日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の218件中151~200を表示しています
ポスター発表
  • 永嶋 久美子, 小川 睦美
    セッションID: P-90
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】近年、食を取り巻く社会環境の変化に伴って、家庭における日本や地域の伝統的な食文化の継承は難しくなりつつある。そこで食育の推進に大きな役割を果たしている学校給食に関する意識調査を、給食を運営する栄養教諭および学校栄養職員(以下、栄養士)、学校給食を食する児童・生徒、および日常の食を担う保護者に実施し、食文化の継承における学校給食の役割について明らかにすることを目的とし、検討を行った。

    【方法】調査は我孫子市内の栄養士19名、小学校7校の児童752名および保護者731名、中学校2校の生徒1,109名および保護者1,064名に対して、2018年6~7月に実施した。児童・生徒、保護者は給食に対する意識、健康習慣、食べ方、和食、行事食に関する意識を、栄養士は献立作成に関する意識、食文化継承への意識、食べ方やマナーに関する指導状況、食育における家庭との連携方法を調査した。

    【結果・考察】栄養士は給食を通じて伝えたいこととして、行事食や郷土食を知ってほしい52.6%、日本独自の食文化を継承したい31.6%と回答した。給食に和食を積極的に取り入れ、食文化を意識して、味噌、米、しょうゆ、かつお節、昆布、大豆などを使用していた。児童・生徒がよく食べる和食では、給食で提供される和食が上位にあげられ、献立構成も主食、主菜、副菜、汁物の構成であり、給食が児童・生徒に対し一定の効果を与えていることが明らかとなった。一方、保護者には栄養士の発信する情報が十分に伝わっていないことが推察される結果となり、栄養士の情報発信方法および、家庭との連携が課題であることが明らかとなった。

    (2018年度公益財団法人アサヒグループ学術振興財団助成)

  • ー味覚感受性と食嗜好・生活習慣の関連を中心にー
    高山 裕子, 柿崎 彩華, 亀谷 由佳
    セッションID: P-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】食生活や食環境の変化は食嗜好や味覚に強く影響し、塩味や甘味の味覚閾値の上昇に関係している。本研究は、若年女性の味覚の現状と食嗜好、生活習慣との関連を明らかにすることを目的とする。

    【方法】調査は2020年~2021年に行い、18歳~39歳までの女性88名を対象とした。方法は、味覚検査(5味(甘味、塩味、酸味、苦味、うま味)識別検査)により検知閾値と認知閾値を調べた。呈味試薬としては、甘味にはグラニュー糖、塩味には塩化ナトリウム、酸味にはクエン酸、苦味にはカフェイン、うま味にはグルタミン酸ナトリウムを用いた。また、だしの嗜好度、食習慣(運動や健康、食行動、食態度、食意識の4つの分野について好ましい習慣を点数化)、睡眠状況(ピッツバーグ睡眠質問票日本語版)を把握した。味覚感受性と食嗜好・生活習慣の関連性については、Pearsonの相関分析、χ2検定、2群間の差の検定により検討した。

    【結果】味覚検査では、うま味と苦味の閾値が高く、味の正解率が低いことからわかりにくい味であった。味覚感受性とだしの嗜好については、天然だしを好む者の塩味の閾値が有意に低く味覚感度が高かった。だしの種類と食習慣との分析から天然だしを好む者の合計得点が有意に高く、特に運動・健康分野、食行動分野での点数が有意に高かった。睡眠については、実質睡眠時間と酸味・うま味で正の関連がみられ、苦味の閾値の低さと睡眠得点で正の関連がみられた。睡眠と味覚感受性の関連は、睡眠時間の長さや就寝時間よりも睡眠の質が味覚感受性に影響を及ぼす可能性が示唆された。

  • 作田 はるみ, 橘 ゆかり, 白杉(片岡) 直子, 堀内 美和, 坂本 薫, 森井 沙衣子, 三浦 加代子, 井奥 加奈, 中谷 梢, 升井 ...
    セッションID: P-92
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】小学校教員を志望する大学生に,2社の教科書(AまたはB)の記載に従ってガラス鍋による炊飯実習を行わせた。実習後に実施した質問紙調査の結果からは,炊飯の加熱過程全体を通して「火加減の調節」,「加熱時間の調整」が難しく,「炊飯の状態」の判断に困ることがわかった1)。本研究では,炊飯実習中の学生の気づきや疑問,戸惑いなどを抽出し,教科書の記載だけでは学生が判断しがたい場面を整理しそれらの要因を検討した。

    【方法】2018年1月に,大学生54 名を調理頻度や炊飯の経験で差がないように教科書A,Bの2群に分け(A群:8班,B群:8班),各教科書の記載に従い炊飯実習を行った。炊飯の加熱過程(「温度上昇期」,「沸騰期」,「蒸し煮期」,「蒸らし期」)を班毎に録画した。学生は各過程の加熱時間と火加減をワークシート(WS)に記録した。炊飯の状態や,困ったことについても自由に記述した。WSから加熱時間の傾向を把握し,録画された鍋や米の状態,学生の発語や行動を参考に,「火加減の調節」,「加熱時間の調整」,「炊飯の状態」のとらえ方について整理した。

    【結果・考察】WSの記録から,A群の加熱時間は各過程でほぼ教科書の記載どおりであった。B群は記載よりも「温度上昇期」は短く「沸騰期」は長くなる傾向にあった。各過程で困ったことの記述件数は,A群よりもB群のほうが多かった。両群のいずれの班も温度上昇期から沸騰期にかけて鍋がふきこぼれていた。教科書の記載にある「湯気」や「ふたの音」,「水が引く」という「炊飯の状態」に関する学生の発語や記述がみられた。教科書の記載が学生にとって分かりにくい、もしくは異なる現象が起きた場面で判断に困っていた。

    1)作田ほか,日本調理科学会平成30年度大会

  • 郡山 貴子, 青木 櫻, 田代 あみ
    セッションID: P-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】モリンガ(Moringa oleifera)はインド北部原産のワサビノキ科の植物で、高い栄養価と機能性を有し、葉や根、茎、および花などが利用されている。本研究ではモリンガの葉を粉末にしたモリンガリーフパウダー(MLP)でパンを調製し、その性状に及ぼす影響について検討した。

    【方法】パンの材料はMLP(沖縄産)、強力粉、無塩バター、食塩、ドライイースト、および水とし、ストレート法で調製した。MLP添加量は強力粉を0%、1%、2%、5%、10%置換した。保存条件は室温(26℃)と冷蔵(4℃)にて0、2,4,24,48時間、および1週間とした。測定項目は水分量、比容積(菜種法)、色価(SE6000,日本電色工業)、かたさ(TA-XTPlus、英弘精機)、および老化の程度(DSC-60 、島津製作所)とした。

    【結果・考察】パンの比容積は0%では4.23mL/gであったが、1%で3.94mL/g、10%は2.24mL/gとMLP量の増加に伴い減少した。色価はMLP添加によらずクラスト、クラムともに保存による明瞭な変化はみられなった。硬さは常温保存48時間後において、0%では保存前に対して約2.3倍硬く、MLP添加1%および2%では1.2倍程度であった。焼成直後はすべてのパンでDSCのピークはみられなかったが、1週間後では0%で43.0℃にシャープなピークがみられた。一方MLP1%~10%の1週間後のピークはいずれもブロードで44.2℃~45.4℃の範囲であった。このとき老化の程度を示すΔE値は0%に対して、1%および2%では約1/2、5%および10%では約1/10であった。これらのことから、MLP添加パンは老化の進行が抑制されることが示唆された。

  • 平島 円, 河原崎 泉水, 高橋 亮, 磯部 由香, 西成 勝好
    セッションID: P-94
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】こんにゃく粉は水を吸収し膨潤すると粘性を帯びるため,さまざまな食品に増粘剤として利用されている。また,これらの食品には糖類が添加されているものが多いが,糖類がこんにゃく粉の膨潤に与える影響は明らかにされていない。そこで本研究では,糖添加こんにゃく粉水懸濁液の粘弾性について検討した。

    【方法】こんにゃく粉には優良こんにゃく粉((株)丸山商店)を用い,その濃度は0.5wt%とした。糖にはショ糖(三井製糖(株))とブドウ糖(特級,和光純薬工業(株))を用い,添加糖濃度は0~60wt%とした。試料の粘弾性は,定常ずり粘度の時間依存性とずり速度依存性,貯蔵弾性率と損失弾性率の周波数依存性測定により検討した。

    【結果・考察】糖濃度30wt%以下のこんにゃく粉水懸濁液の粘度は,こんにゃく粉の膨潤に伴い試料調製開始からある時間まで増加し,その後一定値をとり,ある時間を超えると減少した。試料の粘度が一定になるまでの時間は,糖濃度が高くなるほど長くなることがわかった。一方,30wt%より糖濃度が高いと,粘度はほとんど増加せず,時間による大きな変化はなかった。糖はこんにゃく粉が膨潤するための水を奪うことで,こんにゃく粉の増粘効果を阻害した。糖添加こんにゃく粉水懸濁液の粘度は,ショ糖濃度20wt%,ブドウ糖濃度25wt%までは,糖濃度が高くなるほど高くなり,それ以上の糖濃度では低下した。また,糖無添加の試料は分子鎖の絡み合いがない液体的な挙動だったが,糖を添加すると,糖濃度30wt%程度までは,分子鎖の絡み合いが支配的な溶液型の粘弾性挙動であった。したがって,糖を添加する場合は調製時間を長くすることにより,こんにゃく粉の増粘効果を高められることがわかった。

  • 河野 俊夫, 東江 一正
    セッションID: P-95
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】食品の管理コードは包装袋に付けるほかなく、包装袋から食品が離れると、もはやどのメーカーからの食品なのかは不明になる。裸のままの食品を管理する特殊コードがあれば、食品の安全管理上、役に立つ。 そこで、ナチュラル添加物としての精糖を利用して、「食べられる」製品管理コードについて研究した。微量の精糖を用いたデザインコードを食品表面にプリントし、そのデザインを近赤外光で読み取ることで、非破壊・非接触でコードデザインを読み取る仕組みである。異物検出では、異物そのものを検出するのが目的となるが、この技術はそれを逆手にとった新しい食品管理手法である。

    【方法】ハンバーグを対象に、微量の13種の精糖でデザインコードを表面にプリントした供試体を用意した。①精糖、②ハンバーグ、③精糖によるコードをプリントしたハンバーグ、それぞれについて、ハロゲン光を照射した際の反射光スペクトルを多変量解析し、①と②を識別するための特徴波数を選び出した。これを用いてハンバーグ表面各所のスペクトルが、ハンバーグ表面か、精糖によるコード表面かを識別するAIモデルを作成した。

    【結果・考察】(A)精糖で作成した特殊コードのある表面と、(B)特殊コードのない表面それぞれの元スペクトルとその二次微分スペクトルを識別するAIモデルをMATLABの を用いて作成し、あらかじめ(A)と(B)の答えが分かっているデータをもとに学習させ、学習時とは異なるデータで判定精度を検証した結果、ナチュラル添加物としての精糖を活用した食品管理特殊コードの有効性が示された。 なお、本研究は公益財団法人糖業協会2021年度研究助成による支援により実施した。 ここに記して謝意を表する。

  • 秋吉 澄子, 木村 美穂
    セッションID: P-96
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】本学科では2019(令和元)年度から2年次後期に「卒業セミナー」の授業を新設し、学生が各自希望する教員の下で様々な研究・調査を行っている。発表者が担当する研究室では、保育施設や学校など子どもと関わる職場への就職を希望する学生を対象に、主体的な調理実習を行っている。今回、その内容について報告する。

    【方法】卒業セミナー全15回の授業のうち、第1回で研究テーマを決定、第2回から①計画:調理する料理の決定および発注、②調理、③評価を計3回繰り返し、終盤はレシピ集の作成に時間を充てている。2019年度は15名、2020年度は21名、2021年度は15名の学生が本研究室に所属し、調理実習を行った。

