ジオシンセティックス論文集
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28 巻
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特別講演
論文
  • 窪田 勇輝, 中島 進, 佐々木 徹也, 渡辺 健治, 藤原 寅士良, 高崎 秀明, 橘内 真太郎
    2013 年28 巻 p. 9-16
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    本研究では既設石積み壁を対象として,崩壊防止ネットと地山補強材を用いた耐震補強方法の開発に関する傾斜実験および振動台実験を実施した.傾斜実験では補強メカニズムの把握とともに背面地盤の安定性が対策効果に及ぼす影響について分析することを,振動台実験では動的場での補強メカニズムの把握を目的とした.全6ケースの実験により崩壊防止ネットおよび地山補強材による補強効果を確認するとともに,石積み壁の崩壊メカニズムを明らかにした.特に,崩壊防止ネットにより全体を一体化させることで,ブロックのはらみ出し防止に効果的であることが分かった.また,実験結果より明らかになった補強メカニズムを参考として,設計方針を提示した.
  • 神谷 浩二, 山田 周作, 石田 正利
    2013 年28 巻 p. 17-22
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    河川堤防が豪雨時に急激な浸水を受けたとき,内部の間隙空気が封入されその圧力が増大することが指摘されている.本論文では,不飽和な模型地盤に降雨や河川を想定して浸水させ,そのときの飽和度,間隙空気圧の経時変化を測定する実験に基づき,浸水時の間隙空気の挙動を基礎的に考察した.そして,浸水に伴って間隙空気が封入されその圧力が増加し,更には,間隙空気が亀裂等の破壊現象を生じさせることを認めた.この空気圧発生や破壊現象に対処するため,地表面に透気性・低透水性シートを敷設した結果,浸水に伴う間隙空気圧発生等が抑制できることなどが得られた.
  • 齋藤 雅彦, 吉田 明日香, 白 濟民, 原 健二, 澁谷 啓
    2013 年28 巻 p. 23-30
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    盛土の浸水対策工法の一つとして,盛土内に高透水性のジオシンセティック排水材をL字型に配置し,盛土側面からの浸透による盛土内の水位上昇を抑制する工法(L型排水盛土防水工)が提案されている.本研究では,鉛直排水材を千鳥配置した場合の水位上昇抑制効果を3次元数値シミュレーションにより評価するとともに,従来提案されている盛土内水位の簡易推定式の適用性について確認している.これに加えて,雨水が斜面から盛土に流入する際の盛土側面の水位及び盛土内部の水位について,2次元数値シミュレーションにより評価している.
  • 前田 健一, 杉井 俊夫, 桝尾 孝之, 小林 剛, 臼田 文昭, 黒田 英伸, 柴田 賢, 齊藤 啓
    2013 年28 巻 p. 31-36
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    近年,突発的な豪雨により河川堤防の決壊被害が報告されている.その一要因として,堤防内に封入された圧縮空気が噴出する際に亀裂等の損傷を与える可能性が示唆されている.特に,都市部における河川堤防は堤体内に間隙空気を封入しやすいとされる細粒分を多く含む砂質土から構成されているため,エアブローの発生による堤防の劣化を防ぐ対策工の確立が急務である.そこで本研究では,エアブロー発生を抑制する対策工として注目されている透気遮水シートの設置効果について検討する.模型実験の結果から,透気遮水シートを設置することで降雨浸透防止効果と間隙空気圧の軽減効果が確認された.本稿では,模型実験による結果を踏まえ実堤防において散水実験を試みたところ,土壌水分計や比抵抗モニタリングの応答から,透気遮水シートの実用的な有効性を明らかにした.
  • 吉田 眞輝, 熊谷 幸博, 橋本 早苗, 六佐 公輔, 荒井 克彦
    2014 年28 巻 p. 37-44
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    落石防護補強土擁壁(以後,補強土壁)は, 13年ほど前に開発され数百~数千kJと大規模エネルギーを持つ落石に対して広く使用されてきた.その設計手法は落石衝突時のエネルギーを衝撃力に置き換えて極限つり合い法による非変形(非破壊)の照査を行う手法が主であったが,近年では実証実験により得られたデータを元に変形を考慮してさらに大きな落石に対しても許容する手法が提唱されている1).本研究では補強土壁設計の合理化を図るため,実物実験結果の変形状態を3次元動的解析により再現し,従来行われていた設計手法により決定される補強土壁形状との整合性を確認した.さらに1/25スケールのモデル実験を行い,解析で再現した補強土壁の変形特性がモデル実験の挙動とほぼ同一であることが確認できた.これらから落石規模や設置条件による適用範囲を拡大できる指標ができたことを報告する.
  • 宮川 智史, 久保 哲也, 森 芳徳, 宮武 裕昭
    2013 年28 巻 p. 45-52
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    近年,豪雨や大規模な地震等が盛土等の災害を大規模化させ,社会的影響を拡大させている.災害時には,施工の効率性,経済性から大型土のうを用いた復旧が応急復旧として多くの現場で採用されている.過去の復旧事例より,大型土のうを用いた復旧は,平地に比べ制約条件の厳しいと思われる河川沿いや山地で多く採用されていることが確認された.大型土のうを用いた復旧は,仮設構造物であるため,本復旧時に撤去することが分かっていても応急復旧として有効な方法である.本研究では,過去の災害復旧事例を分析し,大型土のうの復旧現場でのニーズを把握するとともに,大型土のうを存置させてそのまま本復旧へ適用できるよう,復旧方法を提案した.そして提案した復旧方法が本復旧への適用できる可能性を確認した.
