らかい性状を示した。組織観察において、3時間浸漬肉ではコラーゲンの細い線維は消失し、太い線維の残存がみられ、24時間ではいずれのコラーゲン線維もほとんど認められなかった。官能評価では未処理肉の方が外観、食味が良く、弾力があると評価された。肉質の軟らかさ、噛み切り易さの項目では、未処理肉に比べ、浸漬処理肉の方が、軟らかく、噛み切り易いと評価された。さらに、薄切り肉やひき肉などの肉片の形状と酵素作用時間などの調理条件の検討により嚥下調整食への応用が可能であった。
  • 楠瀬 千春
    セッションID: 2D-p3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】終末期の食事は患者様の状態に合わせた幅広い対応が必要である。独立型緩和ケア病棟(以下S病院)で提供されていたステーキは、ゲル化剤で固めているためにゼリー状で本来の食感と大きく異なっていた。本研究では、咀嚼および嚥下困難者に適した、食塊の形成性を保有するだけでなく、ステーキとしての食感やおいしさを保有したソフト食の開発を目的とした。牛、鶏肉、豚肉のステーキを調製し、レオメータを用いて物性を測定し、評価を行った。 【方法】ステーキのソフト食の調製方法は、肉、山芋、サラダ油、卵、水を全てフードプロセッサーで粉砕したものを流し缶に分注し、蒸し器で20分間加熱後にフライパンで両面を焼いた。肉は、牛肉(肩ロース肉およびランプ肉)、豚肉(ロースおよびもも肉)、鶏肉(むね肉およびもも肉)を用いた。副材料については、山芋の添加量について50%~70%の範囲で配合割合の検討を行った。食塊の形成性、箸での扱いやすさなどについて順位法による官能評価を行った。パネルは、食物栄養学科学生5名(平均22才)とした。また、S病院の管理栄養士1名と、医師を含む医療スタッフに病院食としての評価を依頼した。硬さ、付着性、凝集性については、山電(株)製レオメータを用いてテクスチャー試験を行った。 【結果】副材料の芋は山芋が肉の味を生かした味となりサラダ油がなめらかさを付与し、やわらかさ味共に評価された。また、官能評価では、牛肉はランプ肉に変更することにより、食塊の形成性が向上し外観や味も向上したと評価された。また、豚肉はロース、鶏肉はもも肉の評価が高かった。しかし、テクスチャー解析では、牛肉は、最大荷重がえん下困難者用食品たる表示の許可基準の基準値を上回ったが、鶏肉、豚肉に関しては基準に適合した。
  • 安藤 真美, 北尾 悟, 小幡 明雄
    セッションID: 2D-p4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】生醤油は、製造工程において火入れ(加熱処理)を行っていないため、鮮やかな色や風味が豊かである特徴を有している。また酵素類が失活していないため、食材に対してたんぱく質分解作用などを活用することも期待できる。これまでにイカ肉を生醤油に漬けると、肉質が柔らかくなり、官能評価でも有意に好まれる結果を得た1)。そこで、本研究では、肉料理に醤油が使われることが多い現状をふまえ、生醤油の牛肉に対する調理特性を調べた。
    【方法】比較的均一な肉質である牛もも肉(国産)を、100%または50%濃度にした濃口生醤油(試験区:キッコーマン製)または濃口醤油(対照区:キッコーマン製)に25℃で8時間または20時間浸漬後、未加熱および加熱(沸騰水中2分)したものを分析に用いた。分析項目は、プロテアーゼ活性(しょうゆ試験法)、色調(測色色差計)、破断応力(レオメーター)、食塩量(伝導度式塩分計)、アミノ酸量(アミノ酸分析計)、たんぱく質組成(SDS-PAGE)、および官能検査(評点法)である。
    【結果】未加熱の場合、浸漬後の牛肉の塩分量に比例して硬くなったが、どの条件でも試験区の方が柔らかかった。加熱の場合も同様に塩分量に比例して硬くなったが、50%濃度では試験区の方が対照区よりも柔らかかった。軟化の原因は、遊離アミノ酸量およびSDS-PAGEの結果から、食塩による脱水ではなく、たんぱく質分解酵素に起因するものと推察された。100%濃度で20時間浸漬した試料と、50%濃度で8時間浸漬した試料について官能評価を実施したところ、香り・やわらかさ、おいしさ(総合評価)において試験区のほうが高い評価であった。実際の調理に応用するために、醤油濃度・浸漬時間および温度などの詳細な検討が必要である。1)2014年度日本食生活学会
  • 藤原 朋宏, 渡瀬 隆也, 松井 繁幸, 相原 和真, 佐野 文美, 市川 陽子
    セッションID: 2D-p5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】近年ニホンジカの高密度化、食害の対策として管理捕獲が実施されており,大量に発生する鹿肉の有効利用,捕獲活動の継続にはシカの食資源化技術の発展が必要である。シカは狩猟方法によって受けるストレスに差異がある1)が,その精肉としての鹿肉への影響の検討は行われていない。そこで,本研究では捕獲方法の異なるシカの食肉特性を明らかとすることを目的とした。
    【方法】試料には,伊豆市でくくり罠および巻き狩りにて捕獲された3歳のメスの野生ニホンジカの背ロース肉,各3個体分ずつを用いた。これらの鹿肉は,捕獲後,食肉加工施設「イズシカ問屋」にて精肉,冷凍されたものを入手し,保水性測定(水分量(生肉),Cooking Loss:CL),物性測定(硬さ応力(生・加熱肉),せん断力価(加熱肉)),色彩測定(Lab表色系(生・加熱肉)),アミノ酸測定(生肉),官能評価(採点法)を行った。
    【結果】くくり罠は巻き狩りに比べて水分量が多く,CLが低い傾向がみられ,保水性が高くなっていた。硬さについては,くくり罠は生肉,加熱肉ともに硬さ応力で低値を示し,せん断力価も巻き狩りと比較して有意に低値を示した(p<0.05)。色については,生肉のL*,a*,b*のいずれも,巻き狩りよりも有意に高値であったが(p<0.05),加熱肉においては差がみられなかった。アミノ酸分析では,くくり罠は遊離アミノ酸総含有量が多く,ジぺプチドは少ない傾向が示された。官能評価では,くくり罠が有意に軟らかいと評価されたが(p<0.05),全体的なおいしさには差がみられなかった。以上の結果から,くくり罠捕獲では保水性が高く,軟らかで,明るい鮮やかな肉質の鹿肉が得られることがわかった。
    1)山田晋也ほか,Wildlife and Human Society 1(1):1-5,2013
  • ―乳β-ラクトグロブリン及び卵白アルブミンの場合―
    加藤 つばさ, 吉田 千奈美, 太田 尚子
    セッションID: 2E-a1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】タンパク質性食品の加工特性を制御する上でその加熱誘導ゲル形成性は重要であるが、今回はβ-ラクトグロブリン(β-LG)及び卵白アルブミン(OVA)を試料とし、超音波分光分析(US)並びにブルーネイティブ-PAGE(BN-PAGE)を用い一連のゲル化過程の初期段階、即ち可溶性凝集体の形成について調べた。
    【方法】2.5 % (w/v) タンパク質溶液を 0.1M NaCl に溶解、温度上昇に伴う粒子サイズの変化を、超音波減衰値を指標に解析した。次にUSを用い加熱・冷却過程で、一部を分取しBN-PAGEに供した。
    【結果】用いたタンパク質は変性に先立ち、モルテングロビュール状態を経る事、又β-LGではネイティブ状態でダイマー、温和な処理でモノマーになる事が報告されているが、USの結果、25℃での測定開始時では粒径は220~250nmであり、これは、既報によるβ-LGのモノマー粒子の平均的な直径(55 nm)の4~5倍である事を示唆した。その後モノマーに近いサイズまで小さくなったが、60℃以降その粒子径は一時的に上昇に転じた。分取試料のBN-PAGEの結果、70℃付近以降、分子量100万程度の高分子量会合体が観察された。本実験は通常のゲル化濃度(5%程度)より低いが、本実験を通して、既報の50℃以下で観察されるタンパク質のモノマー化及び60℃付近での小さな凝集体をモニターする事ができた。更に、95℃で保持後の冷却過程において40℃付近で320~350 nmに達し、それ以降は減衰が大きく粒径の算出ができなった。以上、加熱誘導ゲルと呼ばれるタンパク質のゲル形成過程においてもその凝集体形成での冷却過程の重要性が示唆された。
  • 小川 歩実, 平野 聡美, 香西 みどり
    セッションID: 2E-a2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】果物および野菜をゲルで固めた農産物の再構成食品は介護食やユニバーサルデザインフードに利用されているが,個々の利用者に合わせて加熱調理可能なものは少ない。本研究では,先1)に報告した調味液中で加熱可能な“野菜ゲル”について,調理加工への応用可能性を詳細に検討することを目的とし,調製条件の改良と,保存性を高めるための冷凍・乾燥耐性についての検討を行った。
