日本調理科学会大会研究発表要旨集
2022年度大会(一社)日本調理科学会
選択された号の論文の218件中51~100を表示しています
口頭発表
  • ー反復練習による効果の検討ー
    長谷川 紘美, 柳沢 幸江
    セッションID: C-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】包丁動作の習得について、より効果的な調理教育方法を検討することを目的とした。自宅での2ヶ月間の週1回のきゅうりの薄切りの反復練習を行うことで、包丁動作にどのような変化が生じるか動作解析を用いることによって確認し、上達の経緯を明らかにした。

    【方法】本学の「調理学実習」の履修者で、リンゴの皮むきで包丁技能が低かった者の内、希望者21名を対象に、きゅうりの輪切りの薄切りの練習を実施した。初回の測定後、本人による反復練習は、週1回食材を配布して家での練習を依頼し、約1ヶ月毎に測定を実施した。毎週、練習ができたかの確認をした。測定は、前、1ヶ月後、2ヶ月後の3回行い、包丁には超小型無線生体モニター(インタークロス社)を取り付けた。分析項目は、20秒間の薄切りの枚数、厚み平均、包丁速度平均、加速度とした。加えて調理頻度や上達感等を調査した。統計解析は、IBMSPSSStatistics27を用いた。本研究は、和洋女子大学人を対象とする研究倫理委員会の承認を得た(承認番号:2001)。

    【結果・考察】20秒間のきゅうりの薄切りの枚数は、前に対し1ヶ月後、及び2ヶ月後で有意に増加した。厚みは、前より2ヶ月後で有意に減少した。包丁速度は、前に対し1ヶ月後、及び2ヶ月後で有意に減少した。包丁の振り上げ・振りおろし加速度は、前と比較すると高くなる傾向だった。以上の結果から、1ヶ月間の練習では、枚数、包丁速度に効果が表れ、練習を2ヶ月間続けることによってより薄く切ることができることが示された。技術の定着は今後の課題だが、アンケート調査ではほぼ全員が調理の得意感が高くなり、上達を感じたことから、定期的な練習と測定後のフィードバックを行うことで包丁技術向上に繋がると考えられる。

  • 鈴木 耕太
    セッションID: C-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】栄養士の業務は調理に携わることが多く調理技術、特に包丁技術の習得は必須である。しかし、栄養士養成課程の調査では学生の包丁技術は顕著に低下しているという報告がある。初学者の包丁技術に関して多くの先行研究があるが、具体的で有効性のある教え方そのものの検討は少ない。本研究において、課題分析や動画フィードバックによる指導に加え、身体誘導並びに他の包丁技術も対象とした。行動分析学の標準的な実験計画法である個体内比較法を用いて個人の技術向上を目指すと共に教育効果の高い指導法を検討し、包丁技術の高い栄養士を育成することを目的とする。

    【方法】独立変数:①動画に対する教員のフィードバック、②身体誘導 従属変数:下位行動の遂行率ならびに20秒間に1.5ミリ以下に切れたきゅうりの枚数 実験デザイン:グループ間多層ベースライン法 ① ベースライン(BL)期  対象学生に制限時間20秒で、小口切りを切らせた。20秒経過後、教員が1.5ミリ以下に切れたきゅうりの枚数と下位行動の遂行率を記録した。1.5ミリ以下に切れたきゅうりの枚数及び遂行率のデータが安定するまで、このベースラインを取った。  ② 介入Ⅰ期 セッション中の学生自身の動画を撮影させた。セッション終了後各対象者に対し、教員が動画とチェックリストを照合し、誤った遂行は正しいやり方を教えた。記録はBL同様に行った。 ③ 介入Ⅱ期 対象者学生を含む学生にペアを組ませ、力の入れ加減、包丁の動きなどを手を取って指導した。 キウイやリンゴの皮むきなど他の包丁技術の試験の結果と比較検討した。

    【結果・考察】身体誘導によって、遂行率が上昇し、きゅうりの枚数が増加した。 他の包丁技術においても動画フィードバックによる指導法は有効であった。

  • 由良 亮, 藤岡 美香, 萩原 勇人, 楠瀬 千春
    セッションID: C-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】栄養士が就業する職場では、包丁操作・技術力が求められる。しかし、栄養士を目指す入学生の中には包丁操作が下手な者がいる。そのため、教育機関として実習を通して操作技術の向上させることが求められるが、コロナウィルス感染症の影響により、彼らは十分な実習が行えない状況にあった。

    私たちの研究チームはMEMSモーションセンサーを用いて包丁操作の「見える化」を試みてきた。この方法を利用すれば、各個人の包丁操作の特徴を見出すことができる。それにより、各個人の検討課題を明確化することで、客観的な指導を行うことが可能となるのではないかと考えた。

    【方法】短期大学部1年次学生を対象にMEMSモーションセンサーを取り付けた包丁を使用して操作特徴を測定した。記録されたデータに見られる個人の特徴を、フィードバックし、自らの具体的な課題を確認させるとともに、熟練者の特徴および包丁操作に関するインタビュー内容と比較して検討した指導内容を踏まえ、段階的に指導と練習を行い、5週目に再度測定を行った。これを指導前と比較し、指導効果について検証した。

    【結果・考察】学習者の指導前のデータでは、ロール軸の運動がピッチ軸の運動よりも大きくなる傾向がみられたが、指導後には多くの学習者がピッチ/ロール比が大きくなる結果となった。また、12名全員が指導前後で変化した特徴としては、包丁の持ち手後方でピッチ運動が起こるようになり、包丁を前に押し出しながら切ることで、ブレが少なくなったことがわかり、学習者の包丁操作および意識に変化が見られ、熟練者のデータに近づく結果となった。

  • 佐藤 幸子, 井上 愛唯, 大石 菜穂, 大橋 直, 佐竹 紀香
    セッションID: C-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】2018年度大会において「調理教育のパフォーマンス評価の検討」では、「事前に授業内容を学内LANで共有する事(紙媒体)」により調理技術の自己評価が向上したことを示した。本研究では調理実習授業において情報通信技術の活用および情報活用能力の育成を目指し、調理に関する基礎知識および技術を見える化する手段としてICTを活用し、さらにルーブリックにより学習効果の定着を明らかにし、調理教育におけるICT教育の有効性を検討した。

    【方法】これまでCOVID-19対応授業として手掛けてきた指導教材をデジタル化して学内LANにより情報発信を実施した。また、グループ実習の情報伝達手段としてタブレット端末を各実習台に配置し、授業運営に際しレシピ等を繰り返し確認できるように環境整備をした。また、調理実習におけるアクティブラーニングの評価としてルーブリックの評価基準項目を設定し、授業回数に合わせて実施し、定着度合いを検討した。調査は2021年度「基礎調理1」の履修学生77名において実施した。

    【結果】教材として「1.準備・片付け」「2.出汁のとり方」などの動画を作成し、授業前に閲覧できるようにした。その結果、授業前にほぼ全員が閲覧し授業を受講していた。また、実習ではタブレット端末を繰り返し閲覧し、学生個人レベルで理解を深め、グループ内の協働作業を向上させた。ルーブリックによる実習評価は、5段階の具体的な評価を示すことにより第1回目と5回目を比較すると授業回数を重ねることにより主体的に取り組み姿勢が見られた。調理教育においてICT教育は自分自身の変容を自覚し、ルーブリックにより個々の知識および技術が見える化され、技術の向上につながっていた。

  • 上原 宏, 持橋 大地
    セッションID: C-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】最近盛んに使われているレシピ共有サイトには膨大なレシピが書き込まれているが、個々のレシピには、どのような風味や食感になるかについての記述が十分でない。そこで本研究では、凝固剤を含むレシピを対象として、大量の投稿レシピからまず、食感表現の潜在的な特徴パターンを推定する。推定した食感表現パターンを、調理科学の実証研究で得られた食感のレオロジー物性と対応づけ、投稿レシピの食感特徴情報を、食感表現パターンと物性の組み合わせとして提供可能とする。

    【方法】凝固剤を含む投稿レシピを大量に収集し、それらに含まれる食感表現語彙を確率的トピックモデルにより、トピックと呼ばれる潜在的な特徴パターンに分類する。トピックとは、レシピ集合に含まれる食感表現語彙で意味的に関連性のあるものを自動的に集めたものである。提案手法では、食感表現トピックに対応する材料構成、すなわち凝固剤とエマルションの種類と濃度の特徴パターン(材料トピック)を同時に推定する。推定した材料トピックを、調理科学での食感の物性測定における材料構成と対応付けることで、投稿レシピの食感表現トピックと、調理科学での食感物性とを対応づける。獲得した対応関係は、日本語テクスチャ用語体系により意味的妥当性を評価する。

    【結果・考察】Cookpadより、ゼラチン、寒天、アガーを凝固剤とするレシピ約3000件を対象に10パターンの食感表現トピックと材料構成トピックを推定し、調理科学の食感物性、すなわち、硬さ、凝集性、粘着性との対応付けを行った。その結果、凝固剤それぞれの食感物性の特徴に応じた食感表現トピックが対応づけられ、またそれらのトピックは混合エマルションの食感物性への影響も反映することを確認した。

  • 大西 弘太郎, 住吉 美咲, 横田 眞那, 源川 博久, 菊池 節子, 西山 慶治, 紺野 信弘
    セッションID: C-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】2020年以降、全世界で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を奮っている。有効な治療薬はまだ開発されていない。一方で、“ありふれた病気”と軽視されがちな風邪にも、実は治療薬は存在しない。症状の改善に有効な薬剤はあるものの、特効薬は存在しない。それにも関わらず多くの風邪は治る。治癒に導くのは、人間自身の免疫機能が主体である。新型コロナウイルス感染症に関しては、未解明の部分がまだまだ多いとはいえ、予防法ははっきりしている。今そしてこれからの私達に求められていることは、予防を徹底し、感染しないようにすることである。あるいは、感染してしまったとしても重症化させないため、自己の免疫機能を健全に保持することである。免疫力を上げるためにはいくつかの方法があるが、本研究では、「腸内環境を整える」,「低体温を改善する」という2つの点に着目してレシピの作成を行い、身体にどのような影響を及ぼすのかを文献を用いて考察を行ったので報告する。

    【方法】4品目のレシピを作成した。胃腸の状態,体温の上昇,風邪を罹患しないで済むかどうか、等について検討を行った。

    【結果】胃腸の状態については、はっきりとした変化は認められなかった。体温は0.3〜0.8℃の上昇が認められた。本研究に参加し、当レシピに基づいた食生活を送っている者のうち新型コロナウイルス感染症を初めとした風邪症状をきたした者は現在まで1人もいない。今回のレシピは主菜中心である。主食,副菜等も含めた上で調和の取れた献立を作成することが今後の課題である。

  • 木下 歩
    セッションID: C-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】果実ジャムでは、糖度と水分活性との間に高い相関があることが報告されているが、同程度の糖度を示す果実ジャム間で比較すると水分活性に差が生じる。そこでその要因を明らかにするため、果実ジャム製造時の加熱工程が糖組成および水分活性に及ぼす影響について検討した。

    【方法】はじめに、糖類を含む溶液を酸性条件で加熱した場合の水分活性の変化を確認するため、クエン酸を添加したショ糖溶液(30~65%、15点)について、未加熱および2時間加熱した試料を作成し、それぞれ糖度と水分活性の検量線を作成した。次に、ブルーベリーを用い、原材料の混合比や加熱時間を変えてジャムを作成し、水分活性、糖度および糖組成(HPLC)を調べた。また、兵庫県内製造の果実ジャム24点について、同様の項目を調べた。

