学術情報処理研究
Online ISSN : 2433-7595
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原著論文
  • 稲垣 知宏, 村上 祐子
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 1-8
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    ITプレースメントテストを用いた学生の情報に関する知識測定について概観し,その活用方法について議論する.ITプレースメントテストは,基本的に一般情報教育の知識体系で定義されたエリア毎の問題で構成されている.本論では,2022年度,2023年度に広島大学で実施したITプレースメントテストの結果を分析する.まず,問題自体に関する分析として,正答率を確認する.次に,プレースメントテストの正答率から,エリア毎,学部間の差を調べる.最後に,情報教育に関するアンケート調査結果と合わせて機械学習による分析を行い,知識の量に差が生じた原因について考察する.

  • 渡辺 勇士, 竹林 暁, 吉川 綱希, 藤原 尚聡
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 9-21
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    2020年に起こったコロナウィルス感染症の流行は,世界中の学習スタイルに影響を与えた.多くの教育機関が従来の対面の授業スタイルからオンラインでの授業スタイルに切り替えることを余儀なくされた.2023年現在,withコロナの生活も定着しつつあり,教育機関でも対面の授業スタイルに戻す状況が多く見られる.しかし,学習者の学習の利便性を考慮したとき,オンラインの教育も選択肢として発展させるべきである.その中で,オンラインでのアクティブラーニングをどのように行うかは議論の余地がある.本研究では,オンラインでのアクティブラーニングに特化した,コミュニケーションツールnoizを開発した.そして,予備的なものになるが,大学生に実際に使ってもらいアンケート調査を実施した.その結果,92%の大学生は従前のビデオ会議システムよりもnoizの方が,グループワークにおいてコミュニケーションがとりやすいと感じることがわかった.また,全体の中で88.57%の学生がオンラインでのアクティブラーニングを成功させる要因としてファシリテータの存在を挙げていた.一方で,noiz自体の有用性を導くには実践内容と調査方法は不十分であり,さらなる調査の必要性が残った.

  • 野口 岳, ウン クアンイー, 上田 尚之, 乗添 凌太郎, 島田 敬士
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 22-28
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    九州大学では学生たちが中心となりボトムアップ型で学生支援・教育支援を行う体制としてquickQが組織されている.quickQでは,コロナ禍の様々な課題に対してチャットボットの開発・運用を通じて解決に貢献してきた.2021年までに3つのチャットボットを開発・運用してきたが,3つを別々のアカウントで運用を続けることに様々なデメリットが存在することがわかった.2022年4月に各チャットボットを「ワンストップ」という考え方に基づいて統合した.結果,2022年3月から2023年6月末時点で33614回の問い合わせをチャットボットによる自動応答を用いて解決した.ワンストップをベースとしたチャットボットの開発・運用について,設計と開発環境の紹介をしたうえで2023年7月までのデータを元にした運用状況を報告し,直近の持続的な取り組みを紹介する.

  • 中鉢 直宏
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    情報プレースメントテスト(以下:IPT)とは,情報処理学会一般情報教育委員会が実施する,大学初年次の学生を対象に行われるテストである.本研究では,ChatGPTを使用したIPTのための作問支援についてその可能性を検討した.情報分野においてもChatGPTを使用することで,キーワードから設問の作成や既存の設問に対する選択肢の作成が可能であることが分かった.また,作成時に難易度を指定することにより,段階的な出題の傾向が見られた.IPTで使用された既存の設問に対してChatGPTに解かせたところ,高い正答率であった.そして,計算などの問題の間違える傾向について確認することができた.ChatGPTを使った難易度の評価については,大学1年生レベルの平均の難易度と評価され,IPTの作問時に想定した難易度と一致した.しかし,実際の正答率と各設問の難易度の関係は弱い負の相関であった.

  • 山田 哲, 浅木森 浩樹, 末廣 紀史, 武田 啓之, 國枝 孝之, 米谷 雄介, 八重樫 理人
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 38-45
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    「Kadai DXブートキャンプ」は,DX推進に必要なデザイン思考,アジャイル開発の行動規範に基づいたシステム開発が実践できるスキルの獲得を目的に開催され,大学職員,情報系分野を専攻する学部学生,大学院生,ITベンダの若手技術者などの多様なバックグラウンドを持つ参加者が共創し,新しい業務システムを開発するワークショップである.本論文では,短期集中型業務システム開発ワークショップ「Kadai DXブートキャンプ」の実践について述べるとともに,その効果について考察する.

