認知心理学研究
Online ISSN : 2185-0321
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20 巻, 2 号
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原著
  • 長谷部 育恵, 楠見 孝
    2023 年 20 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    自分の脆弱性は低く見積もられる傾向がある.本研究では,脅威遭遇事例の被害者の違いによる受け手のリスク認知への影響を検討した.社会的比較理論の先行研究から,「親友の脅威遭遇事例のほうが見知らぬ一般人の事例よりもリスク認知を高める」(仮説1),「行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高める」(仮説2)と仮説を立てた.740名の参加者が食中毒に対するリスク認知を評定した後,脅威遭遇事例を読み,再度リスク認知を評定した.脅威遭遇事例に登場する被害者は,関係の有無(親友・一般人)と落ち度の有無の観点で操作した.その結果,行動に落ち度のない他者の脅威遭遇事例のほうが,落ち度のある他者の事例よりもリスク認知を高めた.さらに,相関分析の結果からは,類似した他者に同化して自己のリスク評定がなされると考えられた.被害者との関係性の有無による差はみられなかった.最後に,社会的比較理論の観点を中心に結果を考察した.

  • 後藤 理咲子, 北神 慎司
    2023 年 20 巻 2 号 p. 81-90
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,嘘に伴う認知的負荷が有効視野を狭めるかについて検証することであった.実験では,参加者は嘘つき群と統制群のいずれかに割り当てられた.参加者はディスプレイに提示されたトランプカードを記憶した後,カードと同じ内容(一致条件)または異なる内容(不一致条件)を回答し,回答後に現れる光点の位置を同定するよう求められた.嘘つき群と統制群の相違は教示であり,嘘つき群の参加者は嘘をつく時には真実を話しているかのように振る舞い,実験者を騙すよう求められたが,統制群の参加者は求められなかった.光点の正答率から相対的に有効視野を測定した結果,嘘つき群は統制群よりも有効視野が狭まったが,一致条件と不一致条件の有効視野に差は示されなかった.以上の結果は,意図的に相手を騙すこと(嘘の意図性)による負荷は有効視野を狭めるが,事実と異なる内容を回答すること(嘘の虚偽性)および嘘をつく時に真実らしく振る舞うことによる負荷は有効視野を狭めないことを示唆するものである.

講演論文
  • 川島 朋也, 澁澤 柊花, 林 正道, 池田 尊司, 田中 悟志
    2023 年 20 巻 2 号 p. 91-101
    発行日: 2023/02/28
    公開日: 2023/03/31
    ジャーナル フリー

    電気刺激や磁気刺激などの脳刺激技術を用いて脳活動と認知機能の因果関係を調べる試みが続けられている.本稿では,さまざまな脳刺激研究を概観することで認知心理学研究の展開を考えることを試みた.池田はtDCS(経頭蓋直流電気刺激)とワーキングメモリ変調の可能性について,澁澤はtACS(経頭蓋交流電気刺激)と知覚変調の可能性について,林はTMS(経頭蓋磁気刺激)と時間知覚変調の可能性について紹介する.これらの話題提供の後,田中による指定討論を受け,脳刺激研究の新たな視点と認知心理学における今後の展開について議論する.

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