  • 鈴木 俊輔, 下口 裕一郎, 宇髙 幸生, 立川 貴重
    2013 年28 巻 p. 53-58
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    大規模な地震が発生した際に,道路に不陸や段差が発生し車両の通行に影響を及ぼす事例が,過去の地震被害として報告されている.四国電力㈱では,過去の地震被害等から得られた知見を踏まえ,更なる安全・安心を得るために自主保安の観点から当社発電所の各設備に対して耐震性向上工事を実施している.このうち,発電所構内の道路は,大規模な地震によって段差等の変状が生じた場合,緊急車両の通行が困難となることも想定されるため,道路の地震時段差軽減対策を実施した.地震時段差軽減対策には様々な方法が考えられるが,今回,道路変状への追従性が高く,施工後の維持管理が容易なジオテキスタイルを用いた工法を採用し,対策工事を実施した.
  • 橘 伸也, 桑野 二郎, 石垣 勉, 竜田 尚希
    2013 年28 巻 p. 59-66
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    大規模地震発生後の車両走行機能にリダンダンシーを持たせる地震対策型段差抑制工法では,締固め粒状層を複数のジオグリッドと拘束部材によって補強し,道路路床上部に複合剛性層を構築する.剛性層の仕様によって補強の効果やメカニズムは異なり,より経済的かつ合理的な本工法の設計方法の検討を行うためには,これらを把握することが重要である.本研究では,補強の効果とメカニズムに影響を及ぼす因子として,剛性層の層厚と拘束部材に導入するプレストレスに焦点を絞り,仕様を変えた一連の室内模型実験から剛性層の挙動を比較検討した.不同沈下が生じたとき,剛性層内に生じる力の伝達メカニズムが層厚の大小により異なり,ある程度の厚みを確保した上でプレストレスを導入することで,効率的な補強効果を得られることがわかった.
  • 木岡 浩一, 岡田 英信
    2013 年28 巻 p. 67-72
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    近年の大地震による道路被害例として,地震の揺れに伴う道路面の亀裂発生や液状化による路面変状等により,緊急車両(消防車,救急車,燃料供給車等)の通行支障が生じ,緊急対応や迅速な復旧作業に多大な影響を及ぼす事例が種々報じられている.特に,エネルギー施設内における車両通行は,防災の観点からも重要な課題である一方,対策対象範囲が広くなることから,効果的かつ経済的な対策工法が必要とされている. そこで筆者らは,道路が保持すべき限界的な機能として,車両の通行確保に焦点を絞り,道路通行が可能な程度に路面変状を抑制し得る経済的な対策工法として,ジオテキスタイルを道路路盤へ活用した場合の効果について遠心載荷実験により確認した結果について報告する.
  • 野中 隆博, 小島 謙一, 瀧山 清美, 森野 達也, 陶山 雄介, 青木 一二三
    2013 年28 巻 p. 73-80
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    トンネル工事等により大量に発生する建設発生土の有効利用を図るために,盛土内に地盤改良杭を打設し,それによりコンクリート路盤を支持する盛土構造(パイルスラブ式盛土)の開発を行っている.これまで,1/10スケールの振動実験結果より,地震時において無対策時と比較しコンクリート路盤の沈下が大幅に抑制されることが確認された.また,本構造の課題であった杭頭部とコンクリート路盤間の砕石の抜け出しに対しても,ジオテキスタイルを用いた大型土のう(ジオテキスタイル土のう)を用いた対策工を提案し,実物大載荷試験等からその効果・特性について確認した.本論文では,1/10スケール振動実験により得られたジオテキスタイル土のうのによるコンクリート路盤の変位抑制効果およびその特性について述べる.
  • 平尾 博樹, 関 雅樹, 松田 猛, 曽田 祥信, 古関 潤一
    2013 年28 巻 p. 81-88
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    東海道新幹線では,地震時における脱線・逸脱防止対策として脱線防止ガードや構造物の変位を抑制する対策を実施している.バラスト流出防止対策としてはジオテキスタイル製網目袋を用いたジオテキバッグ工法を主要な工法として採用し,東海道新幹線全線の盛土区間に敷設が進められている. 本研究では,ジオテキバッグ構造高さ,鉄筋本数の条件を変化させた水平支持力試験を実施し,地震時のジオテキバッグ構造の挙動を明らかにするとともに,ジオテキバッグ構造の変位~荷重の関係を定式化した.
  • 齋藤 昭則, 柴 錦春, 水野 正之
    2013 年28 巻 p. 89-92
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場に良く使われているジオメンブレン(GM)・ジオシンセティッククレイライナー(GCL)・粘性土からなる複合ライナーを想定して, GM/GCL間,GCL/粘性土間のせん断強度におけるGCLの水和状態,水和溶液の性質(水道水,1%塩水)の影響について大型せん断試験の結果により検討を行った.まず,検討した境界面のせん断強度は粘性土のせん断強度の約3~9割であり,GM/GCL間のせん断強度は一番小さく,設計を支配することが分かった.また,GCL/粘性土間ではGCL内ベントナイト含水比の増加に伴い,境界面摩擦角が小さくなり見かけ上の付着力が大きくなること,GCL/GM間の境界面ではGCL内ベントナイト含水比の増加に伴って,境界面摩擦角に大きな影響はなかったが,付着力がほぼゼロになることを明らかにした.
