本研究は, 中学校2年男子対象に, さまざまなかたちの〈事物〉を〈みてとり〉〈触れてとり出し〉て, 操作する“投げる”を実践指導したものから, 生の自己関係をみようとしたものである。言わば“投げる”の自己自身の理解において把えたものである。実践的指導には, 一般的目標と具体的目標を掲かげ前者からは, “投げる”ものを〈事物〉・〈etwas Anderes〉とみてとり, いろいろ操作し投げてみる際の, 重さの差異性に気づく, 方向づけ, 高さなどの判断と狙い, 〈事物〉からの反作用に〈遠近法的現出空間〉の構造化, あるいは, “投げる”に役立つ体操の目標に豹のようにしなやかに, すばやく運動することができるであり, 後者からは, 〈事物〉に対する可塑性, 〈力とタイミングのコントロール〉, 〈有中心的構造〉と〈遠近法的現出空間〉を把えた。さらに, “投げる”の生の自己関係をみるために, 相互評価の時点を設定した。ここでは, 自己自身の理解を深めるものとして, (B) の時点において《腕や腰がのっていくのを解らせる》, 《ボールがうまく手から離れていくのを解らせる》, 《私の眼と上体がいま投げられたボールと一緒であった》かどうかを反省させるである。これらの実践は, 生徒が生きるという自体の内をみせてくれたものであり, この内に社会性という相互に, あるいは他者の関わりということが本来的に根差していたことを見逃ししてはならないのである。
抄録全体を表示