    【方法】ニンジンを皮ごと使用し,搾り液を用いない野菜ゲルの調製条件を検討した。ニンジンピューレ 70.0 %,ジェランガム 1.0 %,乳酸カルシウム 0.6 %,脱イオン蒸留水 28.4 %からなる野菜ゲルを調製した野菜ゲルは1.5cm角に成型し,-4℃で24時間冷凍,または冷凍後4℃で24時間解凍した後,30分間沸騰水加熱した。また,野菜ゲルを凍結乾燥し,4分間沸騰水加熱した。それぞれについて重量変化,かたさを測定した。かたさの測定はテクスチャーアナライザーTA.XT Plus (英弘精機,φ5mm)を用いた。対照として生ニンジン,ゆでたニンジン,ジェランガムのみのゲルを用いた。
    【結果】冷凍・解凍により,ジェランガムのみのゲルは激しく離水しゲルが凝集し,実際のニンジンはかたさが著しく減少した。一方,野菜ゲルは冷凍耐性および冷凍後の加熱耐性を有し,冷凍前よりもやわらかくなるが煮崩れなかった。冷凍した野菜ゲルは,解凍の有無によって加熱後の物性・重量は変化せず,解凍せずに加熱可能であった。凍結乾燥したジェランガムのみのゲルは乾燥過程でゲルが一部崩壊し,加熱により溶解した。実際のニンジンは凍結乾燥後の加熱で変形し,かたさが著しく減少した。これに対して野菜ゲルは乾燥耐性を有し,凍結乾燥後の加熱による重量・かたさの復元率が大きかった。    1)平野ら,食科工誌,60,418-424(2013)
  • 佐藤 瑶子, 八川 梨紗, 飯島 久美子, 辻 ひろみ, 香西 みどり
    セッションID: 2E-a3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】根菜類の煮物は給食施設でも頻繁に提供される調理品であり、調理の際には煮くずれが問題となる。煮くずれが多すぎると予定した量の提供ができず、給与栄養目標量と実施給与栄養量に差が出る原因となる。さらに、給食施設運営の観点からは光熱費の抑制も重要である。これらを解決する方法として余熱の利用が有用であると考えられるが、大量調理において余熱を利用して煮物を調理する際の最適加熱時間の予測という観点の報告は見られない。そこで、煮物を大量に調理する際の最適調理条件の設定を目的とし、余熱利用調理に着目して検討を行った。 【方法】ガス回転釜(55L容量)を用い、水10~50kgを加熱し、温度上昇期及び消火後の温度下降期の水温変化を測定した。加熱法は水から加熱・余熱利用、水から加熱・余熱利用なし、沸騰のみの3通りとし、水温変化の実測値に基づき、ジャガイモ、ダイコン、ニンジンの2及び3cm角の試料内部の温度及び硬さの変化をシミュレーションし、適度な硬さに仕上げるための最適加熱時間を予測した。 【結果】水温変化は水量が多いほど緩慢となった。シミュレーションの結果、水から加熱して沸騰直後に消火した場合、消火後適度な硬さになるまでの時間はジャガイモ2cm角で7~8分、3cm角で12~18分、この時の水温はそれぞれ98.9~94.8℃、95.2~89.0℃であった。余熱利用なし場合の沸騰継続時間は、水から加熱でジャガイモ2cm角が6~7分、3cm角が12~14分、沸騰のみで2cm角が10.2分、3cm角が18.0分であった。試料内部の硬さの分布の予測より、水から加熱・余熱利用は沸騰継続のみよりも硬さが均一で煮くずれしにくいことが視覚的に示された。
  • 山内 知子, 阪野 朋子, 小出 あつみ, 間宮 貴代子
    セッションID: 2E-a4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】本研究ではアシタバの持つ機能性成分を有効に利用するため、身近な加工食品であるうどんの中力粉の一部をアシタバ凍結乾燥粉に置換した麺を調製した。アシタバ置換量および調理操作が、麺中のポリフェノール量、抗酸化活性、嗜好性に与える影響ついて検討した。
    【方法】アシタバは、凍結乾燥(-80℃、24時間)後、ミルで摩砕し250μmのふるいにかけて粉末にした。中力粉200gのうち3%(6g)、5%(10g)、7%(14g)をアシタバ粉で置換してうどんを調製して試料とした。機能性測定のポリフェノール量はFolin Denis法、抗酸化活性はDPPHラジカル捕捉活性測定法(以下、DPPH)で測定した。対照としてアシタバ無置換うどん(以下、対照)を作成した。また、官能評価は順位法による嗜好評価を行った。官能評価は本学の教職員及び学生29名(29.2±14.4歳)を対象とした。データは一元配置分散分析後、多重比較法のTukey法またはNewell&MacFarlane法で行い、統計的有意水準を5%で示した。
    【結果】置換うどんのポリフェノール量は、生麺・茹で麺ともに対照と比較して置換量の増加に伴い、有意(p<0.05)に増加した。DPPHも同様の結果であった。また、生麺と茹で麺を比較すると、茹で麺中のポリフェノール量は全ての試料において生麺より約70%減少し、DPPHは約60%減少することが明らかとなった。嗜好評価の総合評価で対照・3%・5%と比較して7%は有意(p<0.05)に好まれないことが明らかとなった。以上の結果より、置換量の増加に伴い機能性成分量は増加したが、置換量の増加が嗜好性の低下につながったと推察された。

     
  • 久松 裕子, 長尾 慶子, 小林(粟津原) 理恵
    セッションID: 2E-a5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】我々は、植物性食品の効率的な摂取方法として、半乾燥状態に着目し研究を行っている。今回は、生食することが多く、ビタミン、ミネラル及び食物繊維の重要な給源である果物を半乾燥させて、機能性の評価として抗酸化能測定を行った。また、果物をヨーグルトに加えた調理品を想定し、両者の組み合わせによる抗酸化能の変化を追跡した。
     【方法】試料として国産のキウイを取り上げた。先ず生キウイをソース状にし、基準の生試料とした。次に、半乾燥試料として、天日ならびに恒温庫にて生重量の50%まで乾燥後にソース状にした試料を得た。予備実験で、キウイの芯と平行に切った縦型形状よりも、芯に対して垂直に切る横型形状の方が、乾燥時間が短くて済んだことから、本実験のキウイは芯に対して垂直に4等分し乾燥させた。さらに調理品として、市販の無糖ヨーグルトに、生及び半乾燥(天日、ならびに恒温庫)キウイソースをそれぞれ20wt%添加した、ヨーグルト混合3試料を調製した。上記の各試料は、凍結乾燥後粉砕し、70vol%エタノールで抽出させて、抗酸化能測定に供した。抗酸化能は、ケミルミネッセンス法により、活性酸素ペルオキシラジカル捕捉活性としてIC50値を算出し、さらにトロロックス当量に換算、評価した。
    【結果】抗酸化能では、生のキウイに対して天日乾燥、ならびに恒温庫乾燥のいずれにも有意差は無く、同等に高い抗酸化能を維持できることが示唆された。また、調理品のヨーグルト混合3試料においても、生のキウイを添加した試料と半乾燥キウイ混合各ヨーグルト試料間に有意差がみられなかった。これらの結果から、果物類における半乾燥状態は、生同様に高い抗酸化能を維持できることが示唆された。
  • 原田 和樹, 和田 律子, 福田 翼, 内山 晃一, 柿野 敦志, 加藤 愛, 小谷 幸敏, 磯田 克典
    セッションID: 2E-a6
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】鳥取県にて産官学共同で開発された「まぐろ魚醤」は,通常,廃棄するマグロの内臓に食塩,醤油麹,耐塩性酵母を添加し発酵させた調味料である。美味との高評価により既に市販されているが,遊離アミノ酸分析と嗜好性検査により,大豆醤油に比べてグルタミン酸の量が多い事などが美味に寄与していると推定した1)。本研究では,付加価値となるイン・ビトロ系での健康増進機能性の一つである抗酸化能と,消費者目線での嗜好性検査を行った。
     【方法】抗酸化能は,ペルオキシラジカル消去活性能を指標としたH-ORAC法を用いて調べ,方法は定法に従った。嗜好性検査は,2015年3月から4月にかけて下関市立しものせき水族館・海響館で実施したオープンラボ「魚の醤油を味わってみよう」で,アンケートの一環として行った。全世代のデータが得られたが,10歳未満のデータは信頼性が乏しいと判断しデータから削除した。アンケート総数311名のうち有効アンケート数は214名であった。
     【結果】市販品のマグロ魚醤の「天然本まぐろ魚醤”ぎょ”」のH-ORAC値は,5,145 ± 130 μmolトロロックス当量(TE)/100 ml(n = 3)であった。この値を,魚醤群のORAC値のデータベースと比較すると,鯛魚醤のORAC値と似た値を示し,日本の伝統的な魚醤である「しょっつる」よりも高い数値となった。特筆すべきは,内臓の中でも白子のみで調製した「マグロ白子魚醤」は,ORAC値が6,696 ± 201 μmol TE/100 mlと高いORAC値を示し,サケ魚醤やタラ魚醤,エビ魚醤,ナンプラーに比べて,高い抗酸化能を示した。嗜好性検査の結果については,50歳台のアンケートでは,有意差はなかったが,高評価である「ふく魚醤」,「くじら醤油」,「うに魚醤」と比較して,最も高評価であった。
     1) 加藤愛,小谷幸敏: マグロ内蔵を原料とした魚醤油の開発, 日本醸造協会誌, 105, 31-35 (2010).