    【結果・考察】学生が掲げたテーマは、①絵本やマンガ・アニメ、映画に登場するキャラクターや料理の再現、②キャラクターをモチーフにした料理作成、③世界の料理の再現、④アレルギーに対応したおやつ作り、⑤野菜を使った料理作り、⑥郷土料理の調理、⑦その他に大別された。⑤をテーマに選んだ学生は、同時に畑で野菜の栽培も行った。通常の調理実習は、教員側がテーマや献立を決めて行うことが多く、今回学生自身が主体的にテーマを決めて取り組むことで、普段の授業以上に積極的に意欲を持って楽しむ姿が見られた。学生自らが興味を持って調べる・学ぶという学習の原点に立ち返り、改めてアクティブ・ラーニング(能動的学習)の効果を実感した。学生からも「普段作らない料理が多く、貴重な経験ができた」「やりがいと達成感を味わうことができた」「就職後に役立つ内容で、楽しく充実していた」との感想が聞かれ、計画性や事前の確認、臨機応変な対応、調理技術の不足を課題に挙げる学生も見られた。

  • 高橋 真美
    セッションID: P-97
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】北海道産小麦「ハルエゾ」は、春播小麦を主体とした強力タイプ小麦粉である。しっとりとソフトで風味が良く、もちもち感が特徴である。春に種をまく「春まき小麦」は、秋まき小麦より育成期間が短く、一般的に収穫量が少ないと報告されている。「春よ恋」や「ハルユタカ」などは春まき小麦であり、パン製造に特異的な特性を有していることから活用の実績が多い小麦粉である。「春よ恋」はハルユタカの風味や製パン性(パンの作りやすさ)を受け継ぎながら、収穫量が向上した強力系の春まき小麦であり、「ハルエゾ」にもブレンドされている。本研究では、先行研究の結果を踏まえ、パン市場における「ハルエゾ」の活用を目的に、パンの組織観察、物性について検討した。

    【方法】パン材料の強力粉は、北海道産小麦粉「ハルエゾ」を実験に供した。パン製造は、自動パン焼き機を用いて焼成したパンを試料とした。組織観察は、走査型電子顕微鏡にて加圧電圧5kv、35倍で観察した。物性は、クリープメーターを用いて測定した。

    【結果・考察】焼成パンの比容積は、ドライイーストを用いて焼成したパンでは、「カメリヤ」、「ハルエゾ」および「ゆめちからベストブレンド」の3種類のパン間の差は認められなかった。しかし、ホシノ天然酵母パン種で焼成したパンでは、「ゆめちからベストブレンド」は「カメリヤ」と同様の膨化度が認められた。官能評価では、「ハルエゾ」が「味」、「香り」、「食感」、「総合評価」において嗜好性が高く評価された。「ハルエゾ」は北海道産小麦の特長である粘弾性、モチ感があり、香りが豊富とされる小麦粉の1つである。このことが官能評価において、高く評価された要因と推察された。

  • 岡崎 貴世, 小松 広奈, 森本 亮祐
    セッションID: P-98
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】近年、乳アレルギー対応や菜食主義者向けに植物性ミルクの流通量が増加している。特にアーモンドミルク(Aミルク)は、食物繊維が豊富でビタミンEの抗酸化作用が期待されることから消費者に広く認知されている。そこで本研究では、Aミルクを原料とする新規発酵乳(ヨーグルト)の調製とその機能性を検討した。発酵用乳酸菌として、徳島県の阿波晩茶から分離した植物性乳酸菌Lactobacillus plantarum (プランタラム菌)を用いることとした。

    【方法】9種類の市販Aミルク150mlにプランタラム菌懸濁液0.75mlを接種(初発菌濃度8.0×102CFU/Aミルクml)して30℃で培養を行い、ヨーグルトのpHと凝固状態を観察した。乳酸菌数はMRS寒天培地(BD社)を用いて30℃で3日間培養して測定した。自家製Aミルクの調整は、①生アーモンドを180〜190℃で10分または30分間焙煎、②加水して粉砕、③搾汁の手順で行った。自家製AミルクとAミルクヨーグルトの抗酸化作用はDPPH Antioxidant Assay KitとSOD Assay kit-WST((株)同仁化学研究所)を用いて測定した。

    【結果・考察】試作ヨーグルトはpH4.4まで低下して凝固し、およそ109CFU/mlの乳酸菌が増殖し、調製後28日間の保存が可能であることが分かった。自家製AミルクヨーグルトもpH低下が認められたが凝固は見られず、調製したAミルクのタンパク質量が少ないことが影響したと考えられた。焙煎条件(時間)を変化させることでAミルクの抗酸化作用は上昇し、乳酸菌による発酵後もAミルクヨーグルトは抗酸化作用を維持していることが確認された。

  • 芝野 勇人, 渡邊 幾子, 森本 亮祐, 岡崎 貴世
    セッションID: P-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】そば、うどんなどに代表される麺類は、庶民食と言われるほど多くの人に好まれ日常的に食べられている。近年では、地産地消の推奨や郷土料理・伝統食の継承などの観点から様々な麺が再認知されるようになり、新商品の開発など麺文化は広がりを見せている。そこで、徳島県の伝統的発酵茶である阿波晩茶から分離した乳酸菌を用いて、新規発酵うどんの調製を検討した。

    【方法】乳酸菌は2017年に分離したLactobacillus pentosusを使用した。発酵うどんは、小麦粉((株)日清製粉ウェルナ、手打うどんの小麦粉)300g、塩9g(小麦粉重量の3%)、滅菌水+菌液150mLを基本材料として調製した。製麺機を用いて圧延と複合を繰り返して麺帯を作成した後、幅8mm、長さ50mmの麺線とし、沸騰水で8分間茹で上げた。茹で麺の水分量は水分計MOC-120H((株)島津製作所)で、物性はクリープメーターRE2-33005C((株)山電)で測定した。

    【結果・考察】麺中の乳酸菌の発酵状態は、麺のpH変化を指標とした。発酵条件は次のとおり決定した。発酵温度:30℃、発酵時間:24時間、接種乳酸菌量:1.0×108CFU/小麦粉100g、塩分濃度:3%。発酵温度に関しては30℃または35℃が最適温度であったが、雑菌の増殖が懸念されることから30℃に決定した。また塩分濃度は、一般に美味しいと言われる濃度は6%程度であるが、4%以上になると麺のpHが低下しなかったため、3%が発酵うどん調製の限界と考えられた。茹で麺の水分量は38.42%で、物性は乳酸菌未接種の麺と比較し、硬さ荷重が低くなり、柔らかいうどんになっていることが確認された。

  • 村上 芽生, 芝野 勇人, 岡崎 貴世
    セッションID: P-100
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】徳島県で伝統的な製法で作られている阿波晩茶は、乳酸菌で発酵させる後発酵茶である。近年、乳酸菌を用いた発酵食品の機能性が注目されているが、阿波晩茶由来乳酸菌も血糖上昇抑制作用や腸内環境を整えるプロバイオティクスとしての効果が期待されている。そこで、阿波晩茶乳酸菌を用いてサワー種を調製し、ライ麦パン(サワーパン)の開発を試みた。

    【方法】供試菌として、主に阿波晩茶から分離したLactobacillus pentosusを用いた。サワー種はライ麦粉(全粒粉・細挽、富澤商店)62.5g、乳酸菌懸濁液(OD660=0.01)0.625mLおよび水62.5mLを混合後、30℃で24時間培養して調整した。このサワー種を用いてライ麦粉25%(試料A)と50%(試料B)のサワーパンをホームベーカリーで試作した。また比較として乳酸菌無添加の50%サワーパンを焼成した。各サワーパンの比容積、水分量、色調(L*a*b*値)、物性(クリープメーター、(株)山電)を測定し、評価を行った。

    【結果・考察】試作サワーパンはライ麦粉の配合割合が多い試料Bで膨らみが小さくなった。ライ麦粉はグルテンを形成しないため比容積に影響したと考えられた。水分量は試料A:43.79%、B:43.84%、無添加:43.31%であり、試料間に差はなかった。パンの色調は、ライ麦粉の配合割合が多いとL値が小さく暗い色のパンになり、その影響はクラム(内側)よりもクラスト(頂点、側面)が顕著であった。物性の測定結果から、試料Bは乳酸菌無添加に比べて、かためのパンになり、またライ麦粉の配合割合が増えることで付着性の高いパンになることがわかった。

  • 折口 いづみ, 荒木 裕子
    セッションID: P-101
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】近年、質の良いコーヒー豆が輸入されはじめ、豆本来の特徴を活かす浅煎りコーヒーを提供する店が増えている。コーヒー中に含まれるクロロゲン酸には抗酸化作用があることが知られているが、焙煎度合いに応じて値が減少する報告もあることから、本研究ではポリフェノール含有量の高い浅煎りコーヒーの開発を目的とした。

    【方法】試料としてコーヒーの生豆を2種(ケニア、エチオピア)使用し、浅煎り、中煎り、深煎りと3段階に焙煎した。焙煎の基準は色差計で測定したL値により判断した。焙煎豆はミキサーSKR-T250を用いて20秒間粉砕した。粉砕したコーヒー粉末10 gに対して90℃の熱水200 gを注ぎ、エアロプレスで抽出した浸出液を試料とした。浸出液のポリフェノール含有量はフォーリン・デニス法を用いて測定した。また、産地の異なるコーヒーの生豆を3種(ラオス、イエメン、ブラジル)用いて浅煎り焙煎を行い、同様にポリフェノール含有量を測定した。これらの浅煎りコーヒーを用いたレシピ考案を行い、品種による違いを確認した。

    【結果・考察】コーヒー粉末浸出液100mL当たりのポリフェノール含有量を測定した結果、浅・中煎りの方が深煎りのものより多い傾向を確認できたが、中煎りの値が最も高く、品種による差も見られた。産地の異なるコーヒー豆を浅煎り焙煎し、同様に測定したところ、産地による差はあまり見られなかった。浅煎りコーヒーにはコーヒー特有の渋味や苦味が少なく、非常に飲みやすいという特徴に着目し、フルーツコーヒーのレシピを考案した。コーヒーと相性の良い果物を使用して煮出すことで、嗜好性の高いフルーツコーヒーを作製できた。さらに生豆の種類によって酸味や甘味、風味の出方が変わることも判明した。

  • 東江 一正, 河野 俊夫
    セッションID: P-102
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】新しいタンパク質としての食用昆虫は長期保存のために乾燥処理が必須となる。乾燥という現象は加熱エネルギーを投入して、対象物から水分を蒸発させることである。乾燥に必要なエネルギーを効率よく乾燥に利用するには、対象物の乾燥特性をモデル化し、どのような昇温にするべきか、最適な方法を検討する必要がある。そこで今回の研究では、食用昆虫の常圧での乾燥特性を測定し、その乾燥モデルを明らかにすることにした。

    【方法】供試昆虫にはイナゴ、コオロギ、カイコ、ミールワームを用いた。常圧乾燥試験では自動水分計を利用した。乾燥温度は60,80,100,120℃とし、それぞれ12時間乾燥を行い、10分ごとの質量を計測した。質量計測の結果を含水率に変換するためには乾物質量を決定しなければならないが、食用昆虫に対する乾物質量の同定方法は決まってないことから、本研究では、食用昆虫に脂質があることを考慮して、対象物を130℃、2時間乾燥させる方法で乾物質量を定義した。数値計算ソフトMATLABを用いて乾燥特性を分析し、その特性曲線を表現するモデルを仮定してパラメータとなる乾燥定数を求めた。