    【結果・考察】ブドウ糖溶液と果糖溶液は、同じ糖度のショ糖溶液よりも低い水分活性を示すことが報告されている。酸性条件で2時間加熱したショ糖溶液の水分活性は、同程度の糖度を示す未加熱のショ糖溶液より低下する傾向がみられた。次に、作成したブルーベリージャムについて、同程度の糖度を示す試料間で比較した場合、より長く加熱した方が水分活性は低下し、加熱時間が長いほどショ糖の割合は低く、ブドウ糖と果糖の割合は高まる傾向がみられた。また、兵庫県内で製造されたジャムについて、同程度の糖度を示すジャム間で比較すると、ショ糖の割合が低く、ブドウ糖と果糖の割合が高い方が水分活性は低下する傾向がみられた。このことから、果実ジャム製造時の加熱工程において、ジャムの原材料に含まれるショ糖がブドウ糖と果糖に加水分解されることで水分活性を低下させる可能性が示唆された。

  • 岡崎 尚, 德永 千晴
    セッションID: C-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】低温性芽胞菌は,低温調理では生残し4~10°Cの冷蔵条件でも発育することが知られている。そのため,低温調理によって調理された要冷蔵食品は賞味期限が比較的短い。発表者らは低温調理における芽胞の死滅率を明らかにするとともに,静水圧による発芽誘導を適用して芽胞の殺菌効果を検討した。

    【方法】低温性芽胞菌(Bacillus cereusPaenibacillus polymyxaおよびP. chibensis)を実験に供した。50~95°Cの温度範囲で生残曲線を作成し,D値およびZ値を求めた。50,60および70°Cで1時間と24時間の低温調理後の初発芽胞数(N0)と処理後芽胞数(N)を求め,理論的な死滅率[Log(N0/N)]を求めた。次に液体培地とミンチ肉における芽胞数の減少から実際の死滅率を求めた。静水圧による発芽誘導を利用した芽胞の殺菌は,二つの方法で行った。芽胞の発芽誘導(60MPa・40°C・1 h)後,60°Cで1 hの低温調理による死滅率を求めた(A法)。発芽誘導と低温調理(60MPa・60°C・1 h)を同時に行ったときの死滅率を求めた(B法)。

    【結果・考察】理論的な殺菌効果は,70°C・24 h加熱で1オーダー程度の減少であったが,60および50°Cでは1オーダー以下となった。モデル食品で測定した殺菌効果は,70°C・1 hおよび24 h処理で1~2オーダーの減少であったが,60および50°Cでは1オーダー以下の減少であった。静水圧による発芽誘導を利用すると,60°C・1時間の低温調理において,A法では,5オーダー(液体培地)、3~4オーダー(ミンチ肉)の芽胞の減少であった。B法では、3~4オーダー(液体培地)、2~3オーダー(ミンチ肉)の芽胞の減少であった。

  • 劉 尭煒, 長尾 昭彦, 竹嶋 伸之輔, 小林 三智子
    セッションID: C-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】近年、コーヒー中の苦味物質クロロゲン酸、クロロゲン酸ラクトン類物質は健康に対して良いものと認められた。しかし、実際に抽出したコーヒー中の苦味を変化させ、その風味に与える影響についての研究は少ない。本研究では、コーヒーの特殊味である苦味を究明するために、苦味の変化がコーヒーの風味に及ぼす影響を検討した。

    【方法】エチオピア産アラビカ種の生豆を用いた。3段階の異なる焙煎度でコーヒーを焙煎し、水出し方法を用いて抽出し、焙煎度の違いによる、コーヒー中のカフェイン量を確認した。味認識装置TS-5000Z(味覚センサー)とHPLCを用いて、機器分析を行った。同じ抽出方法を用いて、カフェイン量を調整したコーヒーをTI、TDS、TCATAおよび順位法を用いて、官能評価を行った。機器分析と官能評価の結果から総合的に検討した。

    【結果・考察】味覚センサーの分析から、焙煎度により、コーヒーの苦味の強さは変化した。HPLC分析から、焙煎度の違いによるコーヒーのカフェイン含有量はほぼ同程度と判断された。官能評価について、TI法の結果から、カフェインの添加により、コーヒーの苦味の強さに影響を与えた。TDS、TCATAおよび順位法を用いて、コーヒーの酸味の強さ、苦味の強さ、渋味の強さ、濃さおよび総合評価を評価した。その結果より、苦味がコーヒーの濃さに影響を与えることが分かった。苦味はコーヒーの風味に及ぼす影響の1つの味であり、摂食を完全に忌避するイメージではなかった。今後は、飲料中の苦味と他の食品の相互作用を検討したい。

  • 洲戸 歩, 白杉(片岡) 直子, 本多 佐知子, 祗園 景子, 増田 勇人, 大村 直人
    セッションID: C-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】茶道における抹茶の点て方やその仕上がりには、熟練者と⾮熟練者の間に⽬に⾒えてわかる差異が存在し、熟練者は暗黙知、すなわち⼈間が無意識のうちに⻑年の経験や勘などから得た、簡単には⾔語化できない知識をもつ。本研究では、茶道流派の一つである裏千家のきめ細かい抹茶の泡立ち方に着目し、撹拌動作を分析することで、化学工学の視点から撹拌に有効な動作の抽出を試みた。

    【方法】抹茶2 gを入れた内径10.5 cmの茶碗に80℃の湯70 mLを注ぎ、完全形、内穂のみ、外穂のみの3種類の茶筌を用い、熟練者(3名)と⾮熟練者(3名)に抹茶を撹拌させた。撹拌動作による泡⽴ちへの影響を調べるために被験者の肘、⼿⾸、中指の第⼆関節の3点に印をつけて、正面から動画撮影し、Dipp-Motion V(DITECT 社製 Ver.1.2.6)を用いて動作解析を⾏った。泡立ち評価は、茶碗の真上から撮った画像をImage J(v.1.53o)を用いてモノクロ二値化し、黒の部分の面積を比較し行った。

    【結果・考察】熟練者は3種類の茶筌を用いて撹拌した場合、いずれにおいても泡のきめ細かさや泡立ち具合のばらつきが少なかった。一方、非熟練者は茶筌の違いによる泡立ちに大きなばらつきがみられた。動作解析の結果、熟練者は肘の変位が⾮熟練者よりも大幅に小さく、肘を軸とした撹拌を行うことがわかった。さらに、手首と中指の変動が同期し、熟練者に見られる肘の変動が逆位相の場合、細かな泡立ちとなったが、非熟練者に見られる肘の変動が手首と中指の変動と1/4周期の位相差がある場合、荒い泡立ちとなった。

  • 桂 博美, 大村 千夏, 酒井 志織, 岡田 佳子, 山村 愛実
    セッションID: C-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】高齢者においては、しばしば萎縮性胃炎などによりたんぱく質の分解能力の低下からたんぱく質吸収不全に陥ることが知られている。その際、食物中の割合が高いたんぱく質結合型ビタミンB12(VB12)も併せて吸収不全に陥る。そこで、私たちは消化能力が低下した高齢者においても容易に胃内消化で遊離型VB12が得られるような食品の調理加工形態を探している。今回は、間食として用いられている菓子類のうち鶏卵卵黄を使用したアイスクリームに焦点をあて、高齢者におけるVB12供給源としてアイスクリームの評価を試みた。

    【方法】市販 (4社)および手作りアイスクリーム適量を量り取ってVB12をシアノ化熱水抽出し、微生物学的定量法で定量した。また、胃内人工消化試験を行った後、消化試料をゲル濾過し、たんぱく質結合型VB12と遊離型VB12に分画して定量し、割合を決定した。

    【結果・考察】市販のアイスクリームに含まれるVB12量は、0.3~0.4μg/100gの範囲であり、手作りアイスクリーム(安価卵使用)に含まれるVB12量の0.3μg/100gと同程度であり、手作りアイスクリーム(高価卵使用)の0.9μg/100gより低かった。この中で最も含有量が高かった、手作りアイスクリーム(高価卵使用)を用いて胃内人工消化試験を行い、消化後試料に含まれる遊離型VB12割合を決定したところ、30±7%であり、同様に実験を行った生卵黄の8%より高い値であった。これは、アイスクリームの加工工程である撹拌と冷凍によってたんぱく質が分解されやすくなったことに起因する可能性があり、よってアイスクリームは生の卵黄より効率よくVB12を吸収できる食品であると考えられた。

ポスター発表
  • 島田 良子, 玉田 真友美, 香椎 霞, 吉村 美紀
    セッションID: P-1
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】レジスタントスターチ(RS)は生活習慣病予防に寄与する機能性成分として注目されており,RSを主食に混合することで習慣的に摂取量を増加させることが可能となると考えられる。本研究では,麺類のモデルとして,特性の異なるRSを混合した小麦粉水分散ゲル(RS混合ゲル)の加熱温度を変えて調製し,物性とRS量を検討した。

    【方法】小麦粉は,薄力粉,強力粉を1:1で混合した。RSは,ハイアミロースコーンスターチ(HACS),リン酸架橋タピオカデンプン(XLTS),高置換ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカデンプン(HHTS),低置換ヒドロキシプロピル化リン酸架橋タピオカデンプン(LHTS)を用いた。小麦粉・RSにイオン交換水を加え,混合系総濃度16.7 w/w%とした。小麦粉のみをコントロールとし,小麦粉のうち5 %をRSに置換したものをRS混合系ゲルとした。ゲルの調製温度は,90℃と120℃とした。それらのゲルの圧縮測定,テクスチャー測定,およびRS量測定を行った。

    【結果】初期弾性率は,HACS,XLTS,LHTS混合ゲルで120℃の方が高く,歪0.5の圧縮応力はControl,HACS,LHTS混合ゲルで120℃の方が低下した。歪0.5の圧縮エネルギーに加熱温度の影響は見られなかった。硬さは,HACS,HHTS混合ゲルで120℃の方が軟らかかったのに対し,XLTS混合ゲルは120℃の方が硬かくなった。付着性はLHTSゲルのみ120℃で低下し,凝集性には加熱温度の影響は見られなかった。RS量は,Control,HACSゲルで120℃の方が有意に多く,より高温で加熱した方がRSは残存しやすい可能性が示された。

  • 吉村 美紀, 西宮 早紀, 島田 良子
    セッションID: P-2
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】ハイアミロースコーンスターチ(HACS)は天然の食品素材であり、糊化温度が高いことから調理後もレジスタントスターチ量(RS量)が多いことが推察される。RSは食物繊維と類似した生理効果を有している。本研究ではHACS量比の異なる米粉・大豆タンパク質・小麦粉混合系クッキーを調製し、物性、嗜好性、唾液アミラーゼによるストレス度の関連性の検討を目的とした。

    【方法】ハイアミロースコーンスターチ(HACS)、米粉 (RF)、小麦粉 (WF)、大豆タンパク質 (SPI)の混合比の異なる4種のクッキーを試料とした。材料を混捏後、生地を縦・横30mm、厚さ4mmに成型し、180℃で11分間焼成した。試料の栄養価、表面の色測定、破断測定、吸水率測定、水分量測定、SEM画像、ヒトによる官能評価、唾液アミラーゼ測定を行った。