  • 河北 雄一郎, 新居 早也佳, 橋本 博子, 永谷 基浩, 村井 一人, 竹田 博幸
    セッションID: 2E-p1
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】国立循環器病研究センターの減塩食「かるしおレシピ」は素材のうま味を引き出す京料理の考え方をベースとして、美味しく食べられるように工夫されている。レシピの基本はだし汁1.3Lに淡口醬油50ml、砂糖30g、塩6gを合わせた八方だしで、煮物から下茹でなど様々な調理に利用できる。一般的な八方だしには淡口醤油が多用されるが、かるしお八方だしにも淡口醤油が必須の調味料として使用されている。そこで本研究では、かるしお八方だしに淡口醤油を使う意義を解明することを目的とした。【方法】減塩調理に醤油が及ぼす影響を評価するため、淡口醤油と濃口醤油各々で調製した八方だしで、長芋の煮物、大根とうす揚げの煮物、ぶり大根、鯛の煮付け、治部煮、筑前煮を同条件で調理し、SD法による官能評価を行った。既に我々は塩味とだし風味について、淡口醤油中の方が濃口醤油中に比べ低い濃度で識別できることを報告してきたが、甘味は検討できていなかったため、本報告では甘味を識別できる濃度を調査した。淡口醤油と濃口醤油を用いてうどんだしを調製し、砂糖濃度1%を中心としてその濃度差を変えて2点識別試験片側検定にて甘味の閾値を比較した。【結果】減塩調理時の官能評価では全てのメニューで淡口醬油が濃口醤油よりも「素材の味が生きる」項目で有意差が見られた(P<0.001)。また、淡口醤油では砂糖濃度1%と1.25%の差を有意水準0.1%で識別できたが、濃口醤油では識別できなかった。以上より、淡口醤油は、塩味やだし風味に加えて、甘味を感じやすいことが明らかとなり、素材の味を引き立て、料理を低塩で美味しく仕上げることができる点で、かるしお八方だしに必須であることが示唆された。
  • 宮本 有香, 篠原 梨瑶, 田川 由紀子, 山本 亜弥, 橋本 多美子, 小幡 明雄
    セッションID: 2E-p2
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】近年、食嗜好の多様化に伴い、通常のしょうゆと異なり、色が薄く、香りが穏やかなしょうゆ(生しょうゆ)が開発され、話題を集めている。生しょうゆはしょうゆの香りの強さに関係する火入れ(加熱処理)をしていない。本研究では、通常のしょうゆ(火入れしょうゆ)と製造法の異なる生しょうゆの官能評価および、それらに適したメニューについて検討し、それぞれのしょうゆの嗜好性および調理特性を調べた。 【方法】製造法の異なるしょうゆとして、火入れしょうゆ(丸大豆しょうゆ:キッコーマン)と、生しょうゆ(丸大豆生しょうゆ:キッコーマン)を用い、女子大学生420名(19.6±1.9歳)およびその保護者156名(49.5±4.5歳)に対し、味や香りについて分析型および嗜好型官能評価を行った。さらに、火入れしょうゆと生しょうゆを用いた調理品として「炊き込み御飯」、「酢豚のたれ」に対する官能評価もあわせて実施した。 【結果】女子大学生、保護者間で大きな差はなかった。両者ともに、「火入れしょうゆ」に比べ「生しょうゆ」は、色が薄くて、香りが弱く、塩味を弱く感じる人が多く、嗜好試験では生しょうゆのほうが、「香り」、「旨味」、「塩味」、「甘味」の項目で有意に好まれていた(χ2検定)。また、調理品の官能評価では、生しょうゆを加えて炊飯した「炊き込み御飯」で、「甘味」を強く感じている傾向があったが、有意な差は認められなかった。一方、「酢豚のたれ」では、生しょうゆを用いたたれのほうが「香り」、「甘味」、「酸味」で好む人が多く、総合的な嗜好評価でも有意に好まれていた(χ2検定)。以上の結果から、生しょうゆは「穏やかな香り」、「旨味」、「塩味」などで好ましく感じられており、「酢豚のたれ」ではその特性が活かされたものと推察した。
  • -ケア・ハウス入居者に対する調査-
    菊池 節子, 善方 美千子, 長谷川 浩司, 小幡 明雄, 藤本 健四郎
    セッションID: 2E-p3
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
     【目的】食塩の過剰摂取は高血圧を引き起こすことから、食塩摂取量のさらなる低減が望まれている。昨年度、我々は女子大学生を対象とした減塩調理への慣れに関して報告した1)。今回は、高齢者を対象として、濃口醤油の半分の食塩含量である減塩醤油を継続使用した場合(減塩生活)の減塩調理に対する慣れの影響について検討した。
     【方法】ケア・ハウス入居者58名(男性16名、女性42名、83.9±7.6歳)に以下の試験をお願いした。(1)官能評価(減塩生活前):①濃度の異なる食塩水を用いた濃度差識別試験。②食塩濃度の異なる醤油で調理した「里芋含め煮」の濃度差識別試験ならびに鹹味嗜好試験。③食塩濃度の異なる醤油による「マグロ刺身」鹹味嗜好試験。(2)減塩生活(37日間):調理に使用する醤油をすべて減塩醤油(食塩含量7.8%、キッコーマン製)に置き換えて生活。(3)官能評価(減塩生活後):(1)と同様の試験を実施。なお、(2)の期間中、醤油使用量を記録した。
     【結果】(1)「マグロ刺身」鹹味嗜好試験において、減塩生活前の試験では、2種の醤油間に嗜好の差はなかったが、減塩生活後の試験では、減塩醤油につけたものが濃口醤油につけたものより有意に好まれた(p<0.01)。(2)「里芋含め煮」の最も好まれた食塩濃度を減塩生活前後で比較すると、減塩生活後に低くなる傾向にあったが、有意な差は認められなかった。(3)施設の給食に使用している濃口醤油を減塩醤油に置き換えて調理した結果、減塩生活前の濃口醤油使用量は9.2g/日、減塩生活中の減塩醤油使用量は7.9g/日で、減塩醤油の使用により、食塩摂取量は1.3g/日減少した。これらの結果から、高齢者においても減塩醤油の継続使用により、減塩調理に対する慣れと、実質的な減塩につながることが示唆された。1)日本調理科学会平成26年度大会
  • 大友 裕絵, 今村 美穂
    セッションID: 2E-p4
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】しょうゆの生産量、流通量および生産方式は日本各地で異なることが報告されているが*、しょうゆの品質の違いに関する報告は少ない。また、こいくちしょうゆは全国で消費されるしょうゆの約8割を占める。そこで本研究では、こいくちしょうゆに着目し、日本各地で使用されるしょうゆを集め、官能評価を用い地域間のしょうゆの品質差を明らかにすることを目的とした。
    【方法】各地域におけるこいくちしょうゆのマーケットシェアを参考にして、42サンプルを選定した。サンプルは黒プラスチックカップに入れ、パネルに提示し香りはそのまま鼻で嗅ぎ、風味および味は黒マドラースプーンを用いて食させた。パネルには香り、風味、味の特徴を言葉として記述させた後、担当者が表現を集約した(14用語)。次いで、14用語の官能特性について各サンプルの強度を評価した(評点法(9段階))。統計解析には、階層型クラスター分析、多重比較検定を用いた。パネルはISO8589に基づいて選抜した45名であった。
    【結果】評価に用いた42サンプルは官能特性により、7つのクラスターに分類されることが分かった。次いで、多重比較検定により、各クラスターの官能的特徴を明らかにした。さらに、日本各地のマーケットシェアをクラスター別に計算し、地域毎に使用されるしょうゆの官能的特徴を明らかにした。この結果から、しょうゆの官能的特徴による地域性は北海道、東北・北陸、関東外郭・首都圏・近畿・四国、中京、中国、九州の6つの地域に大きく分類されることが分かった。
    *高木亨(2005)生産と流通からみた日本の醤油醸造業と醤油嗜好の地域性. 季刊地理学, 57, 121-136
  • 中島 美樹, 跡部 昌彦, 早川 文代
    セッションID: 2E-p5