  • 塩見 岳博, 安藤 隆朗, 和田 光博, 鶴 薫, 二宮 芳継, 寺元 郁博, 斎藤 岳士, 川村 隆浩
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 46-52
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    昨今,様々な分野においてデータ活用やデータ連携の実現に向けたプラットフォーム構築の取り組みが進んでいる.農業分野においても,農研機構によりデータ連携基盤WAGRIが運用されているが,WAGRIを通じて民間企業などが様々なデータをICTサービスに搭載するに伴い,データの大容量化やリアルタイム性の高いデータへの対応など,多くの課題が生じてきている.農研機構では,それらの課題に対応するため,性能を必要に応じて柔軟に拡張できる新たなプラットフォームとして,高速API基盤の設計・構築を行った.本稿では,その課題と目標,システム構成を紹介し,最後に評価・考察と今後の展開を示す.

  • 林 豊洋, 黒崎 覚, 金光 昂志
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 53-64
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    九州工業大学には,利用者からの申請に基づき提供される情報システムが複数存在する.これらの申請について,従来は紙ベースの申請書を受理,承認後,申請内容に基づきシステムの設定変更を実施していたが,コロナ禍による紙面のやり取りが困難となったことを機会に,Microsoft Formsを用いたオンライン申請に移行した,しかし移行後も,申請内容の帳簿への保存や実際のシステムの設定変更等については手作業が混在しており,より一層の運用効率化を図ることとした.具体的には,システムの自動処理プラットフォームであるMicrosoft Power Platformの各機能を用いて,オンライン申請,承認,ワークフロー,データ管理等についてパブリッククラウド側での運用を行う.しかし,Power PlatformにはMicrosoft 365をはじめとするSaaSや,学内情報システムの設定変更を行う直接の方法が存在しないため,ワークフロー内にオンプレミスに構築したバッチ処理システムを駆動するための仕組みを付与する.この仕組みによりMicrosoft Teamsの制御,Exchange Onlineの制御,申請内容のPDF化などの自動化を実現した.

  • 松永 貴輝, 末廣 紀史, 武田 啓之, 藤本 藍, 米谷 雄介, 八重樫 理人
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 65-72
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学では,従来の電子メールを用いた事務連絡を置き換えるお知らせ機能を,香川大学のポータルシステム「Digi-ONE」に開発した.事務連絡の発信者は,「Digi-ONE」に事務連絡を登録する.新規に登録された事務連絡へのリンクが付与されたタイトルは,サマリーメールとして1日に1回,教職員に配信される.教職員はサマリーメールに記載されたタイトルから,自身に関係する事務連絡にアクセスしてその内容を確認する.「Digi-ONE」のお知らせ機能により,連絡担当者による事務連絡メールの転送業務が不要となるだけでなく,事務連絡メールが1日1回のサマリーメールに集約されるため,電子メール受信による業務中断時間の減少も期待できる.本論文では,ポータルシステム「Digi-ONE」に開発されたお知らせ機能について述べるとともに,その効果を考察する.

  • 土屋 雅稔, 中村 純哉, 小林 真佐大, 下條 詠司
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 73-81
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,各種業務に関わる情報システムは増加する一方である.これらの情報システムが,個別にユーザ情報を保存し,連携することなく独立にユーザ認証を行うと,利用者の利便性が低下し,安易なパスワードを利用するなどの回避策を採る傾向が強まり,情報システムのセキュリティに対して悪影響を生じる.このような悪影響を避けるため,情報システムの認証統合は重要である.同時に,ネットワーク上のセキュリティの懸念の増大に伴って,利用者と情報システムの安全な通信路の確保が必須となってきている.本論文では,認証統合および安全な通信路の確保の双方に対応したウェブホスティングサービスの構築と運用について述べる.

