日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の218件中201~218を表示しています
特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
  • ーすし,茶粥,味噌と金山寺味噌ー
    青山 佐喜子, 川島 明子, 川原﨑 淑子, 橘 ゆかり, 千賀 靖子, 三浦 加代子
    セッションID: P-k28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』において、和歌山県では1960~1970年頃までに定着していた家庭料理について聞き書き調査を行った。2016年からの報告をもとに、家庭料理について地域の特徴をまとめることを目的とした。

    【方法】平成25年12月~27年3月に、地理的環境、経済的背景の異なる12地域(橋本、那賀、和海、上富田、大塔、田辺、勝浦、太地、熊野川、有田川、由良、日高)を調査した。調査対象者は各地域2~4名、合計38名、平均年齢72.3±6.3歳で全員女性であった。

    【結果・考察】和歌山県は「すしの国」ともいわれ、地域により魚種、作り方、使われる葉、乳酸発酵の程度などが異なり、多様なすしが作られていた。柿の葉ずし(橋本)、じゃこずし(那賀・紀ノ川)、こけらずし(和海)、鯖のなれずし(有田)、小鯛ずし(日高)、わかめずし(日高)、さいらずし(田辺)、さばずし(田辺)、さんまのなれずし(熊野川)、めはりずし(熊野川)、また、かきまぜ、おまぜは季節の豆や野菜を用い、魚を用いる場合は酢で締めたり、焼いたり、漬けにして混ぜられていた。すしは保存食の意味合いだけでなく、ハレの日の料理で、祭りや正月に食べられていた。一方、ケの料理としては、米の不足を補う「おかいさん」が広い範囲で「茶粥」として食べられ、自家製の番茶、ほうじ茶、ハブ茶などを煮だして米から炊き上げ、時には芋、豆を入れて食べられていた。果実の総生産は全国1位で、みかん、梅が有名で、さらに味噌・金山寺味噌などの発酵調味料も古くから作られていた。家庭料理の「茶粥」に加えて、加工食品、保存食品など、農産物や水産物を様々に利用した丁寧な暮らしが見られた。

  • 板倉 一枝, 松島 文子
    セッションID: P-k29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会平成24~26年度特別研究鳥取県調査として,鳥取県内の各調査地域における家庭料理や郷土料理,特徴のある伝統的な料理について,聞き取りを行い,その時代背景や人々の生活,行事との関連などを調査した。鳥取県における次世代に伝え継ぎたい家庭料理の基礎資料の作成を目的とした。

    【方法】先行研究をもとに,鳥取(鳥取市),八頭(八頭郡,鳥取市用瀬町),倉吉(倉吉市),米子(境港市),大山山麓(西伯郡大山町)の5地域を調査地域に選定した。調査対象者は,その地域に30年以上居住する60歳代以上の人で,家庭で主に調理を担当してきた19名とした。昭和30~40年頃までに定着した家庭料理について,食材,調理法,料理が作られた背景や由来,食料の入手方法,食料の保存と加工方法,ハレの食や行事食との関連などについて聞き取りを行った。

    【結果・考察】鳥取県の代表的な家庭料理や郷土料理には米やもち米を利用した「ご飯もの」が最も多く,いも類や豆類,魚介類なども併せて多く用いられていた。また特定の食材に限らず,その地域で採れる野菜や山菜などを料理に用いたり,季節の果物を間食として食べる習慣があった。食材は干したり塩漬けにするなど加工・保存して利用する様々な工夫が見られた。一方で肉類や卵,小麦が家庭料理に用いられることは少ない傾向が認められた。伝統的な郷土食の特徴として,祭りや葬儀などの行事,人生儀礼,農耕儀礼,来客時などにおいてごちそうを作って食べる習慣が見られた。鳥取県の代表的な郷土料理である「小豆雑煮」や「いただき」および「大山おこわ」をはじめとする各地域の「しょうのけおこわ」など,地域独特の食文化が伝承されていることが確認できた。

  • ー各地域の共通点と相違点ー
    藤江 未沙, 石田 千津恵, 上田 恭己
    セッションID: P-k30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】伝統的な郷土の家庭料理が次世代へ伝え継がれることを目指し、日本調理科学会特別研究の一環として、島根県内の各地域における家庭料理についてアンケートおよび聞き書き調査を行った。本研究ではその調査から見えてきた各地域の共通点および相違点の特徴を知ることを目的とする。

    【方法】2012年から2013年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」島根県アンケートおよび聞き書き調査の結果から、ごはんもの・麵など、おかず、汁もの、おやつの料理区分別にリストを作成した。調査対象者は、島根県アンケートが島根県在住の一般男女、20~80歳代の計90名、聞き書き調査が島根県で生まれ育ち、その地域で30年以上居住している40~80歳代の女性13名であった。東部、西部、隠岐の3つの地域に分けて特徴を整理した。