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】官能評価において、評価用語の選定と定義づけは、結果に大きく影響する重要な過程だが、膨大な労力と時間を要し、実験の大きな負担となる。また、製造から販売に至るさまざまな過程において、製品の官能特性に関する情報交換の際、言語表現が曖昧なためにコミュニケーションギャップが生じていることも問題となっている。調理や飲料に多用されるレモン果汁は、さまざまな官能特性を有するにもかかわらず、評価用語の整理はされていない。そこで、レモン果汁の官能評価用語体系を作成することを目的とし、用語の収集と整理を行った。 【方法】レモンに対する専門知識を有する専門家パネル7人およびISO8586に従って選抜・訓練され、300時間以上の官能評価経験を有する分析型パネル12人を用い、日本で入手可能な果汁製品、飲料製品および青果で構成される23試料の自由記述式官能評価によって、用語を収集した。続いて、収集した用語について円卓式討議による整理を行った。レモン果汁の専門家、記述式官能評価の専門家、香気成分の専門家によって、不要な用語の削除、同意語の統合、広い概念の用語の分解を行った。整理した用語を分類するため、レモン果汁の専門家パネル12名を用いて、6段階尺度の官能評価を行った。 【結果】収集した用語を一次整理したところ、専門家パネルからは、香りの表現191語、風味の表現190語、分析型パネルからは、香りの表現228語、風味の表現226語を得た。続いて円卓式討議によって用語を二次整理したところ、香り33語、風味39語の用語リストを作成できた。これらの候補用語を項目に用いた官能評価データに多変量解析を適用したところ、香り用語は11群、風味用語は10群に分類することができた。
ポスタ―発表
  • 藤江 未沙, 山坂 友貴子, 佐々木 久美, 石原 佑希子, 山田 正樹, 上田 恭己
    セッションID: 1P-01
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】米に水と熱を加えて飯にする炊飯は洗米、加水、浸漬、加熱、蒸らしの順で行われる。本研究では浸漬に着目して実験を行った。一般に乾燥状態にある米は浸漬をしてから炊飯することで、でんぷんが糊化に必要な水分を吸収し、ふっくらとした飯になるとされている。また、浸漬をせず洗米後ざるにあげた状態で30分おいてから加水し、炊飯するという方法もある。そこで、浸漬の有無による食味の比較を行い今後の炊飯調理に役立てることを目的とした。

    【方法】試料として26年産こしひかり(島根県産)を用いた。水は水道水を使用した。洗米後、①重量の1.5倍の加水、30分の浸漬②加水、浸漬60分③30分ざる上げ、加水④60分ざる上げ、加水⑤30分ざる上げ、重量の1.6倍の加水⑥60分ざる上げ、1.6倍の加水。以上6通りの方法で、電気炊飯器を使用して炊飯を行った。炊飯後1時間以内に本学学生対象に試食してもらい官能評価を行った。

    【結果】官能評価の結果、④の浸漬をせず、ざるに上げた状態で60分経過した後、重量の1.5倍量の加水をして炊飯したものが一番おいしいと評価されたが、しかし①加水(重量の1.5倍)、浸漬(30分)、③ざる上げ(30分)、加水(重量の1.5倍)の評価もそれほど差はなかった。今回の実験においては、米の種類、洗米方法、使用水、水温、気温、炊飯方法等の条件について度外視していることから、どの条件でも適応するとは言えない。また、おいしさの感じ方は個人差が大きいこともあり、今後の研究では糖量やテクスチャーなど様々な観点からも比較を行うことが必要であると考えた。
  • 山口 智子, 高橋 いく
    セッションID: 1P-02
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】米は主食として日本人の食生活の中心となる食材であるが、食生活の変化により米の消費量は減少している。その一方、ご飯をよりおいしく食べたいという消費者も増えており、量より質を求める傾向がみられる。近年、昔ながらのかまどで炊いたご飯に注目が集まっており、蒸しかまどが新たに開発されている。そこで本研究では、卓上型蒸しかまどで炊飯した米飯の特性について明らかにすることを目的とした。
    【方法】平成25年度魚沼産コシヒカリを家庭用ハンディ精米機で精米して用いた。洗米後、米重量の1.2、1.3、1.4倍となるように加水し、30分間浸漬した後、ミニ蒸しかまど 1.5合炊き(小田製陶所)で炊飯した。炊飯時の温度変化を測定するとともに、米飯の水分含有率およびテンシプレッサー TTP-50BXⅡ(タケトモ電機)による物性の測定、官能評価を行った。比較対照として、加水量1.4倍で調製後、電気炊飯器にて炊飯した米飯を用いた。
    【結果】蒸しかまどと炊飯器では炊飯時の温度上昇に大きな違いがみられ、蒸しかまどでの炊飯は約3分後から15分後にかけて徐々に温度が上昇するのに対し、炊飯器では2段階の温度上昇期がみられた。蒸しかまどで炊いた米飯の水分含有率は56.8%~60.6%、炊飯器で炊いた米飯は59.2%であった。蒸しかまどの米飯の物性を比較した場合、硬さ、こしともに加水量の多い方が値が低かった。付着性は加水量が多い方が値が高く、蒸しかまど1.2に対して1.3と1.4に有意差がみられた。粘りには有意差はみられなかった。炊飯器と蒸しかまど1.4を比べると、炊飯器の方が柔らかく、こしがあり、付着性が低いことがわかった。官能評価においては蒸しかまど1.4に比べて炊飯器で炊いた米飯が有意に好まれた。
  • 金 一玲, 阿部 粋花, 塩谷 紗弥, 岩城 啓子
    セッションID: 1P-03
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】えん下困難者用食品は近年需要が高まっているが,粥などのでんぷんを主とするゾル状食品では,喫食時の唾液アミラーゼ混入によりでんぷんが分解され物性が変化することから,誤嚥の原因になるといわれる。我々は,先に奈良県吉野地方特産の日干番茶の抗酸化性と嗜好性について報告し1),アミラーゼ阻害活性も有することを予想した。本研究では,日干番茶を用いた茶粥を調製し,唾液混入による物性の変化が抑えられるかについて検討した。
    【方法】日干番茶(奈良県大淀町産)は粉砕(Iwatani IFM-700G)し,炊飯直前に加えた。米150gに水750gを加え電気炊飯器(タイガーJKS-G100)のおかゆメニューで調製したものを全粥(白粥と茶粥),これらを1分間ブレンダ―処理(T-fal HB4401JP)したものをミキサー粥(ミキサー白粥,ミキサー茶粥)とした。粥の物性測定は,厚生労働省のえん下困難者用食品試験方法に準じ,最大荷重,付着性,凝集性を求めた。唾液アミラーゼは,あらかじめ活性測定を行ったのち適宜希釈して粥に加え,経時的変化を調べた。さらに,茶粥の嗜好性は白粥を基準とし官能評価を行った。
    【結果】全粥では,茶粥は10℃と45℃測定ともに,白粥より最大荷重と付着性が有意に大きかった。ミキサー粥ではどちらも最大荷重が1/3から1/5程度に低下し,付着性も1/2から1/8程度に低下し,ミキサー粥はすべて許可基準Ⅱ内であった。粥への唾液混入では付着性の急激な低下がみられたが,ミキサー茶粥はミキサー白粥より低下しにくかった。官能評価では,茶粥は白粥より好まれた。

    1) 金一玲ら(2013), 日調科会誌, 46 (4), 292-298
  • 不破 眞佐子, 中西 由季子, 森髙 初惠
    セッションID: 1P-04
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】水溶性食物繊維の機能性として、摂取直後の血糖値上昇を抑制することが報告されているが、食物繊維の種類によって抑制の機序は異なると考えられる。グルコマンナンやκ-カラギーナンについては報告をしてきた。本報告においては、水和膨潤させるとゾル状を呈するグアーガムを用い、米飯摂取後の血糖値の変化を測定し、あわせてグアーガムが米飯の力学特性、嗜好特性に及ぼす影響について検討した。
    【方法】試料は精白米にグアーガムを添加して炊飯した米飯と、無添加米飯にグアーガムゾルを混合したものとした。グアーガムの濃度は精白米に対して0~2.5%とし、グアーガムゾルの混合割合は、添加米飯に相当する濃度とした。In vivoにおける血糖値測定は、小型血糖値測定器を用い、日本Glycemic Index研究会の方法を参考に行なった。In vitroにおけるグルコース放出量は、熊井・中西らのグルコースリリース測定法により実施した。またテクスチャー特性値を測定し、あわせて官能評価を行なった。