  • 青山 茂義, 長島 和平, 根本 貴弘
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 82-88
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    近年,AIや機械学習技術の急速な発展により,生成AI,チャットボットやAIスピーカなど,人間生活をサポートするための情報技術の進展が著しい.また,最近では,量子コンピュータの開発の進展が,更にAIや機械学習の処理性能を加速させていく情報技術の一つとして大きく期待されている.その中でも,量子アニーリングマシンは,古典コンピュータよりも組合せ最適化問題等を高速に解く量子コンピュータとして注目を浴びている.また,既に,D-Waveシステム社により実装されており,年々,着実に性能をあげて,5000量子ビット程度のものも実用化されている.大学の情報系センターにおいても,サイバーセキュリティ攻撃やインシデントの分析,ネットワークのログ分析,ネットワーク機器配置の最適化など,量子アニーリングマシンの適用により高速な分析が可能になるものが多数ある.本研究では,その中から,ユーザの問い合わせメールの分析を視野に,量子アニーリングマシンの適用可能性について検討し,その適用事例として問い合わせメール内の頻出単語間の相関を量子機械学習により分析する.

  • 亀井 仁志, 渡部 昌尚, 大野 真伯, 末廣 紀史, 最所 圭三
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 89-97
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学のハイブリッドクラウド教育基盤システムKadai-Cloud(2018)で2021年3月まで運用したMoodleを調査した結果,課題などの格納ファイル数とファイルデータ量が急増していた.そのため,シンプロビジョニング機能で作成された仮想ディスクの割り当て済み領域について,TRIM機能を用いた未使用領域の回収が必要であった.本論文は,スナップショット機能により保護されたVMにおいて,そのVMの仮想ディスクに対するTRIM機能適用について実機評価し,使用用途に応じた適用方法を明らかにした.

  • 田主 英之, 山下 晃弘, 細見 岳生, 並木 悠太, 甲斐 尚人, 松浦 かんな, 伊達 進
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 98-105
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    近年の国内外でのオープンサイエンスへの関心の高まりをうけ,大阪大学はオープンサイエンスを推進するための情報基盤として,データ集約基盤ONIONとデータ公開基盤OUKAを整備している.ONIONは拡張ストレージとして国立情報学研究所が運用するデータ管理基盤GakuNin RDMと連携している.OUKAは独自の機関リポジトリとして運用されており,ONIONを介してOUKAとGakuNin RDMと連携し研究データライフサイクルを一巡させるためには,ONIONとOUKAの連携は必要不可欠である.現在,ONIONとOUKAは機能面で連携しておらず,「保存から公開をする」という研究データ管理のプロセスが,研究者にとって負担になっている問題がある.本論文では,研究データライフサイクル構築のために研究データ管理を支える学内情報基盤であるONIONとOUKAを連携させ,研究者が安全に研究データをシームレスに公開申請できる研究データ公開申請モジュールの一つのプロトタイプを提案し,開発,実装した.この研究データ公開申請モジュールを使用し,さまざまな形式,容量のデータセットの公開申請をする動作検証を行う.

  • 竹内 寛典, 二神 杏太, 松浦 健二
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 106-111
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    HTTPヘッダに含まれるUser-Agent文字列(以下,UA)は,利用者のクライアント情報に応じた適切なコンテンツ配信など様々な用途で活用される.徳島大学においても,これを学内サービスへアクセスする脆弱なクライアント検出に利用し,サポート対象外であるOSからのアクセスを利用制限する仕組みを実現したところである.しかし,個人情報の取り扱い厳格化を背景にUA情報の更新は停止され,信頼性を失いつつある.代替技術として提案されるUA Client Hints対応は一部のブラウザに限定されており,制約されないクライアント機器を扱う国立大学法人での活用には適さない.これに依存しない新たな手段を検討する必要がある.本稿では,UA情報に依存しない脆弱なWebクライアント推測を目的として,収集可能なクライアント情報を用いて回帰分析によるOSの新旧推定を試みる.重回帰モデルを選択して推定性能を検証した結果,Windows,macOS,iOSそれぞれ80%,70%,58%の正確度でOSの新旧推定が可能であった.

  • 浅木森 浩樹, 山田 哲, 矢谷 鷹将, 末廣 紀史, 武田 啓之, 國枝 孝之, 米谷 雄介, 八重樫 理人
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 112-118
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学は,ユーザ主導により業務システムをアジャイル内製開発する取り組みを開始した.香川大学が実施した業務システムのアジャイル内製開発では,ユーザ主導で開発するシステムの要件を抽出するとともに,スクラム開発で業務システムを開発する.本論文では,ユーザ主導による香川大学の業務システムのアジャイル内製開発について述べるとともに,ユーザ主導開発,学内アジャイル内製開発の視点からそれを考察する.