    【結果・考察】ごはんもの・麺など32品、おかず68品、汁もの12品、おやつ19品の計131品があがった。さらに3つの地域に分けて整理したところ、東部59品、西部45品、隠岐33品(各地域で重複した料理含む)となった。傾向として東部、西部は共に北は沿岸部、南は山間部といった地形であることから海産物と農産物が取り入れられた料理が多く見られた。一方で隠岐地域は周囲を海に囲まれ、魚・貝・海藻を中心とした料理が多かった。また、鯖ずし、もち・だんご、雑煮には各地域において共通点と相違点が見られた。鯖は西部の沿岸部ではしめ鯖として使用され、山間部では焼き鯖を使った。端午の節句に作るちまきやまきでは共通して米粉を使用するが、あんの有無、包む葉が笹、サルトリイバラの葉と異なる。雑煮は沿岸部では主に岩のり、他地域では小豆や黒豆も使用していた。

  • 藤井 わか子, 藤堂 雅恵, 青木 美恵子, 小川 眞紀子, 加賀田 江里, 我如古 菜月, 人見 哲子, 藤井 久美子
    セッションID: P-k31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】岡山県は瀬戸内海に面し、南部に平野・丘陵地域が広がり、続く高原地域から北上して中国山地の山間地域へと続く地勢である。北部は山陰にも近い。そこで、岡山県を4地域に大別し、各地域において伝えられてきた伝統的な家庭料理、行事食を含めた食習慣を調査し比較検討した。本研究では、平成24.25年度特別研究「次世代に受け継ぐ日本の家庭料理」調査結果に基づいて行った。

    【方法】平成24~26年度に各地域を訪ね、60~80歳代の方々から聞き取り調査を実施した。調査対象世帯は、地域Ⅰ(瀬戸内沿岸・島しょ地帯)11世帯、地域Ⅱ(南部平野・丘陵地帯)12世帯、地域Ⅲ(吉備高原地帯)18世帯、地域Ⅳ(中国山地)17世帯であった。

    【結果】瀬戸内沿岸の地域Ⅰでは、伝統料理に旬の海産物(鰆、蛸、いかなごなど)を使用したものが多くみられた。鮮魚を使用する「ばら寿司」や小魚の「ままかり寿司」、副菜としても「ままかりの酢漬け」「しらもの酢の物」などが挙げられた。地域Ⅱでも、「ばら寿司」や「ままかり寿司」が同様にみられ、落花生で作る「ピーナツ豆腐」が法事などの行事食に作られており、地域特産物が副菜として生かされ定着していた。高原地域の地域Ⅲでは、黍、たか黍、粟などの雑穀類と豆と野菜を使用した料理が特徴として挙げられ、「すいとん(たかきび粉)」、「きゃらぶき」などへの利用がみられた。山間地域Ⅳでは、山陰からの塩鯖を利用した「さば寿司」「酢の物」「するめのでんぶ」「ぶり雑煮(するめだし)」など保存性の高い食材の利用が多かった。また、もち米料理「蒜山おこわ」など各種見られた。以上の結果、岡山県では特に穀類(米類)や海産物を生かした家庭料理が伝承されていることが認められた。

  • ー地域産物を生かした味わい深い家庭料理ー
    渡部 佳美, 奥田 弘枝, 近藤 寛子, 石井 香代子, 渕上 倫子, 高橋 知佐子, 岡本 洋子, 木村 安美, 海切 弘子, 前田 ひろ ...
    セッションID: P-k32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】昭和30~40年頃までに定着していた地域の郷土料理とその暮らしの背景を明らかにするため、平成24~25年度に日本調理科学会特別研究として実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」調査、及び補充調査から得られた広島県の地域特性について報告する。

    【方法】県内を東部台地、福山地域、尾道・三原地域、芸北山間地域、瀬戸内沿岸地域、西部地域、中部台地、備北山間部の8地域に区分し、平成24~26年度に調査を実施した。また、平成27年度は日本の家庭料理の編集上、追加調査を行った。

    【結果・考察】瀬戸内海沿岸の温暖な地域から中国山地の山々に囲まれた豪雪地帯まで、その多様な地勢や気候の特性を生かした農林水産業の営みにより、独自の多彩な食文化を有していた。水産業が盛んな瀬戸内海沿岸では、東部はたこ、しゃこえび、西部は牡蠣、あさり、全域で小鰯等の小魚、穴子、鮗、鯛が食された。海藻も利用され、いぎす豆腐は現在も伝承している。特に小鰯はいりこに加工され、全域で汁や煮物のだしおよび具として活用された。山間部は農業が中心で、野菜、山菜、きのこが利用された。魚は塩蔵品や川魚が中心であり、塩蔵品は山陰から調達することが多かった。備北山間部では無塩物として鮫(ワニ)の刺身が食された。

