ジオシンセティックス論文集
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19 巻
選択された号の論文の44件中1~44を表示しています
  • 性能表示された土のう(ソルパック)の活用
    松岡 元
    2004 年 19 巻 p. 1-5
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    土を完全に包み込むことが最も確実な地盤の補強法であるとの考えに到達し、世の中には「土のう」と呼ばれるものが昔からあることに気付いてから早や十年ほどになる。「土のう」と聞くと、何をいまさらという思いを誰しも持たれると思うが、これが仲々理にかなっている。ここでは、「土のう」一体化工法(ソルパック工法)の発想と原理について説明し、“何をいまさら「土のう」か?”という疑問に答えていく。例えば、「土のう」の強度がコンクリート強度の約1/10もある理由についてわかりやすく説明する。また、地盤の支持力増強だけではなく、地盤の振動低減、凍上防止にも有効であることも説明する。さらに、「土のう」による軟弱地盤の支持力補強、「土のう」積み擁壁などの施工例を紹介する。
  • 篠田 昌弘, 米澤 豊司, Richard J. BATHURST
    2004 年 19 巻 p. 7-14
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    補強土壁構造物における土や補強材などの力学的特性は,潜在的ばらつきを有している.これを定量的に評価することは設計上,重要な課題の一つである.しかしながら,従来の安全率を用いた設計法では,構造物がどの程度安全か把握しにくく,定量的な判断が難しい.設計用値のばらつきを考慮できる信頼性解析により,北米の設計基準式を用いて壁高を変えた補強土壁構造物の常時および地震時の滑動モードと転倒モードについて検討を行った.解析の結果,荷重条件によらずに単位体積重量の感度は相対的に低いことが分かった.また,地震時荷重条件下では,内部摩擦角の平均値および変動係数が安全性指標に与える影響は大きく,適切に考慮する必要があることが分かった.
  • 宮田 喜壽, 小野寺 誠一, 石原 雅規, 福田 直三, 中根 淳, 間 昭徳
    2004 年 19 巻 p. 15-20
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    限界状態設計フォーマットで記述された英国,香港,北欧の補強土壁の設計法を調査し,その内容を比較した.わが国の設計法が限界状態設計法にスムーズに移行するための課題について検討した.本文では,今回調査した3つの設計法の概要を説明し,それらを,適用範囲,考慮する終局限界状態と使用限界状態,部分安全係数について比較した後,限界状態設計法に移行するための課題について考察する.これらの成果は,わが国のジオシンセティックス補強土壁の限界状態設計法の確立に寄与する.
  • 河村 隆, 梅崎 健夫
    2004 年 19 巻 p. 21-28
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強土壁を模擬したせん断試験の結果を補強材と土との相対変位に着目して再整理することにより,ジオグリッド補強土におけるせん断強度の増加のメカニズムについて再検討した.ジオグリッド補強土のせん断強度の増加は,補強材の引張り力に起因する増加とすべり面上の垂直応力の増加に起因する増加の2つの和として評価できることが示されている.本論文では,すべり面上の垂直応力の増加は補強材がすべり面に発生するダイレイタンシーを拘束することに起因することよりも補強材の引抜きに起因することが支配的であると解釈されることを示した.そして,ジオグリッド補強土のせん断強度における拘束効果パラメータを引抜き試験の結果に基づいて決定することの妥当性について考察した.
  • 村上 哲, 安原 一哉, 小峯 秀雄, 佐藤 匠
    2004 年 19 巻 p. 29-34
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオシンセテッィクスの1つである発泡ウレタンの内部構造は、その作製過程において気泡部が鉛直方向に伸びるため、水平面内等方性である構造的な異方性を有する地盤材料である.この構造異方性は材料の力学的異方性に影響を与えることが予想される.本研究では、発泡ウレタンから縦・横の2方向から切出した供試体に対する一軸圧縮試験により強度・剛性の異方性を評価した.次に、この異方性が水平土圧に与える影響を調べるために、模型試験による結果と、力学モデルを等方弾性モデルと異方弾性モデルの2種類を用いた有限要素解析結果との比較により検討した.その結果より発泡ウレタンの力学的異方性を考慮する必要性を明らかにした.
  • 宮田 喜壽, 末次 大輔, 近藤 誠二, 今川 圭太郎
    2004 年 19 巻 p. 35-38
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックスに砂質土を充填し植生を行う侵食防止工法について検討した.土を充填する際の締固め条件の影響について室内試験を実施した.ジオシンセティックスへの土の充填特性を表す物理量を定義し,一連の実験結果を整理した.その結果,含水比と締固めエネルギーの大きさが充填特性に及ぼす影響を明らかにすることができた.そして,施工管理の確立に有益な知見を得ることができた.
