注意定位課題を用いた2つの実験を通じて,視覚的注意に対する他者の視線方向と表情の相互作用的効果を検討した.実験参加者は笑顔ないしは渋面で,正面,左ないし右を見つめる線画顔を見た.次に視線のオンセット後に現れる情動価を持つ標的スライドに対して回答した.視線手がかり有効性と表情-スライドの一致性が,操作された.実験 1 (
n=15) では,実験参加者は標的の出現位置について回答するよう求められた.その結果,視線方向による空間手がかり効果は明瞭に見られたが,表情の効果は見られなかった.実験 2 (
n=18) では,実験参加者の課題は,標的の誘意性を評価することであった.結果では,有意な視線×表情の交互作用が見られ,表情-標的の一致性が視線手がかりの有効性によって影響されることが示唆された.いくつかの理論的意義について論じた.
抄録全体を表示