     行事では旬の食材を用いた寿司が作られることが多く、寿司以外には八寸(煮物)が供された。浄土真宗の門徒が多い西部地域では、御逮夜(おたんや)には小豆の入った煮ごめが食された。一部地域を除いて、花見弁当を食べる慣習があった。代満て(しろみて)は、「さんばいさん」「どろおとし」と地域によって呼称は異なるが、おはぎや餡を用いた餅、ちしゃもみが食された。福山地域では秋祭りにはうずみを食す習慣があった。

  • ー食材と料理ー
    園田 純子, 森永 八江, 福田 翼, 廣田 幸子, 五島 淑子, 櫻井 菜穂子
    セッションID: P-k33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】山口県の家庭料理について、食材と料理から地域の特徴を明らかにする。

    【方法】平成24~26年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査及び文献(農文協「聞き書山口の食事」等)を元に、著作委員で選定した料理100品の分類と分析を行った。

    【結果・考察】山口県は北部(萩市・長門市他)、西部(下関市・宇部市他)、中部(山口市・周南市他)、東部(岩国市・柳井市他)に分けられる。山口県全域の特徴としては、三方を海に囲まれ、山間部もあり、海の幸山の幸に恵まれている。多種類の海産物(クジラを含む)が手に入り、新鮮なうちは刺身にし、塩焼き、汁物、煮つけ、揚げ物などの調理法で食された。また、近隣で収穫される大根、かぶ、なす、山菜、柑橘類を利用して、煮物やなます、漬物を作っていた。米の利用としては種々の寿司がみられた。二毛作で収穫される麦で味噌を作り、だしは北部や東部で作られるいりこを使用した。

     北部では、北浦海岸で獲れる海産物(クジラ、イカ、イワシ、エイ、ワカメ)が使われていた。城下町萩で継承される料理にはいとこ煮、のっぺい、はんべえ、金銀豆腐があった。西部では、海産物としてフグ、クジラ、イワシ、ウニ、ノリを用い、ふぐ料理、鯨料理、ほおかぶり、ゆうれい寿司、生のりの酢の物などが作られていた。中部では、瀬戸内の海産物やアユ・川蟹、山間部の野菜を使って、鯨入り混ぜご飯、干しえびのそうめんだし、つしま、いちろく、寒漬けが食べられていた。東部では、瀬戸内の海産物を使った瀬戸貝うどん、いぎす豆腐、山間部のれんこん、こんにゃくなどを用いた大平、はすの三杯があった。また、節米の工夫として、茶がゆ、小麦粉やサツマイモを使ったおやつが作られた。

  • ー地域で親しまれてきた料理ー
    三木 章江, 高橋 啓子, 後藤 月江, 川端 紗也花, 長尾 久美子, 松下 純子, 坂井 真奈美, 近藤 美樹, 金丸 芳
    セッションID: P-k34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】徳島県は四国の東部に位置し、県域の約8割を山地で占めている。温暖な気候で香酸柑橘類の産地でもあるが、県内で最も高い剣山を中心とする山岳地では降雪量が多く、雨量も太平洋に面した県南では多雨、県北部では瀬戸内式気候で少雨と、気候風土が異なる。このような地形・風土の違いにより受け継がれてきた家庭料理においても地域の特徴がみられるか検討したので報告する。

    【方法】徳島県を県中央部、県西部、県南山間部、県南沿岸部、吉野川北岸の5地区に分け、聞き取り調査を実施し、その結果をもとに、主食、主菜、副菜、汁物、おやつに分類し、地域性を検討した。

    【結果・考察】徳島県全域において、主食では「かき混ぜ寿司」、「魚の姿寿司(ボウゼ)」、主菜では「すき焼き」、副菜では「なます」、汁物では「そば米汁」、おやつでは「ういろ」、「柏餅(練り込み)」、「干し芋」、「餅(のし餅・おへぎ・あられ)」が挙げられた。「かき混ぜ寿司」に共通する具材は人参、大根、高野豆腐、椎茸、卵、春は筍や山菜で、金時豆の甘煮、里芋は全域で使用されていたが、県南ではそこ豆(落花生)やひじき、ちりめんじゃこ、焼いた魚の身が使用されており、地域性がみられた。寿司酢には全域で木酢(すだち、ゆず、ゆこう)が使用されていた。すき焼きの具材には、県中央部では牛肉、山間部では猪やウサギ等のジビエ肉、沿岸部はカツオが使用されていた。県南や県中央部では主菜、副菜、汁物に魚介類や海藻を使用した料理、山間部、吉野川北岸、県西部では主菜に川魚やジビエ肉、副菜には山菜を使用した料理が挙げられ、地域で使用された食材の特徴として、地元で入手しやすい食材や特産物、加工保存した食材等を使用していることがわかった。