  • 前田 英史, 梅田 明宏, 高田 保彦, 神田 佳一, 八嶋 厚
    2004 年 19 巻 p. 39-46
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    従来,河川護岸工や護床工として鉄線製ふとん篭が広く使用されているが,近年になってラッセル網や無結節網を使用したジオテキスタイル製ふとん篭の使用が急速に増加している.しかし,その変形や破壊のメカニズム,設計手法に関しては,未解明な部分が多い.
    本研究の目的は,ジオテキスタイル製ふとん篭を使用した種々の工種において,水路実験やモデル実験,実河川における経時計測を行うことにより,その変形,破壊および水理特性を検証するとともに,未確定の設計法(案)を提案するものである.
    本論では,これらを解明するための第一歩として,各種実験結果を中心に報告する.
  • 糸久 智, 鶴田 浩一, 吉川 正, 吉田 健太郎, 八木 伊三郎, 柴田 健一
    2004 年 19 巻 p. 47-52
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    シールドトンネルの発進到達立坑において、地下連続壁(連壁)にCFRP(炭素繊維強化プラスチック)やガラス繊維強化発泡ウレタン等の繊維で強化された構造体を取付けることによって、シールド掘削機が切削しながら通過できる工法が開発され、徐々に広まってきている。
    しかしながら、切削時の屑による配管の詰り、繊維強化構造体の強度設計など、まだ課題が多く残されている。
    筆者らは、以前より袋杭の開発など、繊維で強化されたコンクリート製の切削可能構造体について研究してきた。本論文では、その延長線上で開発したガラス繊維強化樹脂を用いた切削可能構造体に要求される、強度,切削性といった基本性能について述べる。
  • 弘中 淳市, 平井 貴雄, 高羽 泰久, 寺川 秀人, 福田 光治, 水原 勝由
    2004 年 19 巻 p. 53-58
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    物流・防災上の観点から増深あるいは改修が行われてきている岸壁を安価で耐震性の高いものとするため,自立式矢板岸壁の背面に充填した固化処理土をジオシンセティックスにより一体化させた構造を提案し,模型実験によりその効果を確認した.本論文では模型実験結果を踏まえて,設計手法の骨組みを検討するために,(1) 表層支持力,(2) 弾性支承上の梁モデル,(3) 鉛直方向クラックモデルにおける極限破壊モードを考慮して概略的な強度推定式を提案した.このうち試験結果と提案式の比較結果から鉛直方向クラックモデルによって模型実験結果のうち最大載荷重を概略的に推定できることを示した.またこれらの式は補強した固化処理土の内的安定に適用されることを示す.
  • 河端 俊典, 澤田 豊, 内田 一徳, 平井 貴雄, 斉藤 喜久雄
    2004 年 19 巻 p. 59-64
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッドを用いたスラスト防護工法の有効性を明らかにするために,従来工法であるコンクリートブロックを模擬した矩形断面を有する模型ならびにジオグリッドを用いたスラスト防護工法を設置した∅90の模型パイブを対象として,乾燥砂地盤内で横引き実験を行い,その挙動特性について検討した.その結果,パイプ後方に籠状にジオグリッドを設置する工法が極めてスラスト防護に有効であることが明らかになった.また,土被りを変化させた実験結果から,ジオグリッドによる増加抵抗力に関して,籠状領域の上下面引抜き抵抗に基づく設計のモデル化を行い,増加抵抗力の算定式を提案した.
  • 秉崎 和孝, 中村 圭一, 瀬下 孝雄, 長谷川 真吾
    2004 年 19 巻 p. 65-70
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    強靭な筒状の織物(ジャケット)を用い、ジャケット内に自硬性流体を充填することにより、従来にない形態のジオシンセティックス材料を地山補強材として用いた「拡大鉄筋補強土工法」を開発した。
    狭隘な場所における地山補強では鉄筋補強土工法が主に用いられている。しかし、関東ローム層のような粘性土で軟弱な土質条件の場合、従来工法では地盤と注入材との周面摩擦抵抗が小さくなり、十分な引抜き耐力を得ることが出来ない。そこで、ポリエステル繊維製のジャケットに鉄筋を組み込んだものを地盤に挿入、ジャケット内にモルタルを圧入し、周面摩擦抵抗の大きい地山補強材を造成する工法を考案した。
    本論文は、地山補強材として最適な袋体形状を決定するため、モデル地盤における引抜き試験を実施して検討したものである。また、地盤を圧密することの影響についても引抜き試験結果をもとに考察する。
  • 北沢 淳史, 木村 裕俊, 中村 純治, 熊谷 浩二
    2004 年 19 巻 p. 71-76
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    東北新幹線八甲田トンネル梨ノ木工区(4,600m)には,硫黄化合物に富む層が多く出現する.掘削ずりに含まれる硫黄化合物は,気中に放置されると,酸素と水などの作用により酸性化し,酸性水が発生する.このため,管理型土捨場として盛り立てた掘削ずりを,遮水シートでくるむ処理を行っている.また,浸出水処理のため貯留槽を設置している.この貯留槽に,国内で使用実績の少ないフローティングカバーを使用した事例を述べる.
