障害者歯科では,全身麻酔下第三大臼歯抜去に際し,治療回数を減らす目的で複数歯を抜去することがある.一方,複数歯の抜去は侵襲が広範囲に及ぶため,食事摂取量が減少する可能性がある.今回,障害者の歯科治療にあたり,食事摂取困難となるような機能障害を最小限にし,食事形態の見直しも含めて患者にとって有益と考えられる第三大臼歯抜去術計画を立案することを目的に臨床統計学的検討を行った.
本院障害者歯科において全身麻酔下第三大臼歯抜去術を行った18歳以上の知的能力障害者を対象とした.処置前後の食事摂取量を比較した結果,主食では10%,副食では20%の減少率を認めた.主食の食事摂取量が10%減少し,かつ副食の食事摂取量が20%減少したものを食事減少群,それ以外を食事非減少群とし,患者背景や手術時間などを比較した.
食事減少群では食事非減少群と比較して,患者背景などにおいて差はなかったが,手術時間においてのみ有意に長かった.
本院障害者歯科において,全身麻酔下第三大臼歯抜去後の食事摂取量減少に,手術時間の長さが影響していると考えられた.時間を一つの目安として治療計画を立案することで,摂食しづらい状態を引き起こすような機能障害は軽減でき,食へのこだわりが強い知的障害者でも,常食に近い形態での食事が可能となることが示唆された.
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