    【結果・考察】HACS比の高い試料は、栄養価測定で食物繊維量が高く、表面の色測定でL値が高くなった。破断測定では、WF比の高いクッキーは破断応力が高く、HACS比の高い試料は破断歪が大きく、破断応力が小さくなった。吸水率はHACS比の高い試料の方が高かった。SEM画像では、WF比が高く、HACS比の低い試料で細い隙間が多く見られ、砕けやすくなることが推察された。官能評価では、WF比の高い試料は有意に硬く、まとまりやすいとの結果を得た。唾液アミラーゼによるストレス度の比較は個人差が大きく、試料クッキーの違いによる影響は見られなかった。HACSの混合により、クッキーの食物繊維量は増加し、軟らかくなり、口の中でばらけやすくなったが、おいしさやストレス度への影響は小さかった。

  • 山口 智子, 柳澤 希衣, 大竹 憲邦, 金 煕濬
    セッションID: P-3
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】植物栽培の必須元素であるリンは枯渇資源の一つであり、日本ではすべて海外からの輸入に頼っている。演者らはこれまでに下水汚泥焼却灰からリンを回収し活用する方法を確立し、リン循環型社会の実現に向けた検討を行っている。本研究では、回収リンを肥料として栽培したサツマイモについて、生芋の成分特性を評価するとともに、サツマイモの加工利用法の検討のため、異なる乾燥温度による成分特性の違いを明らかにすることを目的とした。さらに、乾燥粉末を使用したクッキーの嗜好性を調べた。

    【方法】2021年6~10月に新潟大学農学部圃場にて、サツマイモ(ベニアズマ)を慣行区は硫安(5 kg/10a)、塩化加里(20 kg/10a)および過リン酸石灰(15 kg/10a)を施肥し、対象区はリンを回収リン(10 kg/10a)に変え栽培した。収穫後、水分含量、Brix糖度、クロロゲン酸量、総ポリフェノール量、抗酸化性を測定した。さらに、75~95℃で乾燥させた粉末について同様の測定を行うとともに、乾燥粉末の添加量の異なるクッキーを作製し、官能評価を行った。

    【結果・考察】対象区のサツマイモは慣行区よりBrix糖度が有意に高値を示したが、その他の成分特性に違いはみられず、回収リンを用いた場合でも同等に栽培できることがわかった。乾燥粉末では75℃乾燥のBrix糖度、総ポリフェノール量、抗酸化性が最も高かった。乾燥粉末を40%添加したクッキーにおいて、サツマイモの風味をより感じられると評価されたが、20%添加クッキーの方が外観や硬さ、口当たりの評価が高く好まれた。回収リンで栽培したサツマイモの利用法を提案できたことは、リン循環型の持続可能な社会を築く一助になると考える。

  • ーショ糖添加の影響ー
    中谷 梢, 吉村 美紀
    セッションID: P-4
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】粳米粉に重量比2~8倍の水を加えて調製した粳米粉ゲルの性状は,加水比と保存日数により影響を受けた。加水比4倍以上のゲルでは離水を観察したことから本報ではショ糖を添加し,ショ糖量と保存日数が粳米粉ゲルの性状に及ぼす影響を検討した。

    【方法】ゲルの調製は,粳米粉に加水比4倍に,米粉重量の0,50,100,150,200%のショ糖を加えて耐熱袋に入れ,スチームコンベクションオーブンで加熱した。成形器に流し入れ10℃で保存した。保存1,3,5日後のテクスチャー測定における硬さと付着性,水分活性,保存1日後の動的粘弾性と離水量を測定した。ゲルと同じ配合割合の試料をDSCで昇温測定した後,10℃で21日間保存し,再昇温測定を行った。

    【結果・考察】ショ糖量の影響は,100%未満では0%ゲルよりショ糖の親水性により米粉ゲルの自由水が減少して硬くなり,150%以上では0%ゲルよりゲル構造の網目間にある溶液の粘度が増して,架橋が疎となり軟らかくなったと推察した。 動的粘弾性は全ての試料で貯蔵弾性率(G)>損失弾性率(G’’)を示した。ショ糖量の増加に伴い付着性と離水量,水分活性は低下した。DSCによる昇温測定では糊化ピークが出現し,ショ糖量の増加に伴い糊化開始温度(To),糊化ピーク温度(Tp),糊化終了温度(Tc)は高温側にシフトし,エンタルピー量(H)が大きくなった。 保存の影響は,全てのショ糖量のゲルにおいて,硬さは保存5日間では差が小さく,付着性は3日後に低くなり,水分活性は有意差がなかった。保存21日後のDSC再昇温測定ではToTpTcが昇温測定時よりも高温側にシフトして,Hが小さくなり,老化の抑制が推察された。

  • 望月 美佳, 岡部 知恵子, 大澤 俊彦, 石原 健吾, 朝見 祐也
    セッションID: P-5
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】ワイルドライスは北アメリカで広く栽培されているイネ科マコモ属の植物である。これまでの研究から、ワイルドライスは白米と比較してたんぱく質、食物繊維、ミネラルなど多くの栄養素が豊富に含まれていることが報告されている。しかし、日本ではほとんど市場に出回っておらず、美味特性や生理機能特性の研究もほとんど行われていないのが現状である。そこで、本研究ではワイルドライス含量を変えた添加パンを焼成し、その物性を評価することとした。

    【方法】ワイルドライス粉0~50%練りこんだ食パンを焼成した。気孔率は菜種法により測定し算出した。また、クリープメーターを用いて物性(かたさ、凝集性、付着性)を測定した。測定結果は自動解析装置を用いて解析し、平均値と標準偏差を算出した。色差計により切断面の色調を測定した。

    【結果・考察】気孔率はワイルドライス含量が0%の食パンが最も大きく、ワイルドライスが30%以上の場合、0%に比べて気孔率が有意に低下した。物性測定では、10%および20%ではかたさで低値を示した。また、10%から30%の場合、含量が多くなるにつれて凝集性が低下した。一方、40%および50%の物性測定は、試料がもろく崩れてしまい測定不可であった。ワイルドライス含量による膨化や物性の変化は、小麦粉含量低下に伴うグルテン形成量の低下が関与し、また、ワイルドライスに含まれるデンプンの糊化や粘性の影響を受けている可能性がある。今後は、ワイルドライスの糊化特性についても検討が必要である。色差は、含量が多くなるにつれ、L*が低下し、a*およびb*が上昇した。これは、ワイルドライスの外皮に含まれる色素成分が関係していると推測された。

  • 大西 竜子
    セッションID: P-6
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】デンプン中のアミロースは小腸で消化吸収され難く,大腸に流入し腸内細菌叢の発酵基質として食物繊維様の腸内環境改善機能が期待できる。本研究では,高アミロース米についての基礎的知見を得ることを目的とし,ラットにアミロース含量の異なる米粉を与えたときの盲腸内発酵に対する影響について調べた。

    【方法】5週齢の雄性SD系ラットを3群(n=6/群)に分け,AIN-93G組成の飼料を基本に炭水化物源をコーンスターチとしたコントロール群,炭水化物源を日本米(みかけのアミロース含量18.7%)に置き換えた日本米群,あるいはタイ米(みかけのアミロース含量30.2%)に置き換えたタイ米群とし,各々試験飼料を与え14日間飼育した。飼育終了前3日間に採糞と採尿を行った。解剖時に摘出した盲腸内容物から有機酸を抽出後,誘導体化してGC/MS(ガスクロマトグラフ/質量分析法)により短鎖脂肪酸濃度を測定した。回収した糞と尿については,窒素量,デンプン量などを測定した。

    【結果・考察】ラットの体重増加量は3群間で同等であったが,飼料摂取量はコントロール群に比べ日本米群は有意に高く,タイ米群では高い傾向を示した。コントロール群に比べ,米粉摂取群で盲腸内酢酸濃度、総短鎖脂肪酸濃度が有意に増加した。米粉摂取群では糞中窒素排泄量は有意に高く,みかけのタンパク質消化率も低下したが,糞中デンプン排泄量は3群間に差はなかった。いずれの指標においても本研究で用いた日本米とタイ米に差はみられなかった。

  • 綿貫 仁美, 上薗 薫, 林 一也, 浅野 賢治
    セッションID: P-7
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】特徴的な肉色を有する高付加価値馬鈴しょ品種の開発のため、既存品種であるノーザンルビー、シャドークインと、新品種であるシャイニールビー、ノーブルシャドーについて、アントシアニン含有濃度、嗜好、高圧加熱処理による加工適正について比較検討を行うことを目的とした。

    【方法】試料は農研機構北海道農業研究センターで栽培された、赤肉系品種のノーザンルビー、シャイニールビー、紫肉系品種のシャドークイン、ノーブルシャドーを用いた。1)各馬鈴しょ塊茎から3%ギ酸を用いてアントシアニンを抽出し、吸光スペクトル法で色素含有量の測定を行った。2)同系統の馬鈴しょ嗜好検定を2点嗜好検査法を用いて行った。3)各馬鈴しょ塊茎を蒸し、皮を剥き、マッシャーで潰した後、レトルト包装を行い、120℃で4分、8分、12分、15分の条件下で高圧加熱処理を行った。処理後、4℃で18時間冷却保存した後、色差を測定した。

    【結果・考察】ノーザンルビーとシャイニールビーのアントシアニン含有量は160mg/100gと168mg/100gであった。シャドークインとノーブルシャドーでは、619mg/100gと1041mg/100gであった。嗜好検定は、有意差はなく、同系統の馬鈴しょにおいて嗜好差はなかった。高圧加熱処理における色調変化では、赤肉系品種において、加熱時間が長くなるにつれてa値が負に移動し、b値は正に移動し、値はあまり変化がなく、どちらの品種も同程度の色調で変化をした。紫肉系品種では、加熱時間が長くなるにつれて、a値が負に移動し、b値は正に移動し、値は高くなる傾向を示した。ノーブルシャドーの方が色調が濃く、加熱による色残りが高い結果となった。

  • ーそば粉パンに添加する膨化剤の種類に関する一考察ー
    大橋 かすみ, 山田 夏代
    セッションID: P-8
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】そば粉は炭水化物を豊富に含むことから,製パンに用いることで,小麦に匹敵する食品として活用することが期待できるが,グルテンを含まないため製パンにはいくつかの課題がある。 演者らは1報において,添加する水分量の違いが焙焼した製品の性状に及ぼす影響について調査した。本研究では,前報から引続き,そば粉パンの製法を開発する目的で,添加する膨化剤の違いによる製品の性状に及ぼす影響を検討した。

    【方法】そば粉,砂糖,食塩,インスタントドライイーストを撹拌し,油脂,水を加え50回程度撹拌し,生地を調製した。発酵させた生地を型に入れ,200℃で焙焼,放冷,冷凍,冷蔵庫解凍したものを対照とした。対照のインスタントドライイーストをそれぞれ生イースト(以下A),VC非添加外国産インスタントドライイースト(以下B),VC非添加国産インスタントドライイースト(以下C)に置換したものを比較試料とした。品質評価として,膨化測定,物性測定,写真撮影を行った。

    【結果・考察】膨化についてCは有意に低い値となった。また破断応力については,有意に高い値を示し,断面画像では気泡が小さく不均一であったため,膨らみが悪く硬いパンとなったと考えられる。 対照,A, B間では膨化及び破断応力に有意差はなかったが,Bの破断応力は高い傾向を示した。また,断面画像では対照とAの気泡は大きく均一であった。 以上より,そば粉パン作製にCは好ましくないが,添加量による違いを検討することで,異なる結果が得られる可能性がある。また,グルテン結合促進を促すVCによる違いは得られなかったため、そば粉パンにはVCの有無を考慮する必要はなく,様々なインスタントドライイーストで作製可能であると考えられる。