  • 小俣 富士夫, 竹村 浩志, 山本 晴彦, 梅沢 俊雄, 高橋 松善, 森 充広, 長束 勇
    2004 年 19 巻 p. 77-80
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    コンクリート水路の漏水は水路管理者にとって重要な問題であり,その抜本的な解決策が求められている.特に,コンクリートブロック積みの水路では,十分な止水性能,耐久性能を有する工法が確立されていないのが現状である.そこで,フレキシブルなジオメンブレンをコンクリートブロック製水路表面に設置することによって漏水を防止する面的な補修工法を新たに開発した.本工法は,ジオメンブレンをスポット的に定着し,底盤部に逆止弁を用いることによって,コンクリートブロックから生じる背面水を円滑に排除することが可能であり,施工後,ジオメンブレン表面に背面水によるふくれなどの変状が生じないことが大きな特長である.本報では,近畿地方の農業用水路で行った試験施工の概要とその結果を報告する.
  • 小竹 望, 北出 圭介, 鶴ヶ崎 和博, 馬場 慎太郎, 西野 好夫, 徳渕 克正
    2004 年 19 巻 p. 81-86
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    管理型廃棄物海面処分場の護岸背面に敷設される遮水シートには,被覆層の自重による滑動力,潮汐,温度変化などの作用によりひずみが発生すると考えられる.しかし,実際に海面処分場の遮水シートに発生するひずみを計測した例がないため,遮水シートを用いた表面遮水工の構造的な安全性評価や力学的設計が難しい状況にある.本研究では,管理型廃棄物海面処分場を築造する工事において,被覆層施工段階における遮水シート発生ひずみをひずみゲージを用いて計測した.その経時変化から,被覆層の投入位置・順序,潮汐,温度変化などがひずみに与える影響を把握した.また,実測と同様な条件の供試体に関する引張試験から得られたひずみゲージ計測ひずみと計測対象ひずみの関係を評価して,実際の遮水シートの発生ひずみ量について考察した.
  • 井上 幸一, 中山 裕文, 小宮 哲平, 島岡 隆行
    2004 年 19 巻 p. 87-92
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    埋立地遮水シートの劣化状況の非破壊試験法を開発するため、著者らは可視近赤外分光法の適用を検討してきた。これまでの研究から、薬品浸漬により劣化した遮水シートの分光反射率は、ある波長帯において特異的に変化していること、その変化率とシートの引張強さ、伸び、重量等の変化量に相関があることを示した。しかし、これまでの研究では、遮水シートの両面を薬品に浸漬させていたため、現実には起こりえない条件設定であった。また、シート劣化の判断指標として分光反射率の変化率を用いていたが、この場合、サンプルごとのばらつきが大きい等の課題が残されていた。そこで本研究では、遮水シートの片面浸漬試験を行い、そのサンプルを用いて再度、可視近赤外分光法の有効性を確認した。また、反射スペクトルの二次微分スペクトルを用いた重回帰分析による推定式の構築を行った。
  • 北沢 淳史, 熊谷 浩二, 藤橋 一彦, 前田 泰男, 小笠原 登貴雄, 篠川 俊夫
    2004 年 19 巻 p. 93-98
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場に用いられるジオメンブレンは,不等沈下や覆土の施工等に伴って変形して引張ひずみが生じる.このようなジオメンブレンの挙動を把握するためにひずみの計測が行われる.しかしながら,ひずみゲージによる計測ではゲージを貼った点でのひずみしか測定できないという大きな制約条件があり,ジオメンブレンの挙動を線的・面的に捉えることが難しい.そこで,線的・面的な計測が可能な光ファイバセンシングを用いて覆土の施工中や供用中にジオメンブレンに発生するひずみを把握することを試みた.本論文では,基礎実験として単純引張状態におけるジオメンブレンのひずみをBOTDR方式と呼ばれる光ファイバセンシングで測定し,ジオメンブレンの伸びに対する光ファイバセンシングの線形な追従性が認められた.
  • 狩野 真吾, 近藤 三樹郎, 小田 勝也
    2004 年 19 巻 p. 99-104
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    遮水シートを有する廃棄物海面処分場遮水工において,敷設面の空隙化によって膨張変形する遮水シートの変形破断挙動を明らかにするため,遮水シートの水圧膨張実験を行った.遮水シートは廃棄物海面処分場遮水工に多く施工されるPVCシートを使用した.実験では,水温および初期厚さを変化させ,さらに膨張変形中のひずみを計測することにより,遮水シートの変形破断挙動について検討を行った.また,実験で得られた水圧,膨張変位を換算することにより応力-ひずみ曲線を作成し,一軸引張試験における破断時性能と比較した.さらに,ひずみの計算値と計測値とを比較することにより,ひずみの計算手法の妥当性および計算結果の有効性について検討した.