    【結果・考察】乾燥時間は当然のことながら食用昆虫の大きさが影響しており、カイコのように直径が10㎜近いものでは乾燥に時間がかかる。一方、ミールワームのように直径が5㎜程度のものはカイコと比較して短時間で乾燥完了となる。乾燥定数を比較すると、ミールワームのような小さな試料ではその速度は大きく、必要可能エネルギーは少なくて済むので経済性が良いとも感じられるが、「食用」の観点からは、栄養価はカイコのようにサイズの大きい試料の方が高いと考えられるので、一概に小さいものが良いとは限らない。

  • ーアーモンドの機能性を生かした焼き菓子の開発ー
    櫻井 瞳
    セッションID: P-103
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】愛知県の製菓企業である井桁堂(株)から依頼を受け、産学連携事業の一環としてアーモンドを使用した焼き菓子の開発を行った。製菓衛生師を目指す本学学生4名が参加し、最終的に商品として販売することを目標にレシピ開発に取り組んだ。これまでの授業とは異なる学習の場を設けることで、学生が新たな知識・技術を身につけ、実践力を養うことを目的として行った。

    【方法】開発にあたり井桁堂(株)社長との打ち合わせを行い、アーモンドの機能性、商品化に向けての注意事項などを伺った。その後、アーモンドと相性の良い菓子や食材などについて調査を行い、学生4名がそれぞれ一品ずつレシピを考案した。学生同士の意見交換や教員からのアドバイスを行いながら試作を重ねレシピを改良した。途中、中間報告という形で井桁堂(株)社長を含めた試食会を行い、実際に商品化する際の問題点などのアドバイスを頂き、さらにレシピを改良した。最終報告会として、二度目の試食会を行いレシピが完成し、井桁堂(株)のイベントにて開発した焼き菓子の製作と販売を行った。

    【結果・考察】最終的に「ラング・ド・シャ」、「アーモンドのエンガディナー」、「どらポンアーモンド」、「オートミールとアーモンドのスノーボールクッキー」の四つを開発した。アーモンドの食感や風味を重視したもの、低糖質である特徴を生かしたもの、流行りの健康食品と組み合わせたものなど、どの学生も事前に調査したアーモンドの機能性を考慮したオリジナリティのある焼き菓子を考案することができた。今回の産学連携事業で商品開発から販売までを経験したことで、学生の知識・技術の向上や創造力・実践力を養うことにつながったのではないかと考える。

  • 取替 恵, 佐藤 生一
    セッションID: P-104
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】2013年に「和食;日本人の伝統的な食文化」がユネスコ無形文化遺産に登録され、世界からも注目されている。しかし、食の多様化が進むにつれ、和食文化の存在が薄れつつある。そこで本研究では、代表的な和食の食材の1つである漬物を用いた洋菓子の開発を行い、物性測定、官能評価の結果より、漬物と相性の良い洋菓子を発見することを目的とした。

    【方法】洋菓子と漬物の相性を調査するため、チョコレートパウンドケーキ(パウンドケーキA)、プレーンパウンドケーキ(パウンドケーキB)、チーズケーキの3種で試作を行った。漬物は、色鮮やかなしば漬けとたくあんの2種を使用した。味や見た目、物性を検討した結果、パウンドケーキBで官能評価を行うこととした。官能評価は、本学学生栄養士専攻50名、製菓専攻55名を対象とし、SPSSで検定を行った。

    【結果・考察】物性測定(かたさ)の結果、かたい順にパウンドケーキA、パウンドケーキB、チーズケーキであった。各洋菓子で材料や調製方法が異なるため、全ての洋菓子間において同じ結果が得られたとのではないかと推察する。パウンドケーキBの味と見た目の評価は、どちらもたくあんが好まれる傾向にあった。製菓専攻のみ、見た目が好まれる点において有意差が得られた理由としては、洋菓子に触れる機会が多く、洋菓子に対して肯定的であるのではないかと推察する。今般、漬物と洋菓子という意外な組み合わせであるが、試作した洋菓子以外にも漬物と相性の良い食材を発見することが可能ではないかと考えられる。今後も試作等を行い、漬物との相性を検討したい。

  • 金井 猛徳, 谷岡 由梨, 中野 長久
    セッションID: P-105
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】管理栄養士・栄養士養成課程における調理実習は,週に1回を最大1年かけて行われるが,入学前の調理経験等によるバラツキが大きいため,習熟度は個人差が大きく,実習外での反復練習や教員による個別指導が必須の状況である.また,調理実習は週に1回を最長1年かけて行われるが,習熟度の個人差が大きく,実習外での反復練習が必須な状況である.これまで我々は,上記の課題に対応するため,教員によるデモや調理実習中の様子を録画し,実習後に映像確認と反復練習が可能なMR技術を用いた事後学習支援システムを提案した。そこで本研究では,提案したシステムについて栄養士養成課程の学生を対象にアンケート調査を行い,事後学習におけるシステム導入に対する初期評価を行った。

    【方法】栄養士養成課程の学生を対象にシステムについて説明した上でアンケート調査を実施した(有効回答数:25件,回答率:100%).回答方式は5を最高とする5段階評価の5件法および自由回答法である.

    【結果・考察】アンケート調査の結果,事後学習にシステムを用いることに関して84%の学生が役立つと回答していた.また,システム(記録映像)の活用目的については,「自分の作業映像とデモ映像の比較」,「細かい調理技術の確認」,「デモ映像を確認しながら調理作業の確認」など,さまざまな視点で映像を確認する目的が中心であった.しかしながら,現在の事後学習で満足していることやシステムの費用面に関する懸念など、導入に関して消極的な意見もあったことから、新しい技術やシステムを導入(活用)することへの理解を広める必要性がある。

  • 小西 雄大, 山崎 英恵
    セッションID: P-106
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】器(うつわ)と盛りつける料理との組み合わせを巧みに利用した繊細な表現技法は、日本料理の大きな特徴の一つである。盛りつける食器の選択、盛り付ける量、盛り付け方といった視覚的要素は、料理の味わいを高め、おいしさや感動を増幅させるために不可欠であると考えられる。本研究では、食器が料理の味わいに及ぼすクロスモーダル効果について検討した。

    【方法】大学生 51 名(男性 9 名、女性42名)、プロの料理人 59 名(男性 57 名女性 2 名)を対象に、アンケート調査を行った。被験者は、iPad で事前に撮影した 3 種類(赤・黒・白)の器に盛られた料理(炊合せ)の写真をみて、味わい(甘味・塩味・うま味・味の濃さ)・香り、料理の好み(見た目の好み・器と料理の相性・日本料理らしさ)の各項目を-3(非常に弱い・悪い)から+3(非常に強い・良い)について評価した。

    【結果・考察】味わいおよび香りに関する項目では、料理人、学生共に、白よりも赤や黒の器の方が味わい、香りを強く感じる印象を持つことが明らかとなり、食器の色がクロスモーダルな作用として味わいに変調をもたらす可能性を示した。一方、料理の好みの項目の「日本料理らしさ」において、学生では黒の器が最も高く評価され、白の器と有意差を示すほど高い評価を示した。料理人では白の器が高く評価された。両者における違いは、20代前半の学生では、漆器を連想させる黒色の器を選択した可能性が考えられる。それに対し、料理人が白の器を選択した理由には、日本料理のルール(コースの中で漆器は一度しか使用しない)や調理経験が強く影響していることが推察された。

  • 樋口 千鶴, 鈴木 耕太, 渡邉 シオン, 廣瀬 千乃, 望月 真緒
    セッションID: P-107
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】2020年から始まった新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大によって調理実習や対面において喫食を伴う食育活動の実施が困難となっている。また人の移動の制限により、食産業の低迷から地域の一次生産物の消費が大きく落ち込んでいる。食育活動に関しては感染拡大の中、中止もしくはリモートでの実施に変更を余儀なくされた。しかし調理する食材に直接触れる事や共食する事の楽しさを体験することは重要である。また家庭で調理する機会の増加によって、包丁技術などの調理技術の重要性は高まっている。そこで感染リスクに対応した方法を模索し、地域食材や郷土食をテーマに調理に関する食育活動を行い今後の実施方法を検討することを目的とする。

    【方法】 ① web会議システムであるZOOMを使用し、一人暮らしを始め自立を目指す対象者に地域食材を使用したカレー献立の調理実習を実施した。 ② 山梨の郷土食である「ほうとう」をテーマにした親子食育教室を実施し、同時に作り方、歴史に関する動画を動画作成ツールを活用して作成し、喫食の際の黙食時に視聴してもらう試みを実施した。

    【結果・考察】 web会議システムであるZOOM上における調理実習に関しては、実施に際してまず調理器具、食材を対象者本人が調達しなくてはならないということ、一人で調理する際に撮影する機器の動作が困難であること、対象者の調理の状況の把握が困難であること、以上の課題から対面で実施するよりも多くの時間、費用を要した。 対象者からは、同時双方向性のZOOMよりもオンデマンド型の動画配信のほうがわかりやすいという評価があった。 「ほうとう」に関する食育教室実施に関しては、歴史に関する調査、試作等準備をしたが感染拡大によって延期を余儀なくされ準備のみ実施した。

  • 秋山 久美子, 山中 健太郎, 天野 美穂, 石井 美帆
    セッションID: P-108
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】包丁操作について、モーションキャプチャーなどを用いたバイオメカニクス的研究を行ってきた。その中で包丁操作が巧な者の包丁操作には共通点があることを見出した。それらの共通点を抑えて指導することで、包丁操作技術が短時間に向上するのではないかと考え、研究を行っている。本研究では、対面での指導が難しい状況において、動画を用いた包丁技術教育を実施することを目的としてコンテンツを作成し、それらを視聴させることで、包丁操作技術を向上が期待されるのか、その効果を判定することを目的とした。

    【方法】包丁操作技術の状況を把握するために、被験者85名を対象にリンゴの丸剥き、キュウリの小口切り、大根の千切り試験(初期試験)を実施した。リンゴの丸剥きとキュウリの小口切りでは、判定項目を設定し、点数化した。大根の千切りはチェック項目を設定し、できていたか否かで判定した。その後、視覚的にわかりやすいように作成した包丁操作教示用ビデオを用いて授業を実施するとともに、自宅等で自由に視聴させた。9週間後に同様の試験(教育後試験)を実施し、その結果から教育効果を判定した。

    【結果・考察】リンゴの丸剥き試験においては、初期試験より教育後試験で2.7点の上昇がみられた。キュウリの小口切りでは0.5点上昇していた。大根の千切りでは、規程の時間内に切り終わった被験者が増え、縦横の幅がそろうようになってきた。これらの結果と家庭等における自主的なビデオ視聴の有無のアンケート結果と併せ考えると、包丁操作の動画視聴は技術の向上において効果的であると考えられた。

    本研究はJSPS科研費JP18K02681の助成を受けて実施したものです。

  • 荒木 葉子, 高橋 清隆, 玉虫 誠
    セッションID: P-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】アカモクは褐藻類に分類され,ミネラルや食物繊維を豊富に含むことが知られている。しかしながら,調理で頻繁に使用されるコンブやワカメと比較して利用機会が少ないため,全国的な普及には至っておらず,全国でワカメでは50,000トン収穫されているのに対し,アカモクは500トンとまだまだ定期的な提供が行われていないのが現状である。そこで,保存性が高く,様々な用途に使用しやすいアカモクパウダーに着目して,その一般成分および食物繊維量を測定し,栄養価値の確認を行うとともに,調理への利用拡大を目的として,アカモクパウダーの応用レシピを考案し,試作検討を行った。

    【方法】アカモクパウダーは,岩手県山田湾で採取されたアカモク(原藻)を真水で洗浄後,70℃で7時間熱風乾燥を行い,石臼で粉砕して30メッシュ以下になるように調製したものを試料とした。一般成分は,常法により測定した。水溶性食物繊維は,まず、試料の希塩酸抽出液からアルコール分別法により粗フコイダンを得た。次に,その残渣に1%炭酸ナトリウム溶液を加えて粗アルギン酸を抽出した。

