電子写真学会誌
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37 巻, 1 号
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特集論文
  • 水野 恒雄, 館野 克美, 川島 雅人
    1998 年37 巻1 号 p. 3-9
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    タンデム方式による50ppmの高速カラーレーザプリンタの開発を行った.4個の感光体ドラムを並べて順次転写するタンデム方式を採用し,用紙搬送には誘電体ベルトを採用した.誘電体ベルトは電荷が保持されるので安定な用紙搬送ができる反面,転写電圧が印加されると電荷が蓄積し,4回行われる転写で転写電圧が高くなる欠点を有していた.このため,理論的に転写の低電圧化と用紙搬送の安定化を検討した.
    転写電圧に関しては,転写ベルトの電荷保持性に着目して転写電圧と逆の極性で初期帯電を行い,転写電圧との電位差を大きくして,低電圧転写を可能とした.また,この時の用紙搬送性に関しては,感光体ドラムと接する面の電圧極性を,感光体ドラムの表面電圧の極性と同極性とすることで用紙のドラム巻き込みがない安定した搬送性を実現することができた乙さらに,転写の低電圧化により,用紙を転写ベルトから分離するためにAC分離をする必要がなくなり,搬送ローラの径を利用した曲線分離のみで用紙分類ができた.
    これらの技術により,環境依存性の少ないオゾンレスの転写プロセスを実現した.
  • 丸田 將幸
    1998 年37 巻1 号 p. 10-15
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    定着工程は良好な色調のカラー画像を得るために重要な工程である.カラートナーを充分に発色させるためにはトナーを良く溶融し平滑な表面を得なければならない.表面の平滑性の指標である画像光沢が10を越えた時点でトナー層表面は平滑となり白色散乱光の寄与がなくなり色調が一定となる.この時点で、カラートナーは定着したといえる.また,カラー画像の光沢および色調はトナーの付着量(画像濃度)に大きく依存する.また,カラートナー画像およびカラー電子写真システムにおいて定着時に使用されるシリコーンオイルに起因する幣害が多く存在する.この点の改良のため,カラートナーに多量の離型剤を添加するとオイルレス定着と高光沢画像の両立は可能となるが,トナーの耐久性などに課題が残る.
  • 服部 好弘, 濱道 優, 吉本 真一, 小林 徹矢
    1998 年37 巻1 号 p. 16-24
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    2成分カラー現像における現像効率と出力画像の粒状性の関係を検討した.2成分現像の現像トナー量の決定は静電場平衡機構によるとして,栗田のモデルのカウンターチャージ項を以下のように書き換えた.
    dc/kcθ=dsnFv/Fekcθ
    実験は,トナー帯電量,現像ロール・感光体速度比,トナー粒径,潜像形状をパラメータとして行った.実験結果より,現像効率は上記モデル式とよく対応された.
    粒状性は,粒径が一定の場合現像効率とよく相関した.粒状性の劣化は,感光体近傍のカウンターチャージによる撹乱が支配的であると示唆された.
    トナーの小径化に対しては,現像効率の低下による高濃度画像の確保に課題が見いだされた.
  • 山本 直史, 樋口 和彦, 坂上 英一, 関沢 秀和
    1998 年37 巻1 号 p. 25-30
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    電子写真記録においてハイライト領域の安定記録は重要な課題である.電子写真記録方式では露光量と現像濃度との関係が急峻な非線形特性を示すため,一般に露光パルス幅の変調により階調を記録する.このため,露光パルス幅を狭くする必要のあるハイライト領域では光ビームの広がりにより,潜像電位のピークがなまり,記録濃度が不安定になると考えられる.
    われわれは多値誤差拡散方式を改良した,新たな信号処理方式を開発した.本方式では注目画素の隣接画素の処理結果を参照して,細かいパルスパターンが生じないように,多値化閾値を切り替える.これにより,低電位領域を引き起こすパルスパターンを除くことができる.
    計算機による電位分布シミュレーションにより,低電位頻度が減少することを確認した.また,実際に記録実験を行い,従来方式に比べ良好な階調特性とノイズ特性が得られることを確認した.
  • 宮田 公佳, 津村 徳道, 羽石 秀昭, 三宅 洋一
    1998 年37 巻1 号 p. 31-39
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    注視点領域と主観的画質の間には大きな相関があること,また注視領域には個人差は少なく,画像の内容により特定の注視領域が存在することが,これまでに行われた研究から示されている.本論文では,劣化画像の画質評価において,注視領域から画質評価尺度値を算出する手法について検討を行った.
    実験では,まず様々な画質決定要因の中から鮮鋭性と粒状性に着目し,双方を劣化させた36枚の評価画像を用いて主観評価実験を行い,評価すべき劣化画像の主観画質を導出した.本実験では,ポートレート画像とカフェテリア画像の2種類のシーンを用いた.続いて,CRTモニタ上に呈示された原画像から,アイカメラを用いた眼球運動の測定により,それぞれのシーンに固有の注視領域を決定した.この結果に基づいて注視領域から画質評価尺度値を算出した場合と,画像全体から算出した場合とを比較し,注視領域の重要性に関して検討した.その結果,画像全体から画質評価尺度を求めた場合にはシーンに依存して主観評価値との相関係数が変化したのに対し,注視領域から求められた画質評価尺度はどちらのシーンにおいても主観評価値と高い相関を示した.以上の結果から,注視領域から画質評価尺度を算出する手法の有効性が示された.