  • 赤井 智幸, 松本 哲, 石田 正利, 横山 美憲, 渡部 直人, 松下 正樹, 川原 在博, 近藤 誠二, 深沢 健, 小竹 望, 太田 ...
    2004 年 19 巻 p. 105-108
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場の表面遮水工に遮水シートと保護マットを使用する場合、斜面部分では遮水シートと保護マットとの界面がすべり面になることが考えられる。このようなすべりに対する安定性検討に際しては、遮水シートと保護マットとの摩擦特性が重要な要素となる。そこで、代表的なPVC、LLDPE、TPO-PPの3種類の遮水シートに関し、不織布との一面せん断試験を海面処分場を想定して水浸状態で実施し、気中での試験結果と比較しつつ、それらの摩擦特性について検討した。その結果、それらの摩擦特性は不織布の表裏で差があり、LLDPEに対してはその差が顕著になる。また、気中と水浸状態での摩擦特性の違いは小さく、水浸状態における摩擦係数はPVC>TPO-PP>LLDPEの順である。しかし、LLDPEも表面粗度を高めることでPVCと同等の摩擦係数が得られることがわかった。
  • 李 海勲, 嘉門 雅史, 赤井 智幸
    2004 年 19 巻 p. 109-112
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場の遮水工としてジオメンブレンが多用されている.最近の研究によると揮発性有機化合物(VOCs)が遮水シートとして用いたジオメンブレンを通過して,周囲の地盤や地下水を汚染させるおそれがあることを直接的に測定した結果が報告されている.本研究では,このようなVOCsの影響によるジオメンブレンの耐久性や力学的特性の変化を検討することを目的として,4種類のVOCsに対して主なジオメンブレンの浸漬試験を行った.その結果から最も浸透量が多かったトリクロロエチレン(TCE)の影響による各ジオメンブレンの力学特性の変化を引張試験および貫入試験により評価を行った.結果として高密度ポリエチレンシート(HDPE)の引張強度の低下が確認された.またその貫入抵抗値の変化を明らかにし,今後の処分場や汚染土封じ込め設計におけるジオメンブレンの適用において有効な遮水システムの条件を提案するものである.
  • 原田 高志, 今泉 繁良, 西崎 到, 高橋 雅人, 柏木 哲也
    2004 年 19 巻 p. 113-120
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場の遮水材として適用されている遮水シートは、高分子材料であり、様々な環境負荷により劣化していくが、中でも紫外線の影響が大きいことが知られている。筆者らは昨年度、約10年間に及ぶ実暴露実験による遮水シートの劣化状況を報告し残存寿命が十分あることを報告した。しかし実暴露試料の表面部では劣化が観察されており、今回、劣化状況の解析を更に進めるとともに、促進暴露試験にて遮光性保護材の有無による遮水シートの特性変化を比較し、あわせて廃棄物最終処分場において10年間遮光性保護され使用された遮水シートを採取し評価を行い、遮光性保護材による延命効果を確認した。
  • 李 明飛, 許 四法, 今泉 繁良
    2004 年 19 巻 p. 121-126
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場に敷設される遮水シートに作用するさまざまな応力(張力)の大きさを評価することは遮水工の設計上非常に重要である.特に,廃棄物の埋め立て進行に伴う法面に設置された遮水シートの固定部に生じる張力は重要と考える.本研究では,廃棄物の埋め立て進行に伴う遮水シート固定部張力の変化について,遠心模型実験と有限要素法による解析を行った.その結果,固定部張力は埋立て深さにほぼ比例して増大することが明らかになった。また,遮水シートの弾性係数が遮水シート固定部に生じる張力の大きさに与える影響も明らかとなった.