  • 柴 錦春, Kartika SARI, 日野 剛徳
    2013 年28 巻 p. 93-98
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    ジオシンセティックスクレイライナー(GCLs)の自己修復能力に対して、溶液の性質(種類)の影響を室内漏水試験により検討した。用いた4 種類の溶液は、水道水、10g/ℓ のNaCl 溶液、100mg/ℓ のエタノールおよび11.1g/ℓ のCaCl2 溶液である。試験の結果によれば、溶液の性質はGCL 中のベントナイトの膨潤量に影響を与えるによって、GCL の自己修復能力を大きく左右す る。また、ベントナイトの自由膨潤量は、GCL の自己修復能力における溶液性質の影響の程度を評価する指標として用いることができる。さらに、試験した条件で、上載圧力の増加に伴う溶液性質の影響の傾向に変化が認められないことがわかった。
  • 石森 洋行, 遠藤 和人, 中川 美加子, 石垣 智基, 山田 正人
    2013 年28 巻 p. 99-102
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    わが国の廃棄物最終処分場の浸出水にときとして高濃度で検出されているビスフェノールAと1,4-ジオキサンに着目し,これら有機化合物に対する遮水シートの遮蔽性を拡散透過試験により明らかにした.塩化ビニルシート,低密度ポリエチレンシート,高密度ポリエチレンシートの3種類を検討したところ,いずれの遮水シートに対しても,ベンゼンは既往研究で知られているように約1ヶ月の短期間で遮水シートを通過した.しかし,ビスフェノールAはこれら遮水シートへの吸着は認められたものの,本試験期間の3ヶ月中で遮水シートからの浸出は認められなかった.また水に溶解した1,4-ジオキサンは,いずれの遮水シートに対しても吸着性および拡散透過性を示さず,遮水シートは1,4-ジオキサンに対して優れた遮蔽性をもつことがわかった.
  • 小川 翔太郎, 須本 祥太, 乾 徹, 高井 敦史, 勝見 武
    2013 年28 巻 p. 103-108
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    廃棄物処分場の遮水性覆土システムにジオシンセティッククレイライナーを使用した場合に,埋立層などの基盤層が不同沈下を受けると重ね合わせ部の遮水性能に影響が生じる可能性が指摘できる.本研究では,はじめに落し戸試験によって不同沈下を受けた場合の重ね合わせ幅の変化や,上載圧の変化について観察をおこなった.次に,ジオシンセティッククレイライナーの重ね合わせ部を対象に重ね合わせ幅や作用する上載圧が減少した状態で透水試験を実施し,遮水性能に及ぼす影響を評価した.その結果,重ね合わせ幅が150 mmから50mmに減少した状態でも重ね合わせ部の遮水性能に大きな影響が生じないことが明らかになった.
  • 佐藤 毅, 長江 剛志, 飯塚 敦
    2013 年28 巻 p. 109-116
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    筆者らは,プログラム原理を用いた遮水構造の破壊確率と処分場のLCCの関係をもとに,遮水シートの破損確 率,ベントナイト混合土層等の遮水層の破損確率とトラベルタイムとLCCの変化の関係を明確にした.さらに, 放射性汚染廃棄物の半減期を加味した被害費用の設定と遮水シート,遮水層の破損確率とトラベルタイムによ るLCCの変化の関係も併せて検討した.結果として,遮水シートの破損確率の変化にLCCが敏感に反応するこ と,その状況下でベントナイト混合土層のトラベルタイムの設定がLCCの低減に非常に有効であることを確認 した.さらに,放射性汚染物質を取り扱う場合,放射能強度の低減期間を加味したトラベルタイムの設定は重 要であるが,過度に長いトラベルタイムの設定やベントナイト混合土層の破損確率を過度に低減するための費 用より,遮水シートの破損確率を低減させる対策が必要な場合もあることがわかった.
  • 西村 正樹, 赤井 智幸, 嘉門 雅史
    2013 年28 巻 p. 117-120
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    廃棄物最終処分場閉鎖時の最終カバーに用いるキャッピング材料として,筆者らは,ガス透過性と遮水性を 併せ持つ微多孔膜と,微多孔膜を保護し施工耐性を付与する不織布から構成されるガス透過性防水シートを開 発し,その適用性を評価してきた.本研究では,土中埋設時の極限的湿潤状態に相当する表面不織布層が滞水 した状態において,本シートのガス透過性を評価した.その結果,表面不織布層が滞水した状態であっても, 0.1 kPa程度の微小な差圧があれば,十分なガス透過性を確保できることがわかった.
  • 向谷 光彦, 守田 誉, 井内 和人, 田中 勝彦, 乃村 智子
    2013 年28 巻 p. 121-126
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    本ため池の基礎には,左右岸袖部を除いてほぼ全面に渡って泥炭が3mから5m程度堆積している.泥炭質土 は即時沈下が大きくテルツァギーの圧密理論の適用が難しい特殊な土質である.本現場でも高さ1mの柵渠 (水路)が数日で沈下,埋没したことがあった.このような困難な現場であったが,湛水試験を行い無事竣工 するに至った.改修工法はゴムシート工法とプレロード工法及びジオテキスタイル工法を併用しており,これ ら3工法の相乗効果で沈下問題を解決した.全国的にみてもこのような複合工法を適用したため池は極めて特 殊な事例と思われ,今後の参考にしていただくため,事業概要について報告するものである.
  • 中山 裕文, 島岡 隆行, 作左部 公紀, 上田 滋夫, 青山 克巳, 坂口 伸也, 吉田 宏三郎
    2013 年28 巻 p. 127-134
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/05
    ジャーナル フリー
    本研究は,遮水シート表面の温度分布を利用して接合部の合否判定を行う熱画像検査法について検討したも のである.接合部表面温度から接合不良を判定するための基準となる閾値温度は,接合条件や施工時の天候よ って異なる値をとる.実験により閾値温度を算定するための関係式を導出し,それを組み込んだ遮水シート接 合部の合否判定システムを構築した.このシステムを宮崎県延岡市の延岡市新最終処分場本体造成工事の遮水 シート接合工事において実証試験を行い,本手法の有効性と課題を明らかにすることを試みた.その結果,実 際の現場においても,遮水シートの熱融着接合作業を実施しながら熱画像検査を実施することは可能であり, PC上にリアルタイムで検査結果が表示され,保存されることを確認した.現場での実証試験において明らかと なった課題として,熱画像撮影範囲のずれ,無線接続の切断,PCのフリーズ,遮水シート初期温度が60℃後半 ~70℃を超えたときの合否判定の難しさ等が見つかったが,いずれも対処が可能であることを確認した.
