熔接電源として直流逆極性を採用し,かつ熔接電流値(125Amp)を一定として,心線中にかねり多量のMnを含有せる18-8不銹鋼熔接棒を用い,板厚およびC含有量の異なる四種のα系鋼板上に熔接速度を種々に変えてシングルビードを熔着し,既報と同じ方法によリオーステナイト熔接金属中えの母材の熔込量,熔込率等のいわゆる熔込諸量,オーステナイト熔接金属平均硬度,母材熱影響部最高硬度,顯微鏡組織等について実驗し,これらの関係を求めて考察を行った.実驗の結果を綜括すれば次のごとくである.すなわち熔接電流値一定の場合
(1)板厚のいかんにかかわらず,熔接速度の増加に従いオーステナイト熔接金属量,熔込量ともに激少する.同樣に母材C含有量のいかんにかかわらず熔接速度の増加に従いオーステナイト熔接金属量,熔込量ともに減少する.なお上記いずれの場合ともオーステナイト熔接金属量は熔接速度3.3mm/sec附近まで急激に減少する.
(2)熔込率は熔接速度3.3mm/sec附近までは急激に増加し,以後増加は緩漫である.この場合の熔込率は,板厚および栂材C含有量によって異なるも,熔接速度1.1mm/sec,板厚20mmの場合の約10%から熔接速度8.3mm/sec,板厚5mmの場合の約45%の範囲に変化する.
(3)板厚小なるものの方がその大ねるものよりオーステナイト熔接金属量,熔込量は僅かながら大なる傾向が認められる.また母材C含有量の低いものの方がその高いものよリオーステナイト熔接金属量,熔込量は僅かながら小なる傾向が認められる.
(4)オーステナイト熔接金属硬度は熔込率30%附近からやや急激に上昇の傾向を示している.しかし母材C含有量の高いものほどその傾向は小である.
(5)母材熱影響部最高硬度は母材C含有量,板厚,熔接速度それぞれの増加に従い増加する.
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