一般論文
  • 鈴木 政則, 磯田 哲夫, 高橋 恭介
    1998 年37 巻1 号 p. 40-47
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    シリコーンコートフェライトキャリアとモデルトナーで構成される二成分現像剤による撹拝経時での帯電極性の反転現象のメカニズムの研究から,トナーに含有されているカーボンブラックとCCAの役割について明らかにした.カーボンブラックは,カーボン自身が持っている帯電能力が小さいため摩擦帯電への寄与はほとんどなく,カーボン自身がトナー表面に出現することでトナー表面の樹脂が占めている帯電サイト数を減らす働きをしている.CCAは,表面に出現することでトナー表面上樹脂成分が占めている帯電サイトを減らすが,CCA自身が持っている帯電能力が大きいため,CCAの極性が樹脂の帯電極性に増加または減少として働く.また,2成分現像剤の摩擦帯電現象が,トナー表面を構成している各構成成分(結着樹脂,カーボンブラック,CCA)に起因する正帯電サイト,負帯電サイトの数を考慮することで説明可能なことを示した.
  • Jaebong Choi, Moonsoo Park
    1998 年37 巻1 号 p. 48-52
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    Toner particles were synthesized by suspension polymerization technique. Styrene and butyl methacrylate were used as monomer with the ratio of 7 to 3, and fillers, such as carbon black, charge control agent (CCA) and wax were incorporated. AIBN was used as initiator and tricalcium phosphate slurry, as stabilizer. Most reactions were carried out at 70 to 80°C, and reaction generally took 6 to 9 hours, depending on reaction condition. Adding filler particles significantly decreased the reaction rate, thus conversion. This phenomenon became more manifested for CCA and wax particles. The glass transition temperature, determined by DSC, was found to be around 60°C regardless of the amount of filler particles. Particle size varied from 4 to 15 um in diameter, depending on polymerization condition. Charge to mass ratio was determined to be -15 μC/g. Imaging test has been conducted, which exhibited a fine image.
  • 岡 孝造
    1998 年37 巻1 号 p. 53-57
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    粒子分散型の単層感光体がインダクション効果を示すことが,デジタル潜像形成の観点から近年注目されている.本報告では,感光体の電荷移動度が負の電場依存性を持つと仮定し,インダクション効果を理論的に導いた.さらに粒子分散層の電荷の流れを直接計算することによっても,インダクション効果を導くことができた.この結果から,感光体のインダクション効果は,構造トラップにより電荷の動きが高電場において強く束縛されるという特異な輸送過程によって生じると解釈とすることが可能である.
  • 水口仁 仁
    1998 年37 巻1 号 p. 58-66
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    表題化合物のチオピロロピロールには3つの結晶相が存在する.第3結晶相は近赤外吸収を示す事からピロロピロールはGaAsA1半導体レーザーを使ったレーザープリンターの感光体ならびに光ディスク媒体として注目されている.第1および第II相の結晶構造は非常に類似し,分子はいわゆる「杉綾模様“herringbone”」構造で積層する.これに対し,第III結晶相は「レンガ塀のレンガ“bricks in a brick wall”」の構造をとる.このような分子配列の差が近赤外吸収に反映されたものと考え,各結晶相の最近接分子に対し励起子結合効果に起因するバンドシフトを計算した.どの結晶相においても水素結合ペアは約1500 cm-1長波長シフトに寄与する事がわかった.これに対し,積層ペアは第III結晶相では大きな長波長シフトを誘起するが,第1および第II結晶相では逆に短波長シフトとなった.以上の結果から,水素結合ペアならびに積層ペアの双方が長波長シフトに寄与する「レンガ塀のレンガ」の構造が近赤外吸収の出現に決定的な役割を果たす事が結論された.
  • 水口仁 仁
    1998 年37 巻1 号 p. 67-73
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    表題化合物の第3結晶相は近赤外吸収を示す事から,レーザープリンターの感光体や光記録材料として注目を集めている.近赤外吸収の発現の源は「レンガ塀のレンガ“bricks in a brick wa11”」の構造で特徴付けられる水素結合ペアと光学異性体ペア(convex pair & concave pair)である.本研究は「レンガ塀のレンガ」の構造がどのような結合で形成されているかを明らかにする目的で,分子間力を半経験的分子軌道法の“エネルギー分割”(energy partition)法で評価した.水素結合ペアの寄与は大きく,その内訳は軌道の重なりによる効果と静電的な効果がほぼ同程度であった.また,convex pair並びにconcave pairペアに基づくπ-π相互作用は予期に反し静電相互作用が大半を占め,軌道の重なりによる効果は無視し得る事がわかった.今回の計算は非常に荒い近似ながらも,実験的には得られない「レンガ塀のレンガ」構造の知見をある程度得る事ができた.
121号掲載論文に対する意見
技術解説
  • 小林 健一, 城戸 衛, 矢島 俊明, 保苅 則雄
    1998 年37 巻1 号 p. 79-89
    発行日: 1998年
    公開日: 2007/03/22
    ジャーナル フリー
    DocuColor4040は'95年11月に世界最高速(40 ppm/A4)の生産性をもつタンデム・カラー・プリンタとして軽印刷市場に参入した.これまでのマルチプル転写型カラーの生産性を,飛躍的に向上させるタンデム型カラー・プリンタ技術は高生産性が得られる反面,構成要素部品が増えることによる画質と信頼性の低下が懸念された.特に高精度色重ね技術は実現へのキー課題であり,従来技術の改善ではない革新的な技術コンセプトが要求された.本解説はDocuColor4040に導入されたこれらの高精度画素位置制御技術に関して報告するものである.
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