    【結果・考察】一般成分では,他の海藻と比較して炭水化物とタンパク質が比較的多く検出された。水溶性食物繊維含量を測定した結果,フコイダンは7.3g(無水物100gあたり,以下同様)であったが、アルギン酸は52.3gとなり,後者が高値を示した。今回,アカモクパウダーおよび市販品のボイルアカモクを使用して手軽に調理加工できるレシピとして,「うどん」,「お好み焼き」,「炊き込みご飯」,「あんかけ焼きそば」などを考案した。その中で「あんかけ焼きそば」は,エームサービス株式会社が企画する健康セミナーの展示会にて採択され,提供された。

  • 細内 安紀子, 鈴木 浩, 齋藤 恒生, 数野 千恵子
    セッションID: P-110
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】食用油脂や油脂が多く含まれる食品を長期間保管すると風味が悪くなり、さらに劣化が進むと不快臭や刺激臭を発する。食用油脂については、食品衛生法において酸価(AV)や過酸化物価(POV)などの規格基準や製造・取り扱いに関する指導要領が定められており、油脂劣化の指標としてPOVが用いられている。公定法の過酸化物価測定方法(滴定法)は実験室内での試験・検査を前提としているため、現場での試験方法としては適していない。そこで、現場で簡単に原料油脂のPOVが測定できる試験紙による方法を検討し、市販の食用油に適用できるかを確認した。

    【方法】1)試料:市販のサラダ油、あまに油、えごま油、米油、グレープシードオイル、べにばな油、落花生油の7種類を用いた。2)試料の調整方法:試料を日が当たる場所に放置し自動酸化させた。この油脂に新油を混ぜ、電位差滴定法(公定法)で滴定を行いPOV5,10,20および30に調整した。3)POV試験紙:POVと反応する試薬を含ませた検出部を作製し、スティック状のプラスティックに貼り付けた。4)POV試験紙の操作方法:試験紙の検出部に試料を塗布し、放置した。放置後、水をかけて発色させた。発色部分を色見本と比較してPOV値を判定した。

    【結果・考察】作製したPOV試験紙を用いて市販の油脂に適用し、あらかじめ作製した色見本と比較することにより、POV 5~30が判定できた。市販の食用油への適用:POV5,10,20および30に調整した7種類の市販の食用油についてPOVを測定した結果、本法と公定法は同程度の値が得られた。このことから、POV試験紙で市販のサラダ油、あまに油、えごま油、米油、グレープシードオイル、べにばな油、落花生油のPOV測定に適用できることを確認した。

  • 津村 恵莉, 内藤 柚子香, 坂本 薫, 菅 尚子
    セッションID: P-111
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】昆虫食を普及するためには、嗜好性の向上や高付加価値化に寄与する知見を増やす必要がある。そこで、本研究では、食用コウロギパウダー(以下、CP)をライスクラッカーに添加した際の物性や色と抗酸化性に与える影響ついて検証した。

    【方法】CPはTAKEO社のものを使用した。初めに、CPのみを140、160、180℃で30分間加熱し、DPPHラジカル捕捉活性およびSOD様活性を測定することで、CPが有する抗酸化力の熱安定性について評価した。続いて、米粉にCPをそれぞれ0、10、20、30 wt%添加したライスクラッカーを作成した。ライスクラッカーの物性評価として破断荷重を、外観評価として明度(L*)と色度(a*,b*)をそれぞれ測定した。またライスクラッカーの抗酸化力についてもCPと同様にして評価した。

    【結果・考察】加熱したCPのDPPHラジカル捕捉活性は、未加熱のものと比較して減少したが、その減少率は大きくなかった。一方で、SOD様活性については加熱により高くなる傾向を示した。また、CPを添加したライスクラッカーにおいては、添加なしのものと比較して破断荷重が低下し、暗く赤みが増すことが確認された。さらに、CPを添加したライスクラッカーでは、DPPHラジカル捕捉活性及びSOD様活性がともに高くなった。

  • 三神 彩子, 赤石 記子, 日原 真由美, 笹岡 恵梨, 長尾 慶子
    セッションID: P-112
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】循環型社会の構築に向け、資源を大切にし、ごみの発生抑制に資する暮らし方に変えていく必要がある。家から出るごみを見てみると、可燃ごみの半分近くを生ごみが占めており、その内訳は、調理くず、食べ残し、未利用食品等で占められる。また、日本の一人当たりの食品ロス量は約45㎏/年にもなる。これまでに我々は、エコ・クッキングによる調理時のごみ削減効果などについて報告をしてきたが、本研究では、家庭ごみ全体の中での生ごみの削減効果に焦点を当て、実験的に検討することとした。

    【方法】これまでの調査から、モデル献立に基づく1日3食当たりのごみ削減効果は平均17.5%であることを確認している。そこで、実際の家庭生活でのごみ削減効果と比較するため、6名を対象にいつも通りに生活し2週間分のごみの計量と記録を実施した。次にごみ削減に向けたワークショップを1時間程度実施後にごみ削減ロを意識した生活をし、2週間分のごみの計量と記録を実施した。また、改善点を含め検討するためのワークショップを1時間程度実施後に、ごみ削減に取り組んだ2週間分のごみの計量と記録を行った結果と比較検討することとした。

    【結果】今回の実測調査から、一世帯当たりの家庭から出る可燃ごみ量(生ごみ除く)は約42%、生ごみ量は約19%の削減につながることを確認した。さらに継続して取り組んだところ、可燃ごみは約53%、生ごみは約33%の削減効果を得た。生ごみを除く可燃ごみに関しては、分別可能な紙ごみやプラスチックごみを資源ごみとして分別することにつながっていた。生ごみに関しても、ごみ削減を意識し、実践することで、実生活の中で継続して減らす可能性があることが確認できた。今後調査規模を拡大する予定である。

特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
  • ー主菜・副菜・おやつ・行事食に用いられる食材および地域性ー
    宮崎 早花, 菊地 和美, 山口 敦子, 伊木 亜子, 木下 教子, 佐藤 恵, 田中 ゆかり, 藤本 真奈美, 坂本 恵, 菅原 久美子, ...
    セッションID: P-k1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の調査方法に従い実施した,昭和30~40年頃までに北海道に定着した家庭・郷土料理に関する聞き書き調査を基に「地域の特徴」について検討した。

    【方法】調査は,北海道を道央・道南・道北・道東の4地域に区分し,平成25年4月~26年12月に実施した。今回は,北海道の家庭料理について,主菜・副菜・おやつ(間食)・行事食に用いられる食材ならびにその地域性を取り上げた。 

    【結果・考察】主菜は,全域的に魚介類,特に鮭の利用が最も多く,石狩鍋,飯ずしなどが挙げられた。 肉類は,鯨・羊・豚の利用が多かった。鯨肉は,鯨汁,竜田揚げなどに利用されていた。羊肉の代表料理としてジンギスカンが挙げられた。副菜はいも,豆,野菜,山菜,海藻を利用していた。じゃがいもは収穫量が多く、年中用いられた。保存がきく副菜は、主産地の道東十勝で大豆と昆布の煮物や大豆の南蛮漬け,金時の煮豆,南瓜の煮物などが作られた。代表的な山菜として,ふき,行者にんにくは春を感じる食べ物として食された。また,海藻は北海道特産の昆布が煮物として親しまれた。おやつは,いも・かぼちゃ・豆類・穀類を利用していた。道南では米粉を利用した餅,道北では,干した鱈・鮭などの海産物などもおやつとして捉えられていた。酪農が盛んな道東では,自家製の「牛乳豆腐」がみられた。行事食は,正月料理を大晦日に年取り膳として食べる家庭が多かった。雑煮は,一般的には醬油味に角餅が多いが,味噌仕立てや餡入り丸餅などもみられ北海道入植者が故郷の味を受け継いでいる様子が窺えた。北海道の家庭料理は,旬の食材や各地域の特産物を活用しており,地域性があることが認められた。

  • ー自然環境の違いによる地域固有の伝承料理についてー
    安田 智子, 北山 育子, 今井 美和子, 熊谷 貴子, 真野 由紀子
    セッションID: P-k2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】青森県の地形や気候の違いにみる特産物を用いた、その地域固有の伝承料理について特徴を明らかにする。

    【方法】県内を3地域に区分し、聞き取り調査を計25か所で実施した。調査対象者は、その地域に長く居住し、家庭料理を良く知り、調理に携わっている41名とした。その調査結果から地形や気候の違いによる特産物を用いた、その地域固有の伝承料理についてまとめた。

    【結果・考察】調査結果から絞り込まれた料理91品中、おかずの次に汁物が21品(23%)と多かった。冬が長く厳しいため温かい汁物が多く、各地域で獲れる魚介類を用いた汁物、秋に収穫し保存可能な根菜類やしぐさ(干し菜)、加工保存しておいた山菜、きのこ類などを利用して食料不足の冬にも工夫された具沢山の汁物があがった。青森県全体では「たらのじゃっぱ汁」、津軽地域では「ほっけのすり身汁」「けの汁」、下北地域では「くじら汁」「八杯豆腐汁」、南部地域では「いちご煮」「せんべい汁」などであった。また、多種多様なおやつが15品(16%)と多かった。その特徴を見ると、穀倉地帯である津軽地域では米粉使用の「しとぎもち」「がっぱらもち」、下北地域は芋・芋粉を用いた「いももち」、雑穀や豆、小麦文化の南部地域では「豆しとぎ」「そば串もち」「かますもち」など、各地域の特産物を利用したおやつがあがった。 また、3地域の沿岸部では次のような特徴がみられた。日本海沿岸ではエゴノリを用いた「えごてん」、津軽半島沿岸ではおにぎりを若生コンブで包んだ「若生おにぎり」、下北地域沿岸ではタコの内臓を利用した「たこの道具汁」、太平洋沿岸ではアカバギンナンソウを用いた「あかはたもち」、あわびとうにを用いた「いちご煮」などの伝承料理があがった。

  • 長坂 慶子, 髙橋 秀子, 村元 美代, 魚住 惠, 菅原 悦子, 渡邉 美紀子, 冨岡 佳奈絵, 佐藤 佳織, 阿部 真弓, 岩本 佳恵, ...
    セッションID: P-k3
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】岩手県の伝統的な家庭料理を次世代に継承することを目的に,地域ごとに聞き書き調査を行った。調査結果から明らかになった地域の特徴について報告する。

    【方法】調査は,岩手県を7地域(県北・県央・北上高地南部・県南・沿岸・奥羽山系)に分け,調査期間は平成24~26年,調査内容は,昭和30~40年の家庭料理についてである。調査対象者は岩手県「食の匠」認定者を中心として選んだ61~96歳の女子で,地域に56~93年間居住している。対象者数は18人である。

    【結果】各地域の家庭料理で多く利用された食材と料理は,県北地域では,そば,小麦,大豆や豆腐,くるみ,山菜で,「そばかっけ」「まめぶ」「まめしとぎ」などの料理がある。県央地域では,雑穀,山菜,米や米粉で,「きりせんしょ」「干し葉汁」などの料理がある。中部地域・北上高地南部地域では,米,小麦,野菜で,「芋の子汁」「ずぼぬき」「ひなまんじゅう」などの料理がある。県南地域では,米(特にモチ米),小麦,野菜で,「もち料理」「小豆ばっと」などの料理がある。沿岸地域では雑穀,魚介類,海藻類で,「鮭料理」や「どんこ料理」「かまやき」「くるみ雑煮」などの料理がある。奥羽山系地域では,山菜,きのこ,野菜,川魚,大豆や納豆で,「山菜の煮しめ」「納豆汁」などの料理がある。県央地域は経済の中心として栄えた地域で,食生活においても周辺地域と交流がある。県央地域の家庭料理が,少しずつ異なる作られ方を示してそれぞれの地域の特徴といわれるものになり,県北地域や中部地域でも作られている。それぞれの地域で旬の食材をいかすとともに,雑穀類,山菜類,豆類,魚介類などは地域ごとに特徴のある貯蔵・加工をして利用している。