  • 小濱 絵美
    セッションID: P-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】小豆の食品としての利用は餡や赤飯が主であるが、新しい使用用途として粉末状の小豆が開発され、製菓・製パン専用の小豆粉も流通するようになった。小豆粉は、小豆を生のまま粉砕するため、小豆の種皮成分や風味を生かすことができる。本研究では、強力粉の一部を製パン用の小豆粉に置換した食パンの物性を測定し、小豆粉が食パンへ及ぼす物性への影響を検討した。

    【方法】小豆粉の置換率は0、10、20、30、40、50%とし、その他はベーカーズパーセントでドライイースト1%、食塩1.25%、砂糖5%、バター3.75%、スキムミルク2.5%、水67.86%とし、ホームベーカリーを用いて食パンを調整した。物性測定は、パンのクラム部を30mm四方の立方体に調製し、テクスチャープロファイルユニットTPU-A2((株)山電)を用い、プランジャーは直径15㎜円形、圧縮量80%、圧縮回数2回、速度2.5㎜/秒とした。硬さに相当する圧縮強度は、1回目圧縮時の最大荷重(N)、粘弾性に相当する凝集性は、測定により得られた2回目の積算圧縮面積を1回目の積算圧縮面積で除した値とした。

    【結果・考察】焼成した食パンの高さは、小豆粉の置換率が高まるほど低くなった。硬さに影響する最大荷重は、小豆粉の配合割合が高くなるにつれて数値が高くなり、小豆粉を配合することでパンが硬くなる傾向が認められた。粘弾性に影響する凝集性は、小豆粉の配合割合が高くなるにつれて数値が低くなり、小豆粉を配合することでパンの弾力が失われる傾向が認められた。凝集性は小豆粉の置換率0%、10%、20%の食パンでは数値の差が小さく、置換率30%から数値が大きく減少する傾向が認められた。この結果から、今回の配合での製パン性の限界は20%程度と考えられる。

  • ーそば粉パンに添加する生イーストに関する一考察ー
    山田 夏代, 大橋 かすみ
    セッションID: P-10
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】そば粉は炭水化物を豊富に含むことから,製パンに用いることで,小麦に匹敵する食品として活用することが期待できるが,グルテンを含まないため製パンにはいくつかの課題がある。

     演者らは2報において,添加する膨化剤に着目し,そば粉パンに最適な膨化剤の種類について調査を行った。本研究では2報を受け,膨化剤の中から生イーストに注目,添加濃度および,添加条件を調査し,そば粉を用いた製パンに最適な条件を検討した。

    【方法】そば粉,砂糖,食塩,インスタントドライイーストを撹拌し,油脂,水を加え50回程度撹拌し,生地を調製した。発酵させた生地を型に入れ,200℃で焙焼し,放冷,冷凍,冷蔵庫解凍したものを対照とした。対照のインスタントドライイーストを生イースト4%,5%,6%に変更し予備発酵したものと、生イースト4gを予備発酵する際,砂糖を添加したものを比較試料とした。品質評価として,物性測定,膨化測定,写真撮影を行った。

    【結果・考察】物性において,破断応力,破断エネルギー,破断歪率はいずれも対照に対する有意差は認められないものの,生イーストの4%,5%で破断エネルギー,破断歪率が低くなる傾向が見られ,これらの試料が対照に比べ,柔らかなパンに焼き上がったと考えられる。

     断面画像からは生イースト5%と生イースト4%に予備発酵時砂糖を添加したものが対照に近く,均一な気泡が確認できた。

     以上の結果からそば粉パンに対する生イースト添加において,最適な条件は5%濃度であることが示唆された。また,予備発酵時に砂糖を添加した場合と添加しない場合の物性,膨化の違いは興味深く,今後の検討課題としたい。

  • ーバッター調製時における油添加の影響ー
    野口 聡子, 徳永 みな子, 中本 恵子, 中谷 梢, 八木 千鶴, 山本 悦子, 米田 泰子
    セッションID: P-11
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】微細米粉(米粉)を用いたケーキ類やパイクラストの調製条件と製菓特性を明らかにする過程で、米粉における換水値や副材料添加の影響を知る必要が認められた。 そこで第一報では水または卵で調製したドウとバッターについて、第二報では砂糖で調製したバッターについて、本報では油で調製したバッターについて、米粉と薄力粉、強力粉の生地の特性を比較した。

    【方法】油(キャノーラ油)と米粉、薄力粉、強力粉との配合割合は1:1(150g:150g)を基本とし、粉に対する油量を180g、200g、214.3g、225g(150%、200%、250%、300%)とした。ビーカーに油(1/2量)、粉(全量)、油(1/2量)の順に入れ、バーミックスで撹拌した。前報同様に水分含有率、水分活性、粘度、Area Spread Test値(以下:AST値)を測定した。

    【結果・考察】1)水分含有率は、粉の水分量が多い強力粉、薄力粉、米粉の順に高く、油量の増加に伴い低くなった。 2)水分活性は、粉の水分量が多い強力粉、薄力粉、米粉の順に高く、油量による影響は小さかった。 3)粘度は、米粉、強力粉、薄力粉の順に高く、油量の増加に伴い低くなった。 4)AST値は、薄力粉、強力粉、米粉の順に大きく、米粉は200%、薄力粉、強力粉は250%でピークとなった。ピーク点までは油量の増加に伴い大きくなるが、ピーク点以上の油量ではやや小さくなった。 以上の結果から、バッター調製における油添加の影響は、水分含有率と水分活性は粉自体の水分量が影響し、油添加量の影響は受けなかった。バッターは油添加により粘度は低くなるが、AST値において米粉は200%、薄力粉、強力粉は250%がピークとなった。

  • 谷口 明日香, 藤本 ゆりか, 三上 詩織, 伴 雄介, 加藤 啓太, 池田 達哉, 伊藤 美環子, 小林 理恵
    セッションID: P-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】既報にて、大麦粉を用いた天ぷら衣は天ぷららしい歯もろさを有し、嗜好性が高いことを報告した。しかし、現在流通する大麦粉は品種や搗精歩合、製粉方法等が商品ごとに異なるため、大麦粉自体の特徴も異なる。本研究では、品種や搗精及び製粉条件を変えた大麦粉を調製し、その天ぷらの品質を比較することでこれらの相違が及ぼす影響を明らかにした。

    【方法】試料には品種、搗精及び製粉条件が異なる大麦粉7種に加え、対照として薄力小麦粉を用いた。これらの理化学特性を評価した上で既報に準じて揚げ衣試料を調製し、色、破断強度、水分飛散率及び吸油率を測定した。また、試料粉でさつまいも天ぷらを調製し、色、におい、食感、油っぽさ、衣の付き具合、総合評価について評点法による嗜好型官能評価を行った。

    【結果・考察】各種大麦粉は試料間で粒度、β-グルカン含量、灰分含量が異なった。これらの揚げ衣は褐色を帯び、特に搗精度が高く灰分含量が多い大麦粉は濃い色を呈したが、色の嗜好性に相違はなかった。その他の揚げ衣の評価項目では試料間の差は小さかった。いずれの大麦粉も小麦粉よりも揚げ衣の水分飛散率及び吸油率が有意に高く、揚げ加熱中の水と油の交代が進みやすかった。また、破断特性値からは大麦粉は小麦粉よりも歯もろさを有意に感じやすいことが示唆された。これは官能評価にも反映されており、いずれの項目も評価点が高く、中でも一部の大麦粉の食感は小麦粉よりも有意に好まれた。以上より、本試料間の特性の相違は天ぷらの嗜好性に影響せず、いずれの大麦粉でも嗜好性の高い天ぷらを調製できるといえる。特別な操作を要さず水と粉のみの生地にて容易に食感の良い衣が仕上がる点は、大麦粉を用いる利点であると考える。

  • ー米ゲルを添加した米粉生パスタ麺の力学的性質と構造観察ー
    谷口 泉, 堤 浩一, 成田 裕一
    セッションID: P-13
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】米粉はグルテンを含まないため製麺が難しく、麺類についてはまだ製品の数は少ない。米粉で生パスタ麺を調製するにはグルテンの代わりとしてつなぎとなる副材料が必要である。本研究では、コシのある米粉生パスタ麺を開発するために、粘度を向上させる米ゲル(高アミロース米をダイレクトGEL転換したもの)を使用した。さらに粘度を安定化させる加工デンプン(架橋デンプン)との併用を試みた。

    【方法】米粉(うるち米)、食塩、オリーブ油、鶏卵とグルテンの代わりとなる副材料を使用し、3種類の米粉生パスタ麺を調製した。副材料としては、米ゲル、リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンを使用した。未加工のタピオカデンプンを副材料として使用した米粉パスタ麺を対照として比較した。製麺については、押し出し式製麺機を使用し太さ2.0mmの麺を調製した。熱湯中で1分間加熱後、すぐに氷水で10秒間冷却し、ゆでパスタ麺とした。物性測定については、ゆで上げ1・3・5・7・9分後の米粉生パスタ麺を約10cmに切り、破断試験を行った。破断試験にはクリープメータ(RE-33005C、株式会社山電)「破断強度解析Windows Ver2.3」を用いた。一つの試験区につき5点の試験を行い、平均値を算出した。構造観察では、米粉生パスタ麺4種類の生麺、ゆで麺の断面を、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。

    【結果】米ゲルのみを使用した試料では、破断強度の値は対照群に比べ高くなった。加工デンプンを併用した試料では、さらに高い値を示した。電子顕微鏡で観察したところ、米ゲルが添加された試料では、添加されていないものと比較して、デンプン粒同士が密着し緻密な構造になっていた。このことが高い破断強度と関連していると考えられた。

  • 森井 沙衣子, 坂本 薫
    セッションID: P-14
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】米飯は日本人の主食であり、米飯のおいしさは食事の質を左右する。しかし、申請者らのアンケート調査に回答した給食施設(127施設)では同じ食形態の米飯の提供が難しいこと挙げられ、また半数以上の施設にはスチームコンベクションオーブン(以下、スチコン)が設置されていた。そこで、スチコンにて多様な米飯を調理するための炊飯の標準化を行うことを目的とし、炊飯条件とその米飯特性を検討した。

    【方法】スチコンの設定温度、水蒸気量、庫内ホテルパン枚数を変え、炊飯容器内部の水温度履歴を測定し、炊飯条件を検討した。そして、スチコンで他の調理と炊飯を同時に行うことを想定し、1枚あたり750 gの水を入れたホテルパン9枚と同時に炊飯(加水比1.4倍、1.5倍)を行い、米飯のテクスチャ−測定および官能評価を行った。

    【結果】水蒸気量100%では水温が98℃に到達する時間は8.1±1.0分であり、水蒸気量0%の場合は40分の間に98℃に到達しなかった。このことから、スチコンでの炊飯には過熱水蒸気加熱が必須であることが確かめられた。庫内ホテルパン枚数が5枚の場合、98℃到達時間は7.1±0.1分であるのに対し、9枚挿入した場合は14.7±2.9分であった。また、米飯の官能評価の結果、加水比1.5倍の米飯は加水比1.4倍の米飯よりも、やややわらかいと評価され、テクスチャ−測定の結果と一致した。さらに、加水比1.4倍の米飯は加水比1.5倍の米飯と比較して有意に弾力があると評価された。これらの結果から、スチコンでの炊飯においては、設定温度・湿度・時間・モードだけではなく、同時調理の量などに影響を受けることから、加水比などの炊飯条件の調節が必要になると考えられた。

