バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
50 巻, 1 号
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巻頭言
特集
広報企画委員会企画シンポジウム
  • 中尾 睦宏
    2023 年 50 巻 1 号 p. 46-47
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/26
    ジャーナル フリー
  • ―経験の可能性を拡げる道具のデザイン―
    上杉 繁
    2023 年 50 巻 1 号 p. 48-60
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/26
    ジャーナル フリー

     巧みに道具を操作する状態に対しては道具の身体化,身体が思うように動かない状態においては身体の道具化のような表現が使われる.両者は領域違いかつ相反する印象を与えるが,等価な状態として積極的な意味を見出してみる.そこで著者らがこれまでに取り組んできた,経験の可能性を拡げる道具のデザインにおける研究事例を紹介しながら考える.

     はじめに,経験によって自己が生成する,オートポイエーシス・システムの観点から道具のデザインを考える.「私が『道具』を使う」立場から,「『道具』の使用を通じて私が新たに産出する」立場へ変更し,道具使用によって道具あるいは環境と私との関係を再組織化するような仕組みをデザインすることになる.

     そして,できることへ向けたデザインに関し,こつをみずから探索する行為を支援する方法について,自転車ペダリング技能構築などを含め紹介する.この特徴は,身体動作やイメージにおける差異を利用し,実行可能な境界を設定して,相互作用の中で段階的に動きを組織化していくようなアプローチにある.続けて,できないことに意味を見出すデザインに関し,脳卒中後遺症者の世界を擬似体験する方法について紹介する.一時的な身体機能の減退は,通常は注意が向きにくく潜在化している機序を顕在化し,動作を探索しやすくするアプローチとなることに意味を見出している.最後に,できることの選択肢を拡げるデザインに関し,両手協応インタフェースや運動機能拡張装置の開発を通し,操作対象の自由度に対してインタフェースの自由度をあえて増やしつつ,それを動きの中で調整できるような仕組みとすることで,使用者自身で操作の幅を広げるアプローチを考案している.

     以上を踏まえ,道具の身体化において道具・身体の働きを潜在化し,身体の道具化においてそれらの働きを顕在化する,双方の状態を動的に遷移することが,運動能力の可能性を拡げることになると考えた.

  • 工藤 和俊
    2023 年 50 巻 1 号 p. 62-67
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/26
    ジャーナル フリー

     スポーツ,ダンス,音楽等の一流パフォーマーは,各領域に固有の高度な認知―運動能力を発揮する.熟練パフォーマンスを支える身体は,膨大な数の細胞と役割分化した多様な組織からなる複雑で精妙なシステムである.ヒトの動作は身体発達の基本構造に立脚した複数の階層によって構築されており,より基礎的な階層が背景となって高次の階層を支え,多様な運動スキルを実現している.このとき,動作の基底階層には緊張/脱力,姿勢,呼吸,平衡等が含まれ,多くの身体パフォーマンスに共通する要因として位置付けられる.また,動作は多様な外部環境と多様な内部環境の狭間で生成され,高度なパフォーマンスを実現するにはこれら内外の環境資源を総動員することが必要になる.この際の行為可能性とは身体―環境系という機能単位により知覚されることから,今後の研究においては,行為のための資源探索ならびに動作構築階層について,環境に拡がる身体という観点から捉えなおす必要性が指摘される.

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