  • 矢島 由佳, 和泉 眞喜子, 宮下 ひろみ, 野田 奈津実, 濟渡 久美, 高澤 まき子
    セッションID: P-k4
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】伝統的な地域の家庭料理を次世代に伝承することを目的に、平成24~26年にわたり日本調理科学会特別研究として食生活の背景となる地勢・気候・生業等と併せて食生活の特徴や伝え継ぎたい家庭料理について聞き書き調査を行った。その調査結果から宮城県の家庭料理の特徴について報告する。

    【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査方法に従い、昭和35~45年頃までに定着した料理の聞き書き調査の報告書をもとに、宮城県の家庭料理における地域の特徴についてまとめた。

    【結果・考察】宮城県は、県西側は南北に連なる奥羽山脈、県東側は細長い湾や入り江を複雑に形成するリアス式海岸、そして両者の間には丘陵地帯や平野が広がり、多様な地形を有しており、各地域には昔ながらの食文化が見られる。宮城県は穀倉地帯とされているが、米の生産量が少なかった時期は麦飯やかて飯が主で、かつては年貢米として小麦を栽培し、これを主食とするはっと文化が県北地域で発展した。また、ハレの日の食べ物としてもち料理が供され、特に県北地域で種類が豊富であった。主菜は、山間地域で野生の熊や兎を、平野や丘陵地で家畜の鶏、山羊、牛などがあげられ汁物とされていた。稲作の盛んな平野ではイナゴの佃煮が、海岸地域では新鮮な魚介類が食されていた。副菜は、大根、白菜、なす、みょうがなど地域で収穫された季節の野菜を漬物にしていることが主であった。山麓や丘陵地域では山菜やきのこ類が多く、煮しめや和え物に用いられていた。おやつは、どの地域においてもふかし芋、干し柿や干し栗、凍みもちなど自家製の素朴なものが多く、小麦の栽培が盛んな県北地域ではみょうがの葉焼き、全域でしそ巻きがあげられた。

  • 高山 裕子, 熊谷 昌則, 髙橋 徹, 駒場 千佳子, 大野 智子, 三森 一司, 山田 節子, 逸見 洋子, 長沼 誠子
    セッションID: P-k5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】『次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理』の聞き書き調査を通して、秋田県における次世代に伝えるべき家庭料理について、料理の調理特性と特徴を明らかにすることを目的とし、今回、地域の特徴について検討する。

    【方法】県内8調査地域(鹿角・北秋田・山本・秋田・由利・仙北・平鹿・雄勝)において、昭和35~45年頃に調理を担当していた対象者19名(女性,74.2±7.8歳)に聞き書き調査を実施した。調査から得られた110品目の料理を抽出し、主な食材、日常食とハレ食、季節、地域の地理的特色などに分類して地域の特徴を考察した。

    【結果・考察】 県内の全地域で挙げられた料理は、てんこ小豆の赤飯、味噌漬け、かやき、茶わん蒸し、おやき、干し餅・あられ、呉汁、山菜料理、つくだ煮であった。主食は米料理のみで麺料理はみられなかった。赤飯は、黒ささげ(てんこ小豆)を使用する濃い赤褐色であることが全地域で共通し、県中央部から南部で、砂糖の添加量が多いという甘味の地域性があった。呉汁(豆汁)は、大豆を水に浸し、すりつぶした「呉」をみそ汁に入れたもので、全国各地でみられる料理であるが、具材に、ゴボウ、ダイコン、ネギなどの季節の野菜やきのこ、沿岸地域では、メカブをのせるなど地域により多様な日常食として挙げられた。全地域で挙げられた味噌漬け、いぶりがっこなどの漬物、味噌などの発酵食品の利用が多く、秋までに収穫された野菜、山菜、きのこなどを、冬の間美味しく食べられるように工夫を凝らした保存食が作られていた。漁業が盛んな沿岸地域では、新鮮な魚、えご、内陸部でも多様な寒天料理などが日常食、ハレ食として挙げられた。地域の地理的な特色や気候、産業、生活形態による食文化が根付いていたことが示唆された。

  • ー四季を楽しむ暮らしー
    齋藤 寛子, 佐藤 恵美子, 宮地 洋子, 平尾 和子
    セッションID: P-k6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】平成24~25年度に行った日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の聞き書き調査および山形県の郷土料理に関する出版物の調査結果から、山形県の特徴を示す家庭料理と食文化の背景について分析することを目的とした。

    【方法】山形県内は日本海に面する地域庄内地方と山側の内陸部で大きく分かれる。内陸部は気候や地形、歴史的な背景などからさらに3つの地方(最上地方、村山地方、置賜地方)に分けられる。本研究では、県及び地域ごとに特徴のある料理について検討した。

    【結果・考察】山形県は出羽三山、飯豊連峰、蔵王連峰など標高の高い山に囲まれ、冬は日本海側から吹く季節風により、県全域に降雪があり豪雪地帯となっている。厳冬の海岸で採れる岩のりは格物のもので庄内地方のお雑煮にはかかせない味である。雪解けを待つ春は特に気持ちの昂る季節であり、楽しみにしている料理・食材がある。かど焼は最上地方の春の訪れを祝う味であり、祭りにもなっている。また、芽吹く山菜は柔らかく、それぞれの味・香りを持つ数多くの種類が店先にも並ぶが、個人で山に入り採取するという話もよく聞く。置賜地方の小国町は山に囲まれ雪も雨も多く土が肥えているといわれ、立派な太さのわらびが豊富にとれる地域であり、大量の山菜は塩漬けや乾物にして保存もする。食品流通事情が悪かった時代の雪国の知恵であるが、現在も春は生の味、他の時期には保存した旨みを活かした料理として現在も食べ継がれている。庄内地方の家庭では山菜と庄内麩と合わせた料理なども食べられている。また、本県は寒天料理も豊富にあり、庄内地方には祭りに欠かせない2種類の醤油寒天、村山地方には海藻のえごのりを煮て固める料理などがある。

  • ー浜通り地方、中通り地方、会津地方ー
    會田 久仁子, 阿部 優子, 加藤 雅子, 津田 和加子, 中村 恵子, 福永 淑子, 栁沼 和子
    セッションID: P-k7
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぎたい日本の家庭料理」の主旨に賛同し、伝え継がれている料理、これからも伝承したい料理について5回に渡って報告してきた。福島県の家庭料理の特徴をまとめる。

    【方法】文献調査、家庭の調理担当者からの聞き書き調査の結果を基に特徴をまとめた。

    【結果・考察】福島県の家庭料理の特徴は①主食:浜通りは新鮮な魚介類を、会津では山菜や近くで栽培された作物を炊き込んだ飯が供された。ハレの日には県内全域で餅やもち米を利用した料理が伝承されていた。②おやつ:中通り、会津では凍み餅が、県内全域ではみそかんぷらが食されていた。③主菜:中通りや会津では乾物が利用され、海に面した浜通りでは新鮮な魚介類が用いられていた。主菜と副菜とに分類しにくいことが特徴。④副菜:県内全域で、畑で収穫される作物や山林で収穫できる山菜・きのこ類を食材としていた。凍みとうふ、凍みだいこんなどの凍み食品の他に乾燥野菜も多用されていた。⑤行事食:近代以前の流通の影響が現在まで引き継がれた行事食が多かった。年中行事では季節の素材を用い、祭礼料理は伝統料理と深く結びついていた。

     太平洋に面し阿武隈高地までの浜通り、阿武隈高地と奥羽山脈との間の中通り、豪雪地の会津に分けられる福島県の生活・食は、環境と共にある。浜通りでは常磐ものといわれる魚介をふんだんに使った魚食、中通りでは冬期間の日内寒暖差を活かして作られる凍み・干し食、会津では保存食を利用した乾物食が特徴である。いずれの地域でも伝えたい料理として最初に挙がるのは漬物であった。漬物、漬け床とも種類が豊富で、食事時だけでなくお茶休みの時間や来客時のお茶うけにと、漬物は生活に深く結びついた欠かせないものとなっていた。

  • ー23区、都下、島しょの特徴ー
    伊藤 美穂, 赤石 記子, 色川 木綿子, 宇和川 小百合, 大久保 洋子, 香西 みどり, 加藤 和子, 佐藤 幸子, 白尾 美佳, 成田 ...
    セッションID: P-k8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】平成24、25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき、昭和35~45年頃に食べられていた東京都における家庭料理について聞き書き調査を実施し、地域の食事の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】調査対象地域を東京都23区(台東区・世田谷区・中野区・杉並区・品川区・板橋区・練馬区)、都下(日野市・奥多摩町)、島しょ(新島・式根島)の3地域に分け、70歳以上の都民21名を対象に、家庭料理について聞き書き調査を実施した。その結果より、日常食の食事(主食・主菜・副菜・汁物)について各地域の特徴を考察した。

    【結果】東京都23区では、主食や主菜にはパン・カレーライス・オムライス・ロールキャベツ・コロッケ・ムニエル・オムレツ・ハムエッグなど多くの洋風料理が出現していた。その一方で、副菜や汁物には、つくしの佃煮・青菜の煮浸し・あさりやしじみの味噌汁など季節の食材を使用した煮物や和え物、味噌汁が多くみられ、日常の食卓に和食と洋食が混在した様子が推察できた。食材の調達においても、昔ながらの近所の商店とスーパーマーケットやデパートでの購入が混在していた。都下および島しょにおいては、栗ごはん・明日葉ごはん・川魚の塩焼き・トビウオや赤イカなどの海産物の料理・山菜の天ぷらや煮物など地域の特産物を使用した料理が多く出現し、洋風の料理はみられなかった。東京全体として麺類にはうどんがみられるが、島しょ、都下は粉から作る手打ちうどん・手打ちそば・すいとん、23区はラーメン・焼きそば・インスタントラーメンがみられた。以上の調査から23区とその他の地域では高度経済成長期の影響を受けて食生活の変化に差があることが顕著であった。

  • ー山間部・沿岸部を中心にー
    櫻井 美代子, 増田 真祐美, 大越 ひろ, 清 絢, 大迫 早苗, 河野 一世, 津田 淑江, 小川 暁子
    セッションID: P-k9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理を掘り起こすことを目的とする。

    【方法】神奈川県内の14か所の横浜市中区・泉区・多摩区・鎌倉市・三浦市・大和市・相模原市緑区・伊勢原市・秦野市・小田原市・大磯町・山北町・真鶴町・清川村・旧津久井地域(現相模原市)を中心に、その地域で育った方、または嫁いで長く居住している年配者(主に女性)に、1960年代の食生活について聞き取り調査を行った。今回は、地域の特徴として、山間部・沿岸部の食材や料理についてまとめ、文献による補足調査を行った。

    【結果・考察】神奈川県は、北部は東京都に接し、西部は山梨県・静岡県に隣接している。また東は東京湾、南は相模湾に面し、西部は山地、中央は平野と台地、東部は丘陵と沿岸部の立地となっている。山間部では、田が少なく畑作が中心である。畑作では、野菜類(いも類を含む)の他、小麦やそば類、豆類がつくられ、食材として用いられていた。野菜類は副菜としていろいろな料理に利用され、小麦やそばは、粉食としてうどんやすいとん、そば(麺)の日常食や暮れから正月の行事食等に用いられていた。 一方沿岸部では、魚介類を生食のほか、魚介類の素材をいかした調理法が行われていた。かつおを用いた「しか煮」「さばの味噌煮」「このしろの甘露煮」などは、出汁を使わず、その素材からうま味を引き出した料理である。沿岸部でも畑作は行われ、魚介類と組み合わせられいろいろな料理に用いられていた。