  • 山中 なつみ, 池田 倫子, 小川 宣子
    セッションID: P-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】さつまいもの食物繊維量は加熱調理によって増加し、加熱時間の長い蒸し加熱の方が短時間加熱の電子レンジ加熱よりその増加量が大きく、レジスタントスターチの増加がその要因と考えられた1)。本研究では加熱調理に伴うさつまいもの食物繊維の量や性質の変化がその生理作用に及ぼす影響について、消化管への作用から検討した。

    【方法】徳島県産なると金時を厚さ2cm、直径4cmに切り、未加熱、蒸し加熱(100℃,12分)、電子レンジ加熱(500W,1分)試料を調製した。AIN-93G飼料組成のセルロースをコーンスターチに置換した無繊維飼料を対照飼料とし、6週令Wistar系雄ラットに与えて5日間予備飼育した後、さつまいも摂取群(未加熱群,蒸し加熱群,レンジ加熱群)と対照群の4群(1群5匹)に分けた。さつまいも摂取群の飼料は、対照群と糖質摂取量が等しくなるよう対照飼料のコーンスターチをさつまいもに置換し、他の飼料組成と混合せずに給与した。給与量は予備飼育時の飼料摂取量の80%に制限して全量摂取させた。20日間飼育後、消化管内容物と組織重量を測定した。

    【結果・考察】盲腸と結腸の内容物は、いずれも対照群に比べてさつまいも摂取群で有意(p<0.05)に増加し、蒸し加熱群が最も多かった。蒸し加熱群の結腸組織は0.97gで、未加熱群0.85gやレンジ加熱群0.82g、対照群0.73gに比べて有意(p<0.05)に大きく、盲腸組織においても同様の傾向が認められた。さつまいもの摂取により大腸組織は肥大し、蒸し加熱した方が未加熱あるいは電子レンジ加熱に比べてその作用が大きいことが示された。

    1)池田, 山中, 小川(2020)日本家政学会誌, 72, 719-726

  • 常田 妃奈乃, 小﨑 智恵, 藤井 恵子
    セッションID: P-16
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】食の多様化に伴い調理家電は進化しており、炊飯器においては様々なモードで異なる仕上がりの米飯調理を選べるようになっている。そこで本研究では、炊飯器の炊飯モード(標準・もちもち)の違いによる米飯の物性の特徴を明らかにすることを目的とした。

    【方法】精白米(令和2年新潟県産こしひかり)450 gを洗米後、炊飯器のモード選択で「標準」または「もちもち」に設定し炊飯した。炊飯時の温度履歴、及び米飯の水分含量、静的粘弾性、破断特性、テクスチャー特性を測定し、あわせて走査型電子顕微鏡(SEM)で米飯粒の表面及び断面の観察を行った。テクスチャー特性については成型法と一粒法の測定を行った。また二点識別法を用いて官能評価を実施した。

    【結果】炊飯時の温度履歴は、もちもちモードの方が温度上昇開始時間は遅く、沸点保持時間は長かった。米飯の水分含量は、標準モードの方が高値を示した。静的粘弾性では、フォークト部の粘性率、遅延時間においてもちもちモードで炊飯した米飯の方が高値であった。テクスチャー特性では一粒法では有意差は認められなかったが、成型法においてモード間での違いが見られ、炊飯当日の硬さ、もろさ、付着性、ガム性においてもちもちモードの方が高値であった。組織構造の観察では、標準モードと比較し、もちもちモードの方が連続相を見ると細かいネットワーク構造となっており、糸をひく様子が観察された。官能評価では、分析型において標準モードの方が粒感が強く感じると評価され、軟らかさはもちもちモードの方が軟らかいと評価された。また嗜好型においては、外観は標準モードの方が好まれた。食感、総合評価においては有意差は認められなかった。

  • 林 倖穂, 大石 恭子
    セッションID: P-17
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】「びっくり炊き」は加熱中にさし水を添加する玄米の炊飯法である。演者らは先に、さし水をしない炊飯(以下“普通炊き”)に比べて、吸水促進効果、飯の粘り・付着性の増加が認められ、加熱前の浸漬は不要で、さし水温度は低い方が外皮破裂の効果が大きいことを明らかにした1)。本研究では、土鍋およびホーロー鍋を用いたびっくり炊きの特徴を、普通炊きや市販の炊飯器との比較により明らかにすることを目的とした。

    【方法】200 gの玄米(宮城県産ひとめぼれ)を洗米後、土鍋またはホーロー鍋に入れて240 gの水を加え、点火した。10分後に沸騰、その後10分間で炊飯液がなくなるように火力を調整し、2℃の水300 gを入れて蓋をして、再沸騰後20分後に消火し、蒸らしを行った。普通炊きは、さし水をしないでびっくり炊きと同加水量、同加熱時間になるように調整した。炊飯器2種(加圧炊飯、常圧炊飯。炊飯時間は66分、81分)は内蔵プログラムを用いた。飯の水分、形状、物性測定(テクスチャーアナライザー)を行い、胚乳露出面積の割合を求めた。

    【結果・考察】果種皮が破裂している飯の割合は、土鍋の普通炊きのみ81.5%であり、それ以外の炊飯方法は99%以上であった。びっくり炊きの飯の長径は、2種の鍋のいずれにおいても普通炊きに比べて有意に(p<0.05)大きく、胚乳露出面積率はホーロー鍋において有意に(p<0.05)大きかった。いずれのびっくり炊きも物性の向上が見られ、炊飯器飯との間に違いは見られなかった。びっくり炊きは浸漬は不要で炊飯時間が短いものの、市販の炊飯器を用いた玄米飯と同程度の品質に仕上がることが示された。

    1) 日本調理科学会2021年度大会、要旨集p. 31

  • 金高 有里, 梅田 やすこ, 二宮 和美, 熊谷 仁, 山本 佳成
    セッションID: P-18
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】米糀はデンプンやたんぱく質を含む米原料に、蒸す等の前処理をした後に麹菌を主体に培養した固体培養の産物であり、日本では味噌、醤油、酒等の発酵調味料の製造において利用されてきた。糀にはアミラーゼ、プロテアーゼなどの多数の酵素が含まれており、タンパク質・糖質・脂質の分解によるテクスチャーの変化や、旨味・甘味の増加が起こることで嗜好性に変化をもたらすと考えられる。本研究ではマドレーヌ等の焼き菓子においても、小麦粉の一部を米糀に変えることで、米糀の発酵過程において生地の性状や食味に変化が生じると考え、米糀がマドレーヌ生地へおよぼす影響を検討することを目的とした。

    【方法】材料は、バター・砂糖・卵・小麦粉を同量ずつ用いた。糀を添加したマドレーヌ群(以下、糀群)には、糀を粉末化したキスケ糀パワー(糀屋本店)(以下、糀とする)を用い、添加量は小麦粉の30%を置換して用いた。調製方法は、小麦粉と糀を混ぜて常温(24℃)で一定時間発酵をさせた後、焼成は180℃30分間とした。発酵時間は0・2・4・6時間に設定し、発酵時間による変化も比較した。測定項目は、色差、水分含有量、テクスチャーとして破断特性、糖度、官能評価とした。官能評価は50名を対象として7段階評価の評点法で行った。

    【結果】糀の添加により、コントロール群と比較して色差は発酵の時間経過に伴って変化が見られた。テクスチャーの破断特性は、最大応力や総エネルギーが低下する傾向を示した。水分含有量は有意に低下し、糖度は上昇し、官能評価による嗜好性は発酵時間によって変化が見られた。以上の結果から、マドレーヌへの米麹の添加は、生地の性状と嗜好性に変化をもたらすことが明らかとなった。

  • 柴田 奈緒美, 加藤 由利子
    セッションID: P-19
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】近年,食に係わる課題の一つに食物アレルギー有病者の増加が挙げられる。食物アレルギーの原因食品のひとつである小麦の代替品は,つなぎやとろみ付けとして米粉や片栗粉などが既に定着しつつあるが,サクッとした揚げ物の衣に関してはまだ普及していない。そこで本研究は,パン粉に代わる新たな加工食品(生おからパン粉)を開発した。

    【方法】生おからをステンレスザルで濾し,粒度を均一にした後,乾燥させた。設定温度ならびに乾燥時間は120℃で最大45分,140℃で最大35分,160℃で最大30分とした。乾燥後は再度,同様のステンレスザルで濾し,粉末化した。以後,乾燥後に粉末化した生おからを,「生おからパン粉」とした。異なる含水率の生おからパン粉を用いて,顕微鏡観察を行った。また,生おからパン粉を40%wetバッター液につけた試料(揚げ衣)に関しては,重量減少率,含油率,硬さ,色彩値および食物繊維量の定量,そして味覚分析を行った。

    【結果・考察】生おからパン粉の粒子は一般的な乾燥パン粉より厚みがあり,球状であることが分かった。揚げた後の品質に関しては,生おからパン粉を用いた揚げ衣は,乾燥パン粉を用いた揚げ衣と比較して食物繊維量が多く含まれていること,含油率が高いこと,弱い力で破断されること,色が明るく黄色みが強いこと,味を感じる衣であることが明らかとなった。また生おからパン粉を作成する乾燥温度は揚げた後の品質に影響せず,揚げる前に含まれる生おからパン粉の水分量が揚げ衣の重量減少率,含油率,破断応力に影響を及ぼすことが明らかとなった。

  • 設樂 弘之, 小泉 昌子, 峯木 眞知子
    セッションID: P-20
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】卵白は濃厚卵白と水様卵白にわかれている。水様卵白と比較して濃厚卵白にはムチンの含有量が多く、そのムチンがネットワークを作りゲル化していることから高い粘度を保っていると考えられている。また、産卵後、時間が経過すると粘度が低下することから濃厚卵白の状態については関心が高い。しかし濃厚卵白の特性、特に調理に対する影響を調べた例はあまりない。本研究では水様卵白と濃厚卵白の比較を行いその特性の違いを明らかにすることを目的とした。

    【方法】市販の卵を用い、割卵した後セパレーターを使って卵黄とカラザを除去した。卵白を20メッシュストレーナーに載せ、通過した卵白を水様卵白、メッシュ上に残った卵白を濃厚卵白とした。生の状態での構造は、各卵白をグルタルアルデヒドとオスミウム酸で固定し、エタノールで脱水した試料を用い、走査型電子顕微鏡で観察した。粘度変化については動的粘弾性を、ゲル物性については破断時の物性、起泡力については起泡させたときの泡の高さと安定性を測定した。

    【結果・考察】構造観察では、水様卵白は無構造であったのに対し、濃厚卵白には層状のものが観察された。次に卵白を加熱したときの粘度では、60℃まではあまり変化がなかった。しかし、急激に粘度が上昇する温度が存在した。水様卵白は65℃付近で上昇し、一度低下してから再度上昇した。濃厚卵白では67℃付近から粘度が上昇した。80℃で加熱してしっかりゲル化させた場合、破断強度にはあまり違いはなかったが、破断までの圧縮距離は濃厚卵白のほうが大きくなった。起泡力については、水様卵白の泡が濃厚卵白より、高かった。その泡を放置したときの離水量は濃厚卵白で少なかった。

  • 喜屋武 ゆりか
    セッションID: P-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】魚食文化は和食の特徴であるだけでなく、心血管疾患等の予防の観点からも重要である。一方、総務省家計調査によると、沖縄県は魚の購入量が全国最下位である。また、沖縄県の大学生について魚をさばく調理経験の現状は不明である。本研究では、管理栄養士養成施設に在籍する大学生を対象とし、魚をさばく調理経験の現状と調理学実習における実習の省察を報告する。