  • 平野 孝行, 吉田 直人, 土橋 聖賢, 藤井 二三夫, 金澤 伸一
    2013 年28 巻 p. 135-142
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    建設発生土の高度な有効利用を図る目的で開発された短繊維混合補強土工法は,土または安定処理土にポリ エステル等の短繊維を混入することで降雨・流水に対する耐侵食性や強度・靭性(ねばり強さ)の向上に期待 するものである.これまでに堤防・法面のガリ侵食等による崩壊抑制のための試験施工としての実績がある. 本報告は,堤防・道路等法面の被覆材,多自然型法面の基盤構築,土構造物補強等へのさらなる有効利用の ために,より短繊維および固化材添加率の低い混合補強土の耐侵食性能や,強度・変形特性についてとりまと めたものである.長期現場試験施工に基づく耐侵食性能の検証と,静的圧縮試験・繰り返し三軸試験により強 度増加効果と靭性・拘束効果の付与を確認した.
  • 野添 重晃, 橋詰 豊, 金子 賢治, 熊谷 浩二, 堀江 征信
    2013 年28 巻 p. 143-148
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    短繊維混合補強土は,地盤材料に長さ数mm~数mの短繊維を混合した新しい複合地盤材料であり,強度や靭 性・耐浸食性等に優れている,しかしながら,短繊維混合の補強効果に対して短繊維の物性・長さや太さ,地盤 材料の特性など種々の要因が影響を与えるため,未だ未解明な部分が多い.著者らは,短繊維混合率とせん断強 さに対する補強効果の関係について三軸圧縮試験を行って検討してきた.その結果,短繊維を混合しすぎるとせ ん断強さが低下し,せん断強さに対する最適混合率が存在することを示した.本研究では,せん断強さに対する 最適混合率に与える地盤材料の粒度の影響を検討するために,粒径の異なる4種類の硅砂を使用して短繊維混合 補強土の三軸圧縮試験を行った.その結果,平均粒径が大きい地盤材料程,最適混合率が小さくなることを示 し,その理由について考察した.
  • 山下 亮介, 山中 稔, 小竹 望, 宇都宮 直樹, 宮本 慎宏
    2013 年28 巻 p. 149-154
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    日本の伝統的工法である土塗壁に使われる壁土は,施工される近郊で採取された土を用いることが多く,同 じ壁土であっても地域ごとに壁土の土質特性が異なっていることが予想される.また,乾燥収縮によるひび割 れ低減のために一般的に藁すさが壁土に補強材として混合されるが,その混合量は左官職人の経験と勘によっ て決定されている.一方,稲作工程の変化により藁すさの入手が困難となっているという現状がある.本研究 では,藁すさに替わる補強材として竹繊維を混合した供試体の一軸圧縮試験及び収縮ひび割れ面積測定を実施 した.その結果,竹繊維を用いることにより一軸圧縮強さが上昇し,収縮ひび割れ面積は低下した.また,壁 土の強度やひび割れ特性は地域によって異なっており,竹繊維を混合することにより,これらは改善の傾向を 示すことが明らかとなった.
  • 中道 美穂, 佐藤 研一, 藤川 拓朗, 古賀 千佳嗣
    2013 年28 巻 p. 155-160
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震の発生により千葉県浦安市を中心に過去最大の液状化被害が発生し, 東京湾沿岸埋立部や関東平野内陸地において多くの被害をもたらした.この液状化の主な要因は,今回の地震 の継続時間の長さとされている.また,従来の液状化抑制手法では,地盤材料の粘着力を増加させ,液状化を 抑制させるセメント固化手法が主流であり,今回の地震においてもその有効性が確認されている.そこで本研 究では,継続時間に対して抵抗力をさらに増加させるために,地盤材料に短繊維引張補強材を混合し,地盤材 料の引張強度を増加させ, 液状化に対する抵抗力について検討を行った結果について報告する.
  • 小竹 望, 宮脇 史恭, 松岡 賢樹
    2013 年28 巻 p. 161-166
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    固化処理土は降雨や地下水位の変化による乾湿繰り返し作用を受けると材料劣化を生じやすい.本研究では, 繊維混合による靱性向上効果を応用して,固化処理土の乾湿繰り返し抵抗性を向上させる効果を検討した.こ こでは,粘性土および砂質土を母材とする固化処理土および繊維補強固化処理土の供試体に対して乾湿繰り返 し作用を与えた.乾湿繰り返し作用による劣化状態は健全度(外部状態変化の観察)で評価し,変形及び強度特 性の変化は,各サイクル後に一軸圧縮試験により評価した.その結果,固化処理土に繊維補強を施すことで乾 湿繰り返しによる材料劣化を抑制し,靱性向上効果が保持され抵抗力が向上することが確認された.
  • 梅崎 健夫, 河村 隆, 西田 健吾, 早川 典, 石井 大悟, 志賀 信彦
    2013 年28 巻 p. 167-174
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    水中の陽イオンおよび陰イオンを吸着除去する天然ゼオライトおよび多孔質ケイ酸カルシウムをパルプにす き込んだゼオライト機能紙およびケイ酸カルシウム機能紙を開発した.湖沼や河川などの富栄養化の要因であ る窒素およびリンに対するこれら上記2種類の多孔質担持機能紙の有効性を検証するため端緒として,アンモ ニア態窒素(NH4-N)およびリン酸態リン(PO4-P)を含む水溶液に対する吸着試験を実施した.試験結果に基 づいて,機能紙の吸着特性について検討した.主な結論として,ゼオライト機能紙へのNH4-Nおよびケイ酸カ ルシウム機能紙へのPO4-Pの吸着はそれぞれ短時間で生じること,水溶液中にNH4-NおよびPO4-Pの両者が混在 する場合においても互いの吸着を妨げないこと,一旦吸着すると容易に剥離しないこと,を明らかにした.
