スポーツ教育学研究
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16 巻, 2 号
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  • 鈴木 理
    1996 年 16 巻 2 号 p. 83-93
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    In recent years, the concept of “teaching style”, especially Mosston's spectrum of teaching styles, is supported internationally. On the other hand, the teaching method of physical education in Japan is directed by the Learning Process Model (LPM) which is usually proposed in “Tanoshii-Taiiku” theory and adopted in the course of study. Setting LPM in the concept of “teaching style”, this study argues as follows:
    1) Though, in the extreme, case of “aim 2” is described as a problem solving style, it is an ability (for problem solving) developing style, in practice. Accordingly, LPM should not be classified as a “produce” cluster, but as a “reproduce” or “productive” cluster (eg. “task solving style”, “task selecting style”).
    2) The main content at “aim 1” of LPM is to enjoy one's exercise at the present ability. However, it is expected, from a practical point of view, that students will become trained in the technical or cognitive aspects. Therefore, we should establish the “support” skill as a significant teaching skill to guarantee rational and safe motor learning.
    3) Then it is necessary not only to present an objective criterion to identify the “saturated situation”, which is the turning point where the teacher directs students toward the next aim, but also to propose to operate LPM flexibly.
    4) It is the subject for a future study both to improve teaching styles and to establish a teaching strategy which specifies criteria on how to apply some styles.
  • 杉本 光公, 後藤 邦夫
    1996 年 16 巻 2 号 p. 95-104
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to analyze the physical fitness of individuals with mental retardation based on Fuzzy Theory, and to show how to treat the fuzziness included in human movement.
    The result can be summarizing as follows:
    (1) The fitness of individuals with mental retardation was on low level compared with the nondisabled.
    (2) The distribution of the fitness of individuals with mental retardation can not be fit normal distribution.
    (3) The analysis using Fuzzy Theory was efficient to express the fitness of individuals with mental retardation.
    (4) The evaluation using Fuzzy Theory was useful for the fitness of individuals with mental retardation.
  • 長谷川 悦示, 土屋 裕睦, 日野 克博
    1996 年 16 巻 2 号 p. 105-112
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 大学の運動部に所属している体育専攻の学生を対象に, 彼らの競技意欲に影響するクラブ環境や大学生活の要因を明らかにしようとした。競技意欲の指標としては, 競技意欲の低下した状態を表す「バーンアウト」と競技意欲が高く, 練習に積極的に参加している状態を表す「練習への熱中度」の2つが用いられた。要因間の相関分析からは以下のような結果が得られた。
    運動部員の競技意欲の低下は, 競技成績の伸び悩みや不振をきっかけとしておこり, 部員の神経質的性格や日頃の怪我への不適切な対処といった個人変数に加えて, 所属するクラブ内の人間関係が強く関わっていた。
    クラブ内の人間関係は競技意欲に関連していたが, そのタイプによって競技意欲に対する働きかけが異なっていた。良好な友人関係は特にバーンアウト傾向の抑制に関わり, また良好なコーチとの関係は特に練習への熱中度の高まりに関わっていた。
    クラブ環境の条件以外に部員の競技意欲に関連する要因には, 異性関係やアルバイトなどを含む生活環境に対する肯定的認知, 将来の目的への積極的な取り組みがあった。特に将来の目的への取り組みは, 練習への熱中度だけでなく, 学業に対する前向きな姿勢にも関係していた。
    今後は, 所属運動部の属性, 学生の個人差等を考慮にいれた研究によって, ここでの知見を検証していく必要があろう。
  • 日野 克博, 高橋 健夫, 伊與田 賢, 長谷川 悦示, 深見 英一郎
    1996 年 16 巻 2 号 p. 113-124