    【方法】対象は沖縄県管理栄養士養成校の3年生78名(男性8名)を対象とした。2022年5月、全15回中第4回目の調理学実習(日本料理)において、主菜「鯵の南蛮漬け」の調理を行なった。各学生1尾、鯵の三枚おろしを行った。三枚おろしについては、動画による事前自主学習及び当日の示範を行った。実習後にMicrosoft Formsを用いたwebアンケート調査を行なった。アンケートは無記名であり個人情報を得ていない。

    【結果・考察】アンケートの回答率は67.9%(53名)であった。今まで(実習前)に魚をさばいた経験があるか尋ねたところ、経験あり24.5%、経験なし75.5%であった。調理学実習前の魚をさばくことへのイメージについて尋ねたところ、難しそう94.3%、簡単そう5.6%、調理学実習において魚をさばいた感想は、とても難しかった18.9%、難しかった49.1%、簡単だった30.2%、とても簡単だった1.9%との回答であった。今後、魚をさばくことへの態度として、積極的にさばきたい37.7%、機会があればさばきたい62.3%と回答し、さばきたくないとの回答は皆無であった。実習後のアンケートの結果から、調理学実習を経て、大学生の魚をさばくことへの前向きな態度の変化が推察された。

  • 小泉 昌子, 大 雅世, 峯木 眞知子
    セッションID: P-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】タマゴを冷凍庫で凍結させてつくる冷凍タマゴはさらに保存を可能にさせるためと、その食感が生タマゴと異なるために紹介されている。殻付き卵を冷凍した報告は少ない。冷凍時に卵殻が割れるので、安全性については、疑問の余地があるが明らかでない。そのために新鮮なタマゴを使用すること、再冷凍しないこと、当日中に食べることが書かれている。そこで、冷凍タマゴにするのに必要な調整条件とその品質を明らかにすることを目的とした。

    【方法】白色レグホーン種鶏の産んだタマゴを冷蔵庫内で購入当日のものと、購入後3週間冷蔵庫保管したタマゴを用いた。卵黄の中心に熱電対を突き刺し、冷凍庫内で凍らし、同じ-15℃に達するのを調べた。また、冷凍タマゴにしたもの、水で洗って解凍し、卵黄については重量および各部重量割合、pH ,破断特性を測定し、卵白については、起泡性を測定した。

    【結果・考察】冷凍したタマゴは冷凍庫6時間で―15℃に達し、冷凍タマゴには最低6時間は必要であった。冷凍後の解凍により、卵白は元の状態に戻るが、卵黄は解凍後も真円球の形状で硬くなり、箸で持ち上げることができた。卵黄膜も破損がみられ、生卵とは異なる形状およびテクスチャーであった。クリオスタット切片で卵黄を観察すると、多面形の卵黄球が存在した。冷凍卵黄の破断測定を行ったが、破断せず、ゆで卵の卵黄と比較すると、緩やかな波形が得られた。このことから冷凍卵黄の食感は、もっちりとしていることが明らかになった。

  • 折田 萌花, 大貫 和恵, 五百藏 良, 野口 玉雄
    セッションID: P-23
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】現在,フグの肝臓(フグ肝)は無毒であっても費用をかけて廃棄されているが,無毒の餌を与えれば,無毒フグが生産可能となった.本研究では,未利用資源である無毒のフグ肝を用いて安全性,機能性,嗜好性が高い加工品を開発するため,機能性成分が豊富な無毒フグ肝より抽出した肝油を用いて食パンを作成し,その品質及び特性を明らかにした.

    【方法】管理の行き届いた海面養殖(熊本県)で2年間養殖したトラフグの肝臓を用い,フグ毒検査法の参考法で無毒(5 MU/g未満)を確認後,肝油を抽出し,JASやCODEX魚油規格より一般状態,酸価,過酸化物価を測定した.次に,得られた肝油を用いて食パンを作成し,色,物性,官能評価(順位法,評点法)等により品質評価した.食パンは,油脂分にバターを用いた試料A,肝油を用いた試料B,試料Bにローズマリーを添加した試料C,試料Bにコーヒーを添加した試料Dの全4種を作成した.また,フグ肝は,先行研究より加熱をすると嗜好性に影響を与えるにおいが生じるため,マスキングや油脂の酸敗臭抑制効果がある味噌を全試料に加えた.

    【結果・考察】得られた肝油の一般状態は,透明で異物混入がなく,酸価(約1 mgKOH/g),過酸化物価(約0.5 meq/㎏)が低値を示し,上記規格より品質に問題なかった.次に,肝油を用いた食パン(3種)は,バターを用いた食パンより内相部の気泡が小さく不均一で製パン性が低く,試料A・Bは黄色系で多少明るい傾向を,試料C・Dは添加物の色の傾向を示した.物性のかたさ,破断力,凝集性は,差がなかった.官能評価は,肝油を用いた食パンの中で試料Dが総合的に嗜好性が高かったが,試料Aより低かった.しかし,有意差はみられず,同等に好まれていたと考えられる.

  • 井野 睦美, 大富 あき子, 大富 潤
    セッションID: P-24
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】消費者の認知度が低いため海上投棄される魚種や、サイズが揃わないなどの理由で市場価値が低い魚種が存在する。これらの有効活用法の検討が求められるが、本研究では低・未利用アナゴ類3種および比較対象として有用種のマアナゴを用い、基本的な加熱調理後の物性を比較した。

    【方法】鹿児島県西岸沖で漁獲されたマアナゴ(有用種)とクロアナゴ(低利用種)、鹿児島湾における試験底曳網調査で採集した深海性のアイアナゴとニセツマグロアナゴ(ともに未利用種)の4種を用いた。三枚におろした後に3 cm四方に調製し、茹でおよび焼き操作に供した。茹で操作は小鍋に湯を沸かし、魚を投入、再沸騰後1分間加熱した。焼き操作はホットプレートで250℃、油は引かずに皮面から2分、裏返して2分の合計 4分間加熱した。調理操作後すぐに卓上物性測定器(TPU-2S;(株)山電)を使用し、直径3mmの円筒形プランジャーを用いた貫入試験に供し、かたさ荷重および破断荷重について比較した。

    【結果】茹で操作では4種間に有意差は認められなかった。焼き操作ではクロアナゴのかたさ荷重の値がマアナゴ、アイアナゴよりも有意に高かった。またアイアナゴに比べてクロアナゴの破断荷重は有意に高かった。これらより低利用種のクロアナゴは焼くと身がかたくなり、プリっとした食感になる特徴があり、この食べ応えを活かした料理が望ましいと考えられた。深海性未利用種のアイアナゴとニセツマグロアナゴは有用種のマアナゴとかたさ荷重および破断荷重における有意差は認められず、有用種に近い柔らかな身であることがわかった。今後は加工の容易さ、適した調理などについても検討したい。

  • 桒本 安壽, 安藤 美海, 小川 美奈, 中野 伊吹, 山口 真由, 河内 公恵
    セッションID: P-25
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】かまぼこ製造は神奈川県の地場産業であるが、食の多様化、ユーザーの高齢化、若年層のかまぼこ離れなどにより、かまぼこ市場は縮小している。 本研究では、かまぼこの食シーンを広げるため、かまぼことワインの食べ合わせについて、香りの面から評価することを目的とした。ワインに含まれる鉄が魚肉中の脂質を酸化させ、生臭みを発生させることが報告されている。そこで、鉄含量の異なるモデルワインを用い、かまぼこや加熱魚肉と混合した時の香気成分を分析した。

    【方法】市販板かまぼこ、蒸し加熱したたらを粉砕し、それぞれに鉄を含まないモデルワインと、赤ワインと同程度の鉄含量のモデルワインを混合した。25℃で5分間攪拌後、ヘッドスペース固相マイクロ抽出/ガスクロマトグラフィー質量分析により香気成分を分析した。官能評価は、20〜58歳の女性12名をパネルとし、蒸し加熱したたらと鉄を含まないモデルワインを混合したものを対照とし、生臭いにおい、金属的な酸化臭、好ましい魚のにおいについて評価した。

    【結果】香気成分分析では脂質酸化臭であるヘキサナールと2,4-へプタジエナール、硫黄臭を呈するジメチルトリスルフィドが、かまごこと蒸したらで、鉄無添加に比べ鉄添加モデルワインで上昇した。官能評価では、かまぼこと蒸したらは、鉄無添加に比べ鉄添加モデルワインでは、いずれも生臭く金属的な酸化臭が強いと評価され、香気成分分析結果と一致した。「好ましい魚のにおい」は蒸したらで鉄添加は有意に弱いと評価された。かまぼことワインと食べ合わせについては、生臭いにおいの低減について工夫が必要であると考えられた。

  • ーブロック豚肉の調味料添加の有無による香気成分変化ー
    中村 雅, 岩塚 優, 佐藤 杏美, 河内 公恵, 吉田 啓子, 大中 佳子
    セッションID: P-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】多くの大量調理施設ではスチームコンベクションオーブンが導入されているが、近年は加圧機能付きティルティングパンが普及しつつある。本研究はブロック豚肉の加熱調理前後の香気成分について、加圧機能付きティルティングパンの圧力加熱(以下圧力加熱)とスチームコンベクションオーブンのスチーム加熱(以下スチーム加熱)及び調味料添加(醤油、砂糖)による差異について明らかにすることを目的とした。

    【方法】約500gの豚肩ロースを2種類の加熱機器を用いて加熱した。スチーム加熱では湿度100%、加熱温度は100℃とし、圧力加熱では水を入れて加熱温度は99℃とした。いずれも肉の中心温度が75℃に到達した後、3分間加熱を継続した。加熱翌日に、肉の表面の赤身部分と脂身部分についてHS-SPME-GC/MS分析を行った。調味料添加試料は、加熱前日に肉を調味料(肉に対して醤油15%, 砂糖12.5%)に漬け、調味料無添加試料と同様に、加熱と香気成分分析を実施した。

    【結果・考察】生肉に比べ加熱後は、ヘキサナールや(E,E)-2,4-デカジエナールなどのアルデヒド類、2-ペンチルフランが増加した。これらは脂質の酸化により生じ、酸化臭や脂臭さを呈することが報告されている。これらの酸化生成物は、スチーム加熱に比べ圧力加熱が、脂身部分に比べ赤身部分が、調味料添加に比べ調味料無添加が多い傾向がみられた。この生成量の違いは、スチーム加熱より圧力加熱で表面温度が高くなったこと、脂身より赤身は脂身より酸化を促進する鉄を多く含むことや、醤油がメラノイジンなどの抗酸化物質を含むことが理由として考えられた。

  • 米澤 加代, 辻井 良政
    セッションID: P-27
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】世界人口の増加および新興国の経済発展に伴う食嗜好の変化などにより、肉類の消費量は2050年までに倍増すると予想されている。これに伴い肉類生産量の増加が必要になるが、肉類生産は環境負荷が大きく、持続可能性が低いことが問題視され、解決策として代替肉が注目されている。代替肉は欧米諸国では消費が拡大しているが、日本ではあまり浸透していないのが現状である。日本でも代替肉の消費を拡大させるためには代替肉の食味や食感をより本物の肉に近づけることが有効であると考える。本研究は代替肉製品および肉製品との違いを科学的に比較検討し明らかにすることを目的とした。