  • ーハレとケの料理に使われる食材ー
    次田 一代, 村川 みなみ, 渡辺 ひろ美, 川染 節江, 加藤 みゆき
    セッションID: P-k35
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】著者らは、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の中で、香川県の家庭料理について調査し、「主食」、「おやつ」、「副菜」、「行事食」に分けてその特徴について報告してきた。今回はこれらの調査結果に基づき、香川県の人々が、どのような食材を、どのような場面で、どのように利用してきたかについて報告する。

    【方法】県内各地の家庭の食事作りに携わった60歳以上の人に2013年12月~2015年3月に聞き取り調査をして得られた家庭料理のレシピから使われる食材を抜き出し、その特徴と調理方法について、ハレとケの料理に分けてまとめた。

    【結果・考察】調査協力者は計28名、60~95歳の女性で、聞き取り調査より得られた家庭料理の総数は75であった。これらのうち、主食29とおやつ10に使われていた食材は、米、小麦粉、さつまいもが主で、ほとんどがハレの料理であった。主菜20のうち、ハレの料理は10で、新鮮な魚、イカ、タコを使ったさしみや天ぷら、あじを丸ごと焼いて三杯酢につけた料理などであった。ケの料理は10で、小魚を使った煮物や焼き物、野菜とたこの煮物などであった。副菜16のうち、野菜の煮しめ以外はすべてケの料理で、その食材は、旬の野菜や収穫後乾燥させて保存した切干大根、ずいき(里芋の葉柄部の皮をむいて乾燥させたもの)、そらまめ、大豆、干ししいたけ、乾燥わかめなどであり、それらを水で戻し、加熱後和え物や煮物にしていた。このように香川県では、ハレの料理には、米、小麦粉などを主食とし、新鮮な食材を主菜に使っていたが、ケの料理には、乾燥・保存しておいた貴重な食材を少しずつ取り出し、様々な料理の食材として有効利用してきたことがわかった。

  • ー魚介類の多様な利用,大豆・いもの利用ー
    亀岡 恵子, 香川 実恵子, 宇髙 順子, 皆川 勝子, 武田 珠美
    セッションID: P-k36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】愛媛県は四国の北西に位置し,北側には瀬戸内海に面した平野が広がり,南側は西日本最高峰の石鎚山系がそびえる。気候は温暖で,燧灘,伊予灘,宇和海と多様な水産資源の3海域に面し,農林水産物が豊富である。日本調理科学会特別研究「次世代に継ぐ 日本の家庭料理」の一環として行った調査から,昭和30~40年頃の愛媛県の家庭料理の特徴をまとめた。

    【方法】平成25年11月~平成27年3月に愛媛県内の8地区(東予;四国中央・西条・今治市,中予;松山・東温市,久万高原町,南予;大洲・宇和島市)で聞き取り調査(60~90歳代3~7名,居住年数37年以上)を,平成29年3月~平成30年10月に東予;新居浜市を加えた9地区で聞き取り及び調理方法の調査を行った。

    【結果・考察】昭和40年頃は,いわしやあじは漁獲量が多く,日常食に生,干し,練り製品にして使われていた。たいは漁獲量が少なく行事食に用いられていた。魚介類は,主菜への利用が多様であるほか,主食にも,変わり飯の具材として用いられていた。また,副菜のうま味増強としても煮干しが県全域,じゃこてんが南予で,いも・豆・野菜等の煮物・炒め煮・寄せ物・酢物等に用いられていた。東・中予では,大豆加工品で特産の干し揚げを炊き込み飯や副菜の具材に用いてコクを付けていた。中予山間部と南予では豆腐は行事に手作りし,田楽やおからの酢和えはごちそうであった。また,いもは,県全域でさといもと肉・根菜でいもたき,日常的なおやつはさつまいもを使った中予のいも練り,南予の干しいもがあった。行事食と日常食では,魚介類や穀類で食材が異なる傾向が顕著で,日常食には小魚・青魚,いも,行事食には白身魚,こめ・もち等が用いられていた。

