質感とは,主に視覚・聴覚・触覚の情報から得られる物体の素材(例:鉄,木)や性質(例:粗さ,光沢)の包括的概念である.質感は,我々の活動において重要な役割を持つ.近年では質感認知は,複数の感覚情報に基づいた統計的推論によって行われるとされ,その統計的推論を行う神経基盤を調べる研究も存在する.本論文では,多感覚統合の研究を通して質感認知のメカニズムについて議論し,質感の情報処理の解明に新たな視点を与える.
近年,100歳を超える百寿者が世界的に増加している.百寿者の認知機能を調べることは,近い将来の介護費用の推定に貢献する.また,加齢現象の解明にも寄与することが期待され,科学的貢献という意味でも極めて重要である.本研究では,百寿者の認知機能の特徴を明らかにし,百寿者の認知機能を評価するための質問項目を作成した.開発した質問項目は,百寿者における認知症有病率の年齢差を推定するために適用可能であった.暫定的な結果としては,認知症は女性にとっては不可避であるが,男性にとっては回避可能であることが示唆された.
本シンポジウムでは,認知心理学系学部・大学院を修了し,企業等で活躍中の修了生に,自身のキャリアパスを示してもらうとともに,大学の外から認知心理学に対する期待や要請を述べてもらった.そして,認知心理学を修めた人材が社会でどのように活躍していけるのか,また,社会とつながっていくにはどのように道を辿れば/拓けばよいのかについて議論をおこなった.登壇者からは,サイエンスコミュニケーターとして企業と心理学をつなぐ役割,製品の開発や企画における実験や調査の場面でスキルを活かした活躍の姿が紹介された.指定討論の学部・大学院在学生からは,学部卒で専門性やイノベーションを求められることへの戸惑い,社会における「認知心理学」のプレゼンスの低さに由来する職業選択時の苦労について意見が出された.認知心理学が社会とより密接につながっていくために必要な課題を整理し,社会連携委員会としても引き続き,課題解決に向けて取り組んでいくことを確認した.
日本認知心理学会優秀発表賞規程に基づき,選考委員会において慎重な審議を重ねた結果,発表総数件の中から,以下の8件の発表に優秀発表賞を授与することに決定しました.受賞者には第21回大会にて授与を行います.
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