    【方法】試料は大豆タンパク質を使用した代替肉製品および肉類を主原料としたハンバーグを使用した。各試料を推奨加熱方法にて加熱した後、25℃で1時間静置したものを各実験に使用した。官能評価試験は7段階採点法により、5項目についての評価を行った。試料の物性はクリープメーターにより測定し、70%圧縮時の最大荷重を硬さとして評価した。凍結切片を作製し無染色、でんぷん染色およびタンパク質染色を行い光学顕微鏡にて観察した。さらに走査電子顕微鏡にて微細構造の観察を行った。

    【結果・考察】官能評価では代替肉製品を硬いと感じた人の割合が多く、物性測定の結果と一致した。凍結切片の観察結果から代替肉製品にはデンプンの存在量が少なくデンプンの分布の仕方に違いが見られ、この違いが食感や硬さの違いに影響していると考えられた。微細構造の観察結果からも凍結切片と同様の構造が観察され、代替肉製品の方が水分保持することが難しく、官能評価および物性測定結果での硬いという評価につながることが示唆された。

  • 土岐田 佳子, 野田 直緒, 半田 晶子, 小﨑 智恵, 藤井 恵子
    セッションID: P-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】高齢者用食品の開発においては、栄養面だけでなく、食品の軟らかさや飲み込みやすさに配慮した物性であることが求められる。先の研究では、卵ゲルに枝豆を分散させることにより、硬さを調整できることを明らかにした。本研究では、高齢者用食品の物性制御の観点から、モデル的に卵ゲルの連続相にサイズの異なるゲルを分散させ、その影響について検討した。

    【方法】分散粒子にタピオカゲルを選択し、卵ゲルは、卵液の濃度を40、55、70%になるようだし汁で希釈した。そこへ2、6、10mmのサイズの異なるタピオカゲルを25~75%添加後真空調理を行った。加熱条件は、中心温度85℃で3分間一次加熱し、25℃まで冷却後、75℃で1分間二次加熱を行った。得られた試料について、破断特性、静的粘弾性を評価した。

    【結果・考察】分散しているタピオカゲルが連続相である卵ゲルより軟らかい場合、破断ひずみはタピオカのサイズや添加割合の影響を受けなかったが、連続相より分散粒子が硬い場合、タピオカを25%添加すると低下したが、50%以上添加すると高値を示した。破断応力、破断エネルギーについても同様に、連続相より分散粒子が硬い場合、分散粒子を25%添加すると低値を示し、それ以上の添加量では硬いゲルとなった。静的粘弾性では、連続相より分散粒子が硬い場合、分散粒子の添加量の増加に伴いフック部の弾性率、ニュートン部の粘性率はともに増加した。遅延時間は、連続相より分散粒子が軟らかい試料では、2mmのタピオカを50%以上添加すると遅延時間は高値を示した。このことから、連続相の硬さをもとに、分散粒子の硬さ、配合割合、大きさを変化させることで、物性を制御できることが示された。

  • 樋口 かよ, 長沼 孝多, 尾形 美貴, 山下 路子, 桐原 崚, 加藤 治, 秋山 友了, 國友 義博, 新谷 勝広
    セッションID: P-29
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】山梨県のモモ収穫量は、全国1位(令和3年)であり、重要な地域資源となっている。モモは、剥皮および切断により、果肉の褐変や果汁溶出が見られるため、カットフルーツや加工品等への商品化に課題があった。しかし近年、県果樹試験場において、褐変しにくく成熟しても適度なかたさを保持する新しい肉質のモモ“甲斐トウ果17(商標名:夢桃香)”が開発され、同様の特長をもつ後代実生も選抜された。これらのモモを使用した新商品の開発に向けて、調理・加工適性を検討した。

    【方法】山梨県産の甲斐トウ果17および後代実生を供試試料とした。カットフルーツについては、剥皮後切断した果実をA-PET容器およびOPP袋に入れ、4℃で保存試験を行った。A-PET容器を用いたカットフルーツの評価は、果物仲卸業者および小売業者に依頼した。また、小型レトルト釜を用いた高温真空調理について、芯温100℃、3分間、冷却15分間の条件で行った。さらに、非加熱、乾式加熱、湿式加熱等を取り入れた料理や菓子の試作を研究協力者に依頼した。ゼリー、スポンジケーキ、タルトについては委託製造を行い、研究者や職員をパネルとして官能評価を実施した。

    【結果・考察】カットフルーツの検討では、両品種とも果肉の褐変や果汁溶出が少なく、商品化が期待できる評価となった。高温真空調理では、砂糖を添加することなくコンポートと類似した食味となった。料理や菓子の試作では、調理操作による変色や煮くずれが見られず、扱いやすい素材であることが確認された。官能評価の結果においても良好な評価が得られたため、新しい肉質のモモの調理・加工適性は高いことが分かった。

  • 久木野 睦子, 藤 希望
    セッションID: P-30
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】柿に牛乳を加えてミキサーにかけると冷却するだけでゲル化することが知られているが、必ずしも全ての柿で良好なゲルが形成されるわけではないようである。ゲル化の現象はおそらく低メトキシルペクチンによるものではないかと考えられるが、一般的に果実中に含まれるのは高メトキシルペクチンだと考えられており、柿に含まれる低メトキシルペクチンに関する文献は見当たらない。そこで柿ピューレのゲル化現象に関わる要因について検討した。

    【方法】柿は和歌山県産の樹上で適度に熟した富有柿(A)と福岡県産の冷蔵柿と呼ばれる真空パックで低温保存された富有柿(B)を試料とし、柿重量の50%の牛乳を加えて均一になるまでミキサーにかけたものをプリン型に入れて冷蔵庫中で冷却しゲルの形成状態を調べた。冷蔵柿は研究室冷蔵庫中で保存し、硬さの違いがゲルの状態におよぼす影響を調べた。また良好なゲルが形成された場合は、破断強度測定を行った。さらに、このゲル化現象が低メトキシルペクチンによるものか確認するために、牛乳ではなく蒸留水を用いて調製したものについてゲル化現象の有無を確認した。

    【結果・考察】適度に熟した試料(A)では冷却30分でもなめらかなプリン様のゲルが形成された。試料(B)の果肉が硬いものではゲル化しなかったが、果肉がやや軟化した試料(B)では、ゲル化現象がみられた。牛乳ではなく蒸留水を用いて調整した場合もゲル化現象を確認することができたが、牛乳で調整した場合より破断強度は低かった。金属イオンを含まない蒸留水でもゲルが形成されたことから、柿ピューレのゲル化現象には低メトキシルペクチン以外の要因も影響しているのではないかと推察された。

  • 井奥 加奈, 齋藤 楓果, 平谷 記江, 岸田 恵津
    セッションID: P-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】カブは在来品種の多い野菜のひとつで、和食にも多様な調理方法で利用される。山本ら1)がカブの蒸し調理による甘さ評価の向上を確認し、糖含有量との関連を検討した。今回、カブの蒸し調理における遊離アミノ酸含有量の変化に着目して甘さ評価等との関連を検討した。

    【方法】カブ(福岡産)は1.5㎝のさいの目切りにし、過熱水蒸気スチームオーブンレンジの蒸しモードを用いた。調理後、ホモジナイズして冷却高速遠心分離した上清を試料溶液とした。遊離アミノ酸はダブシル化してHPLCにて定量し、糖は全糖量をフェノール硫酸法で定量した。官能評価は大学生23名に対し、蒸し調理時間が5分、10分、20分の調理済みカブ試料を1個ずつ提供し、甘さ、うま味、柔らかさ、好ましさをVAS法にて質問した。

    【結果・考察】遊離アミノ酸のうち、甘さ評価に関わると思われるアラニン(Ala)、アスパラギン酸(Asp)、グルタミン酸(Glu)を定量した結果、調理済みカブ100gあたりのGlu含有量は、5分調理時の7.65mgから10分調理時の68.12㎎(平均値)に増加した。また、Aspは0分の25.8㎎から5分後に41.3㎎に増加した後、20分調理しても含有量はほぼ変わらなかった。Ala含有量は0分の12.8㎎から20分の8.64㎎まで緩やかな減少傾向がみられた。全糖量は非加熱のカブで100gあたり2.45g、20分蒸し調理しても2.49gで、ほとんど変動しなかった。官能評価から、5分調理と10分・20分調理の甘さに有意性が認められ、蒸し調理したカブの柔らかさや増加したGlu含有量の関与が考えられた。

    1)山本ら、日本調理科学会誌、54(1)、49-55(2021)

  • 小原 理加, 恩田 浩幸, 菊﨑 泰枝
    セッションID: P-32
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】コリアンダー (Coriandrum sativum L.) は地中海地方原産のセリ科の香辛野菜で、サラダ、炒め物、麺の具など様々な料理に用いられ、日本でも注目されている食材である。先行研究において、コリアンダーは抗酸化活性を呈することが知られているが、調理による活性の変化についてはあまり知られていない。そこで本研究では、コリアンダーの調理に伴う抗酸化活性の変化及び活性寄与成分の解明を行った。

    【方法】コリアンダーは野菜部分(葉部及び茎部)を用いた。調理は炒め、茹での2種類の方法で行った。未調理および調理コリアンダーは、各種調理コリアンダーは50%メタノールで抽出した。活性成分を解明するにあたって、未調理サンプルを極性の異なる溶媒で順次抽出・分画し、ゲルカラムクロマトグラフィーによる成分の精製・単離を行った。調理サンプル及び単離成分の抗酸化活性測定はORAC法により行った。

    【結果】コリアンダーの水溶性画分に強い抗酸化活性が認められ、各種機器分析により11種類の成分を分離・同定した。特にケルセチン配糖体の含有率が高く、抗酸化活性に大きく寄与していると考えられた。2種の調理サンプルについても抗酸化活性を測定した結果、未調理サンプルよりも炒め調理で強い活性が認められることがわかった。一方で茹で調理は活性の低下が認められた。しかしながら、極端な活性の低下は認められなかったことから、あらゆる調理形態において抗酸化活性を発揮することが示唆された。各種調理サンプルにおけるHPLC分析から、含有成分の組成の目立った変化は見受けられず、共通してケルセチン配糖体が活性に寄与していると分かった。加えて、カフェ酸誘導体の存在及び活性の寄与も示唆された。現在、カフェ酸誘導体について検討を進めている。

  • 八木 千鶴, 中本 恵子, 徳永 みな子, 吉村 美紀
    セッションID: P-33
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】大阪府吹田市の日本固有種「吹田くわい」は、肉質が緻密で味がよいとされている。くわいは正月料理に使われ食文化の継承、特に吹田くわいは地域活性化にも期待される。くわいの皮は青みがありポリフェノールが含まれると考えられる。美味しく食すための下ごしらえの方法としてゆで汁の検討を行い、機能性成分の有効摂取につながるよう吹田くわいの部位別の総ポリフェノール量を調べた。 【方法】吹田市産吹田くわい、広島県産青くわいを使用した。実を12㎜×12㎜×15㎜の直方体に切り出した。ゆで汁は、水・米のとぎ汁・酢水(3%)・重曹水(0.4%)を用い、沸騰後10分間加熱後、直ちにレオメーターによる圧縮試験を行った。総ポリフェノール量は、吹田くわいを生のまま芽、皮、実それぞれに剥いたもの、また比較のためごぼうの生を試料としてフォーリン‐チオカルト法を用い測定した。