  • ー豊かな農産物や川魚を利用した食文化ー
    徳山 裕美, 加藤 和子, 河村 美穂, 木村 靖子, 駒場 千佳子, 島田 玲子, 土屋 京子, 名倉 秀子, 成田 亮子, 松田 康子
    セッションID: P-k10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究平成24~25年度『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』の調査を通して,昭和30~40年代に定着した埼玉県の家庭料理について検証し,地域の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】埼玉県の東部低地:加須市,北足立台地:さいたま市,比企:東松山市,大里・児玉:熊谷市,入間台地:日高市,入間山間部:飯能市,秩父山地:秩父市,川越商家:川越市の8地域9か所における対象者は,家庭の食事作りに携わってきた19名で,居住年数は平均72.3年である。当時の地域環境と共に,食料の入手法,調理・加工・保存方法,日常食や行事食,食に関連する思い出や,次世代に伝え継ぎたいと考える料理について,聞き書き法で調査を行った。

    【結果】昭和30年代の日常食は主食とおかず1品,汁物,漬物で構成されていた。主食は米と麦類が多くを占め,麦類は地粉でうどんを打つ習慣があり,麺の形状により種類も多々あり調理方法も多様であった。おかずは肉,魚を使った料理はまだ少なく,野菜やいも,保存食品を使った料理など現在の副菜にあたる料理が多かった。野菜やいもは自家製がほとんどであり,旬の食材を利用した料理が作られていた。東部低地や大里・児玉などでは一級河川が流れていたため,動物性の食材には鯉や鮒などの川魚のほか,ウナギやどじょうなども利用されていた。卵を得るために鶏を飼育し,特別な時につぶして食べられていた。昭和40年代前後になると流通網の発達や冷蔵庫の普及などにより,畜肉も食べるようになった。おやつや行事食に関しても主食と同様,米や麦類を使用したものが多くみられ,いも類の栽培も盛んだったことから,さつまいもの粉を使用した団子やずいきの甘酢漬けなどもみられる。

  • ー多様な地域食品を活かした料理ー
    渡邊 智子, 梶谷 節子, 柳沢 幸江, 今井 悦子, 石井 克枝, 大竹 由美, 中路 和子, 鈴木 亜夕帆
    セッションID: P-k11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた千葉県の調査結果から、昭和35~45年頃までに定着し現在も食される千葉県の家庭料理について報告する。

    【方法】9地域の代表的な家庭料理および千葉県の特徴を明らかにした。

    【結果・考察】利根川流域:自家野菜料理「野菜の煮物や漬物」、荒川の小魚佃煮「ざっこ」、重曹を使う「小麦粉饅頭」、自家米のくず米使う「草餅」、東京湾奥:田せりを使う「せりと油揚げの煮浸し」、根深葱を使う「あおやぎのぬた」、自生のよもぎを使う「もち草のだんご」、房総湾奥海岸(市川・行徳):自家製野菜の「野菜の煮物(ごった煮)」、「あさりの味噌汁」、房総湾奥海岸(船橋・習志野):丸めずに作る「ぼたもち」、「あさりと長ねぎのかき揚げ」、安房:自生するせりの「細巻きずし」、おからで作る「からなます」、牛の初乳で作るカテージチーズの甘辛煮「ちっこ豆腐」、房州海岸:川魚「はやの甘露煮」、日常にも行事にも食す「いわしのうの花づけ」、北総台地(成田):おかずやお茶うけの「落花生みそ」、自家野菜と鶏肉の「混ぜご飯」、九十九里海岸:お盆のごちそう夏野菜の「七色ぜい」、くず米で作る「性学もち」、絵柄を楽しむ「太巻き寿司」、北総台地(東金):「せりご飯」、「落花生みそ」、自家製の胡麻を使う「ごま汁のそうめん」、自家野菜の甘辛煮「きゃらぶき」が代表的な家庭料理として食されてきた。

     千葉県は、平野と丘陵が大半を占め豊かな海と温暖な気候により多様な食材の日本有数の生産県である。昭和35~45年頃は自生や自家製の豊富な野菜や果物、採取した貝や魚等の地域食材を料理してきた。これらの料理は地域や学校給食により継承されている。

  • 石島 恵美子, 渡辺 敦子, 飯村 裕子, 荒田 玲子, 野口 元子
    セッションID: P-k12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の茨城県の調査地域である5地域において昭和30~40年代に食されていた料理で特徴的なもの8品を報告する。

    【方法】県内5地域(県北、県央、県西、県南、鹿行)において平成24年~26年度に聞き書き調査を実施した。その調査から分かった地域ごとの特色ある料理について検討した。

    【結果・考察】 県北の大子では、冬の昼夜の寒暖差を利用して「凍みこんにゃく」が製造され、以前は他県への販売目的であったが、現在は大子でも煮しめにして供されている。また、山間部では古くからそばの栽培が盛んで、冬にはたっぷりの根菜類やいもがらを入れてけんちん汁を作り、その汁で「けんちんそば」として供する習慣がある。 県央の水戸市では、畑作農業が盛んで、野菜類をさいの目に切って煮たものにとろみを付けた「のっぺ」は、子安講の持ち寄り料理として供されていた。また、汽水湖である涸沼で獲れるしじみを用いた「しじみ汁」は、すまし仕立てにして供する家庭が多くみられた。 県西の結城市では、かんぴょうの生産が盛んで、様々な家庭料理に利用されており、特に「かんぴょうの味噌汁」は精進料理としても供されていた。 県南の石岡市では、千葉県銚子方面からの行商が売りに来る本海藻を使用し、「海藻寄せ」を作るのが現在も続く正月の習わしである。一方、つくば市では、秋から冬に地域でとれる野菜を豊富に使って「ぬっぺ汁」が作られ、汁ものとしてよりも、煮物として供されていた。 鹿行地域では、昔から海岸に打ち上げられるイルカの肉が貴重なたんぱく源で、甘辛く煮た「イルカのごぼう煮」が供されていた。現在は、岩手県産のイルカ肉を購入して食べ継がれている。

  • ー四季折々の野菜・いも・山菜の利用と小麦粉の利用ー
    藤田 睦, 名倉 秀子
    セッションID: P-k13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】平成24,25年度特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」に基づき,昭和30~40年頃の家庭料理を含めた食生活の様子を聞き書き調査した。不足を補うために,同地区での再調査を実施し、次世代に伝え継ぐ家庭料理について地域の特徴を把握することとした。

    【方法】栃木県内の那須野ヶ原,日光山間,両毛山地,渡良瀬流域,鬼怒川流域2か所の全6地域とした。対象者はその地域に30年以上居住している60歳以上の19名であり,地域での暮らしと食生活の特徴と概要,印象に残っている食と暮らし,伝え継ぎたい家庭の料理を聞き書き調査した。その中から地域の農産物の特性を生かした料理を抽出してまとめた。

    【結果・考察】栃木県は,県北に日光、那須連山の山間部,県央,県南に関東平野の北端を占める地形で,境界部に海岸線を持たない内陸県である。昭和30年頃は農家の戸数も多いことから日常の食事は田畑で収穫された四季折々の野菜やいも類,山で採取した山菜を利用した料理が特徴である。主食では、平野部は米を中心に小麦の生産も盛んであることから,小麦粉(地粉)を利用したうどん,煮ごみ,すいとんが毎日のように食卓に並んだ。夏にはきゅうりの冷や汁,ちたけ汁,秋にはきのことなすの汁など,うどんだけでなく汁の種類も多彩であった。米,小麦の生産に不向きな山間部ではそばがこれに代わった。おかずでは主菜と副菜の区別がなく,野菜・いも類を中心とした煮物料理が多くみられた。旬の野菜類をぬか漬け,塩漬け,乾燥等で保存して年間を通して余すことなく利用した。いも類ではじゃがいもは日常の食が中心であったのに対し,里芋は行事食にも欠かせないものであり,神様にお供えする意味合いから大切に扱われていた。

  • ー絹産業を支えた食生活ー
    堀口 恵子, 神戸 美恵子, 永井 由美子, 阿部 雅子, 高橋 雅子, 渡邊 静, 綾部 園子
    セッションID: P-k14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き研究調査に基づき、次世代に引き継ぐ資料として報告した。群馬県の社会的な特徴として、日本の近代化を支えた絹産業が盛んであったことが挙げられる。そこで、群馬の家庭料理について絹産業との関わりの視点から検討した。

    【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、昭和30~40年代の生活環境と家庭料理について平成24~27年に行った調査結果、およびその後の聞き取りと文献調査を中心にまとめた。

    【結果・考察】群馬県は古くから絹産業が盛んで、女性は蚕の世話や他の農作業、食事作りと休む間もなく働き農家の働き(稼ぎ)手の中心として活躍した。 養蚕は5月の連休のころから始まり9月まで続くが、養蚕の豊作を願って、1月13日早朝にまゆ玉を作り、まゆ玉の木の枝(ミズキ)にさして蚕の神様にお供えし、16日の朝に雑煮や甘辛のたれで食べた。門松や前年のだるまなどを燃やすどんと焼きの火で焼いても食べた。最初のお蚕上げ(5月下旬)には赤飯を炊き、筍とニシンの煮物、なまりと野菜の煮物など。蚕の最後の脱皮(4眠)の時には、景気づけのため「休みもち(お蚕もち)」と言われるもち(餡入り)をついて近所にも振る舞った。田植え(6月上旬)、麦刈り(6月下旬)、農休み(7月中旬)、稲刈りなどの農作業の節目には、赤飯やあん入り蒸しまんじゅう、季節の野菜の煮物などを作り、こじゅはんとしてねぎ味噌やあん入りのおやき(焼き餅)、ふかしいも、たくあんやしょうがの漬物を田んぼに持参した。年間を通して大変忙しいので、麺類(うどん・おっきりこみ)やすいとんを農作業の合間にこねておくと、すぐ食べられて便利だった。

  • ー穀類、いも類及び果実類を利用した家庭料理ー
    時友 裕紀子, 阿部 芳子, 柘植 光代, 松本 美鈴, 坂口 奈央
    セッションID: P-k15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】山梨県は周囲を1000 m級以上の山に囲まれ、日較差が大きく、夏は高温、冬は冷涼な地域が多い。稲作に適した土地が少ないことから、麦やいもなどの畑作や果樹栽培が主である。山梨県の家庭料理には小麦粉を中心とした主食やおやつ類、いも類の煮物に特徴が見られることから、穀類、いも類の調理を中心に果実類の加工品についてもまとめた。

    【方法】「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、昭和30~40年代の家庭料理について平成25~27年に行った山梨県の聞き書き調査、文献調査及びアンケート調査1)を中心にまとめた。

    【結果・考察】山梨県では小麦粉を用いたほうとうやうどん、大麦を米飯に混ぜた麦飯を主食としてきた。特にほうとうは小麦粉に食塩を添加しないため、ねかし時間が短く、幅広の麺を直接汁で野菜類等とともに煮るため、調理が簡便で農作業で多忙な毎日の「ケ」の食事として多くの家庭で食べられていた。現代でも寒い時季の日常の夕食として食べられており、市販麺の利用が受け継がれてきた要因の一つと考えられる1)

     おやつとしては、小麦粉やもろこし粉を用いたうす焼き、まんじゅう、だんごや、さつまいも、じゃがいもを用いるものが多かった。なかでも、小いもを用いるじゃがいもの煮物はおやつだけでなく副菜としても食され、各地にその例が見られた。このような穀類やいも類の調理が山梨県の家庭料理の特徴と考えることができる。  

     さらに、ぶどうを代表とする果樹栽培は、戦後、日照時間が長く水はけのよい地域の主な産業となっており、ぶどう、もも、かき、うめなど、栽培農家を中心にその加工品が家庭料理の特徴となっている。

    1)松本美鈴他:日本調理科学会平成30年度大会研究発表要旨集1B-4 (2018)

  • ー風土に根ざした多様な米食文化ー
    太田 優子, 立山 千草, 佐藤 恵美子, 山口 智子, 松田 トミ子, 伊藤 知子, 伊藤 直子, 渡邊 智子, 玉木 有子, 山田 チヨ ...
    セッションID: P-k16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】『次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理』のガイドラインに準じた聞き書き調査結果から、昭和35~45年頃に定着してきた新潟県の家庭料理の地域の特徴について報告する。