  • 梅崎 健夫, 河村 隆, 早川 典, 溝渕 隆
    2013 年28 巻 p. 175-180
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    福島第一原発事故により飛散した放射性セシウムの除染対策のために,天然ゼオライトの粉粒をパルプに担 持させたゼオライト機能紙を内袋として用いた除染用フレコンバッグを新たに開発した.まず,その仕様,特 徴および適用例を示した.そして,放射性セシウムが吸着した土壌を含む汚染泥水に対して,小型模型による ろ過実験を実施し,除染用フレコンバッグによる簡易ろ過処理の有効性について検討した.その結果,それぞ れ適切な量の天然ゼオライト粉粒およびパルプを含有したゼオライト機能紙を用いることにより,汚染泥水の ろ過水が,SSおよび放射性セシウム濃度に関するそれぞれの排水基準を満足することを実証した.
  • 奥村 裕司, 下田 宏治, 石川 雅洋, 鳥海 信弘
    2013 年28 巻 p. 181-186
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    福島第一原子力発電所から拡散した放射性セシウムの影響で,放射線による住民への健康被害が懸念されて いることから,住居や居住区近傍を除染することで放射線量を低減する除染工事が行なわれている.しかしな がら森林部近傍では一度除染を行っても,放射性セシウムを含んだ物質が風雨等により除染区域に流入するこ とで再び放射線量が上昇する可能性がある. この問題を解決するため,放射性セシウムを吸着できる機能を持たせたジオシンセティックスを除染後,ま たは除染区域や除染区域の周りに敷設・設置することで,放射性セシウムを含んだ物質の除染区域内への移行 抑制を目的とした実験を行っている.
  • 川口 貴之, 中村 大, 畑中 将志, 山崎 新太郎, 山下 聡, 三上 登, 上野 邦行
    2013 年28 巻 p. 187-194
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    侵食対策として急斜面に施工された,ある連続繊維補強土の一部が完成から半年程度で崩落した.崩落箇所 を詳細に調べたところ,背後の地山からの湧水を考慮して設置されていた裏面排水材に赤褐色のゲル状物質が 付着しており,排水能力が低下した可能性が示唆された. そこで本研究では,まず始めに湧水とゲル状物質の性質を簡易的に調査した.次に,現地で裏面排水材の試 験片に地山からの湧水を流すことで目詰まりを再現し,実験室内で垂直方向透水性能試験と面内方向通水性能 試験を実施した.その結果湧水は還元状態にあり,ゲル状物質は鉄イオンの酸化に伴う沈殿物であること,排 水材の透水・通水性能はこの物質の付着によって短期間で急激に低下することが分かった.
  • 佐々木 隆, 加賀 宗彦
    2013 年28 巻 p. 195-198
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    従来の補強材は引き抜き方向の滑動抵抗の強化が一般的である.新しく開発された突起付き3 軸ネット補強材 は,引き抜き方向や左右および上下方向にも滑動抵抗を拡大できるように工夫されている.補強範囲に特徴があ る.本研究はこの突起の引抜き補強効果について基本的な調査を昨年に続いて実施した.実験は3 軸ネット補強 材をモデル化した鋼製の補強材を作製して突起の本数を 5 本まで変えた引抜き試験を行った.このデータから突 起の補強効果を,プレートアンカーの補強メカニズムを参考に突起係数を導入して検討した.結果とし突起係数 は突起の本数が多くなると一定値に近づく傾向が示された.また載荷応力が変わってもほぼ一定値を示した.こ の結果,突起係数の本数や大きさが変わっても引抜き力または滑動抵抗の算定ができる可能性を得た.
  • Xinye HAN, 清田 隆, 米良 有玄, 原田 道幸, 龍岡 文夫
    2013 年28 巻 p. 199-206
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    立体形状のジオセルについて,その形状を生かした盛土の引張り補強材としての機能に着目し,土中引抜き 方向に直線状の縦材を配した改良型ジオセルを開発した.本研究では,横材の高さや間隔を変化させた改良型 ジオセルについて,粒径の異なる二種類の礫盛土からの引抜き試験を実施し,従来型ジオセルや既存のジオグ リッドと比較した.その結果,初期剛性が低く延性的な引抜き抵抗特性を有する従来型ジオセルと比較して, 改良型ジオセルは非常に高い引抜き抵抗力と初期剛性を発揮した.また,改良型ジオセルはジオグリッドと比 較して盛土礫材の粒径が大きくなると引抜き抵抗も大きくなることを確認した.更に,改良型ジオセルでは, ある盛土材粒径に対して適切なセルの大きさが存在することを示した.
  • 木全 卓, 北口 紗貴, 森 匠平
    2013 年28 巻 p. 207-212
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    本研究では,ゴムチップをはじめとする弾性体材料混合土の圧縮特性をモデル化するための基礎研究として, 弾性体材料の変形に起因する圧縮成分の定量的な分類・評価を試みた.具体的には,アルミ棒とゴム棒で混合 土を模擬した積層体模型を用い,ゴム棒の混合比や骨格の配置構造の違いを考慮しながら一次元圧縮試験を行 った.そして,圧縮過程をデジタル撮影し,その画像を解析して混合土全体,弾性体材料自身,間隙部分の体 積変化をそれぞれ個別に計測した.また,これらの体積変化量をゴムの物性と積層体断面の幾何学的な観点か ら算出するモデルの構築を試み,実測値との比較も行った.その結果,ゴムのポアソン比をうまく組み込むこ とにより,積層体模型の圧縮に関わる各成分を概ねうまくモデル化できることがわかった.