  • ー地域の食材利用に着目してー
    福留 奈美, 野口 元子, 小西 文子, 五藤 裕子
    セッションID: P-k37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】高知県は全国一の森林率を有し多くの河川が流れ、太平洋に面した700km以上におよぶ長い海岸線を持つ。また、豊富な日照量と降水量に恵まれ、高知平野から香長平野にかけての平地だけでなく、山の斜面を利用した段々の田畑で野菜・果物栽培、稲作等が盛んに行われてきた。山・里(平地)・海の豊かな食文化を有する高知県の家庭料理の特徴については、これまで主食・主菜・副菜・おやつ・行事食に分けて報告した。本研究では、高知県の郷土・家庭の味としてとりあげられる食材に着目し、山・里・海の各地域を代表する料理にどのように使われているかを明らかにする。

    【方法】本調査では、地域の味を網羅的に収録していると考えられる料理書2冊(1980年代刊行の『土佐・味の百科』140品、『ふるさとの台所』242品)を分析対象とし、主・副材料として使われている食材を53旧市町村別に地域分類を行い、地域特性をとらえた。

    【結果】1) 山間部では山菜・野菜が主の料理が多く、いも類、豆・豆製品の料理も多様だった。また、特有の香りをもつ木の葉(くぬぎ菜)やいのしし等、山ならではの食材利用があった。

    2) 山・里山の地域では高知県で特によく食べられるりゅうきゅう(ハスイモ)やいたどり、西部および東部の沿岸部では海岸近くに自生する浜あざみの料理が特徴的だった。

    3) 平地では鰻、ごり、鮎、川えび、つがに等の川の恵みの料理が多くみられ、沿岸部では鰹をはじめ、しいら、鯖、珍しいものではうつぼやにろぎ等が利用されていた。

    4) 主食の特徴として取り上げたすしの多様性については、海の魚、川魚、山菜・野菜等のすしが20種近くあり、特徴的な食材を使った炊き込み飯の種類もすし同様に多かった。

  • ー農業、漁業との関わりー
    八尋 美希, 山本 亜衣, 秋永 優子, 楠瀬 千春, 松隈 美紀, 入来 寛, 御手洗 早也伽, 仁後 亮介, 熊谷 奈々, 吉岡 慶子, ...
    セッションID: P-k38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」では、全国に残されている特徴ある家庭料理について、聞き書き調査を通して地域の暮らしの背景とともに記録し、次世代に伝えることを目的としている。本研究では九州支部の調査で得られた家庭料理について、農業、漁業との関わりから地域の特徴を検討した。

    【方法】日本調理科学会特別研究の調査ガイドラインに基づき聞き書き調査を行った。調査地区は北九州地域(5名)、筑豊地域(2名)、福岡地域(9名)、筑後地域(9名)の4地域、調査期間は平成24年~25年度、対象者は昭和35年~45年当時の調理担当者とし、平均年齢は74.0±6.1歳であった。

    【結果】4地域共通の農作物は米、麦、大豆等で、特に筑紫平野は有数の穀倉地帯であった。4地域とも独自の麹や味噌作りの技術が伝承されていた。主食の麦飯や自家製味噌の味噌汁に各地域でとれた穀類、野菜、魚介類が加えられることで地域性がみられた。特に、福岡県は外洋性の響灘、玄界灘、内海性の周防灘、内湾性の有明海に面していることから、地域によって食される魚介類が異なっていた。北九州地区では絹貝や青海苔、筑豊地域は塩鯨、福岡地域はかなぎの干物などが食されていた。筑後地域は遠浅で干満の差が大きい有明海に面し、クツゾコやワラスボなどの特徴的な魚介類、筑後川流域では川魚が食されていた。 福岡県の家庭料理は、各地域の農業、水産業に根付いた食文化であった。農林水産省は「農林水産研究イノベーション戦略2021」を策定し、豊かな食と環境を守り発展させることを推進している。今後の農業、水産業の生産力向上と持続、イノベーション推進のためにも 次世代へ郷土の家庭料理を継承していきたい。

  • ー地域特性にあわせた暮らしぶりー
    西岡 征子, 武富 和美, 萱島 知子, 副島 順子, 橋本 由美子, 成清 ヨシヱ
    セッションID: P-k39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】佐賀県は九州北西部に位置し、北を玄界灘、南を有明海に接し、広大な佐賀平野、脊振山を有しており、年間の平均気温が16度前後の地域が多く穏やかな気候である。これまでは料理を区分ごとに次世代に伝え継ぐ料理として紹介してきた。今回はその料理の発祥ともいえる地域の暮らしと食生活の特徴を紹介する。

