本研究はリスト法の指示忘却パラダイムを用い,忘却すべき項目とその後の記銘すべき項目が同一の15カテゴリーの単語で構成される場合に,指示忘却効果が消失するかどうかを検討した.
実験1では,実験2に用いる刺激の妥当性を確かめるために,再生課題において指示忘却効果が得られるかどうかを検討した.すべての実験参加者は15単語からなるリストを二つ学習した.半数の実験参加者は始めのリストを学習した後,そのリストを忘れるように教示され,これから呈示されるリストを覚えるよう教示された.これを忘却群と呼ぶ.別の実験参加者は二つのリストとも覚えるように教示された.これを記銘群という.その後,すべての実験参加者に対して再生課題を行った結果,通常の指示忘却効果が確認された.実験2では,実験1で使用したリストを用い,第1リスト,第2リストの各リスト15項目ともが同一の15カテゴリーの単語で構成される場合に指示忘却効果が消失するかどうかを検討した.その結果,再生課題において指示忘却効果が消失した.本研究の結果より,忘れようとした出来事とその後に覚えようとした出来事が関連している場合に,忘れようとした出来事を抑制することが困難になる可能性が示唆された.
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