  • 塩野 康徳, 志村 俊也
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 119-126
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    組織運用において,蓄積データの分析により,意思決定や業務効率化が図られている.そのためには,現状を把握し,組織全体として継続的改善に取り組むことが求められる.一方,近年のコンピュータ性能の向上と共に,自然言語処理において用いられるニューラル言語モデルの応用が注目を浴びている.組織運用分析においても,ニューラル言語モデルの利用は有効で,新しい分析結果をもたらすと考えられる.筆者らは,ファジィグラフと自然言語処理技術を用いた組織運用分析の研究を行っている.そこで本論文では,ニューラル言語モデルであるRoBERTaを利用し,tf-idfをベースとした分析結果との比較を行う.分析においては,横浜国立大学情報基盤センターで蓄積したデータを用い,分析結果としてファジィグラフによる可視化を行う.比較は,ファジィグラフを通して実施し,比較結果についても考察する.

  • 阿部 哲也, 小椋 陽太, 田中 正裕, 田中 秀幸, 鴻上 啓次朗, 今村 浩章
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 127-133
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    大学生にとって,大学からの連絡は大学生活を送る上で重要な情報である.大和大学では,従来,大学から学生への連絡方法が複数存在し,学生にとって不便な状態であった.本研究では,キャンパスDXを推進する上で障壁となっていた,連絡手段が散逸していた状態を解消すべく,大和大学の学生向けスマートフォンアプリ・ポータルサイトである「My Yamato」を構築し,その評価を行った.より多くの学生に利用してもらえるよう,我々は,My YamatoのiOS,Androidの各アプリならびにブラウザ版(https://my.yamato-u.ac.jp)を実装した.評価では,大学からの連絡の開封率の調査および運用開始から3ヶ月を経過した後の利用者の意見の調査を行った.結果,回答者の半数以上がMy Yamatoは便利であると回答した.さらに,予備調査やアンケートの結果において得られた意見に基づき,今後のMy Yamatoの展望を述べる.

  • 末廣 紀史, 武田 啓之, 小寺 賢志, 米谷 雄介, 矢谷 鷹将, 山田 哲, 浅木森 浩樹, 八重樫 理人
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 134-141
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文では,香川大学が設置した非情報系事業部門職員を対象とした「香川大学デジタルONEアンバサダー」による業務システム内製開発の取り組みについて述べるとともに,その効果について考察する.「デジタルONEアンバサダー」による業務システムの内製開発の取り組みは,DX推進組織と事業部門の連携促進に貢献していることがわかっただけでなく,「デジタルONEアンバサダー」,「DXラボ」,「DX推進研究センター」の3者によるフュージョン開発がうまく作用していることや,業務知識を有する職員による「ユーザ主導開発」に該当することもあきらかとなった.

  • 竹内 朗, 玉造 潤史
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 142-156
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    東京大学では,新型コロナウイルス感染症による授業のオンライン化を契機に,学内の情報システムへの対応が集約されたオンラインのサポート窓口が設けられ,学生スタッフが問い合わせ対応の一部を担っている.問い合わせへのメールでの回答では,回答文を作成者とは別の者が確認・修正する手順を設け,質の高い回答を心がけている.また,問い合わせ対応にあたる学生スタッフの活動では,チャットツール「Slack」を用いて複数人で協力しながら対応する,制度運営の一部を学生スタッフ自身が担うなど,高度な仕組みが構築されている.この活動は,構成員がスムーズにICTを活用できる環境を実現すること,学生がオンキャンパスジョブとして大学運営に関わることの双方から意義のある取り組みとなっている.

  • 岩瀬 雄祐, 山口 由紀子, 川瀬 友貴, 石原 正也, 嶋田 創
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 157-166
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    名古屋大学では本学構成員およびゲストユーザ向けの全学的な無線LANサービスとして名古屋大学無線ネットワーク(NUWNET)を提供している.無線アクセスポイントの更新・増設によるWi-Fi環境の改善を進めてきたが,「NUWNETが途切れる,遅い」等の問い合わせが多く,ユーザ側からの通信状態を把握するため,Raspberry Piを用いた学内向けWi-Fi環境観測システムを構築した.また,本システムは学内のプライベートネットワーク用として構築したが,学外に設置したWi-Fiセンサと学内のサーバをVPNで接続することで,学外のWi-Fi環境についても観測できることを確認した.本稿では,Raspberry Piを用いた学内向けWi-Fi環境観測システムの構築,観測データの可視化,Wi-Fi環境の調査事例に加えて,AXIES 2022におけるデモ展示と観測について報告する.