  • 工藤 敦弘, 渡辺 健治, 栗山 亮介
    2013 年28 巻 p. 213-220
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    本研究ではジオシンセティックス補強土一体橋梁の設計法の確立のために,盛土中に敷設したジオグリッド の引抜き試験を行った.引抜き試験では特に引抜き特性に及ぼす繰返し荷重の影響,拘束圧の影響に着目した. 引抜き剛性は,初期載荷段階では土中の拘束効果等によって気中剛性よりもかなり高かったが,繰返し載荷を 受けることで気中剛性相当まで低下した.これは繰返し載荷による補強材と周辺地盤の摩擦抵抗の低減および 補強材の土中伸縮領域の増加が起因していた.しかしながら,繰返し作用後に地震などの大きな引抜き力が作 用する場合には,健全な補強材同等の引抜き剛性を発揮することが分かった.また,異なる補強材剛性や拘束 条件下においても引抜き剛性を評価する手法を示した.
  • 加藤 久也, 西岡 英俊, 小島 謙一, 田村 幸彦, 木口 峰夫, 森野 達也, 陶山 雄介, 青木 一二三
    2013 年28 巻 p. 221-228
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    ジオテキスタイルの表面は繊維の編み込みにより平滑でなく,ひずみゲージを直接貼り付けることが困難で あるため,塩ビフィルムを介してひずみゲージを貼り付ける場合がある.本論文ではこの方法によるひずみの 計測精度について検証した.気中引張試験時および土中引張試験時に得られたひずみゲージの出力特性は,定 量的には気中および土中といった環境条件により大きく異なり気中引張試験時の画像解析から求めた真のひず みよりも小さな出力となることが分かった.ただし,荷重とひずみには概ね線形的な関係が得られており,同 様の環境条件にあるひずみゲージ間での定性的な比較(例えばひずみ分布形状や影響範囲に対する考察)につ いては,問題なく評価が可能であることが確認できた.
  • 宮本 慎太郎, 安福 規之, 大嶺 聖, 石藏 良平, 山脇 敦, 川井 晴至
    2013 年28 巻 p. 229-236
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    廃棄物が急勾配で堆積している現場が多数存在し,崩壊や支障等が報告されている.しかし廃棄物の力学特 性に焦点を当てた研究例が少ないことから,適切な対応策が確立されていないのが現状である.本研究では, 土質力学をベースとして廃棄物の力学特性の解明と評価手法の確立を行うことを目的としている.特に繊維廃 材が多量に含まれることにより発生する引張強度に着目することで,繊維廃材がせん断面に及ぼす補強効果を 定量的に評価することを試みた.実際には,開発した引張試験機により引張強度特性の解明を行い,補強土の 理論を応用して廃棄物の強度評価法を提案した.本研究により,せん断試験により求まる強度定数( 粘着力c , 内部摩擦角φ ) と引張試験から求まる強度定数( cT , ζ ) を用いて廃棄物の強度評価を行えることが示された.
  • 橋詰 豊, 小山 直輝, 野添 重晃, 金子 賢治
    2013 年28 巻 p. 237-244
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    津波防災において,最も重要な土木構造物は海岸線に構築される防潮堤である.防潮堤は基本的には盛土に よって構築されているが,従来から地盤工学や応用力学的な視点で進められた研究は少ない.2011年の東北地方 太平洋沖地震で発生した大津波によって,旧来の技術により造られた多くの防潮堤が崩壊し,背後地に大きな被 害をもたらした.本研究では,ジオテキスタイルを用いた新しい防潮堤の開発を目指して,基礎的な検討を行っ た.まず,防潮堤および基礎地盤を剛体と仮定した津波水理実験により防潮堤形状のエネルギー低減効果につい て検討した.その結果,防潮堤の海側・陸側の勾配は90 °に近い方が津波エネルギーの低減効果が大きい事がわ かった.さらに,従来の防潮堤およびジオテキスタイルを用いた防潮堤をモデル化した2つの防潮堤モデルにつ いて津波実験を行った.その結果,今回のモデル化においてはどちらも崩壊には至らなかったが,越流津波のエ ネルギー低減効果は海側・陸側とも75 °の勾配としたジオテキスタイル防潮堤モデルが最も高いことを示した.
  • 山口 晋平, 大林 沙紀, 川邉 翔平, 龍岡 文夫, 菊池 喜昭, 二瓶 泰雄
    2013 年28 巻 p. 245-250
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震で経験したような巨大津波に対して,防潮堤を越流が生じない高さに建設する 事は非常に困難である.越流しても可能な限り堤体高を保ち粘り強く抵抗することが必要であり,そのために は盛土の浸食を抑制する事が求められる.既設防潮堤盛土の越流津波に対する安定性を増加させる補強強化技 術と新設技術の一つとして,盛土を引張り剛性以外の剛性がないジオシンセティック(不織布)で被覆した小 型模型の実験を行った.不織布で被覆した場合でも不織布がめくれ上がるなどしない限り堤体の浸食は若干に 留まり堤体の形状を保つ事が分かった.
