新型コロナウイルスに対する感染拡大防止のための非薬学的介入政策の一つとして,中国・欧州などいくつかの国では移動制限政策が行われてきた.この移動制限政策の内容の決定において問題として挙げられるのが,「経済ダメージの抑制」と「感染の抑制」のトレードオフである.Bodenstein et al.(2020)は,感染症数理モデル(SIRモデル)と経済への影響を予測するマクロ経済モデルを組み合わせて分析することにより,社会的距離政策が感染者数と経済へ与える影響を検証している.本研究では,2地域間の流出入率の違いにおける移動制限政策の感染者数及び経済ダメージへの影響を明らかにするために,Bodenstein et al.(2020)のモデル(1地域のモデル)を2地域のモデルに拡張した.具体的には,両地域間の移動を制限する政策が経済及び感染状況へ与える影響をシミュレーションを用いて分析し,経済ダメージ及び感染者数の抑制の双方をある程度勘案した移動制限率を検証した.