  • 遠藤 和人, 岡田 朋子, 水野 克巳, 本郷 隆夫, 西垣 誠, 嘉門 雅史
    2004 年 19 巻 p. 127-132
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    山間谷部の最終処分場においては処分場基盤の形状が複雑であり,すり鉢状に建設される遮水工への負担が大きくなる。遮水工の品質モニタリングでは,底部遮水工の温度,有効応力,浸出水水位,地下水水位などの遮水シートに与える環境ストレスを適確に捉えることが重要である。旭川市廃棄物最終処分場において供用開始から約2年間の品質モニタリングを行い,遮水シートへの環境ストレスデータを調査した。遮水工への温度の影響も無く,遮水工場部の水平排水層が遮水工への負荷(動水勾配)を軽減していることがモニタリングされた。地下水水質モニタリングを同時に行うことで,遮水工の健全性もモニタリングできる。
  • 柴 錦春, 三浦 哲彦, 野村 忠明, 米谷 宏史
    2004 年 19 巻 p. 133-138
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    真空圧密の効果は地盤の排水条件によって異なる。両面排水条件の地盤では、底面の排水砂層に真空圧をかけると、圧密促進効果は片面(地表)排水の場合より小さくなる。また、真空圧密では地盤中の側方変位は改良領域内に向かうが、盛土載荷では外向けとなる。真空圧密では、ジオシンセティックスドレーン(GD)を併用することが多い。GDの最適打設深度を計算によって求めるために、両面排水地盤を対象に、圧密沈下量を最大とする条件で式を提案した。また、軟弱地盤中に中間砂層が存在する場合、砂層の影響で真空圧の効果が低下しないように砂層部分のGDに不透気シールを付ける方法がある。本論文では、中間砂層部のGDにシールの最適長さを決定する式も導いた。さらに、佐賀の地盤状況を想定して、GDの打設深度及び中間砂層の影響を有限要素解析で検討した。
  • 安原 一哉, 榊原 務, 村上 哲, 小峯 秀雄, Chandan GHOSH
    2004 年 19 巻 p. 139-146
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックス(GS)を巧みに利用することによって不安定な粘性土でも安定した土構造物として利用でき,また基礎地盤として機能を果たすことが出来るようになって来た.このような目的のために不織布あるいは複合不織布を用いて土構造物や基礎地盤の機能を維持していくために解決しなければならない課題の一つが目詰まり(クロッギング,Clogging)の防止や低減である.このことを達成するひとつの方法として,ジオシンセティックスの上下に砂のような粒状層を設けることによって,このクロッギングを防止あるいは低減させる方法を提案し,その有効性に関する基礎的検討を室内試験において続けてきた.その結果,薄い砂層の間にGSをサンドイッチ状に挟むことによってクロッギングの低減は勿論のこと,地盤としての支持力も剛性も著しく改善できることが分った.加えて,GSによるサンドイッチ構造は,土構造物や基礎地盤を粘り強いもの(靭性のあるもの)にも改善できることを明らかにした.さらに、適当な粒状土を選ぶことによって,汚染土の浄化などの新たな機能を付与できる可能性を示唆した.
  • C. GHOSH, K. YASUHARA, H. KOMINE, T. KONAMI, Y. KUDO
    2004 年 19 巻 p. 147-152
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本文は6種類の不織布(NGS)の目詰まり低減のために超音波(USW)を適用した実験的検討結果を報告したものである.目詰まりしたGSはスラリー状の2種類の粘性土中にサンドイッチ状に敷設されたものを一次元圧密した後に取り出したものである.液体溶媒中の、一種の“冷却沸騰”あるいは“キャビテーション”におけるUSWと微小気泡のクロッギング低減のメカニズムの説明が試みられた.USW洗浄前と後のNGSの排水性能(鉛直方向透水性能と水平方向通水性能)を調べた結果、(1)短時間のUSW洗浄によって目詰まりは80%以上回復できること、(2)ひどく目詰まりしたNGSでもUSW洗浄によって効果的に細粒分が除去でき、その結果排水性能が回復できることが明らかになった.
  • 今野 雄太, 峯岸 邦夫, 巻内 勝彦
    2004 年 19 巻 p. 153-160
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年,建設工事による産業廃棄物としての汚染土が増加し,それに伴い対策工法も多様化している。
    そこで,本来廃棄処理する建設発生土を盛土材等の建設材料に転用するために行う土壌浄化改良工法として,ジオテキスタイルをドレーン材として使用し,その浄化効果を排水補強効果とともに評価・検討した。
    本研究では,試料土に関東ロームと東金産山砂,川砂を使用し,汚染土とジオドレーン材による室内土槽モデル試験を行い,粒径,上載荷重,ドレーン材の敷設枚数,敷設条件,試料土の種類,汚染物質の種類,水頭等の諸条件を変化させ,着実な効果予測,より高い汚染除去能力を持つ,諸条件の組み合わせを見出すための基礎的実験を行い考察した。
  • 伊藤 秀行, 齊籐 知哉
    2004 年 19 巻 p. 161-166
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    筆者らが開発を進めてきた改良土(短繊維混合安定処理土)とジオグリッドを組み合わせた補強土壁に関しては,既に本シンポジウムおよびジオシンセティクス技術情報誌でも何回か技術的検討内容について発表しており,施工実績も20例を越えた.そこで今回は特徴的な施工事例を紹介するとともに,原位置において各種計測を行ったデータならびに原位置で行った改良土中のジオグリッドの引張り試験等について報告する.
  • 堀川 明広, 川中 徹人, 北本 幸義, 吉田 輝, 坂梨 利男
    2004 年 19 巻 p. 167-174
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    保安林解除協議の過程で設置が義務付けられた防災調整池を施工するにあたり,用地を確保するために,高さ約20m,勾配1:0.3のジオグリッドによる大規模な補強土壁工法(総敷設面積約16万m2)が採用されたが,施工期間は約3ヵ月と急速であり,補強土壁の安定性の低下,沈下など変形の増大が懸念された.
