日本在宅医療連合学会誌
Online ISSN : 2435-4007
4 巻, 2 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
論文
原著
  • 今永 光彦
    2023 年 4 巻 2 号 p. 1-6
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】がん死亡の自宅死亡割合と COVID-19 感染者数の関連を検証する.

    【方法】47 都道府県を対象として,主要因を令和 2 年 COVID-19 累計感染者数(人口対),アウトカムを令和 2 年がん死亡の自宅死亡割合とした.単回帰分析と,在宅療養支援診療所看取り数 / 総死亡数,高齢者人口対の病院数,訪問看護利用人数,訪問介護従事者数を交絡因子とした重回帰分析を行った.

    【結果】都道府県の COVID-19 累計感染者数とがん死亡の自宅死亡割合は,単回帰分析・重回帰分析とも有意な関連を示した.

    【結論】COVID-19 感染者数が多い都道府県では,がん死亡の自宅死亡割合が高く,在宅看取りのニーズが高い可能性がある.

  • 福元 聡史, 加藤 英樹, 杉山 万祐子, 塚原 丘美
    2023 年 4 巻 2 号 p. 7-15
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    愛知県豊田市では在宅医療に携わる管理栄養士が少ないため,在宅医療の専門職に管理栄養士の役割が理解されていない現状がある.そこで,介護職(n=15),看護職(n=8),リハビリ職(n=13)に栄養管理の重要性を伝え,管理栄養士の役割について認識を高めるための研修会を開催した.研修会前後で管理栄養士を必要とする要望が高まるか検討した.結果は全職種が栄養管理の必要性を感じているものの,自身の栄養管理に関する知識は不十分だと認識していた.また,職種によって管理栄養士に求める役割や栄養管理への関心の度合いが異なることが示された.今後は各職種のニーズに沿った研修会プログラムを検討する必要がある.

  • 久保 恭子, 坂口 由紀子
    2023 年 4 巻 2 号 p. 16-21
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    ムコ多糖症児(者)と家族の在宅酵素補充療法の可能性と課題を明らかにした.結果,在宅酵素補充療法を希望する方は全体の 66%であり,主治医の在宅診療も併せて希望していた.また,在宅酵素補充療法は通院の負担や感染リスクの軽減,社会生活と治療の両立の可能性があった.希望はあるが実施に至らないケースでは,地域医療の整備不足があった.在宅酵素補充療法を希望しない理由は,在宅酵素補充治療のイメージがわかない,副反応への対応に懸念がある,家と治療の場の線引きなどがあった.今後,在宅酵素補充療法の利点,欠点などの情報を提供することにより,この治療法の理解の促進と,希望する方が実施できるような地域医療の整備が求められる.

  • 坂本 幸恵, 表 志津子, 岡本 理恵, 髙橋 裕太朗, 池内 里美
    2023 年 4 巻 2 号 p. 22-31
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    【目的】高齢者の退院支援における地域包括ケア病棟看護師(Ns)と介護支援専門員(CM)の連携活動の実態と認識に関する特徴を明らかにすることである.

    【方法】A 県 B 市の Ns300 名,CM360 名に無記名自記式質問紙による調査を行った.

    【結果】退院支援における連携活動の必要性について,回答割合が高い項目は,Ns,CM で同じであった.実践割合が高かった項目は,Ns は「チームとしての関係性」,CM は「利用者主体の意識」であった.お互いに退院後の生活について情報共有をしたいと望んでいる一方で,専門性を説明している者の割合は低かった.それぞれの特徴を踏まえて連携活動を行うことが,円滑な退院支援につながると考える.

  • 力石 辰也, 伊藤 浩光, 淺野 友彦, 中西 博紀, 阪地 楓, 小畑 正孝
    2023 年 4 巻 2 号 p. 32-39
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    495 例の在宅療養患者を検討した.全症例(男性195 例・女性300 例)の平均年齢は 83.4±10.1 歳であった.全症例の患者生存率は,1 年75.5%,2 年65.3%,3 年54.2%であった.良性疾患患者の生存期間には,初診時年齢(HR1.056 95%CI 1.0300-1.086),性別(HR2.744 95%CI 1.849-4.073),PS(HR1.627 95%CI 1.332-1.988)の3 者が有意に予後に関連していた.患者の死亡場所は,自宅49 例(31.6%),老人施設32 例(20.6%),病院73 例(47.1%),不明1 例(0.6%)であった.

  • 舛本 祥一, 春田 淳志
    2023 年 4 巻 2 号 p. 40-48
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    在宅医が在宅患者の処方薬をどのような視点で評価し,どのような処方行動がなされていくのか明らかにするため,個人インタビューを用いた質的帰納的研究を実施した.在宅医療に従事する医師 17 名に対し,半構造化個別インタビュー調査を行い,録音データを逐語録化し,テーマ分析を行った.在宅医は,薬剤の身体的影響,患者の予後や QOL,患者・家族との関係性などを考慮しつつ,多職種とのやり取りを含めた在宅医療特有の様々な要因を考慮して,処方行動の判断を行っていることが明らかとなった.処方薬変更のプロセスの見える化,多職種間での処方行動への共通理解が進むことで,在宅医療における処方の質向上につながると期待される.

症例報告
  • 牧 貴紀, 柳橋 健
    2023 年 4 巻 2 号 p. 49-52
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    【はじめに】廃用症候群を来した患者に対し,在宅医療のための緊急退院と即日の訪問診療を開始した症例を報告する.

    【症例】81 歳の女性.前医入院中に進んだ廃用症候群の状態で当院転院となった.患者の家族は患者の状態変化について戸惑っていたが,自宅退院の希望があった.患者に経鼻酸素投与を開始した日に,自宅への緊急退院と同日からの在宅医療を開始した.患者は退院10 日目に永眠したが,ご家族の満足度は高かった.

    【考察】在宅医療を開始する際には環境調整に日時を要することが多いが,患者の状態によっては,すみやかに在宅医療へと移行することが望まれるケースもある.その為には,平素からの多職種間の密な連携も必要である.

活動報告
  • 角屋 桜雪, 望月 弘彦
    2023 年 4 巻 2 号 p. 53-56
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/05/13
    ジャーナル フリー

    災害時を想定し限られた食材,調理器具を用いて嚥下調整食の調整を行うことを目的とした.使用食材は国からの支援物資などを参考に 7 品目を選定,調理はカセットコンロやポリ袋等を用い,「日本摂食嚥下リハビリテーション学会嚥下調整食分類 2021」記載の嚥下調整食 3 の基準に適合するよう調整を行った.完成した嚥下調整食はクリープメータによる物性測定を行い,その妥当性を検討した.物性測定の結果,調整したほとんどの食材は基準に適合した.不適合の食品は温度変化による物性変化が原因であり,提供時には注意しなければならない.今後災害時に適切な食支援を行うためには今回のような検討を重ね,災害時における摂食・嚥下困難者への食支援体制を確立していく必要がある.

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