    【結果・考察】ゆで汁の比較では、吹田くわい・青くわい共に、水、米のとぎ汁、重曹水が酢水に比べて最大荷重、破断荷重、破断エネルギーが低く(p<0.01)軟らかくなった。硬さは、水、米のとぎ汁、重曹水には差がみられず、いずれもゆで汁として適していると考えられた。ゆで汁別にかたさを比較すると、吹田くわいは、青くわいに比べて水の場合、破断荷重が高く(p<0.05)、酢水の場合、破断応力が高く(p<0.05)硬くなった。吹田くわいに含まれる総ポリフェノール量は、芽が最も多く、次に皮、実となった。芽の総ポリフェノール量は、ごぼうと同程度含まれており、機能性からも芽ごと食すことが有効であることが示唆された。今後、下ごしらえや加熱調理法別によるポリフェノール残存率を検討する必要が認められた。

  • 谷澤 容子, 鵜殿 恵理, 香西 みどり, 松宮 健太郎, 松村 康生
    セッションID: P-34
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】粉砕技術の進歩により,食品を数十マイクロメートルに粉砕することが可能となり,調製した微粒子の乳化性・起泡性調理への利用や粘性調理への利用の検討*1を報告したが,市販微粒子の粘性の検討は行われていない。本研究では市販微粒子素材の増粘効果について検討することを目的とした。

    【方法】澱粉質、非澱粉質の市販農産食品微粒子として,粒子径(D50)7.2~19.9μmの玄米,カボチャ,紫イモ,ショウガ,レンコン,トウモロコシ,ニンジン,レモン,ユズ,レンコン,トウモロコシ,ニンジン,ユズ,ヒジキ,ホウレンソウ,コマツナ,ブロッコリー,ゴボウの14種類を選び,走査型電子顕微鏡観察,見かけの密度等の基礎特性を調べた。微粒子を5.7%,9.1%添加し加熱粘性試料を調製した。試験管倒置法による流動を観察,E型粘度計により粘度を測定した。見かけの粘度の温度依存性を調べた。冷凍耐性は,-20℃1週間冷凍保存後40℃あるいは沸騰水解凍後に流動を観察した。目開き25μm篩を通した微粒子形の粘度から粒子サイズの影響も検討した。

    【結果・考察】8種類の農産食品の微粒子が粘性のある試料となった。澱粉質食品の微粒子は9.1%以下,非澱粉質は概ね13.8%以下で粘性試料に適することが示唆された。冷凍保存試料は,99.5℃解凍でいずれの微粒子も粘性試料が得られた。また,粘度の温度依存性がアンドレードプロットにより確認できたことから,粘性調理への利用可能性が示唆された。25μm篩別粒子は,粒子サイズの大きい方が粘度が高くなる傾向がみられた。試料によって微粒子のアスペクト比と粘度の関係は様々であった。*1;谷澤ら(一社)日本調理科学会2019年度大会研究発表要旨集,p45

  • 小杉 ひかる, 山﨑 貴子
    セッションID: P-35
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】給食施設等での献立の栄養計算は、食品の調理前の状態である「生」の成分値を用いて行うことが多く、調理による成分値の変化が加味されていないことが懸念される。「食品」では調理によるビタミンCの損失が著しいことが報告されているが、「料理」での変化を調べた報告は少ない。本研究では、調理前の食品及び調理後の「料理」の総ビタミン C 量と還元型アスコルビン酸(AsA)・酸化型デヒドロアスコルビン酸(DAsA)の割合を確認し、調理前後の比較および実測値と食品成分表計算値との比較を行った。

    【方法】料理は「こまつなのおひたし」、「キャベツとにんじんの塩昆布和え」、「れんこんとだいこんの梅和え」を選択した。ビタミンCの定量にはヒドラジン法を用いた。食品成分表によるビタミン C量の計算には、日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)を用い、「生の成分値」を用いる方法と、「調理後の食品の成分値」および「調理後の食品の質量」から計算する方法で料理1人前の成分値を算出した。

    【結果・考察】料理の総ビタミンCは、「キャベツとにんじんの塩昆布和え」と「れんこんとだいこんの梅和え」では調理前の食品の総ビタミンC量の合計値より有意に減少し、「こまつなのおひたし」では差は認められなかった。総ビタミンC量に対するAsA量の割合は全ての料理で調理後に有意に減少し、DAsA 量の割合は有意に増加した。料理の総ビタミンC量の実測値は、食品成分表の「生」の値を用いた計算値の42~60%、「ゆで」の値を用いた計算値の56~159%であった。 以上より、料理に含まれるビタミンC量やAsAの割合は食品と同様に減少し、また食品成分表計算値と実測値には乖離があることが示唆された。

  • 青木 秀敏, 中村 陵子, 青木 敏晃
    セッションID: P-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】ポリフェノールやペクチンなどが含まれ機能性の高い果物であるりんごは、乾燥してドライにすれば生食では得られない甘味が生まれ、トッピングとして調理にも使える。しかし、りんごを乾燥する際に褐変が生じ見栄えと風味が落ちる。褐変を抑制させる方法には塩水漬けや酸化防止剤漬け等があるが、本研究では無添加にこだわり、蒸気で蒸すブランチングがドライりんごの美味しさと品質に及ぼす影響を検討した。さらに天日干しに通じる紫外線(UV-A)を乾燥時に照射することによる効果も検討した。

    【方法】十和田市産「むつ」を複数の厚さにスライスし、乾燥温度と乾燥時間を一定にして含水率10%程度まで乾燥を行った。ブランチングは家庭用蒸し器を使用し、蒸し時間を変化させた。測定項目は乾燥物の含水率、水分活性値、色彩色度、切断強度、遊離アミノ酸量、総ポリフェノール量、DPPHラジカル消去活性値とした。官能評価は東京ビックサイトでの来場者40名を対象に2点嗜好試験法で行った。

    【結果・考察】ブランチングしない乾燥物と比べ、ブランチング乾燥物は蒸すことによって切断強度が1.3倍に固くなり弾力性が失われた。また蒸し時間が長いほど黄色みは余り変わらないが赤色みが増え、明度も下がり褐変度が上昇した。官能評価でもブランチング乾燥物は味と食感が劣っていると評価された。これらの結果は、ブランチング時間が長いほど果肉が収縮硬化し、エキス分の流出が生じたからと考えられる。一方UV-A照射の効果について、非照射乾燥物と比べ、総ポリフェノール含量は1.2倍、DPPHラジカル消去活性値は1.36倍増加した。官能評価では、UV-A照射乾燥物の方が色は劣るが、香りと食感は良いと評価された。

  • ー三宅島灰干し手法を応用してー
    上薗 薫, 綿貫 仁美, 長谷川 桜
    セッションID: P-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】灰干しとは、火山灰を用いた熟成乾燥加工法の一種で海産魚に対して用いられることが多い。研究者らは魚介類だけではなく、食肉、野菜、果物等に調理加工の下処理手法として活用検討し、加工食品への応用検討も行っている。魚介類では適度に水分を火山灰が吸収し、併せて魚臭やサメやエイではアンモニア臭も吸着し、食味が向上する。本研究では本特性に着目し、渋柿を試料とし、脱渋工程に火山灰干しが活用できるか検討することを目的とした。

    【方法】試料は平核無、刀根早生2品種とした。1)灰干しの手法は三宅島灰で行われている加工法を基本とした。灰干しに用いる火山灰は環境庁三宅支庁から許可された三宅島火山灰を使用した。2)各試料を火山灰に6時間、12時間、18時間、24時間浸漬処理を行い、その後、低温機械乾燥で干し柿とした。比較対照の脱渋方法としては、アルコール脱渋法を用いた。3)灰干しと灰干し未処理試料に対し、紫外吸収法で各試料の渋味判定と併せてD(+)-カテキンと比較し、カテキン含有量を判定した。また、フォリン・デニス(Folon-Denis)法も用い、含有タンニン定量を行った。

    【結果】灰干し処理後及び灰干し未処理(アルコール脱渋)後に低温乾燥を行った各々の試料のタンニン定量の結果は、脱渋処理の違いに差は認められず、いずれもほぼ同等のタンニン含有量を示した。よって、灰干しによる脱渋作用が示唆された。加えて、試料により灰干しのデメリットなる火山灰のにおいは、24時間火山灰浸漬処理を行っても火山灰独特のにおいが試料へうつらず、食味も比較対照手法品と同等の甘さが認められた。

  • 細野 誠, 奥田 悠介, 吉田 真梨, 大石 紗佑里, 梅津 徹, 栁澤 琢也, 小口 かおり
    セッションID: P-38
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
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    【目的】マヨネーズを肉の下味冷蔵に使用することで、食感及び食味を改善する効果があることはすでに報告した。今回は、需要の高まる下味冷凍において、マヨネーズが鶏ムネ肉と鮭のおいしさ(食感及び風味)に及ぼす影響を明らかにすることを目的とし、検証を行った。

    【方法】鶏ムネ肉と鮭にマヨネーズを加えてもみ込み、一定期間冷凍した後、解凍し、家庭用オーブンで焼成した。この「下味冷凍」に対して、同期間、下味せずに冷凍・解凍した鶏ムネ肉と鮭に、マヨネーズ添加と同等の塩を加えた「無添加」、マヨネーズを加えてもみ込み、一定時間冷蔵した「下味冷蔵」を比較対象とした。評価は「やわらかさ」、「おいしさ」、「魚の臭み(鮭のみ)」の三項目に関する官能試験を行った。更に「やわらかさ」と「魚の臭み」については、機器測定も行った。

    【結果・考察】官能試験において、下味冷凍と下味冷蔵は、無添加と比べ、やわらかく魚の臭みが低減し(鮭のみ)、おいしくなった。以上より、鶏ムネ肉と鮭にマヨネーズ下味冷凍を処理することで、食感及び食味が改良されることが明らかとなり、マヨネーズは下味冷凍においても優れた調味料であることが示された。

  • 津田 さおり, 芝野 勇人, 渡邊 幾子, 岡崎 貴世
    セッションID: P-39
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/09/02
    会議録・要旨集 フリー

    【目的】味噌は全国で生産されている発酵食品で、地域色が豊かで製造に用いる原料や麹の種類と歩合、熟成期間など多種多様である。徳島県では「御膳味噌」と呼ばれる甘口の米味噌があり、多くの消費者に認知され親しまれているが、一方で「ねさし」の名称がついた味噌も製造・流通されている。ねさしとは徳島の方言で「寝さす(寝かせる)」の意味があり、語形が名詞化して「ねさしみそ」などの名がついたと言われている。そこで「ねさし」の名称のついた味噌(ねさし味噌)の理化学的・微生物学的特徴について比較を行った。

    【方法】徳島県内の醸造所や小売店で入手した8種類のねさし味噌を用いた。また比較として愛知県の八丁味噌(豆味噌)と御膳味噌(米味噌)を用いた。味噌の理化学的特徴は水分量(105℃、電子式水分計)、pH、塩分濃度(デジタル塩分計)、酸度(NaOH滴定法)、色調(測色色差計)を測定した。微生物学的特徴は各種寒天培地を用いて一般生菌、耐塩性菌、カビ、酵母、乳酸菌の測定を行った。

    【結果・考察】ねさし味噌は豆味噌4、米味噌3、合わせ味噌(豆+米)1で、豆味噌の割合が多かった。ねさし味噌は2年以上の長期熟成がされたもので、中には8年以上寝かせた味噌も含まれた。水分量は味噌によって差が見られ、また酸度は豆味噌で低い傾向があり、製造方法の違いによるものと考えられた。塩分濃度は県西部で作られている豆味噌で高い傾向(13.7~16.3%)があった。色調(Y値)は0.45~2.99で八丁味噌(0.88)に相当する暗さだった。多くのねさし味噌はカビ、酵母、乳酸菌不検出で、検出された一般生菌は芽胞形成菌と考えられる耐塩性菌だった。

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