    そこで,動態観測を行い,施工段階で得られる情報によって盛土の安定管理に適用するとともに,将来の予測管理に供した.本報文は,急速施工を行った大規模補強土壁の施工実績及び補強土壁の変位計測結果について報告するものである.
  • 天野 正道, 若井 明彦, 飯塚 豊, 松岡 哲治, 五味渕 裕一
    2004 年 19 巻 p. 175-182
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    高密度ポリエチレン(HDPE)製のジオグリッドの破断伸びは,空気中で15~20%と大きなじん性を有しているため,補強土壁の変形の追随に適している.拘束圧を受けたときの不織物の引張ひずみは拘束の無い状態より小さく,引張強度は大きいという報告があるが,実盛土のジオグリッドの破断部分のひずみそのものの計測は,技術的に困難である.ジオグリッド破断時に壁面変位が数%以上まで変位するような柔な構造物では,破断ひずみにある程度の余裕を保っている方が安全であると考えられる.ここではHDPE製ジオグリッドを用いた補強土壁の信頼性について検証するため,高さ10m規模の盛土の挙動と計測,補強盛土破壊試験,大規模地震動対応シミュレーションを実施したので,報告する.
  • 井澤 淳, 岡野 幸輔, 桑野 二郎
    2004 年 19 巻 p. 183-190
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強土壁の地震時の変形を考慮する際,補強材の特性,地盤材料の特性だけでなく,外力である入力地震動による影響についても考慮する必要がある.そこで本研究では補強土壁に正弦波や不規則波などを入力する遠心振動台実験を行い,その変形挙動について考察した.また,一波目から大規模な地震を入力した実験(一定加振実験)も行い,段階加振実験との比較を行った.その結果,補強土壁の残留変形は,主働方向にある一定以上の慣性力を受けた場合に生じること,段階加振と一定加振では変形モードから異なってくることなどが分かった.
  • 斉藤 知哉, 伊藤 秀行, 井澤 淳, 安井 一浩, 桑野 二郎
    2004 年 19 巻 p. 191-196
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    筆者らは、補強土壁の壁面パネル側(パネル背面から設計により決まる範囲)に改良土を配置し、ジオグリッドと組み合わせる新しいタイプの補強土工法(図-1)の開発を進め、要素・模型・施工実験より安定性を、遠心振動台実験からは非常に高い耐震性能を有していることを確認してきた。また、施工事例も20例を越え、どの事例も安定に供用されている。そこで、本工法が安定でかつよりコストダウンを図る目的で、改良土幅を狭めること、ジオグリッドの敷設長を短くすることに着目して、遠心模型振動台実験を行った。その結果、改良土幅を狭めても安定性を損なうことがなく有効的であったことから、その結果について報告する。
  • 古関 潤一, 渡辺 健治
    2004 年 19 巻 p. 197-204
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    既往の重力場での模型振動実験結果の分析を行った.重力式擁壁では1サイクル中で水平土圧合力が低いときに擁壁上端変位が増加するのに対して,補強土擁壁では水平土圧合力が高いときに上端変位が増加する.中程度の加振レベル以降では,擁壁の上端および下端のそれぞれにおける変位と応答加速度の関係にも,擁壁の形式による顕著な違いが見られる.高い加振レベルにおいては,重力式擁壁では上端変位が増加すると応答加速度が反転しても変位がそのまま累積するのに対して,補強土擁壁では応答加速度が反転すると変位がある程度回復する粘り強い挙動が見られる.これらの違いの理由として,変位メカニズムが異なることが考えられる.
  • 重久 伸一, 宮田 喜壽, 末次 大輔, 落合 英俊
    2004 年 19 巻 p. 205-210
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    高い要求性能を確保する場合や建設発生土を有効活用することを目的として,安定処理を併用した補強土工法を適用する例が増えてきている.本研究では,ジオテキスタイルを用いた補強と高度安定処理の併用による高含水比土の圧縮性の改善効果について室内試験を実施して調べた.具体的には,CBRモールド中に,固化材の添加量を変化させて作製した高度安定処理土と補強材を一層配置した供試体に対し圧縮試験を実施した.その結果,ジオテキスタイルの併用によって,高度安定処理土の圧縮性が改善でき,固化材の使用量が削減できることを明らかにした.また,補強材タイプの影響についても調べ,スチールグリッドでは全く補強効果がないことも明らかにした.