    【結果】In vivoにおける米飯摂取後の血糖曲線は、無添加米飯と比べて、グアーガム添加米飯では1.5%で有意に低下し、グアーガムゾル混合米飯では、0.5%以上で有意に低下した。グリセミックインデックスにおいては、グアーガム添加米飯と無添加米飯間、およびグアーガムゾル混合米飯と無添加米飯間共に有意な差は認められなかった。In vitroにおけるグルコース放出量は、無添加米飯と比べて、グアーガム添加米飯では0.5%以上で有意に低下し、グアーガムゾル混合米飯においても0.5%以上で有意に低下した。また、グアーガム添加米飯の機器測定による硬さは、無添加米飯と比べて0.5%および1.0%で有意に高くなった。
  • 中川 ゆな, 深井 康子
    セッションID: 1P-05
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】有色素米を水に浸漬した後、ペースト状にすることにより調理・加工がし易いことが明らかになった。そこで本研究ではペーストを冷凍しても調製直後と同様の性状であれば食品の製造にはより有効であると考え、牛乳及び豆乳を有色素米ペーストに混合させてアイスクリームを調製し、それらの調理特性および嗜好性について検討した。
    【方法】試料は平成25年度富山県産赤米「富山赤78号」を使用した。調製したアイスクリームは、赤米ペースト/牛乳及び豆乳の重量比(g)をA:260/50、B:210/100、C:160/150、D:110/200、E:60/250の5種類とした。それらの調製直後と冷凍後の試料について粘度、粒度分布、色調を測定した。またアイスクリーム生地の調製直後のテクスチャーはクリープメーター(RE2-33005、(株)山電製)を用いて硬さ、付着性、ガム性を求めた。官能評価は、外観、甘味、口触り、粘り、後味、総合評価についてパネル16名により順位法で行い、クレーマーの検定表を用いて有意差の判定を行った。
    【結果】全ての牛乳及び豆乳ペーストは冷凍すると粘度が上昇し、試料Aは豆乳より牛乳のほうが高い粘度を示した。粒度分布で得られる平均粒子径は、豆乳のほうが牛乳より大きい傾向にあり、調製直後と冷凍後でどの試料でも規則性はなく、不均一であった。色調は、牛乳ペーストで冷凍すると色が濃くなり、赤味、黄色味ともに上昇したのに対し、豆乳ペーストでは冷凍後色が薄くなり、赤味、黄色味ともに減少した。テクスチャーは、豆乳アイスクリームよりも牛乳アイスクリームのほうが硬さ、付着性、ガム性ともに高くなった。官能評価により、牛乳アイスクリームのDが口触り、後味、総合評価で有意に良い(α<0.05)、Bが全てで有意に悪い(α<0.05)と評価された。これらのことから、牛乳混合アイスクリームのほうが豆乳混合アイスクリームよりテクスチャーの点でも嗜好的にも良好であることがわかった。
  • 冨岡 佳奈絵, 佐藤 佳織, 阿部 真弓, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-06
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】クイックスイートは,電子レンジなどによる急速な調理でもほかのサツマイモよりも甘くなるサツマイモである。サツマイモは,加熱により糊化デンプンの糖化が進む。電子レンジで加熱したクイックスイートの糊化デンプンの性状を組織化学的方法により調べた。異なる加熱方法で調理したクイックスイートの糊化デンプンの性状も同様に調べた。
    【方法】クイックスイートを3cm厚の輪切りにし,電子レンジ,茹で,蒸し,およびオーブン(140℃と200℃)で加熱した。試料を室温に下げ,ドライアイス・アセトンで急速に凍結し,コールド・ミクロトームで薄切(厚さ:16㎛)した。薄切した切片をヨウ素液および過ヨウ素酸・シッフ液で染色した。比較のためにベニアズマを同様に調べた。
    【結果】ヨウ素染色において,電子レンジで加熱したクイックスイートのデンプン貯蔵細胞の糊化デンプンは青く染まったが,貯蔵細胞の細胞壁に接する部分が赤く染まった。内部も赤く染まった貯蔵細胞があり,糊化デンプンの多くが赤く染まる貯蔵細胞が存在した。一方,ベニアズマでは,大部分のデンプン貯蔵細胞の糊化デンプンが青色に染まった。クイックスイートは,ベニアズマよりも甘く感じた。茹でおよび蒸したクイックスイートでは,糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞の多くは,ヨウ素で赤く染まった。オーブンの加熱では,クイックスイートの糊化デンプンで満たされたデンプン貯蔵細胞は赤く染まった。140℃では,糊化デンプンで満たされないデンプン貯蔵細胞が多かった。オーブン200℃では少なかった。ベニアズマでは,デンプン貯蔵細胞は,すべて糊化デンプンで満たされ,ヨウ素染色により赤く染まる糊化デンプンは少なかった。
  • 佐藤 靖子, 鈴木 惇
    セッションID: 1P-07
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】国産小麦は製粉されて流通しているが、イタリア古代小麦のスペルトは、粒状で調理に用いられる。スペルトは5%加塩で15分間加熱し、国産小麦の粒は、硬質小麦は25分間、軟質小麦は22分間の水煮により軟化して好ましいと評価された。本研究では、国産小麦粒が、スペルトと同様に調理に用いられるかを調べた。
    【方法】材料の小麦粒は、ハルヨコイ(国産硬質)、キタホナミ(国産軟質) およびスペルト(イタリア)、を用いた。サラダは、5%加塩で15分間加熱したスペルト,22分間および25分間水煮した国産小麦粒を用い、マカロニ、ニンジン、玉ネギ、セロリ、プロセスチーズ、ロースハムに塩、胡椒およびマヨネーズで調味した。スープの小麦粒は、前処理をせずにニンジン、玉ネギ、セロリ、ニンニクとともに30分間煮込み塩、オリーブオイルおよび野菜ブイヨンで調味した。調理後、外観、硬さおよび好ましさについて評価した。
    【結果】サラダに用いた国産小麦は硬かった。その硬さは、外皮によるものと思う。しかし、プチプチとした食感が好ましいと評価された。スペルトは、軟化状態が良く塩茹でによる味が好まれた。スープで煮込んだ国産小麦粒は硬かったが、一般に好ましいと評価された。スープでは、他の材料は煮込まれて軟化したので小麦の粒の硬さが際立ったものと推察する。一方、スペルトは好まれた。
    国産小麦粒は、中心部が軟化しても外皮による硬さは残った。しかし、その硬さによる粒の調理性は高いと考える。
  • 阿部 愛波, 中川 久子, 宮崎 忠昭, 中島 肇
    セッションID: 1P-08
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】全粒粉には様々な活性成分があることが知られており、全粒粉パン摂取量と生活習慣病リスクには負の相関があることが疫学調査から明らかになっている。活性成分のひとつであるポリフェノールは品種や系統で含量が異なるため、国産小麦全粒粉の優位性を見出すことを目的とし、寿命延長因子の探索をおこなった。
    【方法】大腸菌OP-50株を塗布したNGM寒天培地で継代した線虫C.elegansの卵を採取し培養し、国産パン用小麦全粒粉(WG)・WG水溶性画分(WSF)・WG水溶性食物繊維画分(W-fiber)とOP-50株を塗布した2%グルコース添加NGM寒天培地にて飼育し寿命延長試験を行った。平均寿命はSPSS ver21.0.0を用い、Log Rank (Mantel-Cox)によるペアごとの比較を行った。また遺伝子発現変化を検討するため5FU添加終了後1日(生後6日)、5日(生後10日)後にRNA抽出を行い、daf-2、daf-16の発現変化をRealtime PCRにて検討した。
    【結果】2%グルコースおよびOP-50添加NGM培地(対照群)、WG添加群、WSF添加群、W-fiber添加群の線虫の平均寿命は、それぞれ14.3、15.3、15.1、15.9日となり、対照群とWG添加群、WSF添加群、W-fiber添加群との有意確率は、p=0.126、0.399、0.044であり、対照群とW-fiber添加群との平均寿命の差が統計的に有意であった。  遺伝子発現の検討では、5FU除去後5日においてはdaf-16の発現量は寿命が統計的に有意に延長したW-fiber画分で約13倍に増加しており、延長傾向の見られたWGでも約15倍に増加していることが明らかとなった。一方、daf-2は、全ての添加群で発現が上昇したものの、5FU除去後6日では1~3倍程度であり、daf-16の増加量に比べて変化量は小さかった。
