石油産業における新開地としてのメカニカルアースモデルと統合的なジオメカニクスの取り組み方について
ニコライスミルノフ
ジオメカニクス(岩石の変形および破壊に関する研究)は各国の石油業界において広い認識を得ており,ジオメカニクスモデリングは油田作業において開発から貯留層管理に至るまで,多大な経済利益をもたらしている。ジオメカニクスの応用による価値の創出において最も重要な点は,メカニカルアースモデル(MEM)を目的にかなったソフトウエアや複数の専門分野でのチームワークならびに知識管理にリンクさせるフィードバック手法にある。
MEMとは,フィールドにおける特定の層位部分の岩石の機械的性質や応力状態を数値的に表したものである。MEMは,間隙水圧予測,掘削時の構成の安定性,出砂の始まりの予測,パーフォレーションおよび仕上げ用水圧破砕デザインなど多数の油田作業への応用のみならず,貯留層圧縮および沈下の予測,水およびガス注入,貯留層の性質,断層の安定性および誘発地震,貯留層管理における地下貯蔵/廃棄などの仕上げデザインヘも応用が可能である。
MEMの複雑さと予測可能性は,新たなデータを導入することによって進化させることができる。最初の試掘井の掘削が開始される前には,すべてのジオメカニクスの情報は,岩石物理学に基づいたモデルや地震データ,あるいは企業の知識共有システムにより取得した地理学的類似物などより取得される。掘削開始前のMEMには,3Dでの構造的枠組みモデル,シャローウォーターの危険分析および間隙水圧や地層破壊圧の傾向予測なども含まれ,これらの基礎的なMEMは,坑井費用の概算あるいは作業時のリスク予測のための掘削シミュレーションを行うのには十分である。しかし,いったん最初の坑井の掘削を開始すれば,MEMの適応範囲を修正あるいは拡張し,またTDへの坑跡に沿った完全にキャリブレートされたMEMを得ることができる。さらに,最初の3ないし4本の掘削井のデータおよび情報を取り込んだ後,そのモデルをキャリブレートされた3DMEMに発展させることも可能である。データを取得していくにしたがって,3D MEMの予測能力がさらに向上し,これによってよりよい坑井計画と貯留層管理を実現することができる。以上の過程で核となる4大要素は,データチェック,MEM,閉ループシステムによるフィードバック手法,そして油田のライフサイクルにわたってこれらの工程の実行をサポートするソフトウエアである。
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