  • 平川 大貴, 龍岡 文夫
    2004 年 19 巻 p. 211-216
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    剛で一体な壁面を持つジオテキスタイル補強土擁壁模型を作成し、天端での模型基礎の鉛直載荷に伴う基礎の沈下特性と壁面土圧~補強材張力~擁壁水平変位挙動を検討した。その結果、補強土擁壁の鉛直・水平方向の変形特性には、以下の3つの基本メカニズムが含まれていることが確認された;1)基礎の支持力問題としての天端の沈下とそれに伴い背面盛土が側方に広がる変形、2)擁壁の安定問題としての背面盛土の破壊接近度に応じて生じる変形、3)盛土と補強材との相互作用。3)に関しては、「盛土材よりも高い剛性を持ち、変形成分のうち弾性変形要因が占める割合が盛土よりも著しく大きい補強材」と「非弾性的で粘性と塑性のために初期載荷の変形の大部分が非可逆変形である盛土材」との相互作用により、静的持続荷重の下で安定している状態では壁面土圧と補強材張力は時間経過に伴って減少することが明らかになった。
  • 金重 正浩, 落合 英俊, 安福 規之, 河村 隆
    2004 年 19 巻 p. 217-224
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年、公共事業費削減が求められる中で、ジオグリッド補強土工法における拘束効果を考慮したより合理的な設計法の確立が強く望まれている。拘束効果を、補強材を敷設することで地盤の自由な変形を拘束し見掛け上拘束圧を増加させる効果と考え、補強材の形状などに依存する拘束効果パラメータを用いて評価している。現在、地盤物性値と拘束効果パラメータを適切に関連付けるために検討している。本研究では拘束効果パラメータを限界状態における内部摩擦角とダイレタンシー角の関数として表し、拘束効果パラメータを求めるための一つの考え方を示す。また、補強土を対象にした二軸圧縮試験から実験的に拘束効果パラメータを求め、ここで提案する方法による結果と比較し、提案する方法の妥当性を示す。
  • 久保 哲也, 巻内 勝彦, 峯岸 邦夫
    2004 年 19 巻 p. 225-230
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオグリッドを用いた補強土壁工法は,柔な構造特性を有している.したがって重力式やL型といったコンクリート擁壁と比較した場合,大きな支持力を必要としない.また,近年,土地の有効利用などで,軟弱地盤などの不安定な地盤に盛土を構築することが増加している.しかし,使用する盛土材が粘性土やロームといった摩擦を確保できない材料の場合も多い.そこで筆者らは軽量粒状体である発泡廃ガラス(リサイクル材料)を地盤材料に混合することで,盛土の軽量化(軽量土)やせん断抵抗角の増加が期待できると考えた.本研究では,発泡廃ガラスの混合率を変化させることで,土質定数やジオグリッドとの摩擦抵抗に及ぼす影響について確認した.実験では,発泡廃ガラスの配合比が増加することで,せん断抵抗角も増加することが確認できた.また,ジオグリッドと発泡廃ガラス混合軽量盛土材料との摩擦抵抗は,十分発揮されることが確認できた.
  • 弘中 淳市, 平井 貴雄, 大谷 順
    2004 年 19 巻 p. 231-236
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    近年、ジオグリッドなどの補強材を用いた補強土工法は広く適用され、用いられる補強材の形状や盛土材など、その諸条件は様々である。しかし、土中でのジオグリッドによる補強効果は、その適用条件によって大きく影響してくると考えられるが、これらの違いによる土とジオグリッドの相互作用挙動は未だ解明されていない部分がある。本研究では、X線CTスキャナを用いて、引抜き過程における供試体内部を非破壊かつ3次元的に可視化し、内部挙動を定量的に評価することを目標とする。実験では、様々な形状の補強材、補強材の敷設間隔および細粒分含有率を変化させた土中を対象に引抜き実験を行い、その効果の違いについて検討するものである。
  • W. Kongkitkul, M. S. A. Siddiquee, 平川 大貴, 龍岡 文夫
    2004 年 19 巻 p. 237-244
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    これまでの多くの研究によると、高分子ジオグリッド自身も砂自身と同様に著しい粘性を持っている。ジオグリッドと砂の粘性の相互作用によってジオグリッドで補強された砂も著しい粘性変形を示すが、その現象は著しく複雑であり、そのメカニズムは実験的研究だけでは解明できない。本論文では、砂の粘性を正確に表現できる非線形三要素法をジオグリッドにも適用し、砂とジオグリッドの粘性を弾塑性FEMに組み込んで、ジオグリッド自身の引張り試験、及び砂とジオグリッドで補強された砂の平面ひずみ圧縮試験の結果を数値解析している。実測された粘性挙動は正確に再現されている。また、一定の鉛直持続荷重を受ける砂の内部に水平に配置されたジオグリッド補強材の引張り力は時間経過とともに減少して行くことを示している。
  • 島川 徹
    2004 年 19 巻 p. 245-252
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    列車荷重が直接作用する鉄道の土構造物本体への再生材料の使用は、構造物変位が及ぼす走行安定性の影響や、材料劣化による取替・修繕が困難である等の理由から、まだ一般的ではなく、汎用的に使用するためには、営業線施工も含めた材料評価を行い、適用可能性について実証的な検討が必要である。平成15年10月1日に開業した東海道新幹線品川駅新設工事においては、3度にわたる切換工事を実施したが、その間に敷設した仮線補強盛土の盛土材に再生砕石を適用し、約1年7ヶ月間にわたり営業線に使用した。使用中には沈下量を始めとしたデータ収集を行い、撤去時には材料回収による劣化分析や外観調査を行った。その結果をもとに、再生砕石の新幹線鉄道盛土材への適用に関しての一定の見解をまとめた。
  • 加賀 宗彦, 雨宮 盛児, 高野 暁子
    2004 年 19 巻 p. 253-258
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    補強土壁の変形に関する研究を行っている.これまで,我々の提案している力学モデルが補強土壁の変形を予測可能かどうかを検討してきた.その結果,予測値と補強土壁をモデル化した室内実験で得た実際の変形量は,ほぼ一致することがわかった.これより,提案している力学モデルは補強土壁の変形の予測に使用できる可能性があると判断した.次のステップとして,データの積み重ねを行っている.今回は粒径の異なった砂を使用して実際の変形と予測値の比較をした.また,この力学モデルで補強土壁面に連結されたジオテキスタイルのひずみ分布の予測も試みた.この結果,ジオテキスタイルのひずみ分布は上載圧力に大きく影響されることがわかった.この結果は,変形を考慮した補強土壁の設計法に役立つと考えられる.