  • 惠良 真理子, 森永 賀亮, 森田 洋
    セッションID: 1P-09
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】パン生地改良剤における乳化剤(界面活性剤)の効果は、パン生地に加えることで柔らかく容積の大きなパンになり、パンの老化防止などの効果を発揮するといわれている。石けんの主成分である脂肪酸塩も界面活性を有する陰イオン界面活性剤であり、海外では一定の食品に対して食品添加物として利用されている。  以上のことから、脂肪酸塩を食品添加物としてパン生地に添加し、パン体積増大と防かび機能を備えた新しい生地改良剤としての応用を目的に製パン特性の検討を行った。
    【方法】使用する脂肪酸塩のサンプルを、それぞれ350 mM、pH 10.5に調整した。パン生地調整は、まず、小麦粉(日清製粉(株))100 g、砂糖5 g、食塩1.7 g、ドライイースト(日清製粉(株)) 1.7 g、水68 mlを直捏生地法にて手で300回混捏した。その後、各種脂肪酸塩を添加し、さらに200回手で混捏して、脂肪酸塩添加生地を調整した。脂肪酸塩の添加量は、小麦粉の重量に対して1 %、3 %、5 %、7 %、10 %に設定した。
    【結果】ミリスチン酸カリウム(C14K) 5 %以上の添加で、生地膨張力がコントロールに対して約14 %以上増加した。そこで、C14Kの代わりに同量の水を生地に添加して同様の実験を行ったところ、C14K添加生地よりも同量の水を添加した生地で生地膨張力が減少した。以上のことから、C14K添加で生地膨張力が増大した原因は、生地中の水分量の増加ではなく、脂肪酸塩の成分によることが示唆された。
  • 露木 理紗子, 飯田 文子
    セッションID: 1P-10
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】牛肉の官能評価において、試料調製は評価に影響を与える因子の一つである。調製時には評価部位や加熱方法等の条件を合わせることが重要であり、均一な肉質である胸最長筋部を用いることが理想的である。しかし、筋肉組織が異なる部位の場合、脂肪交雑や線維の入り方が異なり、パネリストに対して均質な試料を提示することは困難である。そこで本研究では、均質な肉質の胸最長筋部以外の部位においてばらつきの少ない評価試料の調製方法の確立および部位間の評価値の標準偏差より異なる筋肉から構成されるサーロイン部の官能評価方法を検討した。 【方法】試料の調製方法確立のため、1cm厚さに切り揃えた黒毛和種牛肉を200℃のホットプレートを用いて中心温度が60℃になるまでの加熱時間を検討した。さらに牛肉の部位間の官能特性の違いを明らかにするため、筋肉が1種のリブロースと筋肉が3種のサーロイン後部を用いて8段階評価尺度による官能評価を行い、比較検討した。パネルは訓練パネル6~9名とし、評価項目はテクスチャー、フレーバー項目および総合評価の12項目とした。 【結果】調製方法の検討については、試料の内部温度が60℃に達するまでの時間が表60秒、裏90秒であり、先行研究においては同加熱条件で表60秒、裏75秒であったことから、試料により脂肪交雑や線維の入り方が異なり、加熱履歴の微調整が必要であることが示された。胸最長筋部前方であるリブロースに比較し、後方であるサーロインでは官能評価のばらつきが大きくなった。異なる筋肉間ではさらに評価値の標準偏差の値が大きくなった。以上より異なる筋肉が入り混じるサーロインの官能評価においては、同一パネルが筋肉ごとに評価する必要性が示唆された。
  • 宮澤 紀子, 徐 維, 阿部 雅子, 小澤 好夫, 綾部 園子
    セッションID: 1P-11
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】きのこは菌種によって高いプロテアーゼ生産能を有することが知られている。きのこのプロテアーゼに関する報告は、生理生態と関連づけたものが多く、調理科学的な研究は少ない。そこで演者らは、数種類のきのこのプロテアーゼ活性について、至適pHと温度依存性を明らかにするとともに、食肉の真空調理におけるきのこの添加効果を検討してきた。本研究では、きのこの添加が、焼き加熱による食肉の理化学的性質と筋原線維およびコラーゲンにおよぼす影響を検討した。【方法】供試菌は福岡県産および広島県産バイリングと群馬県産マイタケとした。牛肉は、群馬県産肩ロースを一括購入し、4×4×1cmに形成して冷凍した。冷蔵庫(4℃、12時間)で解凍した牛肉を、各種きのこ水抽出液に20分または24時間浸漬した後、ホットプレートで加熱調理した。測定項目は、重量、水分、脂質量、保水率、物性測定、官能評価、筋原線維たんぱく質およびコラーゲンの定量とSDS-PAGEとした。【結果】牛肉の加熱による重量変化は、24時間浸漬では、無添加と比較してマイタケが有意に減少したが、バイリングは差がなかった。肉の硬さは、無添加と比較して、添加群で有意な差はなかった。筋原繊維蛋白質のSDS-PAGEパターンは、ミオシン重鎖のバンドが加熱により消失し、アクチンのバンドは、24時間浸漬では、きのこ添加により薄くなり、プロテアーゼによる分解が示唆された。官能評価ではジューシー感とやわらかさが、きのこの添加により増加の傾向を示したが、総合的な好ましさがマイタケで有意に低下した。肉以外の香りがマイタケで有意に強いことがその要因と推察された。肉の軟化に対するきのこの添加効果は、加熱時間が短い焼き加熱では少ないものと推察された。
  • 安達 官子, 加藤 陽二, 吉村 美紀
    セッションID: 1P-12
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】シカ肉の食資源化のため,シカ肉中の機能性アミノ酸であるカルニチン量について検討している。これまでシカ肉は牛肉,豚肉,鶏肉よりもカルニチンを多く含み,加熱調理では真空調理により80℃の加熱温度の場合にカルニチン損失が少ないことを明らかにした。本研究では,シカ肉の嗜好性の改善として,多穀麹を添加し熟成させたシカ肉を用いて,重量減少率,カルニチン含有量と物性の変化について検討を行った。
    【方法】ニホンジカのもも肉を用い,シカ肉重量に対し1%の多穀麹を添加したものと無添加のものを10℃で24時間熟成させた。各試料は真空包装後,多穀麹添加試料は90℃で,無添加試料は80℃,90℃,100℃でスチーム加熱を30分間行った。加熱時におけるシカ肉中芯温度測定と加熱前後のシカ肉重量変化から重量減少率を求めた。高速液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いカルニチン量の比較を行った。クリープメーターを用い破断測定を行った。
    【結果】各加熱温度におけるシカ肉最終芯温は80℃加熱で70℃,90℃加熱で85℃,100℃加熱で90℃を示した。シカ肉重量減少率は80℃加熱で14.1%,90℃加熱で26.5%,100℃加熱で32.7%,1%多穀麹添加90℃加熱で24.4%を示した。L-カルニチン・アセチルカルニチンは,80℃加熱が90℃および100℃加熱より高い値を示した。物性測定では80℃加熱が100℃加熱のシカ肉より破断応力が小さく軟らかいという結果を得た。多穀麹1%添加試料は無添加試料より破断応力は小さく軟らかくなる傾向を示したが,カルニチン量において無添加試料より低い値を示す傾向を示した。
  • 高崎 禎子, 新井 雅菜
    セッションID: 1P-13
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
    会議録・要旨集 フリー
    【目的】ゴマ搾油後の脱脂粉であるセサムフラワは,たんぱく質,食物繊維,ゴマリグナンを豊富に含む未利用有用食材であり,そこに麹菌を繁殖させたセサムフラワ麹を利用した味噌,しょうゆ,酢などの新たな発酵調味料の開発が進められている。今回は,セサムフラワ麹の性質を調べるとともに,豚ひき肉に調製したセサムフラワ塩麹またはセサムフラワしょうゆ麹を添加して豚肉加工品を作成し,物性および遊離アミノ酸組成などに及ぼす影響を検討した。
