バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
49 巻, 2 号
選択された号の論文の9件中1~9を表示しています
特別講演
  • 竹中 晃二
    2022 年 49 巻 2 号 p. 45-52
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     メンタルヘルス・プロモーションは,人々の臨床的症状を治療するというよりもポジティブ・メンタルヘルスの強化に用いられるウェルビーイング活動の一つである.メンタルヘルス・プロモーションはまた,災害を遭遇した後に心理的回復を促進することにも役立つ.私たちは,我が国の地震のように,災害後のレジリエンスを強化する方法として,「こころのABC活動」と名づけたメンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンを開発した.本稿では,一般成人を対象に,またCOVID-19を患う患者に関わる医療従事者を対象に,ポピュレーション・ワイド・アプローチによって実施したメンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンの内容を紹介する.感染拡大が続く中,人々のメンタルヘルス問題の数が増加している.現在の流行状況では,人々の接触や交流が制限されているため,従来型のメンタルヘルス・サービスに限界がある.そのため,新しいタイプの介入の開発が望まれている.私たちは,「こころのABC活動」,感情調整技法としてのStop-Relax-Think,およびIf-Then Plansとして知られている実行意図手法をもとにしたメッセージ・ポスターを開発し,それらを情報メディアに流すようにした.1,020名の一般成人と607名の医療従事者を対象に,それぞれのメッセージ・ポスターをオンライン調査によって評価した.2種類の評価をリッカート尺度を用いて行った.そのうち,ポスターへの反応評価では,閲覧の程度,知識,社会規範,態度,動機づけ,自己効力,および意図について調べ,一方,ポスターの刺激評価では,受け入れ,有用性および記憶の程度が評価された.その結果,一般成人においては,社会的接触の程度によって有意に見積もり度が異なり,一方,医療従事者では,勤務するCOVID-19への関わりによって評価が異なることがわかった.要約すると,COVID-19の感染は現在も進行中ではあるものの,ポピュレーション・ワイド・メンタルヘルス・プロモーション・キャンペーンは,全体住民のウェルビーイングに肯定的な影響を与えることができる.

  • 熊野 宏昭
    2022 年 49 巻 2 号 p. 53-58
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     本論文では,どのようにしてマインドフルネスを実現し心を整えていくかを,心を閉じない,呑み込まれない,プロセスとしての自己と「今の瞬間」への気づき,文脈としての自己と「体験の場」への気づきという観点から説明しながら,集中瞑想から観察瞑想に至る方法論上の要点と並行して解説していく.そして,マインドフルネスの実践によって脳がどう変化するかについて,マインドワンダリングの脳波モデルを用いた研究を紹介しながら,臨床的な効果と関連づけて説明してみたい.

招待講演
  • 桜井 良太
    2022 年 49 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     多くの疫学研究から高齢期の身体活動は認知機能に強く影響を与える生活行動であることが知られてきている.更に,このような疫学的知見は信頼性の高い介入研究により裏付けられている.アルツハイマー型認知症の危険因子の寄与率を計算した研究によると,運動不足の者を10%減らすことができると約38万人,25%減らすことができるとアルツハイマー型認知症患者を100万人近く全世界から減らすことができる推計がされており[1],運動が認知症発症に及ぼす影響の大きさが分かる.そこで本稿では運動を大きな視点でとらえ,身体機能と身体活動の点から疫学研究を中心とした成果を踏まえ解説していく.

  • 柴田 崇徳
    2022 年 49 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     「パロ」は,一般家庭での「ペット代替」と,医療福祉分野での「アニマル・セラピー代替」を目的としている.パロは日本では「福祉用具」,医療福祉制度が異なる欧米等では「バイオフィードバック医療機器」である.免疫力が弱い患者の隔離病棟等で利用できるように,感染症対策として,パロの人工毛皮には銀イオンを含む制菌・抗ウイルス加工を施しており,使い捨てワイプを用いる掃除・消毒のプロトコルが欧米の医療機関で評価後,承認された.これらにより,さまざまな疾患や障害のある小児から高齢の方々を対象として,在宅介護・在宅医療,高度急性期から慢性期や終末期の医療福祉施設において,世界30か国以上で,コロナ禍でも安全に利用されている.パロのセラピー効果について,各国での臨床試験と治験の結果や,それらのメタアナリシスの結果によりエビデンスを蓄積した.英国ではパロが「NICEガイドライン」の「認知症」の「非薬物療法」に,質が高いエビデンスがある療法として掲載された.アメリカでは,「パロを用いるバイオフィードバック治療」が保険償還される.本稿では,それらのエビデンスと,世界各地の医療福祉制度へのパロの組込状況等を述べる.また,社会課題への取り組みとして,東日本大震災等の被災者や,ロシア侵攻によるウクライナからポーランドへの避難者の「心の支援」でも,パロを活用し,喜ばれている.

BF講座
資料
  • 安士 光男, 橋本 秀紀, 牧野 真理子, 端詰 勝敬
    2022 年 49 巻 2 号 p. 93-99
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/10/25
    ジャーナル フリー

     入眠促進の目的で自然音の音量を制御する入眠制御バイオフィードバック装置が知られている.もともと寝つきのよい者の入眠を阻害しないが,寝つきの悪い者にはそれを改善する一助となることが報告されている.また身体に振動を与える振動マッサージは,血行の促進と改善が期待できるほか,音響を付加した体感音響装置はリラクセーション機器として入眠効果もあり,受動的音楽療法として幅広く利用されている.今回,体感音響を用いた入眠制御バイオフィードバック装置を開発した.枕の下に薄型の振動子と体動センサを配置し,高音質の振動と音響信号を再生する.生体センサにより入眠状態を検知し,覚醒水準の低下に合わせて音と振動の強度を小さくする制御を行い,入眠潜時の短縮を目指す.制御なしの場合と比較した結果,フィードバック制御による音量,振動の減衰は参加者にとって快適と評価され,入眠潜時を短縮する可能性が示唆された.また本装置は音量が小さくなっていくときに,筋弛緩状態を学習する可能性があり,バイオフィードバック療法として活用できることも示唆された.バイオフィードバック技術は,身体状態も感情も,テクノロジーで検出し,人間が制御し学習できるものである.このデバイスを使用することにより,人々が快適で早く眠りに就ける能力を向上させることができるかもしれない.

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