  • 佐藤 彰洋, 戸田 哲也, 和田 数字郎, 福田 豊, 中村 豊
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 167-173
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    国立大学法人において,サイバー攻撃によるセキュリティインシデントが多発している.その対策として,我々は学外公開アドレス管理システムを構築した.本システムの特徴は,学外公開,すなわち学外から到達可能なIPアドレスを付与した機器に関する情報共有と,それに対する措置として脆弱性改善と通信制御を実現したことにある.また,長期的な運用を見据え,本システムの運用に介在する人的な作業を可能な限り自動化した.具体的には,学外公開に関する申請の処理と期限の周知である.その結果,IPアドレスの学外公開が適切に管理され,本学のネットワークが高い堅牢性を確保できることを確認した.

  • 柏木 紘一
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 174-179
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    本学では2016年から学内無線LANの整備を始め,エリアの拡大やLMSの利用率向上に伴い,学内無線LANの利用者も増加した.その結果,無線接続に関するトラブルも増加したが,電波の干渉やローミングの影響と思われるトラブルの対策は困難であった.そこで,AP毎の接続数やローミング履歴を可視化できるシステムを作成して得られたデータから様々な対策を実施してきた.本論文では実施した対策と学内無線LANの冗長化について述べる.

  • 佐竹 柊路, 鈴木 彦文, 小形 真平, 岡野 浩三
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 180-190
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    情報ネットワークの設計段階において,設計者は通常,リンク障害への対策とその適否を机上で検討する.しかし,机上検討の正確さは設計者の知識と経験に依存し,一方で,実機による試験を行う場合でも機器の設定等に時間がかかる.そこで本研究は,ネットワーク設計に対するリンク障害検証を正確かつ効率的に行なえるように,リンク障害の検証支援ツールを提案する.提案ツールはネットワーク構成モデルと呼ばれる設計仕様を入力にとり,リンク障害の発生前後における各機器の状態と通信経路の挙動を自動で出力する.そして,設計者はその出力内容に基づき,リンク障害時のネットワークが設計者の意図通りに振舞うかを確認する.提案ツールの有効性評価のため,信州大学のネットワーク構成を模した広域型キャンパスネットワークの設計仕様に提案手法を適用して挙動を得る一方で,実ネットワークでも挙動を得て比較した.その結果,その挙動は互いに等価な内容であったため,提案ツールにより設計段階で実機を用いずに正確な検証結果が得られる見込みを得た.また,この設計仕様の改良過程では,提案ツールで設計の誤りを検出できたことから提案ツールが有効な見込みも得た.

  • 長田 邦男, 松村 宣顕, 長谷川 孝博
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 191-196
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    EBOT法(Elastic Box and Orthogonal Thread Method)と称するネットワーク図の描画手法を提案した.EBOT法では,箱(ネットワーク機器)には伸縮性を与え,紐(ネットワークケーブル/線分)は,可能な限り直交線分のみでネットワーク図を描画する.本法は,グラフ理論の直交グラフ描画(Orthogonal Graph Drawing)に類するが,線分の直交性を極限にまで高めた場合に,代表的な情報ネットワーク型の描画がどこまで,またどのように可能であるか,さらにはその描画に現れる情報ネットワーク上の特性を重視している.EBOT法では,ツリー構造,グリッド構造,これらのハイブリッド構造のネットワーク型を水平,垂直線分のみで描画可能であり,ネットワークの中核となる機器の視覚的な強度を高める特性を確認した.