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    体育の実践分野で活用できる簡便な授業観察法を開発する目的で, 体育授業観察チェックリストを開発したが, 本研究ではこの観察チェックリストの有効性を検討し, その使用のしかたについて示唆した。
    観察チェックリストは, (1) 教師の相互作用, (2) 学習環境, (3) 授業の勢い, (4) 意欲的学習, (5) 効果的学習の5次元15項目で構成されるが, この観察チェックリストの授業評価法としての有効性を, 子どもの形成的授業評価法との関係から検討した。なお, 子どもの形成的授業評価法は高橋らによって標準化されたものを適用した。この形成的授業評価法は「成果」「意欲・関心」「学び方」「協力」の4次元9項目で構成される。
    これら2つの評価法はそれぞれ異なった視点から開発されたものであるが, 双方とも, 授業の良し悪しを判断することを目的とするものであり, 一定の対応関係の成立が求められる。また, それぞれの評価次元や項目の意味内容から双方の関係は十分予想できる。もし, 2つの評価法の間に関係が認められない場合は, それぞれの評価法に問題を残すことになろう。
    しかしながら, それぞれの観察者の観察評価基準は, これまでの授業観察の経験によって培われるものと予想される。したがって, 経験が少ない観察者は, 適切に評価できないのではないかという疑問が生じてこよう。したがって, この観察チェックリストの活用のしかたが問題になる。
    このような諸点を明らかにするために, 13小学校で行われた46体育公開授業のいずれかに参加し, 直接授業を観察した教師を対象に調査を実施した。協力が得られた観察者は20-60歳代までの493名であり, そのうち男性は313名, 女性は180名であった。これらの授業に対応して子どもの形成的授業評価が実施できた授業は27授業 (対象児童数は881名) であった。
    この結果, 次の諸点が明らかになった。
    1) 観察者の評価結果に因子分析を施したが, 先行研究とまったく同じ因子が抽出でき, 各項目に変動が生じることはなかった。このことから, 5因子15項目からなる観察チェックリストは安定した構造をもつことが確認できた。
    2) 総合的授業評価項目 (今日の授業はよい体育授業であったか) に対する5因子の規定力を分析した結果, 5因子による重相関係数は. 81で, 決定係数は. 65であり, 観察者はたいていこの観察チェックリストに含まれた視点に基づいて授業の良し悪しを判断していることがわかった。また, 総合的授業評価に対する各因子の貢献度から, 5因子のすべてが有意な規定力 (β値) をもっており, いずれも意味のある評価観点であることがわかった。
    3) 観察チェックリストの評価結果と子どもの形成的授業評価との関係を分析した結果, 2つの評価法の「総合評価得点」の相関係数は. 227であり, 有意ではあるがそれほど大きな値ではなかった。最も強い相関を示したのは, 形成的授業評価の「成果」次元であった。観察者は子どもの学習成果に関係づけて授業過程の現象を観察する傾向が認められた。
    4) 公開授業への参加回数別に, (1) 1-3回 (104名), (2) 4-9回 (89名), (3) 10回以上 (112名) の3群に分け, それぞれの観察者群の評価と子どもの形成的授業評価との相関関係を分析した。その結果, 1-3回の経験の少ない観察者群の評価と子どもの形成的授業評価との間にはほとんど有意な相関を認めることはできなかった。経験の少ない観察者群は「見れども見えず」であり, 少なくとも子どもの心を見抜くことができないことが明らかであった。逆に, 10回以上の経験をもつ観察者群の評価と子どもの形成的授業評価との関係は高く, 大部分の項目間で有意な相関が認められた。
    5) このような結果は, はじめに仮定した通りであった。すなわち, この観察チェックリストは経験豊かな観察者が使用すれば有効な道具になるが, 経験の少ない観察者が使用しても, あまり有効なものにはならないことを教えている。したがって, この観察チェックリストが一層有効な道具として活用されるためには, 観察者がトレーニングによって, 適切な評価基準をもつことが求められる。このような評価基準は, よい授業や悪い授業を数多く観察することによって習得されるものであろうが, あらかじめ典型的なよい授業や悪い授業をVTRで観察し, それらの授業に現象する行動例や特徴を概念的に理解することによっても習得できると考えられる。
    6) この観察チェックリストはあくまでも体育授業の一般的条件を評価するものであり, 授業研究のすべてに適用できるものではない。また, この観察チェックリストは「単元なか」の運動学習が中心になる授業を対象に作成されており, 「単元なか」の観察評価に限定して適用することが求められる。
  • 中井 隆司, 高橋 健夫, 岡沢 祥訓
    1996 年 16 巻 2 号 p. 125-135
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 学習者の側から体育教師のイメージを教授学的に明らかにするとともに, 学習者の個人的特性がどのように関係するのかを明らかにしようとした。調査票は, 教授学的視点にたった体育教師像を探求する観点から65項目 (内3項目は学習者の個人的特性に関する項目) で作成し, 11大学の学生1058名を対象に回顧形式で中学・高校時代の体育教師について回答させた。
    そこで得られた結果は次のようである。
    (1) 62項目の調査項目に因子分析を施したところ, 学習者の側からみた体育教師のイメージとして, 「慕われる人」「専門的な能力」「熱心な指導」「無計画な授業」「恐い存在」「精神力の強さ」「社会的教養の欠如」「健康な人」「情意的な授業」「科学的な授業」「狭い専門性」の11因子が抽出された。これらは, 本研究が意図した教授学的視点が顕著に反映され, 従来の研究とは異なった教師像を示している。
    (2) これら11因子の因子別項目平均得点から, 学生が体育教師に対して抱くイメージは「丈夫で, 精神力があり, スポーツに関わった能力のみならず, 幅広い教養を持ったすぐれたスペシャリストで, 授業では運動の楽しさなどの情意面に焦点をおいて計画的かつ熱心に指導する人であるが, 信頼感や思いやりに欠け, 生活指導面での厳しい恐い存在である」ということである。
    (3) 学習者の個人的特性と各因子の関係を分析した結果, 男子学生や体育学部に進学した学生は, 体育教師に対して人間的なイメージを持っている一方, 教育学部に進学した学生は, より教師的なものになっており, 女子学生やその他の学部に進学した学生は, スポーツマン的にみていることが明らかになった。また, 「体育教師への好意度」, 「体育授業への好意度」, 「運動の得意度」と各因子の関係を分析した結果, 「慕われる人」因子が体育教師への愛好的態度育成に最も強い規定力をもっていることが認められた。このことは, 体育教師としての専門的な力量とともに, 教師としての資質や人間性, 特に生徒に対して信頼感や思いやりをもつことの重要性を示唆していると考えられる。
    最後に, 本研究では, 中学・高校時代の記憶が比較的鮮明に残っている大学生を対象に回顧形式で調査を行ったため, その結果は, 直接授業で教わっている生徒のイメージを反映したものではない。しかし, その研究意図や導き出された結果から, 今後の教師教育にとって非常に有益な示唆が得られたと考える。今後は, この示唆を教師教育に具体的にどのように役立てていくのかについて研究を深めたい。
