諸文献に據れば母材鋼板に就いては砒素が稍々多く含まるも熔接に劉しては著しい害は認められないが,熔接棒心線中の砒素は少量にても警戒されてゐるやうである.
そこで著者等は熔接棒心線中の砒素が増せば熔着鋼の割れ發生傾向及び機械的性質特に衝撃値が如何に影響されるかを研究した.そして實驗の結果次のことが解つた.
a)砒素を含まぬ軟鋼母材を種々の含砒量の低炭素鋼心線を以て作れる被覆熔接棒を用ひ熔接すると,熔着鋼は含砒量を増すにつれ硬度大となり,衝撃値は小となり,熔着鋼内割れは發生し易くなる傾向にある.そして0.86%As含有鋼心線を使用し,熔接の際の拘束状態強き隅肉熔接の場合には割れが現はれた.
b)砒素を含まぬCr-Mo鋼母材を含砒量を異にするCr-Mo鋼心線(<約0.6%As)を用ひ熔接すると,燐着鋼は含砒量増すにつれ硬度小となり,衝撃値は大となり,熔着鋼内割れの發生傾向は,砒素を含まぬ心線鋼使用の場合に比し差異を示さない,寧ろ發生傾向は減するであらうと考へられる.
上述の如く軟鋼熔接の場合,含砒鋼心線使用のために起る熔着鋼の性質の低下は著しいので,将來含砒鋼を熔接棒心線として使用せねばならぬ状況となるときは,適當なる方策を講じて此性質低下を防止せねばならない.
此防止対策樹立上參考となる重要なる―資料に就いては第2報に於いて詳しく報告する豫定である.
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