バイオフィードバック研究
Online ISSN : 2432-3888
Print ISSN : 0386-1856
45 巻, 1 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
特別ワークショップ
  • 手塚 忠則, 中村 剛
    2018 年 45 巻 1 号 p. 3-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     我々は, カメラを用いて非接触で脈波を捉える非接触バイタルセンシング技術の開発を行っている. この技術は, カメラで顔色の微かな変化を捉え, そこから脈拍を推定する技術で, 接触型のような装着ストレスなしに脈波の計測を可能とする. さらに, タブレットPCベースで試作した心拍変動バイオフィードバック機器では, 搭載されたカメラで脈拍を計測し, ディスプレイ画面にフィードバックを行うことで, オプションの外部装置の接続なしに単体での必要な機能をすべて実現することができる. 本稿では, 非接触バイタルセンシング技術の概要と, この技術を応用して試作した心拍変動バイオフィードバックの機器について説明する.

     なお, 本稿は第45回日本バイオフィードバック学会学術総会にて開催された特別企画ワークショップ 「カメラを用いた非接触バイタルセンシング技術とその応用」 の内容をまとめたもので, 発表の内容に沿って構成しているが, 一部加筆・修正を加えた.

ワークショップ
  • —バイオフィードバックを用いてレジリエンスを高めるには—
    志田 有子, 北 行典, Dawood Shiaa
    2018 年 45 巻 1 号 p. 11-17
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     人々の健康を考える上で, 個々が日々の生活習慣と連動して変化している心身の状況に気づいていること, 良くない生活習慣があるならばそれをどのように改善していくかについて方法を考え, 望ましい行動変容を促すというプロセスは, 最も重要である. しかし, 私たちの多くはこの心身の変化に気づかない場合が多く, 不調が生じて初めて自分の心身へと意識の向くことが多い.

     この背景の元, 個々の心身の状態をリアルタイムに測定しフィードバックできるバイオフィードバックが, 健康管理に重要なツールであることはいうまでもない.

     この度, エムピージャパン監修のもと, 世界有数のバイオフィードバック・ニューロフィードバック・精神心理学分野の機器製造メーカーであるソートテクノロジー社よりプロダクトマネジャーをお招きしお話いただき, バイオフィードバックを用いた健康づくりについて考える機会とした.

     また, 近年ウェアラブル端末を用いた健康管理が注目されているが, ウェアラブルとは何か? ウェアラブル端末を携帯することが個人の健康管理に及ぼす功罪などについてもふれた. 数々のバイオフィードバック機器紹介に加え, 『モバイル型のワイヤレスセンサを用いた新製品の一つであるeVu-TPS』についてデモンストレーションをいただき, 参加者自身がそれぞれのフィールドでの応用法について想像をふくらます機会となった.

  • —米国の統合医療の発展と新しい活動 : プレシジョン・メディシンとライフスタイル・メディシンについて
    白井 珠美
    2018 年 45 巻 1 号 p. 19-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     西洋医学は人々と地域の健康に必ずしも最適な結果をもたらしていない. 米国の医療は過去20年間, 新しい3つの流れに直面している. まず, 治癒を最大限にしたいという患者のニーズは統合医療の成長を加速し, 第二に, 米国政府はがん患者の治療を改善することを目指し, プレシジョン・メディシン (精密医療) に焦点を当てている. また急速に拡大する非感染性疾患に対し, 医師および医療従事者達が低コストな予防的手法, ライフスタイル・メディシンを提供し始めた. この記事では, これらの関連する3つの分野 — 統合医療, プレシジョン・メディシン, ライフスタイル・メディシン — の米国医学での成長についてまとめ, 従来の医学に統合するための具体的な手順について説明する.

論文
  • 今川 新悟, 松本 清, 佐久間 春夫
    2018 年 45 巻 1 号 p. 25-32
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     メンタルトレーニングの1つであるセルフトークは, 不安の解消や自信を向上させる効果, 競技パフォーマンスを向上させる効果があると報告されている. しかし, その効果は主観的な報告が多く, その機序については明らかとなっていない. そこで本研究では, 若年男性を対象とし, ポジティブなセルフトークおよびネガティブなセルフトークの精神生理学的効果を, 脳波 (EEG) を用いて明らかにすることとした.

     実験参加者は19~25歳の健康な男性 (主に大学生) であった. 実験課題は, ポジティブセルフトーク使用時, ネガティブセルフトーク使用時, 安静時の3条件をランダムに1分間ずつ各2回実施し, それぞれの条件において頭皮上13部位 (Fp1, Fp2, F3, F4, Fz, C3, C4, Cz, P3, P4, Pz, O1, O2) の脳波を測定し, 内省報告を得た. 脳波は高速フーリエ変換を行い, トータルパワーとθ, α, β帯域別の含有率を算出した.

     その結果, C4において安静時のθ波含有率は, 両方のセルフトーク条件よりも増加し, F3, C3においてポジティブなセルフトーク条件のα波含有率は, ネガティブなセルフトーク使用時や安静時と比較して減少した. また, C4, Cz, P4においてポジティブなセルフトーク使用時のβ波含有率は, 安静時よりも増加した. これらの結果はポジティブなセルフトークが, 疲労の抑制と関連する前頭部の脳活動や運動指令に関わる中心部の脳活動に作用し, 最適な覚醒レベルをもたらしたかもしれないことを示している.

     本研究の結果は, ポジティブなセルフトークの使用は, 脳を最適な覚醒レベルに導くことによって快適な情動をもたらし, 課題パフォーマンスを向上させ得る可能性を示唆している. さらに本研究では, セルフトークのようなメンタルトレーニングの効果は, 脳波を用いて, より客観的に評価できる可能性も示したと考えられる.

資料
  • 坂井 全弘
    2018 年 45 巻 1 号 p. 33-40
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/10/31
    ジャーナル フリー

     心拍同様, 瞳孔径にも呼吸性変動があり, 生理状態, 心理状態により変動する可能性が高い. これに着目し, 瞳孔径呼吸性変動を用いた新しいバイオフィードバックトレーニングを提案する. Eye-Mark recorderにて瞳孔径を取得し, 被験者にフィードバックする. 同時に, 被験者に呼吸による瞳孔径制御を指示する. また, 被験者にLEDの点灯に連動した呼吸を指示することで, 輻輳反射誘起による瞳孔径制御と呼吸の同期トレーニングが可能であるかを検討する. 結果, 瞳孔径のフィードバックにより, 呼吸により意図的に瞳孔径制御でき, また, 瞳孔径と呼吸の同期トレーニングも可能である. 生理・心理両面での効果検証が今後の課題である.

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