  • 発表会会場の形状と創作ダンスに対する視座との関わりから
    麻生 和江
    1996 年 16 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    本研究では, 舞踊観賞におけるコミュニケーション生成における会場の役割を確認した上で, 舞踊作品を「身体の芸術」と捉える視座と「総合的芸術」と捉える視座との相違から派生する創作ダンス学習の指導の内容・方法について言及することを目的とした。それらの結果は以下のように要約することができる。
    1. 舞踊観賞におけるコミュニケーションでは, 作者・演技者と観賞者は, それぞれお互いの存在を前提としながら, 発信と受信がそれぞれ一方的であり, 同時に進行する。
    観賞者の自由な意志に導出される注目による知覚が受信の方法であり, 送信内容と受信内容が必ずしも一致しない点が舞踊観賞におけるコミュニケーションの特異性である。
    会場は, 作者・演技者と観賞者が作品を上演・観賞するという, それぞれの独自な創造的活動に対して非日常性が確保された, 両者に共通する環境として, コミュニケーションの成立に必要な空間である。
    2. 創作舞踊を「身体の芸術」として捉えると, 作品の概念は, 身体的技巧に焦点化される。「総合的芸術」として捉えると, 演技者の身体を中心にしつつ, 演技者の身体を取り巻くあらゆる事象が観賞の対象となる。
    「身体の芸術」は身体に集中する方向性をもった視座であり, 一方「総合的芸術」は身体から広がりの方向性をもった視座である。
    後者では, 舞踊観賞におけるコミュニケーション生成にも会場の雰囲気が大きく影響する点で前者とは異なる。
    3. 創作舞踊を「身体の芸術」と捉える視座に依拠して, 創作ダンス学習を「身体の芸術の学習」として捉えると, 学習は身体的技巧の追求が中心的な学習課題となり, 発表会はその成果を発表する会となる。「総合的芸術」の視座からすると, 会場には作風に適した雰囲気の舞台美術に工夫が求められる。
    「身体の芸術」と「総合的芸術」という視座の相違は, 舞台美術の重要性という点に相違をもたらす。創作ダンス学習を「総合的芸術の学習」と捉えると, 学習内容は舞台美術や演出, にまで及ぶ広範な活動領域となる。
  • 岡沢 祥訓, 北 真佐美, 諏訪 祐一郎
    1996 年 16 巻 2 号 p. 145-155
    発行日: 1996/11/30
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
    The purpose of this study was to make a clear structure of physical competence of students from the upper grades of elementary school to the university, and to examine the developmental tendency and sex difference. The subjects were 4, 880 students broken down into 505 elementary school children, 3, 530 junior high school students, 358 high school students, 487 university students. The 12 items were chosen from among a result of preliminary investigation about physical competence, and factor analysis was done.
    The results were as follows:
    1) Factor analysis reveals a 3-factor solution. The first factor, perceived physical competence, was defined by 4 items. The second factor, feeling of control, was defined by 4 items. The third factor, peer and teacher acceptance, was defined by 4 items. And the questional items which constituted each factor of physical competence were common to all development stages from the elementary school to the university. The reliability of these scales were tested by the coefficient α, and credible results were obtained.
    2) On the development stage, the elementary school children showed a higher score than the junior high school students, the high school students and the university students in perceived physical competence and feeling of control.
    The elementary school children and the junior high school students showed a higher score than the high school students and the university students in peer and teacher acceptance.
    3) On sex difference, it was showed that the male's scores in perceived physical competence and feeling of control were higher than the female's one on all school stages, and that the female's scores in peer and teacher acceptance were higher than the male's one on the elementary school, the junior high school and the high school. But it was not significant differences between the males and the females on the university.
  • 1996 年 16 巻 2 号 p. e1
    発行日: 1996年
    公開日: 2010/08/10
    ジャーナル フリー
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