  • 川邉 翔平, 大林 沙紀, 山口 晋平, 菊池 喜昭, 二瓶 泰雄, 龍岡 文夫
    2013 年28 巻 p. 251-258
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    2011年東北地方太平洋沖地震による甚大な被害の大半は,巨大津波によるものであった.これ対する防災策 として,沿岸防潮堤だけではなく鉄道や道路の盛土から構成された多重防御施設の導入などの複合的な減災対 策の実施が提案されている.本研究では,道路・鉄道盛土に導入される可能性のあるGeosynthetic-Reinforced Soil(GRS)一体橋梁の耐津波性能を室内小型模型実験で検討した.開水路内に模型を作製し,段波によって 津波を再現した.GRS一体橋梁の押波に対する桁,橋台の安定性を確認できた.
  • 常田 賢一, 竜田 尚希
    2013 年28 巻 p. 259-264
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    2011年3月の東北地方太平洋沖地震では,防潮堤などが壊滅的な被害を受けたため,復旧および復興では, レベル2の津波に対して“粘り強い”防潮構造とすることが命題とされた.現在,大型ブロックを敷設した三 面張構造および裏法先の地盤改良による工法などにより復旧が進められている.しかし,筆者らの現地調査に おいて,ジオテキスタイルによる補強盛土などにおいて,津波に対する耐侵食性があった事例があり,盛土あ るいはその補強により“粘り強い”を確保、向上できる可能性が示唆されている.そこで,本研究は,盛土を 防潮盛土として活用するため,被害例からの知見の提示し,造波水路を用いた盛土の越流実験を実施すること により,盛土の耐侵食性およびその向上のための補強構造の技術的可能性を報告する.
  • 倉上 由貴, 二瓶 泰雄, 川邉 翔平, 菊池 喜昭, 龍岡 文夫
    2013 年28 巻 p. 265-272
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    近年,局所的異常豪雨に伴う超過洪水の発生により,堤防の越流決壊が各地で毎年報告されている.本研究 では,省スペース・低コストな耐越流侵食強化堤防として,ジオテキスタイル補強土(GRS)と堤体表面のコ ンクリート製被覆工を一体化した新形式河川堤防を提案し,いくつかの条件下における越流実験を行い,新形 式・従来形式堤防の耐越流侵食性を調べた.その結果,洗掘防止工を導入した新形式堤防は全く侵食されず, 新形式堤防が極めて高い耐越流侵食性を有することが示された.また,新形式堤防は,裏のり面を5分と急勾 配としても2割勾配と同様な高い耐越流侵食性を維持でき,かつ,その様子は全体・部分補強にて確認された. 以上より,新形式堤防は省スペース・低コストで耐越流侵食性を大幅に強化し得る技術であることが示された.
  • 伊原 重樹, 西村 正樹, 赤井 智幸, 石田 正利, 塩濵 圭治, 嘉門 雅史
    2013 年28 巻 p. 273-276
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    東日本大震災における津波被害および膨大な震災廃棄物を早期に処理する必要性の教訓等を踏まえ,今後の 巨大地震に備えとして,ジオシンセティックスを活用し,震災廃棄物の最終処分場に転用可能な2つの津波避 難地について検討した.津波避難地 (1)では,サッカーコートの外周を高さ20 mの堤体が取り囲む円形の津波 避難地を設計した.津波避難地 (2)では,宅地と田畑の用途地域間に自転車・歩行者道路を整備した緩衝帯緑 地として,堤体高 5 mの帯状の津波避難地を設計した.
  • 辻 慎一朗, 伊藤 修二, 花見 元嗣, 高橋 啓太, 小笠原 耕一
    2013 年28 巻 p. 277-280
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    一般的なジオテキスタイル補強土壁工法は,ジオテキスタイルと盛土材料との間の摩擦抵抗による引抜き抵 抗力によって自立した構造を構築する工法である.このため,盛土材料の性質によっては,ジオテキスタイル の引抜けが生じない定着長が長くなることがあり,堅固な地山が近接する箇所などでは補強土壁の適用が困難 な場合があった.そこで,著者らは,ジオテキスタイルで土質材料を包み込んだ状態で圧力を作用させると, ジオテキスタイルの引張抵抗力により内部の土粒子の移動が拘束され大きな強度を発現するジオテキスタイル の拘束効果に着目した.本論文では,ジオテキスタイルで中詰め材料(土質材料)を拘束した構造体を積層す ることにより,自立した抗土圧構造物を構築する拘束土壁工法の設計方法を提案し,その適用事例を報告する.
  • 龍岡 文夫, Dov LESHCHINSKY
    2013 年28 巻 p. 281-288
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    これまで、少なくない数のGRS(Geosynthetic-Reinforced Soil)擁壁が崩壊している.我国では豪雨と地震による ものが、米国では民間工事のものが多い.これらは、経済性の過度の追求に伴う構造形式・設計・施工の不備 のために冗長性が不十分であったためと言える.盛土の実際のせん断強度は設計値よりも高く、設計ではサク ションによる見掛けの粘着力と壁面工基礎前面の受働土圧を無視しているため、本来は設計で想定した地震荷 重が作用した時でも擁壁の安定性には設計安全率を超えた冗長性があり、このため常時にはかなり大きな冗長 性がある.その前提は適切な構造形式と適切な設計・施工である.常時に十分大きな冗長性があれば、長期に 亘る維持管理コストを低下しGRS擁壁の崩壊事例を減少することによってLife Cycle Costが減じる.
  • 宮田 喜壽, 大野 孝二, 篠田 昌弘, 弘中 淳市, 竜田 尚希
    2013 年28 巻 p. 289-294
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強土壁建設に伴うCO2排出量の計算法が提案される.比較のために,L型擁壁と緩勾配の無 補強盛土に対する計算法も同時に示した.既往の文献をもとに整理された各種原単位と文中に示した算定書式 に従えば,それぞれの現場条件に応じて3つの土構造物のCO2排出量を計算し比較することができる.提案法 を用いた検討の結果,ジオグリッド補強土壁はL型擁壁や無補強盛土に対し,CO2排出量の面においてもアド バンテージを有することを明らかにする.本文の成果は,IGS日本支部技術委員会第5ステージ(2010-2012) の成果の一部である.