    【方法】上越、柏崎、魚沼、長岡、新潟、村上、佐渡、7地域の特徴について検討した。

    【結果・考察】日本海に面し全国5位の面積を有す新潟県は、平野・山間地・島など各地の風土に根ざした農林水産物の恵みを受けてきた。上越地域では、水揚げされたサメで「サメの煮つけ」を、山菜の収穫時期には根曲がり竹と酒粕による「若竹汁」や、笹の葉にすし飯と山菜等をのせた「笹ずし」を楽しむ。柏崎地域の海岸部ではイカに糯米を入れた「いかず巻き」を、山間部では米粉の「おやき」を食す。魚沼地域でも米粉の「あんぼ」や、麹の漬物「きっこうし漬け」を作る。小千谷地区の「へぎそば」は、糸紡ぎ用の布海苔をつなぎに用い祝儀に必ず食す。長岡地域では、「醤油おこわ」を祝儀・不祝儀や日常で食し、塩蔵保存した体菜を煮る「煮菜」も冬の常備菜である。新潟地域の「鮭の焼き漬け」は保存に適し、食用菊と野菜等を胡桃と胡麻酢で和えた「かき和えなます」は法事やお節で食す。村上地域では、塩引き鮭と麹のなれ鮨「飯鮨」は年末年始の一品で、日常のおかずやお茶受けには豆腐を崩し寒天で固めた「寄せ豆腐」を味わう。佐渡地域の「やせうま」は、粳粉と糯粉で作る花模様の団子で、涅槃法要に供え念仏後に食す。新潟県全域では、正月や冠婚葬祭・来客などで「のっぺ」を、端午の節句・早苗饗などで「三角ちまき」を、頻繁に作る。新潟県の家庭料理には、主食である米を中心に、各地の保存食品や発酵食品、伝統野菜など多様な食材を取り入れた食文化が受け継がれてきた。

  • ー地理的特徴と食料の生産や調理ー
    高塚 千広, 新井 映子, 市川 陽子, 伊藤 聖子, 神谷 紀代美, 川上 栄子, 清水 洋子, 竹下 温子, 中川 裕子, 村上 陽子
    セッションID: P-k17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】 静岡県の食料生産と家庭料理の地理的特徴を示す。

    【方法】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の調査ガイドラインに基づき、静岡県東部(沼津市、富士宮市、伊東市)、中部(静岡市、焼津市、藤枝市)および西部(袋井市、浜松市)の各地域において居住歴が30~81年の男女61人を対象に昭和35年から45年頃の風習と家庭料理について聞き書き調査を実施した。

    【結果・考察】 まず、地理的特徴を示す。静岡県は日本列島の本州太平洋沿岸部のほぼ中央に位置する。海岸線は伊豆半島から日本で最も深い駿河湾を囲み、遠州灘に沿って浜名湖に至る。富士山や南アルプス、天城山の個性豊かな森林は県内の主要河川の源流であり、豊富な水の供給源となる。川や海は多様な魚貝や植物が生息し豊かな漁場となる。海岸域の海洋性気候と内陸の内陸性気候により、年平均気温は15℃程度と全般的には温暖であるが、寒暖差が大きい山間地では雪が降る。平地や丘陵地、中山間地や山間地では各地理条件に適した穀類が栽培された。昭和35〜45年の静岡県の米栽培面積は全国平均より広い規模であった。次に、日本の主要農作物である米を使った静岡県の家庭料理を紹介する。日常的な食事形式は、めし、汁もの、おかずと漬物であり、その地域の魚介類や野菜、山菜類が取り入れられた。そばや麦、豆類、種実類、いも類、干し椎茸や切干し大根、茶等の乾物も活用された。これらは、すし、炊き込み飯やどんぶり類、もちやだんご類に特色をもたらした。静岡県の家庭料理は簡潔な調味で調理工程に無駄がなく、食材の味と色や香り、食感が生かされる。以上は、静岡県の多彩な家庭料理の成立に地理的特徴が影響していることを示している。

  • ー信州の伝統的な野菜と漬物ー
    中澤 弥子, 小木曽 加奈, 小川 晶子, 吉岡 由美, 高崎 禎子
    セッションID: P-k18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】長野県の家庭料理の地域の特徴を明らかにすることを目的として、信州の伝統的な野菜と漬物について分析した。本発表では、その特徴を表し、昭和30年頃までに長野県各地で大切に作り継がれていた信州の伝統的な野菜を使った料理と特に漬物について報告する。

    【方法】平成25~28年にかけて全県的な現地調査を実施し、その後も継続して長野県内で調査を行った。調査は、主に聞き取り調査で行い、補足調査として電話調査を行った。可能な場合は、食材や料理、加工品の実物を撮影し試食した。

    【結果・考察】標高が高く寒暖差の大きい田畑の多い長野県で、伝統的に栽培されてきた野菜とその料理、特に漬物に注目して長野県の家庭料理の地域の特徴を分析した。菜漬には、全県的に栽培され利用されてきた野沢菜をはじめ、羽広菜、源助蕪菜など地域の漬け菜も用いられていた。すんき漬(木曽:無塩の発酵漬物:開田蕪、王滝蕪、三岳黒瀬蕪など)やこしょう漬(信濃町など)は独特の加工法の漬物である。だいこん漬(上野大根、前坂大根、牧大根、山口大根など)、赤蕪の甘酢漬(赤根大根、保平蕪)、粕漬(鈴ヶ沢うり、沼目越瓜など)、あかたつ漬(木曽、上伊那・下伊那:赤茎の里芋の葉柄の塩漬)などがあった。以前に比べ作る量は減ったと話す人が多かったが、各種漬物が減塩や調味料の多様化などのアレンジも加えて作り続けられていた。漬物以外では、辛味大根(戸隠大根、ねずみ大根、灰原辛味大根など)のしぼり汁がうどんやそばのつゆに利用されていた。地域の現状を踏まえ、長年の生活の知恵から様々に工夫された伝統的な野菜の漬物や料理が、おかずやお茶請けとして家庭や地域の集まりでおいしく食され、地域共有の宝物として人々に愛されていた。

  • ー自然の恵みを生かした料理ー
    中根 一恵, 守田 律子, 原田 澄子, 稗苗 智恵子
    セッションID: P-k19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」の聞き書き調査を基に、富山県の家庭料理の特徴をまとめることを目的とした。

    【方法】平成25年~28年を中心に富山県全域で行った聞書き調査及び文献調査により検討した。

    【結果・考察】富山県は三方を急峻な山岳地地帯に囲まれ、年中豊かできれいな水に恵まれた地域である。富山県の家庭料理の特徴として、1)豊富な魚種から生まれた魚料理、2)米の生産を中心とした米や米粉文化、3)北前船の影響による昆布料理、4)保存野菜の活用があげられる。魚料理は、ぶり大根、ほたるいかの酢味噌和え、白えびのだしつゆ・かきあげ、たら汁などがある。刺身は一番のごちそうであり、魚のアラは汁物などにして魚一匹を余すことなく使用する。魚津では、ハレの料理として暮れの大漁の際に作るあんじゃなますがある。米と魚を使ったハレの行事や祭りの料理として、県東部ではさばやかわはぎなどを使ってつくる押せずし、射水ではしめさばを笹の葉に包んださばの押しずしが作られた。また、米・米粉のおやつとして、いもがいもち、やきつけ、かんもち、黒部では、清水で冷やして食べる水だんごが夏のおやつとして親しまれた。昆布料理は、昆布じめ、昆布巻き、まだらのこづけ、とろろ昆布おにぎりが県全域で食べられている。冬季には大根や人参などを雪の下に埋めたり、大根をたくあん漬け、糠漬けなどにして保存し、古漬けは塩出しをして、粕煮などにして無駄なく活用する。また、報恩講に使用する山菜は春にとれた一番良いものを乾燥や塩蔵をして秋まで保存する。県西部では、大根の葉やなすなどを用いたよごしがよく食されていた。自然の恵みを余すことなく利用する工夫や知恵が各地域の家庭料理に込められていた。

  • ー食材の地域性と調理ー
    新澤 祥惠, 川村 昭子, 中村 喜代美
    セッションID: P-k20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本研究のまとめとして、本県の地域性があると考えられる食材を取り上げその調理について検討した。

    【方法】平成25~27年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査(穴水町、金沢市、野々市町、白山市、小松市、白峰村)及び文献等により検討した。

    【結果・考察】1)「いわし」の漁獲量、消費量とも近隣の県の中でも多く、日常食の中でいわしの位置づけが高い。特に「塩煎り、湯煮」といった、塩ゆでし、酢醤油を合わせる調理は、魚が淡泊になり、一度に多く食べることができ、時にはご飯の代用にもなるものであった。この他、「押し寿司」「ぬた」「味噌焼き」「だんご汁」など多様に調理されてきた。  2)「めぎす」の漁獲量は日本一であり、「だんご汁」「塩ゆで」「煮魚」などに調理されている。 3)「いさざ」は穴水町で3~4月の短期間にのみ漁獲されるものである。卵とじとして春祭りの料理に出現するが、「躍り食い」「すまし汁」「かき揚げ」などにも調理されている。 4)浄土真宗の盛んな地域であることからも、豆腐や揚げ、ひろず(がんもどき)などもよく使われる。「ひろず」は仏事に欠かせないものであるが、日常の副菜にも使われている。揚げは「なます」の他、地域の伝統野菜との煮物によく使われてきた。また、おからもよく使われ、行事食としての「からむし」以外にも、小鯛、あじ、いかに詰めた料理が日常よく食べられている。 5)「麩」の生産量の多い地域でもあり、「車麩」は煮物の他、最近はおでんの具材にも使われている。また「すだれ麩」は生麩で流通しており、ご飯ものなど多様に使われている。 6)「すだれ麩」を使う「じぶ煮」の主材料は鶏肉であるが、他の肉類、魚介類なども使って調理されている。

  • ー海の魚と川の魚ー
    佐藤 真実, 森 恵見
    セッションID: P-k21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】本州の中央部にあり、日本海に面す福井県は、嶺北と嶺南地区に分けることができる。嶺北には、九頭竜川、日野川、足羽川などの大きな川が平地や低地をつくっており、平野を中心に米づくりが盛んである。嶺南は、リアス式海岸になっており、小さな平野が細長く続き、滋賀、京都に隣接する。本研究では、日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」で実施した聞き取り調査等に基づき、福井県における海の魚や川の魚を使った家庭料理の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】聞き取り調査の結果および福井県の食に関する出版物から魚を使った家庭料理を抽出し、特徴および地域性についてまとめた。

    【結果・考察】県内の聞き取り調査によると、昭和30~40年代の海岸地域を除いた福井県の日常食としては、3食ともに米飯、野菜や山菜料理が主なものであった。日本海に面することから海からの恵みもあったが、魚介類はボテさんなどの行商により時々食べるご馳走であった。平成16年の報告書では、嶺北では「ミズベコの汁」「サバやイワシのへしこ」「浜焼きサバ」「ニシンの昆布巻き」「アユ塩焼」、嶺南では「ニシン寿し」「サバのぬた」「へしこ、へしこの貝焼き」などが食べられていると報告されている。福井漁連が作成した「越前・若狭旬のさかな」では、春にイカ、夏にウニ、アユ、秋にサバ、カレイ、冬に越前カニ、甘エビなどがあげられている。地域の特徴的な家庭料理としては、九頭竜川沿岸で「サクラマスやアユのすし」、その上流では「サバのなれずし」「半夏生の焼きサバ」、福井平野では「糠イワシ」「焼きサバの酢の物」「イカの煮物」、嶺南では、川魚の他、「一夜干しカレイ」「サバのぬた」などを食べていた。