    【方法】Aspergillus oryzaeを繁殖させたセサムフラワ麹と米麹は(有)山正米山醤油酒店に製麹を依頼した。それぞれの麹をベースに塩麹およびしょうゆ麹を調製した。麹の顕微鏡観察を行うとともに,麹,塩麹,しょうゆ麹の酸性カルボキシペプチダーゼ活性を測定した。さらに,豚ひき肉に塩麹またはしょうゆ麹を添加し,熟成(20℃,24時間)後,加熱調理した豚肉加工品の破断特性をクリープメーター(山電)で測定するとともに遊離アミノ酸分析を行った。
    【結果】セサムフラワ麹を顕微鏡で観察したところ,粒状の胞子,糸状の菌糸の伸長が確認でき,麹菌が高密度に増殖していることが確認された。セサムフラワ麹の酸性カルボキシペプチダーゼ活性は,米麹よりも低い値を示した。セサムフラワ塩麹,しょうゆ麹を添加した豚肉加工品の破断応力と破断エネルギーは,加熱処理したセサムフラワ塩麹,しょうゆ麹を添加した豚肉加工品に比べ低い値を示した。また,セサムフラワ塩麹を添加した豚肉加工品では,遊離アミノ酸量が著しく増加していた。以上の結果から,セサムフラワ麹の豚肉加工品への利用の可能性が示唆された。
  • 荒木 裕子, 山本 直子, 江本 彩乃, 上浦 沙友里, 丸井 正樹
    セッションID: 1P-14
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】ネームはタイ北部の伝統的な発酵ソーセージである。豚赤身挽肉,豚の皮,ニンニク,トウガラシ,米飯を混ぜ合わせ、バナナの皮に包み数日間発酵させて製造する。乳酸発酵により微生物の繁殖を抑制しており、生食できるのが大きな特徴である。また、ネームパウダーという添加剤が市販されており、材料に添加することでネームを簡便で安全に作製することができるとされている。本研究では、タイで市販されているネームの安全性を調べた。また、条件の異なるネームを作製し、作製条件の違いによる安全性を検討した。

    【方法】タイで市販されているネームは一般生菌数、大腸菌群、pHを測定し、発色剤である亜硝酸根量はジアゾ化法で測定した。また、ニンニク,トウガラシの抗菌作用も調べた。ネームは1)ネームパウダー添加区、2)ネームパウダー無添加区、3)ネームパウダー,ニンニク,トウガラシ無添加区の3種類調製し、35℃で3日間発酵させた。完成後のネームの細菌数、pHを調べ、作製条件の違いによる安全性を比較検討した。

    【結果】タイで市販されている4種類のネームのうち、2種類から大腸菌群が確認された。作製ネームでは、1)はパウダーに含まれる無水グルコン酸により添加直後にpHの低下が確認された。2)は乳酸発酵によって1)と同等のpHまで低下し、乳酸菌数の増加が確認された。3)は1),2)と同等のpHまで低下したが、大腸菌群が検出された。また、ニンニク,トウガラシによる抗菌作用を調べた結果、抗菌作用が確認された。ニンニクやトウガラシは食味だけでなく抗菌作用も関与していると考えられる。ネームを製造する方法としてネームパウダーを添加する方法がよく用いられているが、自然発酵のネームに比べ細菌の増殖が抑制されていることが示唆された。
  • 坂本 葵, 佐藤 彩菜, 西堀 すき江
    セッションID: 1P-15
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】生活習慣によって過剰に生じた活性酸素が、糖尿病や高血圧などの生活習慣病に深く関わっていることが知られている。当研究室における活性酸素消去活性についての先行研究では、野菜・果物・きのこなどに強い活性を認め、すでに報告している。今回は、畑の肉といわれるほどたんぱく質に富み、栄養的に優れた食品であるとともに、近年はイソフラボノイドなどの食品機能性の面でも注目されている大豆を用いた大豆製品の活性酸素消去活性について検討した。
    【方法】調整豆乳類・無調整豆乳類・豆腐類・きな粉類を試料とし、フッ素樹脂メッシュにより得られた液を遠心分離し、上澄を各濃度に希釈し試料とした。活性酸素消去活性の測定においては、アキュフレックスルミ400を用い活性酸素種ヒドロキシラジカル(・OH)の消去活性を測定しIC50値を求めた。
    【結果】活性酸素消去活性の測定において、すべての大豆製品で活性が確認できた。最も高い消去率を示したのは、豆乳類では豆乳飲料抹茶(M社)0.0103、豆腐類では木綿豆腐(S社)0.0844、きなこ類ではきなこ(K社)0.0535となった。低い活性を示したのは豆乳類では無調整豆乳(T社)が0.1087、豆腐類では絹ごし豆腐(I社)が0.167となった。
    【考察】豆乳類では、製造会社により活性に差が見られるためM社の豆乳類で比較し、活性の高い順に示すと豆乳飲料抹茶、豆乳飲料麦芽、無調整豆乳、調整豆乳の順であった。豆乳飲料抹茶は原材料の抹茶にポリフェノールが含まれため活性が高くなったと考えられる。豆腐類も同様に製造会社による原材料の違いや、製造工程の違いにより活性に差が見られるが、木綿豆腐が絹ごし豆腐より強い活性を示す傾向にあることが分かった。
  • 山本 夕菜, 舟瀬 真衣, 守田 律子
    セッションID: 1P-16
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】大豆タンパク質は主にグリシニンとβ-コングリシニンの2種類によって構成されている。簡単に分離できる方法として、生豆乳を冷凍・解凍することで、両者を分離することができる。今回は、冷凍解凍分離技術における最適な冷凍温度の検討を行った。
    【方法】大豆は富山県産エンレイを使用し、水を6倍量加え磨砕後、おからと豆乳に分け生豆乳を調整した。この生豆乳を密閉容器に入れ冷凍し、記憶温度計を用いて温度変化を観察し、最大氷結晶生成帯通過時間を比較した。また、静置解凍して二層に分離した豆乳の上清部分を上層、沈澱部分を下層とし、上層、下層の重量を測定し分離比を比較した。4~20%グランジェントゲルを用いて電気泳動し、画像解析ソフトで数値化しタンパク質組成を調べた。
    【結果】冷凍温度を-10℃・-30℃・-80℃に設定し、各々の最大氷結晶帯通過時間と分離比とタンパク質組成を測定した。最大氷結晶生成帯通過時間は-80℃が30分で最も短かった。次いで-30℃が2時間、-10℃が4時間で一番時間がかかっていた。分離比では上層が最も多く取れたのは-30℃で冷凍したものであり、-80℃は最も採取量が少なかった。電気泳動装置によるタンパク質組成では上層の7sは-80℃が84.5%と最も多く、-10℃が71.2%と最も少ない結果になった。下層の11sでは、-80℃が71%と一番多く-10℃が63.3%と一番少ない結果になった。採取量が多く摂れるものは-30℃で冷凍したものであった。以上の結果から、-30℃で冷凍することが一番適していることがわかった。
  • 舟瀬 真衣, 山本 夕菜, 守田 律子
    セッションID: 1P-17
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】大豆は栄養価の高い食品であり、イソフラボンなどの機能性成分が豊富に含まれている。さらに、大豆の貯蔵タンパク質を構成する主要成分β-コングリシニンには、血中中性脂肪低減効果が認められている。これらの大豆の機能性成分をより一層健康増進につなげるため、機能性成分を付加した新製品の開発を試みた。
    【方法】富山県産エンレイ大豆を使用し、6倍量加水で摩砕後、生豆乳を調整した。これを密封袋に入れ、-30℃で冷凍し10℃で解凍して2層に分離させた。分離した上層部と下層部の一般成分を測定した。浸漬液を水、豆乳、上層の三種類を用いて浸漬させ、吸水率やタンパク質を測定した。また煮豆を試作し、評点法により官能評価を実施した。
    【結果】一般成分分析の結果、脂質、タンパク質、灰分ともに上層部に少なく、下層部の方に多く存在していた。吸水率では16時間後までは上層と豆乳で浸漬した豆の吸水率はあまり伸びず、水で浸漬した豆の吸水率が一番高かった。24時間後には上層で浸漬した豆は水よりも吸水率が高く、一方で、豆乳で浸漬した豆は水よりも吸水率が低かった。浸漬後のタンパク質は上層、豆乳、水の順番で多かった。以上の結果から、上層を用いて浸漬した豆には付加価値があることがわかった。官能評価の結果より、3種類には有意差は見られなかった。今後は、国産大豆の用途を広げ需要拡大を目指して新たな大豆の加工法として、より付加価値の高い製品の開発につなげていきたい。