  • 加賀 宗彦, 石渡 真一, 原田 道幸
    2004 年 19 巻 p. 259-262
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    砂中に設置されたジオテキスタイルに引き抜き力が作用したときジオテキスタイル付近の砂の動きがどのようになっているかを知るため,新しい試みとして磁気を利用した方法でその調査を行った.砂の動きはホールセンサーと呼ばれる磁気センサーで測定した.また,ジオテキスタイルが砂のせん断力におよぼす影響範囲も一面せん断試験機で調査してみた.これらの結果は,引抜き力が作用したジオテキスタイルのひずみ分布を予測する力学モデル式の選定に利用した.
  • 龍岡 文夫, 篠田 昌弘, 内村 太郎
    2004 年 19 巻 p. 263-270
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックス補強土構造物の設計において、補強材の設計引張り破断強度は基本的な設計データの一つである。ジオシンセティックス補強土構造物の長期安定を確保するために必要な補強材設計破断強度は、通常、施工、耐久性、クリープ等の影響を考慮して「新製品の急速定ひずみ速度引張り試験による引張り強度」を低減して決定される。この内、クリープ低減係数が特に大きく、補強材の設計強度の算定に大きく影響する。それにも係わらず、その設定法は合理的ではない面があり過度に安全側となっている可能性が高い。本論文では、クリープ低減係数を無条件には用いないで、また盛土のせん断強度としてピーク及び残留せん断強度を用いる新しい補強材の設計強度算定法を提案し、簡単な算定例を示す。
  • 角田 起, 吉田 浩一, 佐藤 和之
    2004 年 19 巻 p. 271-276
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    本現場は現場発生土(高含水比粘性土)を用いた高盛土が計画されており(勾配1:1.8、最大盛土高24m),その中で工法の施工性・経済性などが総合的に検討され、盛土補強材として高強度ジオウォーブンを使用することが決定された。
    現在、ジオテキスタイルを用いた盛土の補強は実績も多く、広く普及してきているが使用されるジオテキスタイルはインターロッキング効果が期待されるグリッド状の製品が多い。ジオウォーブンについてはジオグリッドに比べ、インターロッキング効果が期待できず引抜き抵抗力は低下すると考えられる。ここで紹介する事例は実施工に先立って、原位置で実施したジオウォーブンの土中引抜き試験に関する報告である。
  • 内村 太郎, 水橋 正典
    2004 年 19 巻 p. 277-282
    発行日: 2004/12/02
    公開日: 2009/12/17
    ジャーナル フリー
    補強盛土を、橋台・橋脚や重要構造物の基礎など、変形の厳しい制限のもとで大きな死荷重と活荷重を受ける構造物に用いるためには、強度だけでなく、高い剛性とその適切な評価手法が必要である。従来の補強土構造物の変形強度特性の研究は、破壊荷重を含む比較的大きな荷重範囲での応力ひずみ関係の議論が多い。しかし、実際の鉄道や道路の橋台・橋脚などの場合には、比較的小さな振幅の繰返し荷重が、非常に多数回加わったときの残留変形が問題になる。本研究では、補強土橋脚の室内模型に比較的小さな応力振幅の繰返し荷重をかけて、その弾性剛性と残留ひずみの進行を測定した。補強材の総剛性を様々に変えて、その影響について検討した。その結果、交通荷重などの微少な荷重に対する変形係数は、補強材の剛性には余り影響されず、盛土材への拘束圧など、盛土材自体の剛性の方が支配的だった。また、微少な多数回の繰返し荷重に対する残留変形は、クリープ変形による部分が大きく、それは補強材剛性が高いほど少なくなる傾向が見られた。
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