    【方法】調査は食生活の特徴を地勢と生業から①背振山麓と平野部、②山間部、③海岸部、④焼き物の里の4区分に分けて地域の暮らしぶりと家庭料理について聞き取り調査を行った。調査は現地に出向き、住居年数が70~91年で料理に精通している者にインタビュー形式で行った。

    【結果・考察】特徴は①背振山麓と平野部に位置する神埼市(神埼)は神埼そうめんが特産物で、町の中心は商業が主であった。山手では米、麦、みかんの生産が盛んであった。②山間部に位置する武雄市(山内)は農山村で山間の盆地であることから裏作も多く作られ裸麦、小麦の作付けや甘蔗、馬鈴薯、菜種などが作られていた。③海岸部に位置する佐賀市(佐賀)は、北は背振山地、南は沖積平野を挟んで有明海に達しており、「山から海まで」を包括した自然を擁しており、耕地の大部分は平野部で二毛作が定着し、有明沿岸ではムツゴロウなど有明海特有の海産物も獲れ、郷土の味として親しまれていた。④焼き物の里の有田町(有田)は磁石から陶土をつくる有田焼として知られる焼きものの町である。有田は水田に乏しく、陶業者や商人など農業に従事しない世帯が多く、全国に有田焼の販売促進を進める中で、各地の新しい食事を取り入れるなど「有田の食道楽」ともいわれていた。以上より、佐賀県の各地域でそれぞれの特徴をいかした暮らしぶりがうかがえた。

  • ー気候風土と異国文化の相互作用ー
    冨永 美穂子, 植村 百江, 久木野 睦子
    セッションID: P-k40
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】九州の西北部に位置する長崎県は,温暖湿潤な気候であるが平坦地に乏しく,多くの離島を有し,急傾斜地も多い.一方で古代から中国を中心とする大陸の文化や技術の影響を受け発展し,食文化においても気候風土に加え,異国文化の影響が反映されてきたといえる.この長崎県の食文化を次世代に伝え継ぐことを目的に,家庭料理として食されてきた(いる)地域の特徴を文献,聞き書き調査,調理体験等から得られた情報を中心に明らかにすることとした.

    【方法】長崎県における郷土料理,郷土史に関する文献等を参考に料理や食文化に関する資料を収集した.平成25,26年度にかけて長崎市,対馬市,壱岐市,雲仙市,新上五島町において現地居住歴35年以上の方20名(居住歴平均:70年)を対象に昭和30~40年当時の家庭料理に関する聞き書き調査を行った.それらの情報をもとに各地域において,家庭料理を再現してもらい,再現料理に関するエピソード等を収集した.

    【結果・考察】聞き書き調査を行った5地域において日常食として必ず出てきたものはさつまいも(甘藷)で地形的特徴より救荒作物として県内全域で食されていた.蒸し芋あるいは薄くスライスして生干しあるいはゆで干しして保存性をもたせ,そのままかじる,蒸す,米と混合(こっぱ飯,かんころ飯,かんころ餅),さらには粉や発酵団子(せん)にして麺類(ろくべえ)にも加工されていた.ちゃんぽん,皿うどん,手延べうどんに代表される小麦粉麺や豚の角煮は中国文化,長崎天ぷら,浦上そぼろ,ヒカド,南蛮漬け,ふくれまんじゅうなどはポルトガル・オランダ(キリスト教)文化の影響を受け,県内全域あるいは異国文化の影響を受けた一部地域の食文化として伝え継がれている.

  • ー自然と水の恵みに育まれた豊かな食文化ー
    秋吉 澄子, 原田 香, 小林 康子, 柴田 文, 川上 育代, 中嶋 名菜, 北野 直子, 戸次 元子
    セッションID: P-k41
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」において、地域に残されている特徴ある家庭料理を、地域の暮らしの背景とともに記録し、各地域の家庭料理研究の基礎資料、家庭・教育現場での資料、次世代へ伝え継ぐ資料などとして活用することを目的に、聞き書き調査を行った。

    【方法】熊本県内を6地区(阿蘇、県北、熊本近郊、県南、天草、球磨)に分類し、昭和35~45年頃に各地域に定着していた家庭料理について、11名の協力者を対象に聞き書き調査を行った。その調査結果や参考文献を基に、熊本県の地域の特徴を検討した。

