ファクシミリやデジタルコピアの読み取りセンサとして用いることを目的として4,10-ジブロモアンタントロン(以下DBAAと称する)光導電体を用いた光センサを作った.
4種類の層構成のうち,DBAAをバインダポリマに分散してなる単層型のものは,比較的高い光電流(1.2×10
-5 A/10mm
2; 5×10
4 V·cm
-1)と極めて高い明暗電流比(2.0×10
5)を示したものの,応答速度は極めて低かった(立ち上がり時間,立ち下がり時間>2000 msec).
この単層型DBAAセンサにスチリルアミン正孔輸送物質を添加すると,応答速度は3~4000倍改善され,光電流の減少は1/11にとどまった.
また,単層型センサでは電極材料が暗電流値に影響を与えることが認められ,このことを電極材料の仕事関数との関連において考察し,電極からDBAA光導電層への電子注入のポテンシャル障壁が暗電流を支配するものと推論した.
さらにDBAA層への正孔輸送物質の添加によって応答速度が改善される現象は,光導電層のホール伝導性が高められた結果であると考えた.
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