バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
49 巻, 1 号
選択された号の論文の4件中1~4を表示しています
巻頭言
シンポジウム
  • 及川 欧, Igor Malinovsky, 渡邉 研太郎
    2022 年 49 巻 1 号 p. 3-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

     コロナ禍の中で,日本バイオフィードバック学会の国際交流委員会の企画で「COVID-19の世界的大流行の時代における遠隔医療」と題したシンポジウムが開催された.3名の演者が各々の領域におけるビデオ会議システムの使用法について講演した.1人目は米国ニューヨーク州で初期の統合失調症に対するチーム医療をOnTrackNYというシステム下で行っているが,急性期精神症への対応や自殺予防をオンラインで行うことの難しさについて語った.2人目は日本南極地域観測隊の60年間における,初期の短波無線から近年のINMARSATやINTELSATへの変遷の歴史について語った.遠隔医療によって,南極昭和基地で越冬する隊員たちの疾病や怪我を治療する医療担当者を日本国内から援護することが可能となる.3人目は自分の越冬体験と,冷え症に対するオンライン方式の非接触型バイオフィードバックの使用実績から,ヒトの寒冷環境など極限状況への順応に自律神経系が重要な役割を担っている,という仮説を立てた.オンラインによる遠隔医療などの取り組みは,コロナ禍のような感染症大流行の状況下でも直接相手に触れずに行える,有効な代替手段と考えられる.

短報
  • 鈴木 里砂, 村岡 慶裕
    2022 年 49 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

     【目的】簡易筋電計を用いて,クレンチングが指摘されている噛み締め症候群患者と健常者における食物形態を変化させた際の食事時の咬筋筋活動を検討した.

     【方法】対象は,歯科治療中でない健常者1名と噛み締め症候群患者1名であった.右咬合筋に記録電極を設置し,a:最大咬合,b:最小咬合,c:ガム咀嚼時,d:バナナ咀嚼時の4種の筋電図を測定した.結果として,各々の平均二乗平均平方根(root mean square:RMS)値を算出した.

     【結果】健常者の平均RMSは,a:1.21±0.21,b:0.06±0.01,c:0.44±0.20,d:0.23±0.05(μV),患者の平均RMSは,a:3.35±0.38,b:0.07±0.01,c:1.14±0.26,d:0.40±0.05(μV)であった.健常者の咀嚼時の特徴として,食物形態が柔らかくなると筋電振幅が下がってくることが確認できた.ガムにおいては,ガムが固形から水分を含み柔らかくなるにしたがって筋電振幅は低下していた.また,咬合のタイミングが周期的で一定であり,唾液と混ぜて咀嚼できている様子が示されていた.反対に,患者の筋活動は咬合力が周期的でなく不定となっていた.とくにガムについては,筋電振幅は食物咀嚼を繰り返すごとに大きくなっており,適切な咬合力を把握できていない可能性があることが示された.

     【考察】患者の筋活動は食物咀嚼時に大きく,適切な咬合力を把握できていない可能性がある.適切な咬合力の把握には,歯根膜感覚受容器の有無によるところが大きく,これが阻害されている場合は,フィードバックなどを利用することにより,代償や感覚再学習を行える可能性がある.また,安価な簡易筋電計は,日中のクレンチングに対するフィードバックに応用できる可能性がある.

症例報告
  • ―本態性振戦を呈した一症例に対して―
    髙橋 佑弥, 及川 欧
    2022 年 49 巻 1 号 p. 29-37
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/05/01
    ジャーナル フリー

     【はじめに】心拍変動バイオフィードバック(以下,HRV-BF)は,身体的・心理的障害に対して臨床的に応用されてきた.その中の一つの方法として,呼吸ではなくリズミカルな骨格筋緊張(rhythmical skeletal muscle tension;以下,RSMT)によって,HRV-BFにおける0.1Hz(6回/分)の心臓血管系の共鳴効果をもたらす研究が報告されている.今回,我々はRSMT変法として5秒間の手指集団屈曲を伴う手関節背屈運動後,5秒間の手指集団伸展を伴う手関節掌屈運動を考案し,本態性振戦の症例で改善を得られたので報告する.対象患者からは同意を得ており,開示すべき利益相反はない.

     【対象と方法】対象は,交通事故後に本態性振戦を呈して8カ月持続した10代女性.精査入院に併せてリハビリテーション科を紹介され,受診.はじめに実施方法を説明したところ,机上に上肢を設置して行うことを自己選択.「握って」「離して」と5秒間隔の声掛けによって指導し,5分間実践した.実施期間は4日間,書字とビデオ撮影によって効果判定をおこなった.

     【結果と考察】介入初日より直ちに本態性振戦の振幅減少を確認し,本人は「心が落ち着く感じ」と実感.4日目(退院日)には頭部・下肢の症状は消失し,字体崩れは大幅に改善を認めた.退院後,11週間自宅で練習していただいた.再来院時に,まだ振戦は強く感じている時間帯はあるようだが,自己練習直後に楽になっていることを話された.当日も座って緊張を除去するだけで振戦の改善を得られた.RSMT変法は簡便に実践できるため,幅広い疾患に適応できる可能性が示唆された.

feedback
Top