    【結果・考察】阿蘇は豊かな自然と気候に恵まれた地で、火山活動によってできたカルデラには広大な水田地帯が広がり、放牧も盛んで高冷地特有の野菜や山菜を使った料理が食卓を彩っている。県北は菊池川流域に広がる玉名、鹿本、菊池地域を指し、菊池川の恩恵を受け農産物に恵まれ、豊かな食文化が形成されている。熊本近郊は、熊本市・宇城・上益城も含め温暖な気候と肥沃な土壌に恵まれ、季節ごとの野菜や果物が豊富で、食文化に細川藩の影響が色濃くうかがえるのも特徴である。県南は、西部に八代海、中央部に干拓によって開けた水田平野を形成する八代、芦北、水俣地域を指し、温暖な気候で育った米や柑橘類、海や山の恵みを生かした料理が伝承されている。天草は海と山に囲まれた温暖な地域で海の幸に恵まれている。耕地が少ないため作物選定を考慮し、山の急斜面や海風を利用した果物栽培等工夫を凝らして食生活を豊かにしている。球磨は、球磨川流域に広がる人吉・球磨地域を指し、周囲を山に囲まれた盆地ならではの寒暖差を生かした農業や、米焼酎づくりが盛んで、焼酎に合う料理も多い。

  • ー一村一品運動に通じるバラエティーに富んだ料理ー
    望月 美左子, 高松 伸枝, 宇都宮 由佳, 西澤 千惠子, 篠原 壽子, 立松 洋子
    セッションID: P-k42
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】大分県の次世代に伝え継ぐ家庭料理を暮しの背景と共に記録し、家庭料理研究の基礎研究とするだけでなく、家庭や教育現場でも利用可能な資料とすることを目的とした。

    【方法】前報と同様の方法で大分県の家庭料理を調査し、その特徴について検討した。

    【結果・考察】大分県の郷土料理は入手できる食材を使い、知恵と工夫が加わったものになっている。江戸時代には山によって分断された小藩が数多く存在し、狭い地域毎に料理が発達してきたため、県全体でみると多種多様な料理が存在する。本報告では「鯖と鰺」と「だんご汁とやせうま」に焦点を当てた。〈鯖と鰺〉大分県の東側は豊後水道に面し、西側は九州山地である。そのために東側では新鮮な鯖や鰺を使った刺身、りゅうきゅう、きらすまめし、鰺と紫蘇を使った姿寿司がある。内陸では塩鯖、一尾全部を用いた鯖寿司になる。〈だんご汁とやせうま〉だんご汁は地粉から作った「だんご」と季節の野菜を煮込んだ汁で、だんごを作ってきなこ(砂糖)を絡めたものがおやつの「やせうま」になる。両方とも地粉を捏ねてから丸め、手で延ばして「だんご」にするのが特徴である。だんごの形状はやせうまがひも状だけなのに対し、だんご汁はひも状のもの、ひも状にしてから縦に二分割したもの、手で握っただけのもの、円盤状のもの、スプーンですくって汁に落としたものなど様々なものがある。材料も地粉だけではなく、米粉なども使用される。このように大分県の料理は地理的条件だけでなく小藩分立など、歴史も大きく影響していると考えられる。バラエティーに富んだ料理はやがて大分県が全国に先駆けて行ってきた、外国にも影響を及ぼしている「一村一品運動」へと繋がっていった。

  • ーひなたの海幸・山幸の恵みを活かした料理ー
    篠原 久枝, 長野 宏子, 磯部 由香, 秋永 優子
    セッションID: P-k43
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ ⽇本の家庭料理」に基づき,宮崎県の家庭料理の特徴を明らかにすることである。

    【方法】平成24〜26年、県内8地区11ヶ所に在住の女性35人(昭和2年〜22年生)を対象に昭和30~40年代に作られていた家庭料理の聞き書き調査を行った。今回はこれまで未発表の料理を中心に報告する。

    【結果・考察】正月料理に着目すると、西臼杵郡五ヶ瀬町では、刺身(鯨)、焼いた数の子、酢の物、いわしの頭付き煮付け、煮しめやイモの天ぷら、雑煮は丸餅で焼かず具沢山のすまし仕立てだった。児湯地区沿岸部の川南町では、酢にんじん、金柑の甘煮、黒豆の代わりのうずら豆の煮物、酢あじや酢いわし、雑煮はすまし仕立てで焼かない餅に、お節の煮しめの具と小さく切ったものを加えていた。東臼杵北部の延岡市では、煮しめと金時豆の煮物、紅白なます、金柑の砂糖漬け、雑煮はすまし、しょうゆ味と家庭によって異なり、煮しめに餅を焼かずに入れる家もあった。北諸県地区の都城市では必ず、かしわで炊いた煮しめとがねを同じ皿に盛付け、雑煮またはいもんこんすいが出された。いもんこんすいは、里いもを丸ごと一個入れたお吸い物で、数日前から水に浸した大豆のおやしを添えて仕上げる。

