東京農工大学では,学生が自身の端末を用いたBYOD(Bring Your Own Device)環境による学術情報基盤を2016年4月から提供してきた.その特徴は,学外クラウド上にWEBブラウザ経由でアクセス可能な仮想端末室を設けて,利用者のプラットフォームに依存しないコンピュータ演習環境の提供にある.現在,コロナ禍でのキーボード等による接触感染や教室での密な環境を防ぐために,多くの大学や学校等において,従来型の物理端末教室を用いた授業実施が大きく制限されている.仮想端末室は,ネットワークのアクセス性さえ確保できれば,情報リテラシー,プログラミングやCAD等のコンピュータ演習を,在宅や学内教室に分散して臨機応変に実施可能である.そのため,現在のコロナ禍の状況において,コンピュータ演習を円滑に行うための有力な解決策の一つと言える.本稿では,コロナ禍を含む約5年間の運用期間全体における仮想端末室の利用状況に対する報告と考察を行う.そして,仮想端末室導入のメリットのひとつである授業規模に応じた柔軟な仮想端末の割り当てが行えるを示すとともに,本仮想端末室によってコロナ禍においてもコンピュータ演習環境の提供が可能であることを示す.
Society 5.0 のようなデータ駆動型社会では,学校教育においてもクラウドサービスの活用が求められている.このような背景のもと文部科学省は2019年度からGIGAスクール構想として初等・中等学校への高速ネットワーク整備を進めている.附属学校のネットワークは本学の既設ネットワークと同様にインシデント時に利用者を特定できること等,大学と同等の情報セキュリティレベルが求められる.一方で本学の附属学校園には幼稚園,小学校,中学校,特別支援学校の4校園があり,様々な情報リテラシーレベルの児童・生徒が利用することを考慮する必要がある.本論文では,小学校低学年や特別支援学校の児童・生徒も安全に利用するための総合的な情報セキュリティ対策を施したGIGAスクール構想に対応した本学附属学校ネットワーク整備について説明し,その利用状況を認証ログ等の分析により明らかにする.