  • ~島根県産大豆を使った豆腐作り~
    山坂 友貴子, 藤江 未沙, 佐々木 久美, 石原 佑希子, 山田 正樹, 上田 恭己
    セッションID: 1P-18
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】加工食品とは、様々な手段や方法を用いて食品を加工・処理したものであり、水産練り食品、大豆・食肉加工品など多岐にわたる。近年、様々な加工食品が市場に出回っており、本校調理師科の調理実習においても加工食品を使用する頻度は高い。調理師科学生に調理実習でよく使用する加工食品10品目について、その製造方法を知っているかどうか質問紙調査法による予備調査を行ったところ、知っていると答えた者の割合が一番高い品目でも約4割という結果であった。そこで、調理師科学生の加工食品への興味関心度・知識向上を目的とし、食品加工実習が学生にもたらす効果について調査した。
    【方法】今回は古来より伝統的に食されてきた食品で調理実習においても使用頻度が高いことから、大豆加工品である豆腐を取り上げ、調理師科学生14名を対象に実習を行った。原材料の大豆は、島根県産「サチユタカ」と北海道産「ユキホマレ」の2種類を使用し、出来上がった豆腐の味やテクスチャーの比較検討についても授業の中に取り入れた。実習後には質問紙調査を行い、食品加工実習の導入効果を検証した。
    【結果】豆腐作りの体験が将来に役立つと答えた学生は85%、豆腐以外の加工食品の製造を調理実習で行ってみたいかという質問には全ての学生行ってみたいと回答した。また、大豆の品種の違いによる出来上がりの味やテクスチャーの違いを体感したことで、食材の成分の違いによる製造品への影響についての理解の高まりが認められた。教科書学習に留まらず、調理師養成施設において「食品加工実習」を取り入れることで、学生の興味関心を喚起すると同時に、食品学や栄養学、調理理論など幅広い分野での理解を深める相乗効果が期待できると推察される。
  • 工藤 貴子, 名倉 秀子, 栗﨑 純一, 梶野 涼子, 曽矢 麻理子, 富樫 恵梨, 狭間 美優, 綿引 香奈
    セッションID: 1P-19
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】おからには100gあたり11.5g食物繊維が含まれており,それを有効利用するため,これまで,おから粉末の添加量や調製条件の検討により,嗜好性の良いおから添加麺を開発してきた。さらに,おから粉末サイズが物性や嗜好性に影響を明らかにするため,分級した2種と分級しないおから粉末を利用しておから添加麺を調製し,分級によるおから添加麺への作用を検討した。                                                   【方法】試料としたおからは,凍結乾燥して粉砕機にかけ,ふるいで分級した。100~200μm,300~400μm,分級していないZMの3種類のおから粉末を用いた。おから粉末の添加率は中力粉に対して10%置換添加し,おから添加麺を調製した。物性はクリープメーターによる破断特性(破断応力,破断ひずみ,破断エネルギー),嗜好性は7段階の評点評価法により,おから添加麺の特性やおいしさを評価した。
    【結果】おから添加麺の破断応力は300~400μmとZMとの間に有意差が認められ,ZMの方が高かった。破断エネルギーはZMが100~200μmと300~400μmより有意に高かった。ZMは他の麺よりも硬い麺であることが推察された。破断ひずみはいずれのおから添加麺とも差はなかった。官能評価について,外観は100~200μmが他の2試料よりも有意に良いと評価された。味は試料間に差がなく,いずれの麺も良好であると評価された。食感の項目は,100~200μmと300~400μmはざらつかないとの評価を得た。こしは試料間に差がなかったが,ZMが最も高く,物性の評価と同様の傾向を示した。総合評価はおから粉末サイズによる差がなく,好ましいとの評価を得た。以上により,物性はおから粉末サイズの影響を受けるが,官能評価の総合は差がなかったことから,分級しなくても,良好なおから添加麺が調製できることが示唆された。

     
  • 渡邊 幾子
    セッションID: 1P-20
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】徳島県では種類豊かな野菜が生産されているが、その摂取量は1日の目標値350gを大きく下回っており、野菜摂取向上への取り組みがなされている。野菜に関するアンケート調査から徳島県在住者の摂取頻度や嗜好を把握するとともに、摂取量を増やす工夫としてクラッカーへの利用についても検討した。

    【方法】平成26年5月から7月にかけて、自己記入式によりアンケート調査を実施した後、集計およびχ2乗検定で解析を行った。官能評価は徳島県の主要野菜であり嫌いな野菜に挙げられたニンジン、ピーマンを入れたクラッカーを調製し、外観、香り、味、食感および総合評価の共通項目にニンジンは臭み、ピーマンは苦味の項目を追加して小学生、本学学生および教員で実施した。

    【結果】アンケート回答者の年齢構成を17歳以下、18~29歳、30~49歳、50歳以上の4区分にわけて比較検討した。野菜の好き嫌いでは、好き・どちらかといえば好きの割合は17歳以下が最も低く、18~29歳、30歳以上の区分でそれぞれ有意差がみられた(p<0.05、p<0.01)。1日3食のなかで野菜料理を食べる頻度は50歳以上が最も高く、17歳以下、18~29歳および30~49歳との間に有意差(p<0.01、p<0.01、p<0.05)がみられた。好きな野菜はトマト、キャベツ、キュウリで味や食感が好まれた。一方、嫌いな野菜はセロリ、ピーマン、ゴーヤとなり特有のにおいや苦味が理由であった。徳島県の主要野菜については83.2%が知っていると回答し、特にニンジン、サツマイモ、レンコンの認知度が高かった。官能評価の結果、小学生はニンジンやピーマンの臭い、苦味に敏感で短大生および教員より低い評価となったが、副材料を加えクラッカーにすることで食べやすくなり野菜摂取の一助につながると考えられた。

  • 豊泉 友康, 松林 ひかり, 神谷 径明
    セッションID: 1P-21
    発行日: 2015年
    公開日: 2015/08/24
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    【目的】超高齢社会の現在,在宅介護や介護施設において,地元食材を用いたやわらかい加工品の開発が求められている.一方,農業現場からは,市場に出荷できずに廃棄される規格外野菜の有効活用が望まれている.本研究は,規格外野菜を用いて,野菜が有する栄養成分の損失を小さくしたやわらかい野菜パックを真空調理で開発することを目的とした.【方法】ニンジン,サツマイモおよびジャガイモを一口サイズにカットした後,低温スチーマーの飽和水蒸気でやわらかく加熱加工して,真空包装し殺菌加工した(加水区).比較対照として,一口サイズとした各野菜を真空包装して,ウォーターバス中でやわらかく加熱加工したもの(加水なし区)を準備した.加工後は,クリープメータで硬さ,凝集性および付着性を測定した.数値化した硬さは,ユニバーサルデザインフードの容易に噛める物性規格値(UDF1)と比較検討した.一方,凝集性および付着性は,嚥下食ピラミッドの軽度の嚥下障害者の規格値(L4)と比較検討した.また,生ニンジンおよび真空調理したニンジンは, HPLC-PDA法でβ-カロテン含量を測定した.【結果】ニンジンおよびジャガイモの硬さ,凝集性および付着性は,加水および加水なし区ともにUDF1およびL4の基準を満たした.一方,サツマイモは,加水区でのみ両基準を満たした.真空調理したニンジン中のβ-カロテン含量は,生ニンジンと比較して,有意な差は認められなかった.
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