認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
Print ISSN : 1348-7264
6 巻 , 2 号
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原著
  • 廣瀬 健司, 菱谷 晋介
    2009 年 6 巻 2 号 p. 99-107
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,明るさのみを視覚的属性として持つ心的イメージ(以下,明るさイメージと呼ぶ)によって,明順応や暗順応が生じるかどうかを調べた.実験1では,明るさの差の検出課題に及ぼす,明るさイメージの効果を調べた.差の有無を判断する際の,基準となる明るさよりも暗い明るさイメージ(以下,暗イメージと呼ぶ)を形成させる条件では,統制条件よりも小さい明るさの差を検出できた.一方,基準となる明るさよりも明るい明るさイメージ(以下,明イメージと呼ぶ)を形成させる条件では,統制条件よりも大きな明るさの差でなければ検出できなかった.実験2では,イメージ形成の意図を持たず,単にイメージする明るさの手がかり刺激(以下,イメージサンプルと呼ぶ)を観察するだけでは,そのような効果は生じないことが示された.以上の結果は,暗イメージの形成によって暗順応が,明イメージの形成によって明順応が生じたことを示唆している.よって,明るさのイメージと知覚は,同じ処理過程を共有している可能性がある.実験1のイメージ条件では,イメージサンプルを観察したことによる網膜レベルでの順応が課題に影響しないよう,イメージサンプルの観察と課題の遂行とに別々の眼を割り当てた.このような手続きを用いた場合でも,明るさイメージによって順応が生じたと考えられることから,それは網膜のような末梢レベルではなく,それ以降の,より中枢レベルの処理過程において生じていたのかもしれない.
  • 佐藤 文紀, 星野 祐司
    2009 年 6 巻 2 号 p. 109-121
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    意図優位性効果とは,遂行意図を伴った記憶は伴っていない記憶と比較してアクセシビリティが高いことを指す.本研究では,意図優位性効果の生起要因が,遂行を予期したスクリプトの符号化によるものであるのか,実験者からの遂行指示によるものであるのかについて検討するため,三つの実験を行った.被験者はスクリプトを遂行するか,実験者によるスクリプト遂行を観察するかのどちらかが求められた.二つのスクリプトを学習した後,被験者はどちらか一つのスクリプトを観察もしくは遂行することが指示された.その後の語彙判断課題において,遂行スクリプトもしくは観察スクリプトで使用された単語と中性スクリプトで使用された単語の反応時間を比較した.実験1では,遂行を予期させ二つのスクリプトを符号化させた後,実験者が一つのスクリプトに対し遂行指示を行った.実験2では,遂行を予期させ二つのスクリプトを符号化させた後,実験者が一つのスクリプトに対し観察指示を行った.実験3では,観察を予期させ二つのスクリプトを符号化させた後,実験者が一つのスクリプトに対し遂行指示を行った.その結果,実験1と実験3においては意図優位性効果が出現したが,実験2では出現しなかった.以上から,意図優位性効果の出現には実験者からの遂行指示が重要な要因であることが示唆された.
  • 高橋 真衣子, 厳島 行雄
    2009 年 6 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究はリスト法の指示忘却パラダイムを用い,忘却すべき項目とその後の記銘すべき項目が同一の15カテゴリーの単語で構成される場合に,指示忘却効果が消失するかどうかを検討した.
    実験1では,実験2に用いる刺激の妥当性を確かめるために,再生課題において指示忘却効果が得られるかどうかを検討した.すべての実験参加者は15単語からなるリストを二つ学習した.半数の実験参加者は始めのリストを学習した後,そのリストを忘れるように教示され,これから呈示されるリストを覚えるよう教示された.これを忘却群と呼ぶ.別の実験参加者は二つのリストとも覚えるように教示された.これを記銘群という.その後,すべての実験参加者に対して再生課題を行った結果,通常の指示忘却効果が確認された.実験2では,実験1で使用したリストを用い,第1リスト,第2リストの各リスト15項目ともが同一の15カテゴリーの単語で構成される場合に指示忘却効果が消失するかどうかを検討した.その結果,再生課題において指示忘却効果が消失した.本研究の結果より,忘れようとした出来事とその後に覚えようとした出来事が関連している場合に,忘れようとした出来事を抑制することが困難になる可能性が示唆された.
資料
  • 山田 恭子, 中條 和光
    2009 年 6 巻 2 号 p. 133-141
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究では,潜在記憶課題である単語完成課題における環境的文脈依存効果の生起について,符号化時と検索時の刺激呈示モダリティを変化させる手続きを用いて検証した.実験では,符号化時には40単語を視覚呈示もしくは聴覚呈示した.約10分後,符号化時と同じ実験室もしくは異なる実験室において単語完成課題を実施した.単語完成課題はすべて視覚呈示された.その結果,符号化時と検索時の刺激呈示モダリティが異なる条件においてのみ,環境的文脈依存効果の生起が確認された.このことから,単語完成課題におけるフラグマント刺激のような,環境的文脈よりも効果的な手がかりが刺激呈示モダリティの変化によって利用できないときには,単語完成課題においても環境的文脈依存効果が認められることが明らかになった.
  • 小松 佐穂子, 箱田 裕司
    2009 年 6 巻 2 号 p. 143-153
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,選択的注意課題(Garner パラダイム)を用いて,表情認知と人物認知の非対称的干渉について検討を行った.実験1では,判断に無関係な情報を統制あるいは変化させた条件で,表情もしくは人物についての判断を行った.その結果,顔の個性や観察者の性別に関係なく,人物判断の反応時間は表情の変化の影響を受けないが,表情判断の反応時間は人物情報の変化の影響を受けるという非対称的な干渉が見られた.そこで実験2では,この非対称的干渉は両判断の相対的な難易度の違いによるものと考え,顔刺激画像の人物の合成を行って人物判断を困難にして実験を行った.その結果,表情判断における人物情報の干渉は消失したが,表情情報の干渉も見られなかった.したがって,表情認知と人物認知の非対称的干渉は,判断の難易度のみでは説明できないことが明らかとなった.
  • 唐牛 祐輔, 楠見 孝
    2009 年 6 巻 2 号 p. 155-164
    発行日: 2009/02/28
    公開日: 2010/05/27
    ジャーナル フリー
    本研究は,潜在的なジェンダーステレオタイプ的知識(すなわち,“女性—依存”)が,対人印象判断におけるコンストラクト・アクセスビリティ効果とどのような関連を持つかを検討した.大学生男女各36名は,表面上無関係な二つの課題を行った.まず,参加者は,単語の位置同定課題において,中立刺激または依存関連刺激に接触した.次に,男性または女性ターゲット人物に関する文章を読み,その印象を評定した.加えて,Implicit Association Test (IAT)を行い,知識連合強度を測定した.その結果,参加者は“女性—依存”というステレオタイプ的知識連合を持つことが示された.その知識連合に一致して,依存関連刺激に接触した参加者は,中立刺激に接触した参加者に比べ,女性ターゲットをより依存的だと評定したが,一方で男性ターゲットではそのような結果は見られなかった.さらに,ターゲット人物に対する依存性評定値と知識連合強度の間に,正の相関が見られた.これらの結果から,ステレオタイプ的知識連合は,プライムへの事前接触が対人判断に与える効果に,強く関連することが示唆された.
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