地下部内部全体にペラルゴニジンを主たるアントシアニジンとして蓄積するダイコンの新品種開発を目標に,中間母本の作出と色素発現の遺伝様式を検討した.ペラルゴニジンを蓄積する遺伝資源として「天安紅芯」を用い,これに日本の代表的な品種・系統を交配し,その後代を用いて交配,選抜を繰り返し,青果としての品質にすぐれ,地下部の内部全体が赤く発色する自殖系統を育成し,この中間母本を「乾谷」(いぬいだに)と命名した.「乾谷」のアントシアニジン解析を行った結果,ペラルゴニジンを主たる色素として生産していることが確認された.「乾谷」と育成途上の地下部内部全体が赤く発色する系統を交配して得られた試作F
1の栽培試験の結果,収穫物が両親より大きく,地下部内部全体が赤く発色し,ペラルゴニジンを主たるアントシアニジンとして蓄積するF
1品種開発の可能性を確認した.また,「乾谷」と地下部内部が白色の品種・系統を交配し,F
1,F
2および戻し交配における分離比を検討した結果,地下部表皮の色,すなわちペラルゴニジンとシアニジンの発現は今までに提唱されてきた2遺伝子座の仮説で説明がつかないこと,地下部内部全体が発色する形質については,3遺伝子座に支配されている可能性が示唆された.
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