  • 後藤 英昭, 原田 寛之, 漆谷 重雄
    原稿種別: 総説・研究論文
    2023 年 27 巻 1 号 p. 197-204
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    教育・研究機関向けの無線LANローミング基盤であるeduroamは,多くの機関で,ID・パスワードを使う形で運用されている.利用者がID・パスワードを記録しておく必要性があり,手作業での設定の負担が大きかった.一方,市民一般向けのローミング基盤であるOpenRoamingの開発と並行して,OSベンダ各社は近年,Wi-Fiプロファイルを用いたウェブベースの設定投入の仕組みを提供するようになった.これにより,WPA2 Enterpriseの無線LANでも,複雑な手順を踏まずに設定できるようになった.本研究では,主要なOSの対応状況を調査した.また,機関の情報システムに組み込んでWi-Fiプロファイルを発行できるようにするためのツールキットを開発した.このツールキットを用いると,組織のアカウントなどを用いてログイン済みのウェブサイトから,プロファイルを電子的手段で端末に流し込み,ID・パスワードレスなeduroam/OpenRoaming設定を実現できる.誤入力・設定ミスの可能性を極力排除することで,サービスの利便性と安定性の向上が期待される.

  • 前田 悠作, 浅木森 浩樹, 末廣 紀史, 武田 啓之, 亀井 仁志, 米谷 雄介, 山田 哲, 八重樫 理人
    原稿種別: レター
    2023 年 27 巻 1 号 p. 205-208
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学はローコード/ノーコードプラットフォームを用いた業務システムの内製開発に取り組んでいる.香川大学が開発した業務システムの中には多くの類似した機構が用いられているが,香川大学では開発ごとにそれら機構をすべてゼロから実装しなくてはならず,業務システム開発の生産性や保守性に問題を抱えていた.本研究では,業務システム内製開発の生産性・保守性向上に向けたシステムモジュール開発について述べる.

  • 冨田 邦宏, 浅木森 浩樹, 末廣 紀史, 山田 哲, 米谷 雄介, 八重樫 理人
    原稿種別: レター
    2023 年 27 巻 1 号 p. 209-212
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    職場における業務は特定の優秀層に集中することが報告されており,従業員間で業務の共有や共助を支援する取り組みの実施が求められている.本研究では,大学職員を対象に,従業員間(職員間)のインタラクションにより業務の共有/共助を支援するシステム「KadaTicket/カダチケット」を開発した.「KadaTicket/カダチケット」は,職員でお互いにおこなっている業務を共有し,業務の共助を促すことで円滑な業務実施を支援するシステムである.本論文では,「KadaTicket/カダチケット」の概要について述べるとともその有効性を考察する.

  • 矢谷 鷹将, 浅木森 浩樹, 末廣 紀史, 武田 啓之, 山田 哲, 米谷 雄介, 八重樫 理人
    原稿種別: レター
    2023 年 27 巻 1 号 p. 213-217
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学が実施した「業務UX調査」では,決裁業務は「①決裁文書作成フェーズ」,「②決裁フェーズ」,「③決裁結果共有フェーズ」に分類され,それぞれのフェーズを効率的かつ効果的におこなう仕組みを構築する必要があることがわかった.電子決裁システム「KadaSign/カダサイン」は,「②決裁フェーズ」における起案書の作成,及びその決裁を効率的かつ効果的におこなう仕組みを構築することを目指して内製開発された.本論文では,香川大学が実施した決裁業務を対象とした「業務UX調査」と,「業務UX調査」に基づいて内製開発された電子決裁システム「KadaSign/カダサイン」について述べる.

  • 米谷 雄介, 藤本 藍, 松永 貴輝, 末廣 紀史, 武田 啓之, 八重樫 理人
    原稿種別: レター
    2023 年 27 巻 1 号 p. 218-223
    発行日: 2023/11/27
    公開日: 2023/11/27
    ジャーナル オープンアクセス

    香川大学情報化推進統合拠点DX推進研究センターは,学生の就活状況報告システムおよび就活状況可視化ダッシュボードを開発し,香川大学創造工学部電子情報工学領域において試験運用を実施している.就活状況報告システムは,学生が就職支援担当者に就活状況の報告をおこなうための「就活状況報告機能」,就職支援担当者の間で学生の就活状況データを共有する「就活状況共有機能」を有する.就活状況可視化ダッシュボードは,就活状況報告システムにおいて蓄積される就活状況データを活用して,学生の就活状況をリアルタイムに可視化するダッシュボードである.本稿では,就活状況報告システムについて概説するとともに,就活状況可視化ダッシュボードについても述べ,その有効性について考察する.

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