  • ー内陸県ならではの食材の活用ー
    長屋 郁子, 堀 光代, 西脇 泰子, 木村 孝子, 辻 美智子, 長野 宏子, 坂野 信子, 山澤 和子, 山根 沙季, 横山 真智子
    セッションID: P-k22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】岐阜県に伝わる家庭料理の中で、各地域の自然環境の中から育まれた内陸県ならではの日常食と行事食の特徴をまとめることを目的とした。

    【方法】日本調理科学会特別研究「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」のガイドラインに沿い、岐阜県の家庭料理について聞き書き調査を実施した。調査対象地域は岐阜・西濃・中濃・東濃・飛騨の5圏域とした。調査対象者は各調査地で30年以上居住し、家庭の食事作りに携わった女性43名とした。

    【結果・考察】山や川、田畑の身近な食材を用いていた。日常食では、木の葉や実を利用した料理に「朴葉ずし」(中濃・東濃・飛騨)、「みょうがぼち」(岐阜)、「沢あざみの煮物」(西濃)、「栗きんとん」(東濃)、「なつめの甘露煮」(飛騨)がみられた。貴重なたんぱく質源として、豆腐の保存性を高めた「こも豆腐」(飛騨)、家庭で飼われていた鶏を余すことなく用いた「鶏ちゃん」や「ひこずり」(中濃)、昆虫食の「蜂の子(へぼ)の佃煮」(東濃)がみられた。里芋は「地(じ)いも」と呼ばれ、「あぶらえあえ」(飛騨)、「雑煮の具」(中濃)など様々な料理に用いていた。芋茎は全域にわたり酢の物などで食されていた。冬場の野菜の保存食として漬物を作り、二次利用の工夫として「煮たくもじ」(飛騨)がみられた。行事食では、春に採取した山菜を保存し、年取りのおかず「手しゅう盛り」や「ほんこさま料理」(飛騨)に利用していた。木曽三川の輪中地帯の祭りには、川魚を用いた「箱ずし(もろこずし)」(西濃)が食されていた。長良川鵜匠家では、「鮎なれずし」(岐阜)をお世話になった方に届ける習慣が続いていた。このように四季の食材を活用し、もてなしの精神とともに伝えられていた。

  • 磯部 由香, 阿部 稚里, 飯田 津喜美, 乾 陽子, 奥野 元子, 久保 さつき, 小長谷 紀子, 駒田 聡子, 鷲見 裕子, 成田 美代 ...
    セッションID: P-k23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査をもとに、三重県の家庭料理の特徴を明らかにすることを目的に分析を行った。

    【方法】平成24~26年度に県内の5地区17ヶ所で昭和2年~昭和23年生の女性24人を対象に、昭和30~40年代から作られていた家庭料理について聞き書き調査を行った。この調査結果および関連書籍を参考に三重県の食文化の特徴について分析を行った。

    【結果・考察】三重県は、河川や海に面している地域が多いことから、旬の魚介類を用いた家庭料理が多く作られてきた。主食としては「ぼら雑炊」「たこ飯」など、主菜としては「刺し身」「じふ(魚のすき焼き)」「さめのたれ」など、汁物としては「しじみ汁」「あおさのみそ汁」など、副菜としては「あらめ巻き」「坂本なます」「一匹なりの塩辛」などがあげられる。また、ハレの日に食する行事食として「箱ずし」「押しずし」「巻きずし」「ちらしずし」「魚の姿ずし」「その他の魚ずし(てこねずし、おんこずしなど)」「なれずし」など多種類のすしが作られている。魚と飯を発酵させて作る「なれずし」については、あゆ、このしろ、さんま、さばなどを使った様々な種類が現存している。三重県は地理的特徴や気候・風土によって大きく5つの食文化圏(北勢・中南勢・伊勢志摩・伊賀・東紀州)に分けられることから、それぞれの地域で特徴的な家庭料理が食されてきた。

  • ー地域別「四季の食卓」ー
    山本 悦子, 原 知子, 東根 裕子, 八木 千鶴, 阪上 愛子, 澤田 参子
    セッションID: P-k24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】平成24年からの日本調理科学会「次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理」 研究から、山海に恵まれ商都として栄えた大阪府内に1960年から70年頃までに定着した家庭料理・郷土料理の地域別の「四季の食卓」を抽出することを目的とした。

    【方法】大阪府の行政区分、日本の食生活全集「聞き書大阪の食事」の分類を参考に8地域(泉南・泉北・南河内・中河内・北河内・大阪市・ 三島・豊能)に分け、その土地に30年以上暮らしている27名を対象に聞き書を を行った。調査時期は2013年11月から2015年9月、方法等は学会ガイドラインに則った。

    【結果】物流や商業の中心地大阪は「天下の台所」とよばれた。 近くに海や山を控え、あらゆる自然の恵みを手近に入手できる位置にあり、平穏な瀬戸内海の船の便によって、遠隔の地からの産物が運ばれてきたためといわれている。ちらしずし、いなりずし、かやくごはん、はりはり鍋、どぶ漬、きつねうどんなどが大阪全域で作られていた。地域別にみると、大阪市内:えんどうごはん(春)、はもの皮ときゅうりの酢の物・はもの照り焼き(夏)、バッテラ(秋)、小田巻蒸し(冬)など。三島・豊能地域:たけのことわらび・ぜんまいの煮物(春)、花・実さんしょうの佃煮(春)、畔豆ごはん(秋)、栗の甘露煮(冬)など。北・中河内地域:生節の押し寿司・若ごぼうの煮物(春)、七色しんかい(夏)、河内のっぺい(秋)、おみい(冬)など。南河内地域:うすいえんどうごはん(春)、高野豆腐粉の煮物(通年)、茶かゆ(通年)、関東煮(秋)など。泉南・泉北地域:ゆでしゃこ(春~秋)、がっちょ・泉たこの煮つけ(夏)、がざみ(秋)、じゃこごうこ(年中)など。大阪の家庭料理は,四季折々の海・山など自然の恵みに育まれてきた。

  • ー学校給食で伝え継がれる産物と食ー
    作田 はるみ, 片寄 眞木子, 坂本 薫, 田中 紀子, 富永 しのぶ, 中谷 梢, 原 知子, 本多 佐知子
    セッションID: P-k25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】平成24~25年度に全国規模で行われた「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」聞き書き調査では,兵庫県においても多くの家庭料理があり,県内各地域の個性豊かな食文化の特徴が示された。本研究では,地域の産物を使用した家庭料理が学校給食の献立に取り入れられ伝承されているか、その現状を把握することにより地域の特徴を示す。

    【方法】調査地域は,神戸市,明石市,加古川市,小野市,姫路市,宍粟市(千種町),美方郡(香美町),丹波市,淡路市の9地域である。聞き書き調査で得られた家庭料理を中心に、地域の産物を使用した料理が各地域の学校給食の献立に取り入れられているかを調べた。献立は自治体のウェブサイトに掲載されている献立表を確認した。

    【結果】2021年度の学校給食の献立に取り入れられていた家庭料理は,神戸市の「すき焼き」,明石市の「いかなごくぎ煮」,「たこのからあげ」,加古川市の「かつめし」, 「はりはり汁」,小野市の「かしわ」の料理,「ちらしずし」,「高野豆腐の含め煮」,姫路市の「姫路おでん」,「ばち汁」,「くきわかめ佃煮」,千種町の「たけのこご飯」,香美町の「ゆでかに」,「ドギ」や「ニギス」の料理,丹波市の「栗ごはん」,「黒豆料理」,淡路市の「ちょぼ汁」,「たこ飯」,「鯛そうめん」などがあった。「姫路おでん」や「かつめし」などは,複数の地域で給食献立に取り入れられ,兵庫県の味として紹介されていた。学校給食実施基準には,給食には地場産物を積極的に使用することや食文化の継承につながるよう,郷土に伝わる料理を取り入れることが示されている。各地域の給食には地場産物が用いられた家庭料理が定期的に取り入れられ,郷土料理として給食だよりなどで紹介されていた。

  • ー地域の産業と料理との関連ー
    福田 小百合, 桐村 ます美, 坂本 裕子, 豊原 容子, 湯川 夏子, 米田 泰子
    セッションID: P-k26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】日本調理科学会平成24・25年度特別研究として京都府下の昭和30~40年代の家庭の食について行った聞き取り調査をもとに、京都府内の産業と料理との関連を地域別に探った。

    【方法】聞き取り調査は、平成25年12月~平成26年2月および平成28年9月に京都府下の北部(丹後、舞鶴、丹波、美山)、京都市内、南部(京田辺、宇治田原)の地域において、64歳から84歳の計26名を対象に行った。3地域の産業と結びつきのある料理の特徴を比較検討した。

    【結果・考察】地域で盛んな産業の特徴によって食材や料理に地域差が見られた。京都府の北部、特に沿岸部(丹後、舞鶴)では、織物業や漁業が盛んであった。良質な魚介類や海藻類は都市部に出荷し、手元に残った魚や小魚を食べたり、くず若芽を使って「わかめのパー」などの料理が作られた。豊漁時には干物や塩漬けなどの保存食を作り置きした。一方で内陸部(丹波、美山)は水田、山間地帯で、農業や林業、養蚕業の従事者が多く、良質の米は出荷し、家では「ひっこもち」などのくず米を利用した餅や、くず芋で飴を作るなど工夫をして、おやつや料理が作られていた。京都市内は商家が多く、計画的に食材調達が行われており、毎月決まった日に食べる「小豆ごはん」や「あらめと油揚げの炊いたん」などのおきまり料理が定着していた。京都府南部(京田辺、宇治田原)は、お茶の産地でもあったため、茶摘みで忙しくなる5月には、従事した人の労をねぎらう「ニッキもち」や「山帰来団子」が作られたり、茶摘みの終わりには、「生節と蕗の煮物」や「ちらしずし」を作業をした人にふるまう習慣があった。

  • ー多様な発酵食品・淡水魚ナレズシと野菜の漬物ー
    堀越 昌子, 久保 加織, 中平 真由巳, 山岡 ひとみ, 小西 春江, 石井 裕子
    セッションID: P-k27
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】滋賀県は琵琶湖の淡水漁業と稲作農業が生業の柱であった歴史が長く、アジアモンスーン圏特有の「米と魚」が食の柱となってきた。琵琶湖の魚を米飯と発酵させて、多様な淡水魚ナレズシが産み出され、また野菜も発酵させて多様な漬物が存在する。滋賀県の特徴は、発酵食品が多様であることと、発酵文化が地域特有の気候・風土の中で育成され、現代まで継承されてきたことにある。 本研究では、滋賀の淡水魚と野菜の多様な発酵食品の特徴、食生活上の位置づけと発酵技術が地域で継承されてきた背景を明らかにしていくことを目的とした。

    【方法】平成25~27年にかけて、湖北、湖東、湖南、湖西の四地域における発酵食品の製法や嗜好度の差異や発酵文化の背景などを聞き取り法で調査した。

    【結果・考察】琵琶湖の魚の多くは米飯とともに発酵させてナレズシにされる。湖魚は春から夏に多く獲れ、ナレズシ加工することで、年間に亘って食べられてきた。神事や慶事には湖魚のナレズシが神饌となり、客呼びのご馳走となった。ナレズシにされる魚は、フナ、ハス、ウグイ、アユ、オイカワ、モロコの順で多かった。ナレズシの多くは家々で漬けられ、多様な発酵技術が継承されてきた。地域ごとに魚の前処理法や塩分濃度の差が認められた。 野菜類は地域特産の日野菜、万木かぶ、伊吹大根、高月菜、尾上菜、鮎河菜などが漬物にされてきた。近年は白菜、青首大根などの漬物が急増してきたが、滋賀では集落単位を基本に地域と結びついた漬物が多く残っていた。また畳漬け、きりごみ、唐辛子漬けなど地域特有の漬物技術が存在した。積雪の多い湖北では山菜漬物も含めて多様な保存食が多く存在し、生き延びる手立てとなってきた。

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