     また、他県に見られない特徴的な料理として、東臼杵地区南部の椎葉村では焼畑で栽培された雑穀を使った「稗ずーしー」「蕎麦のわくど汁」が、中部地区宮崎市では「くさぎ菜の油炒め」「佐土原なすの焼きなす」が、北諸県地区の都城市では固ねりの「甘酒」「酢のしゅい」が食されていた。以上より、宮崎県は温暖な気候に恵まれ、沿岸部,山間部共に豊かな海幸、山幸の恵みを活かした家庭料理が食されていた。

  • ー多くの島々と特徴ある食材ー
    木下 朋美, 山下 三香子, 山崎 歌織, 進藤 智子, 大山 典子, 新里 葉子, 木之下 道子, 森中 房枝
    セッションID: P-k44
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】鹿児島県には有人離島が28あり,その数は全国第1位である。温暖で豊かな自然環境が広がり,特色ある伝統文化や郷土料理が伝わる。本発表では,家庭料理を次世代に伝え次ぐ目的で,これまでに未報告の料理を離島および特徴的な食材に着目して報告する。

    【方法】平成24~26年の聞き書き調査内容と郷土誌やふるさとの食のレシピ集等を併せて資料とした。

    【結果】薩南諸島南部に位置する奄美群島は,歴史的に琉球の影響を強く受けている。「油ゾーメン」は沖縄のそうめんチャンプルーに似ており炒める時にだし汁を入れる。「ミキ」は沖縄にもあるが,奄美では材料にサツマイモを用いる。「ヤギ汁」も沖縄同様に食べられている。東シナ海の甑島は3つの島からなり,そのうち上甑島と下甑島には薩摩藩の外城制度の中核となる麓(武家屋敷群)が設置されていた。祝い料理として,上甑島には「まんぱ」(ソウダカツオ)を茹でて焼いた炙り魚の出汁を用いた混ぜご飯である「かきまぜ飯」がある。下甑島にはほぐした炙り魚や細かく切った椎茸・人参・かまぼこなどを煮てご飯に混ぜた「すす」がある。すし飯にする家庭も多い。また親鸞上人の遺徳を偲んでつとめる報恩講や法事・葬式の時などに作られる「ひら」も伝わる。サツマイモは1698年琉球より種子島に伝来し,県本土,全国に広まったとされる。サツマイモを利用した料理は鹿児島に多く,種子島にはサツマイモでんぷんである「いもんせん」を水で溶いた後,油で焼く等し,煮しめに加えた「いもんせんの煮しめ」が親しまれてきた。その他,鯨料理の「おばの酢味噌かけ」や鰹の骨を利用した「ひっかけソーメン」,孟宗竹以外の筍(大名竹,古参竹,唐竹)の料理など特徴的なものが数多くみられた。

  • ー人々の創意工夫による多様な料理ー
    田原 美和, 森山 克子, 喜屋武 ゆりか, 渡名喜 まみ, 名嘉 裕子
    セッションID: P-k45
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】沖縄県は,南西諸島に位置する大小の島々からなる島嶼県であり,亜熱帯の温暖な気候風土,琉球王国時代には中国・東南アジアとの交易,戦後の米国統治等の歴史的な背景の中で,異文化の影響を受けながら独特な食文化を形成してきたといわれている。その中で,日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の一環として,1960~1970年頃までに定着していた沖縄の家庭料理について,聞き書き調査および文献・資料等をもとに,地域の特徴を報告する。併せて,次世代へ伝え継ぐために,家庭,学校現場等でどのような提案ができるのか検討した。

    【方法】平成24~26年度の聞き書き調査報告書,その後の補足調査,沖縄の食に関する文献・資料等をもとに整理する。聞き書き調査は,沖縄本島の北部(本部町崎本部),中部(読谷村宇座・沖縄市登川),南部(那覇市与儀),離島の宮古(宮古島市伊良部),八重山(石垣市登野城)で実施した。

    【結果・考察】聞き書き調査の結果,文献等より,調査地域の特徴として,古くから政治・経済・文化の中心地であった那覇は,多様な食材を市場で入手でき,料理の種類も他の地域より多かった。農村部の登川は特産のヤマンムを用いた料理,読谷は,そら豆を用いた手づくり味噌,沿岸部の本部,離島の宮古,八重山では,魚介・海藻類を用いた料理に特徴がみられた。県全域で共通する家庭料理・調理法では,チャンプルー(豆腐と野菜の炒め物),イリチー(炒め煮),ンブシー(野菜,豆腐,豚肉等の味噌煮)等に用いる食材,料理名(方言)に地域の特徴がみられるものもあった。次世代へ伝え継ぐために,人々の食への思いを大切にしつつ,地域性をより重視し, 食育等の視点を踏まえた提案が重要だと考える。

feedback
Top