  • 中村 洋丈, 宮田 喜壽, 篠田 昌弘, 弘中 淳市, 竜田 尚希
    2013 年28 巻 p. 295-302
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    ジオグリッド補強土壁の降雨に伴う変状事例を12ケース収集し,その要因分析と変状後の対策についてのケ ーススタディーを行った.変状の半数以上は沢地あるいは傾斜地上に構築された補強土壁で,排水性能を超え る雨水の浸透が要因だった.変状後の対策では,排水工強化などによって変状前と同じ壁高と形状を有する補 強土壁の再構築を行ったケースが大半を占めた.これらの事例分析は変状を許容レベル以下にするための設計 にはもちろん構造物のライフサイクルマネジメントにも役立つ.本文の内容はIGS日本支部技術委員会第5ス テージ(2010-2012)の成果の一部である.
  • 大野 孝二, 宮田 喜壽, 篠田 昌弘, 小浪 岳治, 弘中 淳市
    2013 年28 巻 p. 303-310
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    構造物の損壊に伴う不便益を考慮したジオグリッド補強土壁のライフサイクルコスト(LCC)の計算法を提 案する.提案法は,初期建設費,維持管理費,地震による災害リスクの和でLCCを評価する.このうち災害リ スクは信頼性解析法で計算される破壊確率と,災害損失費の積と定義し,各損失費の標準的な算定法を示した. 提案法に基づきジオグリッド補強土壁,L型擁壁,無補強盛土に対してLCCを計算した結果,ジオグリッド補 強土壁は交通量の大小や復旧区間の長さに関わらずLCCが最も小さいというアドバンテージを有することが明 らかになった.本文の内容は,IGS日本支部技術委員会第5ステージ(2010-2012)の成果の一部である.
  • 平川 大貴, 宮田 喜壽
    2013 年28 巻 p. 311-318
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    近年ではアスファルト舗装の長寿命化の方法が模索されつつあるが,交通載荷の作用による路 盤・路床の残留沈下が表層のアスファルト混合物の安定性に与える影響については未解明な点が多 い.そこで,本研究では交通載荷による路盤の残留変位と表層の健全性の関係に着目するとともに, ジオシンセティックス補強土技術を路盤に適用することによる舗装の長寿命化の効果を実験的に検 討した.ジオシンセティックス補強土技術は,一般道への適用を想定したa)短繊維混合補強土技術, 高速道に対してはb)ジオグリッド補強,およびc)ジオグリッド補強と短繊維混合補強の併用,の3 種類の方法を検討し,その効果の差異を調べた.この結果,本研究で検討した何れのジオシンセテ ィックス補強土技術でも舗装の健全性確保に有益であることが確認された.
  • 峯岸 邦夫, 山中 光一, 下邊 悟
    2013 年28 巻 p. 319-326
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    通常の地盤材料に超軽量な発泡ビーズを混入させ土の軽量化を図る発泡ビーズ混入軽量化土がある.この発 泡ビーズ混入軽量化土は,路床土への適用性は確認されているが,その上に構築される舗装を設計する際の設 計定数に関する研究は進んでいないのが現状である.本研究では,発泡ビーズ混入軽量化土を路床へ用いた際 の舗装構造設計に必要な弾性係数を明らかにさせるため,レジリエントモデュラス試験を行い,多層弾性解析 プログラムGAMESを用いた舗装の構造解析により路床弾性係数の算出を行った.またレジリエントモデュラ ス試験と舗装構造設計は複雑であるため,簡易的に輪荷重49kN載荷時の弾性係数を算出できるよう配合条件を 考慮した推定式の提案をした.
  • 伊藤 修二, 澁谷 啓, 河 恩勁, 藤原 照幸
    2013 年28 巻 p. 327-332
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    神戸空港島の北西部の埋立工事では,神戸港内の航路や泊地の増深等により発生した浚渫粘性土を埋立材と して利用した.この浚渫粘性土は高含水比であったため,埋立造成工事を進めるにあたり,表層覆土工法を行 う施工機械のトラフィカビリティー確保のため,ジオグリッドによる表層処理対策を実施した.浚渫粘性土の 表層処理工におけるジオグリッドの挙動を数値解析により評価するために,施工中にジオグリッドに作用する ひずみと埋立地盤の沈下量に対する動態観測ならびに,ジオグリッドの応力~ひずみ関係におけるひずみ速度 依存性を確認するための室内引張試験を行った.本論文では,これらの動態観測結果と室内引張試験結果から, 表層処理工の安定性を評価した結果を示す.
  • 河 恩勁, 許 晋碩, 澁谷 啓, 伊藤 修二, 藤原 照幸
    2013 年28 巻 p. 333-338
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/11/06
    ジャーナル フリー
    神戸空港の北西部にある超高含水軟弱粘土地盤の土地化において,粘土地盤上にジオグリッドを敷設して施 工機械のトラフィカビリティーを確保した上で表土を撒き出す施工法が採用された.本施工に先立って,この 工法の詳細を検討するために試験施工を実施した.本論文では,ひずみゲージを貼付けた観測用のジオグリッ ドシートを用いた動態観測施工における実地盤挙動を2次元FEM解析でシミュレーションした結果を示してい る.数値解析では,地盤—ジオグリッドの相互作用を考慮するために,ジオグリッドの室内引抜き試験より求 めた摩擦特性を反映したインターフェイス要素を用いて,地盤—ジオグリッド系をモデル化している.一連の 現場施工,室内試験および数値解析より,当該地のジオグリッド敷設表層覆土施工における地盤変形挙動を適 切に評価できた.
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